『プラビックス錠について』
土曜日, 11月 20th, 2010
KW:薬名検索・クロピドグレル・clopidogrel・クロピドグレル硫酸塩・clopidogrel Sulfate・抗血小板薬・ローディングドーズ・Loading Dose
Q:クロピドグレルの作用機序について
A:クロピドグレル(clopidogrel)は、抗血小板薬である。
一般名: クロピドグレル硫酸塩(clopidogrel Sulfate)
分子式: C16H16ClNO2S・H2SO4 =419.90
商品名:プラビックス錠25mg(サノフィ・アベンティス株式会社)
作用機序:clopidogrel Sulfateの活性代謝物が、不可逆的に血小板のADP受容体サブタイプP2Y12に作用し、ADPの結合を阻害することにより、血小板の活性化に基づく血小板凝集を抑制する。また、ラットにおいて認められたコラーゲン及び低濃度トロンビンによる血小板凝集に対する本薬の抑制作用は、これらの刺激によって血小板から放出されたADPによる血小板凝集を抑制することに基づくと考えられる。
血小板凝集抑制作用:clopidogrel Sulfateはin vitroでは血小板凝集抑制作用を発現せず、経口投与後、肝で代謝を受けて活性代謝物となり、ADP刺激による血小板の活性化に基づく血小板凝集を抑制する。ラットではコラーゲン及び低濃度トロンビンによる血小板凝集の抑制も認められている。
健康成人男子24例にclopidogrel 10-75mg/日を10日間反復経口投与した時、血小板凝集抑制率の増加および出血時間の延長が認められている。健康成人10例を対象に、clopidogrelのローディングドーズ*(初回投与300mg、翌日以降は75mgを1日1回5日間反復経口投与)と非ローディングドーズ(75mgを1日1回6日間反復経口投与)の用法・用量でのクロスオーバー法による投与を行い、血小板凝集抑制作用について検討した。その結果、ローディングドーズ群は、非ローディングドーズ群に比べ、初回投与後2時間から血小板凝集抑制作用(血小板活性化の抑制)を示した。300mgのローディングドーズにより、投与初日の血小板凝集抑制率は約30-40%を示し、薬力学/薬理作用的に定常状態と考えられる血小板凝集抑制率のレベルに投与初日より達していたが、ローディングドーズをしない場合では投与初日の血小板凝集抑制率は約15%であった。
*Loading Dose:初期投与量を負荷量とし、以後通常投与量を投与することにより、早期に高い血中濃度を得る投与法。
抗血栓効果:clopidogrel Sulfateは、経口投与により、血小板の活性化に基づく血栓形成を抑制する。本薬は中大脳動脈血栓モデル(ラット)、動静脈シャントモデル(ラット)、冠状動脈周期的血流減少モデル(イヌ)、頸動脈バルーン内皮傷害モデル(ウサギ)、ステント留置動静脈シャントモデル(ウサギ)において血栓形成を抑制し、中大脳動脈脳血栓モデルでは血栓形成抑制に基づいて梗塞サイズを縮小した。頸動脈バルーン内皮傷害モデル、ステント留置動静脈シャントモデルにおける血栓形成抑制効果はアスピリンと併用したとき増強した。
吸収・代謝:clopidogrel Sulfateは吸収された後、肝臓で主に二つの経路で代謝される。すなわち、
1)エステラーゼにより非活性代謝物であるSR26334(主代謝物)を生成する経路と、
2)薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)による酸化型代謝物を生成する経路である。
後者の経路を経由して、活性代謝物H4が生成される。血漿中においては、未変化体の濃度は極めて低くSR26334が主に存在した。clopidogrel の肝酸化型代謝に関与するチトクロームP450分子種は、主にCYP3A4、CYP1A2、CYP2C19、CYP2B6である(in vitro)。また、SR26334はCYP2C9を阻害する(in vitro)。
本品の効能・効果について『○虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制』、『*○経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)』と報告されている。
本剤の作用機序は『血小板の活性化に基づく血小板凝集を抑制』作用であり、『アスピリンとの併用によって出血のリスクが高まる可能性がある』の記載はあるが、『vitamin K及び関連食品』に関連する相互作用の記載はされていない。
1)プラビックス錠添付文書, 2008
[011.1.CLO:古泉秀夫,2010.2.12.]