『新型インフルエンザワクチンに関する使用上の注意等の改訂について』
土曜日, 2月 27th, 2010医薬品情報21
古泉秀夫
平成21年10月19日『厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部事務局』から各都道府県・保健所設置市・特別区衛生主管部(局)宛事務連絡が発出された。
10月18日に開催された薬事・食品衛生審議会安全対策調査会において、標記の件について審議され、別紙のように、妊婦への接種及び他のワクチンとの同時接種に関し、添付文書の改訂が行われることとなりましたのでお知らせいたします。各自治体におかれましては、管下受託医療機関への周知方よろしくお願いいたします。
なお、実際の製品添付文書には、当面従来のものが添付されることとになりますが、これらの改訂を反映した添付文書は近く、医薬品医療機器情報提供ホームページの「医療用医薬品の添付文書情報」(http://www.info.pmda.go.jp/info/iyaku_index.html)において公開されます。
また、同調査会には、インフルエンザワクチンに含有されるチメロサールの安全性に関する調査結果資料も提出されていますが、資料は厚生労働省ホームページの、
○審議会・研究会等>薬事・食品衛生審議会>医薬品等安全対策調査会において、速やかに公表することとしております。
本件は(社)日本医師会及び日本病院団体協議会に対しても、周知依頼をしておりますので、申し添えます。
別紙
631 ワクチン類
【医薬品名】インフルエンザHAワクチン
A型インフルエンザHAワクチン(H1N1株)
【措置内容】以下のように使用上の注意を改めること。
[用法・用量に関連する接種上の注意]の項の「他のワクチン製剤との接種間隔」に関する記載を
「生ワクチンの接種を受けた者は、通常、27日以上、また他の不活化ワクチンの接種を受けた者は、通常、6日以上間隔を置いて本剤を接種すること。
ただし、医師が必要と認めた場合には、同時に接種することが出来る(なお、本剤を他のワクチンと混合して接種してはならない)。
と改め、[妊婦、産婦、授乳婦等への接種]の項を
「妊娠中の接種に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には予防接種上の有益性が危険性上回ると判断される場合にのみ接種すること。
なお、小規模ながら、接種により先天異常の発生率は自然発生率より高くならないとする報告がある。」
と改める。
(参考)Birth Deects and Drugs in Pregnancy,1977
参考(新旧対照表)
インフルエンザHAワクチン及びA型インフルエンザHAワクチン(H1N1株) の新旧対照表
現行 |
改訂後 |
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【接種上の注意】 6.妊婦、産婦、授乳婦への接種 妊娠中の接種に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には接種しないことを原則とし予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること。 |
【接種上の注意】 6.妊婦、産婦、授乳婦への接種 妊娠中の接種に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には接種しないことを原則とし予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること。なお、小規模ながら、接種により先天異常の発生率は自然発生率より高くならないとする報告がある。* *出典:Birth Deects and Drugs in Pregnancy,1977 |
【用法・用量に関連する接種上の注意】 1.接種間隔 2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましい。 2.他のワクチン製剤との接種間隔 生ワクチンの接種を受けた者は、通常、27日以上、また他の不活化ワクチンの接種を受けた者は、通常、6日以上間隔を置いて本剤を接種すること。 |
【用法・用量に関連する接種上の注意】 1.接種間隔 2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を 考慮すると4週間おくことが望ましい。 2.他のワクチン製剤との接種間隔 生ワクチンの接種を受けた者は、通常、27日 以上、また他の不活化ワクチンの接種を受け た者は、通常、6日以上間隔を置いて本剤を 接種すること。ただし、医師が必要と認めた 場合には、同時に接種することが出来る。 (なお、本剤を他のワクチンと混合して接 種してはならない)。 |
世間一般では新型influenzaなるものが大流行に流行っている。しかし、これから冬を迎えて、季節型influenzaが流行らないという保障はない。取り敢えず新型influenzavaccine接種の順番は回ってこないが、もし順番が回ってきた時に、両方のvaccineを別々に注射するとなると、医療機関の混雑は大変なものになってしまう。更に注射を受ける方も、全ての注射が終了するまで、無駄な時間を過ごすことになる。
そこでもし、一緒に接種して良いならと期待をする向きも出てくるであろうが、従来の添付文書には『生ワクチンの接種を受けた者は、通常、27日以上、また他の不活化ワクチンの接種を受けた者は、通常、6日以上間隔を置いて本剤を接種すること。』となっていた。今回の改訂で、この部分に変更はないが、『ただし書』として『医師が必要と認めた場合には、同時に接種することが出来る。(なお、本剤を他のワクチンと混合して接種してはならない)。』が追記された。
しかし、この改訂部分を見る限り、例によって例の如く、最終判断は現場に投げてしまったということである。『医師の判断』ではなく、国の判断として同時接種が出来るような改訂にすべきだといえる。事故があった時に、直接的な責任は取りたくないという姑息さが伺える。
influenzaワクチンは、感染を完全に防御するというワクチンではない。しかし、感染を防御することが可能なワクチンの接種は、医療費の縮減に大きく貢献する。厚生労働省は、国内におけるワクチン行政の見直しを図ると共に、新たなワクチンの開発に財政的な援助をすべきである。
(2009.12.1.)