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「業務停止」

日曜日, 5月 2nd, 2010

魍魎亭主人

大洋薬品の高山工場は、2008年、受託製造していた抗生物質製剤「パンスポリン注(武田薬品)」に、ガラス片が混入したとして、委託会社との間で問題となった経緯がある。

今回、同社の後発品「ガスポートD錠20mg」(一般名:ファモチジン)について、製造過程で原料の秤量・混合時に間違いを犯し、しかも製造された製品は、既に商品として外に出てしまったという考えられない失敗を犯した。

今回の事例での最大の問題点は、原料の散薬を配合する際、主成分の秤取量を間違えた製造工程担当者が、打錠工程の担当者に、間違えて製造した2ロットについて、試料の抜き取りをしないように依頼したということである。つまり社員間で、間違えた場合の隠蔽工作が、日常的に行われていたのではないかとの疑念を持たざるを得ない。

配合量を間違えたと気が付いた段階で、原料を廃棄すべきであるのに、原料を廃棄することなく、製造を継続したということは大問題である。更に品質管理部門に提出する抜取り検査用の試料を、正常な物と擦り変え、提供するなどと言うことは、仕事に対する社会的責任を思えば、考えられない行為だといわなければならない。

大洋薬品は2009年6月-9月に出荷した約142万錠を自主回収したとしている。しかし、別な情報ではH2ブロッカー「ガスター」の後発医薬品(口腔内崩壊錠)である「ガスポートD錠20mg」で、昨年4月から9月までに全国約3000の医療機関などに出荷された2ロット分の約28,000箱(280万錠)について、自主回収の通知後、回収出来たのは16%で、その他は既に処方されていた。同社に対して健康被害などの連絡は届いていないということであるが、2ロットのうち1ロットは主成分が120%、もう1ロットは80%の含有量ということで、何れにしろ欠陥品である。

工場所在地である岐阜県は、3月26日、高山工場に対して、薬事法に基づく業務停止命令を出したと発表した。期間は同日から4月3日までの9日間。

ところで欠陥商品を服用させられた患者に対する対応はどうするのか。未回収の部分は既に処方せんに記載されて患者の手元に行き、服用されているはずである。あるいは既に服用が終わってしまっているかもしれない。しかし何れにしろ、この件で最大の迷惑を受けたのは、欠陥商品を服用させられた患者である。9日間の業務停止命令で、行政的な始末は付けたつもりかもしれないが、患者との関係で言えば未だけじめは付いていない。

ロット番号から納入先の病院、調剤薬局は分かるはずである。更に直近の病院の処方せんを見れば、患者の名前は分かる。御迷惑をお掛けしたぐらいの挨拶はあってしかるべきではないか。あるいは新聞・TV等でお詫びの挨拶があってもいいのではないか。

現在、後発品の販路が広がっている。大洋薬品高山工場でも、委託製造も含めて、数多くの医薬品を製造しているとされる。余裕のない仕事が職員の教育をおざなりにし、仕事に対する責任感の喪失に繋がったのではないか。しかもこの販路の拡大は、企業努力により、地道にジワジワと伸びた訳ではなく、行政の都合による後発医薬品の使用圧力によって拡大したものである。他力本願による業績の拡大、惰性でやる仕事にろくな仕事はない。

日本ジェネリック製薬協会(澤井弘行会長)は、3月29日から1年間、大洋薬品の会員資格停止処分を決定した。

1)RIS FAX,第5558号,2010.3.18.

2)RIS FAX,第5563号,2010.3.23.

3)日刊薬業,2010.3.30.

(2010.4.16.)