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『ネクサバールについて』

金曜日, 6月 25th, 2010

KW:薬名検索・ネクサバール・ソラフェニブトシル酸塩・sorafenib tosilate・sorafenib・チロシンキナーゼ・キナーゼ阻害剤・抗悪性腫瘍剤

Q:TVの特番で放送されていたネクサバールとはどの様な薬か

A:ネクサバール錠(バイエル薬品)は、1錠中にソラフェニブトシル酸塩(sorafenib tosilate:JAN・INN:sorafenib)200mgを含有するフィルムコート錠である。

本薬はバイエル社とオニキス・ファーマシューティカル社で共同開発された、世界初の経口キナーゼ阻害剤である。腎細胞癌の発症と進行には、MAPキナーゼ経路を介した増殖シグナルや血管新生が関与しており、本薬は腫瘍の細胞増殖と、血管新生を阻害する。

本薬は非臨床試験において腫瘍進行に関与するC-Raf.、正常型及び変異型B-Rafキナーゼ活性、並びにFLT-3、c-KIT等の受容体チロシンキナーゼ活性を阻害した。更に本薬は腫瘍血管新生に関与する血管内皮増殖因子(VEGF)受容体、血小板由来成長因子(PDGF)受容体等のチロシンキナーゼ活性を阻害した(in vitro)。本薬はヒト由来腫瘍細胞株を用いた担癌マウスモデルにおいて、腫瘍組織中の血管新生阻害作用を示した(in vivo)。また、本薬は腫瘍細胞のERKリン酸化を抑制し、アポトーシスを誘導した等の報告がされている。本薬はキナーゼ阻害剤に分類される抗悪性腫瘍剤である。

本剤の適応は次の通り報告されている。

1. 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対して

(1)サイトカイン製剤による治療歴のない根治切除不能又は転移性の腎細胞癌患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。

(2)本剤の術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。

2. 切除不能な肝細胞癌に対して

(1)局所療法(経皮的エタノール注入療法、ラジオ波熱凝固療法、マイクロ波凝固療法、肝動脈塞栓療法/肝動脈化学塞栓療法、放射線療法等)の適応となる肝細胞癌患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。

(2)肝細胞癌に対する切除及び局所療法後の補助化学療法における本剤の有効性及び安全性は確立していない。

(3)肝細胞癌患者に本剤を使用する場合には、肝機能障害の程度、局所療法の適応の有無、全身化学療法歴等について、「臨床成績」の項の内容に準じて、適応患者の選択を行うこと。

本薬の『用法及び用量』につては、既に市販されている薬物であり、使用に際しては添付文書の記載内容を十分に確認すること。

本薬の『警告』として、次の記載が見られる。

警告

本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に本剤の有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

その他、重大な副作用として、次の報告がされている。

1.手足症候群(10%以上)、はく脱性皮膚炎(1-10%未満)。2.皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(頻度不明)。多形紅斑(0.1-1%未満)。3.高血圧クリーゼ(0.1-1%未満)。

4.可逆性後白質脳症(0.1-1%未満)。5.消化管穿孔(0.1-1%未満)。6.出血(消化管出血、気道出血、脳出血、口腔内出血、鼻出血、爪床出血、血腫)(10%以上)。7.心筋虚血・心筋梗塞(0.1-1%未満)。8.うっ血性心不全(0.1-1%未満)。9. 肝機能障害・黄疸(0.1-1%未満)。10. 膵炎(0.1-1%未満)。11. 急性肺障害、間質性肺炎(頻度不明)。12. 白血球減少、好中球減少、リンパ球減少、血小板減少、貧血(頻度不明)。

1)ネクサバール錠IF、2008.4.作成

2)ネクサバール錠添付文書、2009.5.改訂

[011.1.TOS:2009.11.16.古泉秀夫]