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『なに考えているんだか』

金曜日, 7月 24th, 2009

魍魎亭主人

 対立する予定候補の名前は一つも出さず、武部勤元幹事長、中川秀直元幹事長、塩崎恭久元官房長官は、現職総理の誹謗中傷を繰り返している。それほど悪口をいいまくるなら、何故、彼を総理として推戴したのかと考えると、甚だ不思議なのである。特に塩崎氏は、僅か1年で総理の席をぶん投げてしまったお方を支えきれなかった責任があると思うのだが、政権を支えきれなかった自分の責任については何も云わず、現職の総理をこき下ろしている図は、みっともない以外のなにものでもない。

 更に元幹事長諸氏は、今より良い玉として誰を候補に挙げる気なのか。まさか騒いでいるうちに誰かが自分の名前を挙げてくれるとでも考えているのであろうか。結局、解散まで明確な対抗馬が出せなかったということは、総理批判は単なる空騒ぎに終わったということではないのか。それとも小泉純一郎氏の亡霊を担ぎ出そうとでも考えていたのか。

 地方の知事選や東京都議選で自民党が敗北したのは、あたかも総理の人気がないからだとまたぞろ批判していたが、そんなことはない。諸悪の根源はお主達ではないのか。政権内部がゴタゴタしていれば、好い加減にしろと思うのが庶民感情である。誰もが内部の足の引っ張り合いなどみたいとは思っていない。まして目的が明らかでなく、何で騒いでいるのか、その目的が解らなければ、好い加減にしろと思うと同時に嫌気が差すのもまた庶民感覚なのである。更に最後には加藤さんまで参戦してくるということになると、将に節操のない内乱以外のなにものでもない。尤も小泉さんは自民党をぶっ壊すといっていたのであるから、壊れかけてきたというのは喜ぶべきことなのかもしれない。

 それと不思議なのは、小泉チルドレンと云われるグループの諸君である。刺客として、郵政民営化反対の国会議員を引きずり下ろすために立候補したのである。刺客としての役割が終われば、消えて無くなるのが当たり前だと思うのだが、引き続き立候補するだの総理の不人気で当選しないだのと訳の解らんことをのたもうているが、どんな政策があって出てきたのか。単に訳の解らない小泉人気の尻馬に乗っただけでは、地元密着型の候補が頑張れば、票が取れないのは当たり前のことではないのか。

 しかし、不思議なのはマスコミの対応である。批判派のおっさん達を取材するのに懸命で、単なる内乱に過ぎないと云うことの批判も何にもなしに毎日のように報道しているが、その過剰報道が国民を食傷させていることに気付いていないというところが恐ろしい。第一連続テレビドラマではないのである。主役の役者の人気がないから視聴率が少ない等というレベルの話ではない。どの様な政策を持ち実行するかが重要なのであって、それは政党が一丸となって邁進するレベルの話ではないのか。

 あるいは小泉氏の構造改革からの後退を許さないという思い入れで、いちゃもんを付けているのだとすれば、構造改革がもたらした国民の閉塞感はどうするのか。ある意味でいえば郵政民営化以外なにもないという体たらくではないのか。特に医療費の抑制は、医療福祉の関係を酷い状況に追い込んでしまった。その一事を取ったとしても、未だに小泉人気があるというのは、構造改革の本質的な考察が行われていないということではないのか。更に米国経済の破綻がもたらした経済不況下にあって、尚、構造改革の遵守が必要だといっているとすれば、国民の置かれている状況を全く無視した政治家だといわなければならない。兎に角今は纏まることこそが大切なはずである。

(2009.7.23.)

『洗足池・御嶽神社・池谷本問寺』

木曜日, 7月 23rd, 2009

鬼城竜生

 2009年(平成21年)4月3日(金曜日)近所の桜を見ている限り開花の後に花冷えが訪れたせいか、間の抜けた色に見えるというか、何か脱色した様な妙な白さの花になっているのが見えた。今年は不作かと思っても見たが、昨年は無精を決め込んで桜の写真を撮っていないので、今年は是非とも撮りに行きたいということで、洗足池、池谷本問寺に行くことにした。

 池谷本問寺は、2年前に桜の花を撮りに行っているので、花が咲いていれば五重塔と絡めて、良い写真が撮れることは解っていたが、洗足池は人が写した写真を見たことがあるだけで、実際に桜の季節には行ったことがなかった。JRの蒲田駅から東急池上線の乗り換え、洗足駅で下車。改札口から出ると、目の前に中原街道と洗足池が広がっている。以前、中原街道側から池全体を見渡したことはあるが、中に入ったことはなかった。ただ、桜の写真を撮るということになると、向かって左側の道に入って池を俯瞰して反対側を狙うという、つまり桜の花は右側の真ん中当たりに集中して咲いているという眺望だった。但し、対岸には無闇に屋台の出店があり、出店を取り込んで面白い写真というのもあるのかもしれないが、そういう俗っぽい写真はあまり撮りたくないというよりは、どうせつまらない写真になってしまうという思いもあって、洗足池の写真は半分撮る気がなくなっていた。

 まあ折角来たのだからということで、左岸を回っていくと、神社が見えてきてあれこんなところに神社があったのかということで、境内まで行くことにした。境内に入ると、庭の鉢植えに水をやっている人がおり、「すいません、此処は御朱印は戴けるんですか?」と訪ねたところ、「どうぞこちらに………」ということで社務所に案内されたが、どうやら偶然宮司さんに声をかけた様である。その時、持っていた御朱印帳は“博多総鎮守櫛田神社”のもので、しかも、開いた頁は丁度“筑前箱崎八幡宮”の御朱印を頂いた頁だったので、「九州でも八幡社にお詣り頂いたのですね」ということで、神社の御由緒を頂戴すると共に、幾つかの話題の提供を受けた。

 御由緒によると御祭神は品陀和気之命(応神天皇)で、千束八幡神社と称し、平安前期の貞観二年(860年)豊前国(大分県)宇佐八幡を勧請(分霊)し、往事の千束郷の総鎮守として、現在の地に創建され、今日に至っている。遠く千百余年の昔より、この地の氏神として尊崇され、普く神徳を授けてきている。承平五年(935年)、平将門の乱が起こり、朝廷より鎮守副将軍として藤原忠方が派遣され、乱の後忠方は池畔に館を構え、八幡宮を吾が氏神として手厚く祀り、この忠方の館が池の上手に当たっていたので、池上氏を呼称し、この九代目の池上康光は身延から日蓮を招請した。また八幡太郎義家奥羽征伐の砌、この池にて禊ぎを修し、社前に額ずき戦勝祈願をして出陣したと云われている。

 源頼朝もまた鎌倉に上る途中、この池を通過した時八幡宮であることを知り、大いに喜び此処に征平の旗幟を立てたので、近郊より将兵が参集し、鎌倉に入ることができたとされている。このことから旗揚げ八幡とも云われているとされる。また名馬池月を得たのも此処に宿営の折との伝承があるとされる。

 尚、境内には武蔵の国随一とといわれた大松がありましたが、大正十三年惜しくも枯衰し、今はその雄姿を見ることかなわずと説明されている。古歌に「日が暮れて足もと暗き帰るさに空に映れる千束の松」と詠まれており老松の偉容が想像されますとする記載が見られる。このように当千束八幡神社は、城南屈指の古社にして股名社でありますとしている。

御嶽神社の御祭神は、国常立命(くにとこたちのみこと)、国狭槌命、豊雲野尊を祭る。天文四年(1535年)頃から御嶽神社として創祀されたと伝えられているという。文政年間(1818-1830年)には、木曽御嶽山の修験者一山(いっさん)行者によって、この神社が木曽御嶽大神の示現の社であることが明らかにされた。一山は寝食を忘れ神徳の宣揚に勤めたために、村民をはじめ関東一円に崇敬者が激増し、天保二年(1831年)に現在の社殿を建立したと報告されている。

 境内が工事中のため、落ち着いて観照できなかったが、狛犬の他に狼と云われる石像が二体あるのが他と異なっているが、工事が終了すれば再度訪れる価値はありそうである。

 池上本問寺はいわずとしれた日蓮宗大本山、日蓮聖人が御入滅された霊跡とされるのが池上本門寺で、日蓮聖人がお亡くなりになられた10月13日を中心に、全国各地の日蓮宗寺院では、お会式(おえしき)が営まれるが、本問寺のお会式がもっとも盛大に行われるとのことである。

 境内には桜の木に囲まれた日蓮の大きな像と、五重塔があり、桜の時期に写真を撮りに行くのは絶好のポイントを提供してくれる。まあ、日蓮の立像は、恐れ多くて写真にならないが、しかし、見事なものであることに変わりはない。

 ところで東急池上線の確認をするため、Internet検索をしたところ、“池上線(西島三重子)という歌があることが検索できたが、これには素直に驚いた。歌になる様な電車じゃないだろうというのが、池上線に乗った感想だったからである。本日の歩行総数13,546歩。

(2009.5.24.)

『称名寺庭園』

木曜日, 7月 23rd, 2009

鬼城竜生

 何気なくTVを見ている時に、称名寺の反橋の渡り初めの紹介をしていた。数年前に行った時には確か古くなって危険だから渡らないで下さいという注意が書かれていた様な気がしたが、新しく掛け替えたということの様である。更に桜の花が咲き誇っている絵柄も見られたので、次の日(2009年4月5日)花の写真を撮りがてら見に出かけることにした。

 京浜急行で金沢文庫まで行き、国道16号線に出て、横須賀方向に行き、直ぐ左側に入る。そのまま真っ直ぐ行くと左手に称名寺の赤門が見える。この赤門は惣門とも呼ばれ明和8年(1771年)に再建されたと紹介されている。四脚門、切妻造、本瓦葺(当初は茅葺)。惣門から仁王門の間は見事な桜並木で、桜見物の人々で立て込んでいた。仁王門から入ると正面に改修された反橋が見事に見え、その先に古色蒼然とした本堂が見える。

 称名寺の庭園は、金沢文庫所蔵の古文書によると、苑池は金沢貞顕の時代の文保三年(1319年)から翌年の元応二年にかけて営まれた。作庭には性一法師が召され、貞顕も中島や橋の出来具合を案じて、度々現場を検分していた様である。また性一が青島石や90個もの石組みを指図し、白砂を大量に入用としたことや、苑池の完成に伴って水鳥が放し飼いにされていたことがうかがわれる。性一法師の経歴は不明であるが、当時名だたる石立僧(庭造り専門の僧)として重用されたのであろう。

 この庭園は金堂の前池として、その荘厳のために設けられたもので、南の仁王門を入り、池を東西に二分する様に中島に架かる反橋と平橋を渡って金堂に達する様になっている。このような配置は、平安時代中期以降、盛んになった浄土式庭園の系列にあるもので、現存する同一形式の庭園として岩手県平泉町の毛越寺(もうつうじ)(1150年頃)、福島県いわき市の白水阿弥陀堂(1160年)、奈良市円成寺(1077年白河天皇造営)に範を取ったとされるが、源頼元が建立した鎌倉市永福寺の庭園はその影響を受け、更に称名寺庭園へと発展したものと考えられている。南の大門から反橋・中島・平橋を経て金堂へという地割を持つ形式の浄土庭園としては時代的に最後の遺例となることからも、称名寺庭園の庭園史上における価値は頗る高い[史跡称名寺境内(鎌倉を守った東の要衡)パンフレット]。

 金沢北条氏の菩提寺

 横浜市金沢区金沢町にある寺。金沢山称名寺と称する。真言律宗、別格本山。西大寺末。本尊阿弥陀菩薩(重要文化財)。金沢(かねざわ)北条氏一門の菩提寺で、草創の時期を明らかにしないが、金沢氏の祖、北条実時が六浦荘の金沢居館内に営んだ持仏堂から発したと推定されている。正嘉二年(1258年)実時の堂廊において、伝法灌頂の儀式が執り行われた。これは多分、現在実時の持仏と伝えられる阿弥陀三尊を安置した持仏堂で行われたのであろう。この持仏堂は文応元年(1260年)実時亡母七回忌頃までには念仏の寺として独立したらしく、弘長二年(1262年)西大寺叡尊が鎌倉に下向した際の『関東還記』には、称名寺と号し、別当を置く不断念仏の寺であると記している。

 実時は叡尊に深く帰依し、文永四年(1267年)下野薬師寺から妙性房審海を開山として迎え、寺を真言律宗に改めた。建治二年(1276年)弥勒菩薩立像造立、弘安七年(1287年)『称名寺規式』が制定され、此処に称名寺の基礎が定まったと解説されているが、この文書を読んだだけでは、兎に角古いのと立派なのは解るが、まああまりよく解らない。

 ところで、称名寺に行く途中に『菊桜』珍しい花ですという名札が下がっている木があったが、メモを取るのを忘れたので、花の名前はうろ覚えである。

 当日は桜も満開で、多くの人で立て込んでいたが、御同様に信心から足を運んだわけでなく、ただただ花見る人の集まりということであろうが、桜の美しさに恍惚とし、古い境内の佇まいに心落ち着き眼を見張れば、また新しい世界観が見えるかもしれない。不信心な人々の花見を何とかと思って考えたが、出来上がりはたいしたことがなかった。

参道の桜並木や称名寺

門前の桜賑わう称名寺

門前の桜の道や称名寺

池の端に桜枝差す称名寺

称名寺桜の道をそぞろ行く

 何れも信心とはほど遠い句ばかりである。総歩行数7,577歩で、残念ながら1万歩には到達しなかった。

(2009.5.12.)

「マムシグサの毒性」

金曜日, 7月 10th, 2009
対象物 マムシグサ(蝮草)。別名:カントウマムシグサ(関東蝮草)、ムラサキマムシグサ(紫蝮草)、ヘビノダイハチ、ヤマゴンニャク。英名:Mamusi-gusa又はJack in the pulpit(ジャックの聖壇)。

調査者

古泉秀夫

分類

63.099. MAM

記入日

2008.7.5.

成分

天南星の塊茎にはトリテルペノイドサポニン(triterpenoid-saponin)、安息香酸、澱粉、アミノ酸が含まれる。鬼蒟蒻にはサポニン(saponin)が含まれ、果実にはコニインに類似した物質が含まれる。その他、蓚酸カルシウム(calcium oxalate)を含有するの報告が見られる。

一般的性状

学名:Arisaema serratum Schott forma thunbergii Makino又はArisaema serratum (Thunb.) Schott。さといも科、テンナンショウ属。蝮蛇草の名称は偽茎面のまだら斑に基づく。本州関東から近畿地方の山地の木陰に生える多年草。球茎は径5cm位。子球は出ない。偽茎は普通紫褐色のまだら。葉は2枚左右に開出。鳥足状の複葉。小葉は7-15。花は晩春、雌雄異株。肉穂花序は仏炎包内の中央に直立。

天南星の同属植物として『鬼蒟蒻(キコンニャク[和名]マムシグサ)、Arisaema japonicum Bl.、別名:日本天南星』。複葉は2枚、小葉は9-15枚、鳥足状に配列している。小葉身は狭い長楕円形ないし広い披針形、縁はほぼ波形。

属名の「天南星」は中国名に由来する。4月頃カラスビシャクのお化けのような花を咲かせ、8月頃になると緑色の粒粒のついた瓶洗い用のブラシのようになる。10月頃には真っ赤に色づく。芋状の球茎は昔は救荒植物として食べられていたというが、そのままでは食べられない。切り口から出る汁液にサポニンを含み、肌に付くとかゆみやただれを起こす。また食べると嘔吐や腹痛を起こす。乾燥した塊茎は外皮を除いていないものは薬用に出来ない。

saponinとは、ステロイド、ステロイドアルカロイド(窒素原子を含むステロイド)、あるいはトリテルペン配糖体で、水に溶けて石鹸様の発泡作用を示す物質の総称である。多くの植物に含まれ、また一部の棘皮動物(ヒトデ、ナマコ)の体内にも含まれる。界面活性作用があるため細胞膜を破壊する性質があり、血液に入った場合には赤血球を破壊(溶血作用)する。水に溶かすと水生動物の鰓の表面を傷つけることから魚毒性を発揮するものもある。saponinはヒトの食物中でコレステロールの吸収を抑制するなど健康上有用な物質にも数えられるが、こうした生理活性を持つ物質の常で、作用の強いものにはしばしば経口毒性があり、蕁麻疹を起こすものも多い。特に毒性の強いものはサポトキシン(sapotoxin)と呼ばれる。

さといも科の植物は、全草に蓚酸カルシウムの針状結晶を含むものが多い。観葉植物では、カラジウム、ポトス(ハブカズラ)、フィロデンドロン、アロカシア(クワズイモ)、コロカシア等がある。野草ではマムシ草(てんなんしょう)、カラスビシャク、ミズバショウ、ザゼンソウ等がある。さといも科以外の大黄、ギシギシ、タデの類は蓚酸が針状結晶の常態ではなく。水溶性のナトリウム又はカリウム塩の形で、含まれているので、食品として大量に摂取し、蓚酸中毒を起こすことがある。

毒性

有毒部分:根(球形)、実。

蝮蛇草の根茎や葉には蓚酸カルシュウムが多量に含まれており、有毒で、食べると痺れたりするが、秋に球茎を採取して輪切りにして乾燥させると漢方薬の「天南星(てんなんしょう)」となり、去痰、鎮痛に効果がある。 又、昔は根をおろして洗濯糊として使用された。

天南星(品種は未鑑定)の根茎を生で食すと強烈な刺激作用がある。

マウスに鬼蒟蒻の水浸液を腹腔内注射した場合のLD50は13.5g/kgである。成人の蓚酸カルシウムのLD50は15-30g、最小致死量は5gである。

症状

肌に触れると皮膚炎、食べると嘔吐、腹痛。

生で根茎を経口摂取した場合、口腔粘膜が軽度に糜爛し、酷い場合には部分的に壊死して脱落する。喉が渇き、灼熱感があり、舌体が腫れ、唇に浮腫が出来、涎が大量に流出する。口唇がしびれ、味覚芽失われ、声がかすれ、口を開けることが困難になる。

蓚酸の毒作用は、局所刺激作用と低カルシウム血症並びに腎障害である。局所刺激作用のため食道や胃に糜爛を起こし、急性胃腸炎の症状を呈する。頭痛、蓚酸が血液中のイオン化カルシウムと結合するため低カルシウム血症となり、痙攣やテタニーを起こすことがある。腎臓に蓚酸カルシウムの結晶が沈着することによって腎障害を来す。

saponin:粘膜刺激作用があり、肌荒れ、皮膚炎の原因になる。

処置

皮膚に付いた場合:石鹸と水で十分に洗浄。粘着テープで結晶を除去することも可能の報告。

口腔の局所症状:十分量の水又は牛乳で口腔内をよく濯ぐ。痛みに対しては氷又は冷水による冷却、鎮痛薬投与を行う。副腎皮質ホルモン、抗ヒスタミン薬の効果は疑問であるの報告。

経口摂取した場合牛乳又は水を飲ませて吐かせる。牛乳はカルシウムを含んでいるので、蓚酸が蓚酸カルシウムになって不溶性になり、吸収が妨げられる。活性炭投与・下剤の投与。禁忌:炭酸水素ナトリウムによる胃洗浄(蓚酸ナトリウムとなり吸収促進)。硫酸ナトリウムによる排便促進(蓚酸ナトリウムとなり吸収促進)。使用可能緩下剤(硫酸マグネシウム)。

腎障害を来すことがあるので、BUNやクレアチニン等の腎機能検査、尿中蓚酸カルシウム結晶の有無の確認。結晶の排泄が見られた場合、尿量を保つため、電解質検査をしながら輸液と利尿薬の投与。テタニーに対してはグルコン酸カルシウムの静注。24-48時間は観察が必要である。

事例

3児童マムシグサの実を食べ食中毒 /長野

[6月20日14時1分配信 毎日新聞6月20日朝刊]

松本保健所は19日、東筑摩郡の8-10歳の小学生3人が学校から下校途中に道端に生えていたマムシグサの実を食べ、シュウ酸カルシウムによる食中毒を起こしたと発表した。県食品・生活衛生課によると、食道や口唇の炎症などの症状が出たが、全員が快方に向かっているという。マムシグサは山地の木陰に生える多年草で、茎は紫色。初夏に緑色の実を付け、秋には赤く色づく。その実を大量に摂取すると、下痢や嘔吐(おうと)などの症状が出るという。

マムシグサで小学生が食中毒/ 長野

[6月20日7時50分配信 産経新聞]

長野県は19日、山地の木陰などに生えるサトイモ科の野草「マムシグサ」の実を食べた8-10歳の小学校の男児3人が食中毒の症状を発症したと発表した。18日午後5時ごろ、松本保健所に東筑摩郡の医療機関から、「路肩に生えていた植物の実を食べた小学生が舌のしびれ、のどの痛みを訴えて受診している」との連絡があった。保健所が食べ残しを調べたところ、口の中の炎症や下痢などを引き起こす毒性のあるマムシグサと分かった。粒状の実をつけるが、食用ではない。3人は下校途中に一緒に食べたらしい。一時、入院したが、全員快方に向かっている。マムシグサの食中毒は統計のある昭和51年以降で県では初めて。県食品・生活衛生課は「よく知らない植物の実をむやみに食べないように」と呼びかけている。

備考

[炮製(修治)<天南星>根茎の夾雑物を取り除き、埃を綺麗に洗い、日干しにする。<製南星>綺麗にした天南星を冷水に浸して晒し、日に当てぬようにして1日2-3回水を取り替える。水に晒す日数は産地、質及び大きさによって適当に決める。白い泡が出てきたら南星100斤につき白礬2斤を加え、1カ月浸し、味わって口がしびれなくなるまで水を替え続け、取り出す。新鮮な姜片及び白礬粉と共に容器にくまなく何重にも敷き詰め、水を被るほど入れ、約3-4週間後に、鍋に入れて内部に白い芯が無くなるまで煮る。これを取り出し、姜片を除き、風通しのよい所で6分ほど乾燥させる。湿らせてから薄切りにし、日干しにする(天南星100斤につき新鮮な姜片25斤、白礬12.5-25斤を用いる)。

蝮草は“天南星”の名称で漢方薬として使用されるということであるが、中国の“天南星”は日本でいう蝮草とは類似の種類であるが同一ではないとされている。しかし、驚いたことにさといも科の植物が不溶性の蓚酸カルシウムを含有するため、摂食したヒトに毒性を発揮するというのは想像していなかった。特に外国の例で、幼児が室内の観葉植物を齧って、救急対応を求められているということであるが、我が国でも最近室内に植物の鉢植えを置くことが流行っているが、さといも科の植物は避けるように注意することが必要ではないか。特に幼児のいる家庭では、注意が必要である。

文献

1)牧野富太郎:原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版II;北隆館,2000

2)海老原昭夫:知っておきたい身近な薬草と毒草;薬事日報社,2003

3)上海科学技術出版社・編:中薬大辞典 第三巻;小学館,1998

4)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療-改訂第2版;南江堂,2001

5)海老原昭夫・他編著:知っておきたい毒の知識;薬事日報社,2001

6)日本中毒学会・編:急性中毒標準診療ガイド;じほう,2008

「グロリオサ(Gloriosa)の毒性」

火曜日, 7月 7th, 2009
対象物 グロリオサ(Gloriosa)
成分 コルヒチン(colchicine)、[独]Colchicin、[仏]colchicine、[ラ]colchicinum。
一般的性状 学名:Gloriosa superba Linnaeus。和名:ユリグルマ(百合車)、キツネユリ(狐百合)。英名:glory lily、flame lily(炎のゆり)。科名:イヌサフラン科(ユリ科)、属名:グロリオサ属(Gloriosa spp.)。原産地:アフリカ、熱帯アジア。性状:半蔓性多年草(非耐寒性球根)。Gloriosaはラテン語の「光栄」という意味だとされている。

▼gloriosaは、アフリカ、アジアの熱帯地域に分布するユリ科の球根植物である。近年、一般の家庭でも栽培されるようになり、露地では、初夏から晩秋に開花がみられる。茎は、つる性で細く、草長は数メートルに達する。茎は、ユリ状であるが、先端に巻ひげがあり、この巻ひげで他の植物などに巻きついて生育する。花は、赤、赤紫、黄色が多く、花弁は6枚で、開花すると反転する。地下部には、円筒状の根茎をつくり、地上部が枯れた後も土中で越冬し、繁殖する。

▼gloriosaは、全草にコルヒチンを含有し、特に球根に多く含む。また、種子や新葉にも、比較的多く含むという報告があるとされる。栽培や鑑賞をすることに問題はないが、誤食した場合、中毒の原因となり、死亡例も報告されている。

▼*colchicineは消化管より吸収された後、一部は肝臓で脱アセチル化を受ける。大部分の未変化体と代謝物は腸肝循環する。

▼Tmax=0.5-2時間、t1/2=α19.3分(静注)・β 1時間。蛋白結合率=低い。排泄=主に胆汁中へ、尿中10-20%。

毒性 colchicineは植物に含まれるalkaloidの一種で、イヌサフラン、ユリグルマ等に含まれる。帯黄類白色の粉末で水に溶ける。古くから痛風の特効薬として知られているが、ヒトや動物に多量に摂取されると、強い毒性を示す。ヒトの場合、摂取後、数時間以降に、口腔・咽頭灼熱感、発熱、嘔吐、下痢、背部疼痛などが発症し、臓器の機能不全等により、死亡することもある。致死量は0.8mg/kg(体重50kgの成人で40mgの摂取量)とされている。その他ヒト推定致死量として65mgとする報告が見られる。ラット(静注)LD50=1.7mg/kg。colchicineは[局方収載]。毒薬。極量:1回2mg。1日5mg。
症状 大量使用又は誤用による急性中毒症状として服用後数時間以内に次のような症状があらわれることがある。

▼徴候、症状:悪心・嘔吐,腹部痛,激烈な下痢,咽頭部・胃・皮膚の灼熱感,血管障害,ショック,血尿,乏尿,著明な筋脱力,中枢神経系の上行性麻痺,譫妄,痙攣,呼吸抑制による死亡。

処置 colchicine過量摂取時

処置:副作用発現までには3-6時間の潜伏期があるので、服用後間がないとき(6時間以内)には、胃洗浄、吸引を行う。活性炭の投与も有効である。水・電解質異常の補正には、中心静脈圧をモニターしながら輸液、カリウムの投与を行い、凝固因子の欠乏に対しては、ビタミンK、新鮮凍結血漿等の投与、急性呼吸不全には気道を確保し、酸素吸入を行う。その他出血、感染、疼痛等には対症療法を行う。

本剤は強制利尿や腹膜透析、血液透析では除去されない。

事例 球根食べ男性死亡 ユリ科のグロリオサ、ヤマイモと間違え(静岡)

▼[10月25日11時2分配信 毎日新聞-田口雅士]

▼県西部保健所は24日、県西部在住の男性(58)がユリ科の植物「グロリオサ」の球根を誤って食べて死亡したと発表した。球根に含まれる毒性の強い「コルヒチン」が原因とみられ、死因は多臓器不全という。

▼保健所によると、男性は21日昼、自宅で観賞用に栽培していたグロリオサの球根を、形が似ているヤマイモと誤って調理し食べたという。男性は同日夜、嘔吐(おうと)や下痢などの症状を起こし、翌日午前に個人病院で診察を受けて帰宅。23日午前に容体が悪化し、掛川市立総合病院に救急車で運ばれたが死亡した。

▼コルヒチンは、古くから痛風の特効薬として知られるが、毒性が強く、多量に摂取すると臓器の機能不全などを起こす危険がある。致死量は体重50キロの成人の場合40ミリグラム。同保健所は「野生や観賞用の植物で食用を目的としないものについては自己判断で食べるのは控えてほしい」と呼びかけている。

ユリ科のグロリオサ球根を誤食 男性死亡

▼観賞用に栽培していたユリ科の植物「グロリオサ」の球根を誤って食べた静岡県の男性が23日、食中毒で死亡した。

▼男性が間違えて食べたのはグロリオサの球根で、「コルヒチン」という毒性のある物質が含まれている。静岡県西部保健所によると、今月21日昼ごろ、県西部に住む58歳の男性が自宅で観賞用のグロリオサの球根をヤマイモと間違えて食べて食中毒を起こし、23日に多臓器不全により死亡した。グロリオサは家族が栽培していたもので、男性はすり下ろして食べたという。静岡県西部保健所管内でのグロリオサの誤飲による死亡例は、統計調査を始めた66年以降初めてで、保健所は、食用でないものは食べないよう注意を呼びかけている。

備考 『人将に餓鬼道にあり』と言わんばかりに何でも口に入れる生物だと感心する。しかし一番の問題は、庭に山芋が植えてあると思っている認識が問題ではないのか。自然の山芋-自然生が家庭菜園程度の庭になるとはとても思えない。また、家族の誰かが植えなければ、山芋が自然に生える訳もなく、自家菜園に何が植えてあるかぐらい確認しておくべきではないか。確かにgloriosaの根を見るとそれらしく見えるが、決して瑞々しい山芋には見えず、筋張って美味くなさそうな根っこにしか見えない。君子危うきに近寄らず、疑わしきは口に入れないが基本原則である。それにしても妙ちくりんな花の根にcolchicineが含まれているというのが厄介であるが、gloriosaが自分の身を守るためにお造りになっているのであろうから文句は言えない。
文献 1)広川薬科学大辞典[第2版];株式会社廣川書店,1990

2)コルヒチン錠「シオノギ」添付文書,2005年4月改訂(第5版,薬事法改正に基づく改訂)

3)第十五改正日本薬局方解説書;廣川書店,2006

4)西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂7版;医薬ジャーナル社,2005

「ニトロベンゼンの毒性」

火曜日, 7月 7th, 2009

対象物

ニトロベンゼン(nitrobenzene)

調査者

古泉秀夫

分類

63.099.NIT

記入日

2008.5.3.

成分

ニトロベンゼン(nitrobenzene)、人工苦扁桃油、ミルバン油

一般的性状

強力還元剤。染料、香料の中間物、酸化剤、塵埃防止剤。CAS番号:98-95-3 。ベンゼンを混酸でニトロ化すれば得られる淡黄色油で、比重:1.19806、融点:5.7℃、沸点:210.9℃。C6H5NO2=123.1。苦扁桃油のような香気と味があるが、蒸気及び液体は人体に有毒でチアノーゼを起こす。大部分の有機溶媒と混ざるが、水に僅かに溶ける。酸性及び中性還元すればアニリンが、アルカリ性還元すればアゾキシベンゼン、アゾベンゼンを経てヒドラゾベンゼンが得られる。染料工業においてアニリンの原料として重要性を持つ。また極性溶媒として、ときにはおだやかな酸化剤として用いられることもある。本品による中毒者では靴墨臭がする。

[用途]染料・香料中間物(アニリン、ベンジジン、キノリン、アゾベンゼン)、毒ガス(アダムサイトの原料)、酸化剤、溶剤(硝酸繊維素)、塵埃防止剤。

毒性

刺激性、痙攣性、低グリセリン血症性。血液毒性が強く、メトヘモグロビンを形成する。メトヘモグロビンは血液中のヘモグロビンを酸化し20%以下なら自覚症状がなく、それ以上50%位までは呼吸困難や頭痛、眩暈を引き起こし、60-70%では、意識喪失、昏睡から死に至る。

ヒト(経口)致死量:1mL。ヒト(経口)最小中毒量:200mg/kg。RTECS=急性経口毒性(LD50)349mg/kg(ラット)

症状

吸入蒸気は粘膜刺激性、吸収は脊髄痙攣や溶血、時に過度体温上昇と糖分酸化増加が起こる。中程度の中毒も、肝壊死により数日以内に死に至ることがある。経口摂取は疲労、めまい感と、眩暈、食欲喪失、胃炎と下痢などを起こす。中毒性肝炎と、貧血が多量摂取後に起こる。ヒドラジン塩類は、刺激的であり、腐食的である。本剤に触れると、皮膚や粘膜の灼熱感を生じる。

*吸入したとき:頭痛、紫色(チアノーゼ)の唇や爪、紫色(チアノーゼ)の皮膚、眩暈、吐き気、脱力感、錯乱、痙攣、意識喪失。

*皮膚に付着したとき:吸収される可能性あり。頭痛、紫色(チアノーゼ)の唇や爪、紫色(チアノーゼ)の皮膚、眩暈、吐き気、脱力感、錯乱、痙攣、意識喪失。

*誤飲したとき:頭痛、紫色(チアノーゼ)の唇や爪、紫色(チアノーゼ)の皮膚、眩暈、吐き気、脱力感、錯乱、痙攣、意識喪失。

処置

*吸入したとき

予  防:換気、局所排気、または呼吸用保護具。

応急処置:新鮮な空気、安静。人工呼吸が必要なことがある。医療機関に連絡する。

*皮膚に付着したとき

予  防:保護手袋、保護衣。

応急処置:汚染された衣服を脱がせる。流水で洗い流してから水と石鹸で皮膚を洗浄する。医療機関に連絡する。

*眼に入ったとき

予  防:安全ゴーグル。

応急処置:流水で15分間洗い流し(できればコンタクトレンズをはずして)、医師に連れて行く。

*誤飲したとき

予  防:作業中は飲食、喫煙をしない。

応急処置:口をすすぐ。水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。安静。医療機関に連絡する。

*大量誤飲時:胃洗浄、下剤投与、輸液、対症療法。

事例

いまや、関心はチョコレートに集中された。チョコレートはその夜のうちに、スコットランド・ヤードに押収され、ただちに、鑑識課へ回された。

「そして、医者の診断はあまり見当ちがいではありませんでした」と、モレスビーはいった。

「チョコレートにはいっていた毒物は、もちろん苦扁桃(ビター・アーモンド)の油ではなく、ニトロベンゼンでした。しかし、それはそう大した相違ではないと思っています。みなさんの中に、化学の知識を持っているかたがあるならば、その薬品については、わたしよりよくご存じでしょうが、たしかそれは、ビター・アーモンドの油の代用品として、アーモンドの香りを付けるために(昔ほどではないですが)安い菓子には時おり使われているはずです。これは、申し上げるまでもなく、やはり強力な毒物です。しかし、商業的に、ニトロベンゼンが最も多く使用されるのは、アニリン染色の製造です。[高橋泰邦・訳(Anthony Berkeley):毒入りチョコレート事件;創元推理文庫,2001]。

備考

何人かの人間が集まって、一つの事件について、自ら調査したこと、それに基づく推理及び犯人について語り合う会を持つという趣向で話が進められる。結果としてあっちにウロウロ、こっちにウロウロということで、この手の話の進め方が好きな人には応えられない物語なのかもしれないが、直裁的な話の進行が好きな人間にとっては、まだるっこしい話ということになる。

但し、話が輻輳する点を我慢すれば、推理小説としては、よくできた話の部類に入るのではないか。

文献

1)志田正二・代表編:化学辞典;森北出版株式会社,1999

2)白川 充・他共訳:薬物中毒必携 第2版;医歯薬出版株式会社,1989

3)Anthony T.Tu・編著:毒物・中毒用語辞典;化学同人,2005

4)相馬一亥・監修:イラスト&チャートで見る 急性中毒診療ハンドブック;医学書院,2005

5)西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂7版;医薬ジャーナル社,2005

6)鵜飼 卓・監修:第三版 急性中毒処置の手引き;薬業時報社,1999

7)143034の化学商品;化学工業日報社,2003