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『健康食品考』

木曜日, 6月 25th, 2009

医薬品情報21

古泉秀夫

 メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)等と称して、厚生労働省が脅しをかけるものだから、世は上げて健康ブームである。

 当然のこととして、一般大衆は簡単に健康を手に入れようとして『健康食品』なるものを購入し、それで全ては片付くと考えていると見えて、健康食品市場は受けに入っている状況にあるようである。簡単に『健康食品』というが、しかし実際にはそう簡単なものではない。

いわゆる健康食品:法律上の定義はないが、『健康食品』は、医薬品ではないため、医薬品のように疾病の治療・予防等を目的とする表示、身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的とする表示については、医薬品的な効能効果とされ、表示することができない。一般に栄養成分・含有量表示。狭義では、保健機能食品を除いた健康食品。[健康補助食品]

保健機能食品

特定保健用食品(トクホ):生活習慣病の予防など、健康に影響を与える成分を含み、効果が期待できる食品。国の審査が必要。[個別許可型]

栄養機能食品:国の基準に適合し、ミネラルやビタミンなど栄養成分の機能を表示している食品。[規格基準型]

 健康食品のうち『保健機能食品』に分類されている『特定保健用食品(トクホ)・栄養機能食品』は、国の審査を受けるか国の基準に適合することが求められているが、いわゆる『健康食品』(健康補助食品)は、法律上の定義・規制は何等なく、現状は野放し状態である。

 健康食品の中には普通に食事として摂取した場合、特に何等問題にならないものが、食品中の機能性成分を抽出・精製することによって、錠剤やカプセル剤、顆粒剤等に製剤化して摂取することにより、有害作用が発現する。

 『いわゆる健康食品』の宣伝文句で『医薬品ではないので副作用はない』、『健康食品だから安全』という惹句を眼にするが、『健康食品だから安全』という根拠は何処にもないといえる。確かに医薬品ではないので、『副作用』とはいわれることには抵抗があるのかもしれないが、購入者の側からすれば、明らかに期待していない作用であり、有害作用以外の何物でもない。

 更に厄介なことは、薬物代謝酵素に影響を与える『いわゆる健康食品』があり、その酵素によって代謝されるはずの薬が、代謝されるまでに時間を要し、薬の副作用を増強するなどと云う問題を起こすのである。

 規制緩和の一つとして、錠剤・カプセル剤等の利用が健康食品にも可能となったが、本来的に云えばこのような規制緩和は、本来不要な規制緩和ではなかったのかと考えている。勿論、薬剤師として、薬に係わるあらゆる情報を収集しているが、売り出される健康食品の種類が多く、その全てに対して対応することは困難であり、如何に許可無く販売することが出来るとはいえ、業者の責任として酵素経に対する影響についての資料を取り揃える位のことはして欲しいと思うのである。

(2009.5.27.)