Archive for 9月 20th, 2009

トップページ»

「抗パーキンソン病薬zonisamideの薬価について」

日曜日, 9月 20th, 2009

KW:zonisamide・ゾニサミド・薬価・抗パーキンソン病薬・抗てんかん薬・エクセグラン錠

Q:適応外使用でパーキンソン病治療にzonisamideが使用されていたが、今回、パーキンソン病治療薬として新たに承認された。しかし、その薬価が余りに高いため、患者が不満を述べているが、どの様な薬価の決定がされたのか

A:適応外使用でパーキンソン病の治療に使用されていた抗てんかん薬が、患者の要望により今回抗パーキンソン病薬として新たに発売された。

 『抗てんかん薬』として市販されていた薬物は、1錠中にzonisamide 100mgを含有する製剤である。商品名『エクセグラン錠(大日本住友)』の添付文書によれば、本薬の承認適応は下記の通りである。

 部分てんかんおよび全般てんかんの下記発作型

 部分発作

  単純部分発作〔焦点発作(ジャクソン型を含む),自律神経発作,精神運動発作〕

  複雑部分発作〔精神運動発作,焦点発作〕

  二次性全般化強直間代けいれん〔強直間代発作(大発作)〕

 全般発作

  強直間代発作〔強直間代発作(全般けいれん発作,大発作)〕

  強直発作〔全般けいれん発作〕

  非定型欠神発作〔異型小発作〕

 混合発作〔混合発作〕

 またzonisamideの用法・用量については『zonisamideとして、通常、成人は最初1日100?200mgを1?3回に分割経口投与する。以後1?2週ごとに増量して通常1日量200?400mgまで漸増し、1?3回に分割経口投与する。なお、最高1日量は600mgまでとする。』

 『小児に対しては、通常、最初1日2?4mg/kgを1?3回に分割経口投与する。以後1?2週ごとに増量して通常1日量4?8mg/kgまで漸増し、1?3回に分割経口投与する。

なお、最高1日量は12mg/kgまでとする。』とされている。

 因みに本剤1錠の薬価は『38.50円』である。

 なお、新たに抗パーキンソン病薬としてzonisamide含有製剤が新医薬品として承認された結果を受け、本薬の添付文書には次の注意事項が追記された。

用法・用量に関連する使用上の注意『zonisamideをパーキンソン病(本剤の承認外効能・効果)の治療目的で投与する場合には、パーキンソン病の効能・効果を有する製剤(トレリーフ)を用法・用量どおりに投与すること。』

 薬効分類名『レボドパ賦活型パーキンソン病治療薬』である『トレリーフ錠25mg(大日本住友)』は、1錠中にzonisamide 25mgを含有する製剤である。本薬の承認適応は『パーキンソン病(レボドパ含有製剤に他の抗パーキンソン病薬を使用しても十分に効果が得られなかった場合)』とされており、用法・用量として『本剤は、レボドパ含有製剤と併用する。通常、成人にゾニサミドとして、1日1回25mgを経口投与する。』の設定がされている。また、用法及び用量に関連する使用上の注意として『zonisamideをてんかん(本剤の承認外効能・効果)の治療目的で投与する場合には、てんかんの効能・効果を有する製剤(エクセグラン等)を用法・用量どおりに投与すること。』の注意事項の記載がされている。

 因みに本剤1錠の薬価は『1,084.90円』である。

 抗てんかん薬『エクセグラン錠』は、1錠100mg含有の製剤が38.50円。抗パーキンソン病薬『トレリーフ錠』は、1錠25mg含有の製剤が1,084.90円であり従前の価格との単純な比較では約113倍である。単純に考えれば、エクセグラン錠の適応症追加で処理すれば、薬価はエクセグラン錠と同額ということになるはずであるが、エクセグラン錠は抗てんかん薬としての臨床治験は行われているが、抗パーキンソン病に対する臨床治験は行われていない。従って新規の適応症を取るためには臨床治験を行い、有効性の確認が必要ということで、臨床治験が行われており、その意味では新医薬品である。

 本薬の薬価の算定方式は『類似薬効比較方式(I)』であり、補正加算として『有用性加算(II)(A=5%)』が加算されている。

 本薬の最類似薬とされたのは、セレギリン塩酸塩(エフピー錠(エフピー(株))で、1錠2.5mgの薬価は344.40円、標準維持量1日7.5mgとなるため、1日薬価は1,033.20円である。トレリーフ錠は1日1回服用であるため、エフピー錠の1日薬価+5%加算で『1,084.90円』の薬価が定められている。

 selegiline hydrochloride:B型モノアミン酸化酵素阻害作用

 zonisamide :B型モノアミン酸化酵素阻害作用、ドパミン増加作用。

 加算理由:L-dopa含有製剤に加え他の抗パーキンソン病薬を用いた既存治療においても効果が十分ではなかった患者において運動機能の改善が示されており、治療方法の改善が認められる。しかし、パーキンソン病の症状が時間帯によって発生すること(wearing-off現象)を抑制するデータが得られないことを考慮し、限定的な評価としたとされている。

1)日刊薬業,2009.2.26.

2)新医薬品の薬価算定について, 2009.4.12

[615.1.ZON:2009.4.12.古泉秀夫]

『CA-19-9について』

日曜日, 9月 20th, 2009

KW:語彙解釈・臨床検査・CA-19-9・carbohydrate antigen・糖鎖抗原・癌発生・スクリーニング・モノクローナル抗体

Q: CA-19-9検査の結果について

A: CA-19-9=carbohydrate antigen 19-9の略称である。糖鎖抗原19-9。

癌発生の有無をスクリーニングする目的で各種の癌反応が考案されてきた。1970年以降モノクローナル抗体作成技術の進歩とともに、癌細胞にのみ反応し、正常細胞には反応しないモノクローナル抗体の作成が可能となり、1978年にNS-19-9が報告され、それを用いたCA-19-9測定系は臨床的に高い評価を受け、現在も広く使用されているとする報告がある。

CA-19-9の異常値の出るメカニズムと臨床的意義

CA-19-9はヒト結腸、直腸癌細胞株SW 1116を免疫原とするモノクローナル抗体NS19-9が認識する抗原で、抗原決定基はシアリルLewis A(Lea)とされる。健常者では約20万の糖蛋白上に、癌患者では分子量約500万の巨大ムチン糖蛋白上に存在している。またシアリルLea抗原はE-セレクチンのリガンドの一つと考えられており、転移との関連が示唆されている。組織分布は膵管、胆嚢、胆管、胃、気管支、唾液腺、前立腺、結腸、直腸などの上皮細胞上に分布するが、膵管、胆嚢、胆管に多く発現し、これらの癌で高い陽性率を示す。早期癌での陽性率は低く、スクリーニングには不適で、治療再発のモニターに使用される。

判 読

?若年女性にやや高いとする報告があるが、基準値内の変動であることが殆どである。

?血液型Lea陰性者(日本人の5-10%)では、陰性を示すので本検査の適応はない。

?進行癌の拡大切除では術後一過性に上昇することがある。

?膵癌でもacinar cell(腺房細胞)とislet cell(島細胞)由来の癌は陰性なので注意を要する。?IMXキットでは肝硬変の患者の陽性率が高い。

?プロゾーン現象による異常低値に注意する。

対 策

高値を認めた場合には、腹部エコー、CT等の画像診断、内視鏡検査、血液学的検査、他の腫瘍マーカーの測定などを行い、癌の発見に努める。膵癌を中心に検索するためには、超音波内視鏡、ERCP等の画像診断や膵液細胞診を追加する。女性では婦人科的検索も行う。それでも診断がつかない場合、CA-19-9を1ヵ月後再検し、上昇を認める場合再度精査を行う。

1)金井正光・編:臨床検査法提要 改訂第32版;金原出版株式会社,2005

2)高久文麿・監:臨床検査データブック;医学書院,2009-2010

[615.8.CAR:2009.6.29.古泉秀夫]

『MDMAについて』

日曜日, 9月 20th, 2009

KW:薬名検索・MDMA・エクスタシー・アダム・MDM・MDMA・メチレンジオキシメタンフェタミン・methylenedioxymethanphetamine・覚醒剤・合成幻覚薬・XTC

Q:MDMAの略号で呼ばれる薬物について

A: methamphetamine誘導体であるMDMA(3,4-methylenedioxymethanphe-tamine;メチレンジオキシメタンフェタミン)は、覚醒剤であるメタンフェタミン(methamphetamine hydrochloride)やメスカリン(mescaline)に化学構造が類似している合成幻覚薬である。エクスタシー(Ecstasy又はXTC)、アダム、MDM等の名称で呼ばれている。MDA(3,4-methylene dioxyamphetamine)とともに麻薬及び向精神薬取締法で規制されている。

MDMAは、常温では白色の結晶又は粉末。分子構造はmethamphetamineに類似し、methamphetamineのフェニル基の一部を置換したものと同一である。このためMDMAもmethamphetamineと同じく光学異性体を持つ。C11H15NO2=193.25。CAS-69610-10-2。

MDMAはその分子構造からしばしば覚醒剤に分類されるが、他の覚醒剤といわれる薬物とは、主たる作用機序が異なる。また、特有の精神作用により幻覚剤にも分類されるが、この「幻覚」は多幸感や他者との共有感などといった幻覚体験を指すもので、主作用として幻視や幻聴(一般に言う幻覚)を伴うことは稀である。MDMAは、長時間の活発なダンスに関連してしばしば使用されるが、『脱水』を引き起こし、『高体温』の引き金になる。

臨床徴候:高血圧、頻脈、散瞳、発汗、開口障害などが認められる。重症中毒では、高体温、DIC、筋硬直、ミオクローヌス(素早い筋収縮)、横紋筋融解症、急性腎不全等の他、時に抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH)も認められる。上室性及び心室性不整脈も起こり得る。初期に見られた昏迷や興奮から昏睡や痙攣に移行することがある。

治  療:昏睡や痙攣が急激に起こることがあるので、催吐は行ってはならない。胃洗浄は摂取後1時間以内に開始できる場合にのみ有効である。活性炭投与を行う。静脈ラインを確保し、輸液を行う。興奮に対しては、気道確保及び呼吸補助の準備をした上でbenzodiazepineを投与する。β-遮断薬は頻脈や高血圧の治療に有用である。著しい高血圧にはnitroprusside sodiumが必要なこともある。

痙攣に対してはまずbenzodiazepineを使用し、引き続いてphenytoinあるいはphenobarbitalを投与する。心室性不整脈に対しては、lidocaine、phenytoin、esmolol hydrochloride(国内適応外)で治療する。高体温に対しては蒸発を利用してクーリングを行い、dantroleneの投与を考慮する。横紋筋融解症に対しては対症的に治療する。

1)Anthony T.Tu・編著:毒物・中毒用語辞典;化学同人,2005

2)渡邉建彦・他:分子を標的とする薬理学 第2版;医歯薬出版株式会社,2008

3)高久史麿・他監訳:第11版 ワシントンマニュアル;MEDSi,2008

[011.1.MDM:2009.8.16.古泉秀夫]