『ケタミンの麻薬指定について』
土曜日, 1月 30th, 2010KW:法律・規則・麻薬・ケタミン・ketamine・動物用医薬品
Q:今日ケタミン(ketamine)で逮捕されたというニュースが流れていましたが、ketamineが麻薬に指定されたのは何時のことですか
A:ケタミン(ketamine)は、化学名を『(2RS )-2-(2-Chlorophenyl)-2-(methylamino)cyclohexanone monohydrochloride』といい、我国においては、昭和45(1970)年2月から人を対象とした医薬品として市販され、現在では、動物用医薬品としても市販されている。薬理作用として、麻酔・鎮痛作用の他、血圧降下、頻脈、脳脊髄液圧上昇、脳血流量増加、呼吸抑制などの作用がある。
ketamineは平成18年3月23日に公布された麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令の一部を改正する政令(平成18年政令第50号。以下「ケタミンの麻薬指定政令」という。)により、平成19年1月1日に麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号。以下「麻向法」という。)第2条第1号に規定する麻薬に指定され、輸入、輸出、製造、譲渡、譲受、所持、施用等の取扱等について規制されることになった。
規制された背景については、「K」、「スペシャルK」等と呼ばれて密売されていることによる。密売されているketamineは、主に粉末で、殆ど密輸入品と考えられている。我国では医療用医薬品であるketamineの濫用は報告されていないが、ketamineの濫用が原因となって惹起された精神疾患の症例が学会でも報告され、ketamineの濫用との因果関係が強く疑われる死亡事例も発生している。この他、濫用されているMDMA等錠剤型麻薬にketamineが混合されている事例も数多く報告されている。
なお、ketamineの濫用は国際的にも悪化しており、国連麻薬委員会*は各国において規制することを呼びかけている。世界保健機関(WHO)においても、麻薬を規制するための国際条約の規制対象とするため、国際麻薬委員会に勧告することを検討しているとされる。更に米、仏、中、東南アジア諸国等においては、麻薬等の規制薬物に指定している。香港ではketamineはヘロインに次ぐ第二の濫用薬物として、特に若者の間で流行しており、中国では我国への密輸直前に摘発された事例も報告されている。また韓国では動物用のketamine注射液が加工されて濫用されていることが判明している。
*国連経済社会理事会の下部委員会であり、国際的な薬物問題に関する意思決定の中心機関である。
以上、厚生労働省医薬食品局監視指導課・麻薬対策課の発出したケタミン取扱(質疑応答)を参照した。
1)厚生労働省医薬食品局監視指導課・麻薬対策課:ケタミンの取扱(質疑応答),2006年8月
[615.1KET:2009.12.25.古泉秀夫]