Archive for 4月 10th, 2009

トップページ»

「メチロシンについて」

金曜日, 4月 10th, 2009

KW:薬名検索・メチロシン・メチロジン・metirosine・metyrosine・Demser・デムセル

 

Q:メチロシンについて

 

A:メチロシン(metirosine)[INN,35]。別名:metyrosine、L-588357-O、α-MPT、MK-781、CAS-672-87-7。メチロジン。

[効]降圧(悪性褐色細胞腫)、tyrosinehydroxylase阻害剤。褐色細胞腫(手術適応例の術前短期治療、又は手術不適応例の長期治療)。

[作用]チロシンヒドロキシラーゼの阻害。

[用]手術前5-7日間、1日2-3g内服。成人小児(12歳?)1回250mgを1日4回の内服から開始し、1日250-500mgずつ増量(1日最高量4g迄)。維持量として1日2-3gを4回に分服。

[規格]250mg/Cap.

[註]少なくとも術前5-7日前に服用のこと。

[商]Demser.(Merck)。

tyrosinehydroxylase阻害薬としてのmetirosineは、チロシンのDOPAへの変換を妨げ、カテコールアミン合成を50-80%減らす。metirosineは主として褐色細胞腫の患者の術前に投与され、手術が行えない時には治療に役立つかもしれない。

治療に用いる量は、毎日600mgから3,500mgであり、極量は4000mg(4g)/日である。平均投与量は1500mgで、投与量に相関して尿中catecholamine減少が起こり、これは高血圧を抑制してcatecholamine過剰による他の症状を抑制するために十分な量である。metirosineの結晶が尿中に排出される可能性があるため、経口的に多量の水を摂取する必要があるかもしれない。今日までの経験では、長期投与により良好な治療効果をもたらし得ることが示唆されている。metirosineに耐性が生じ得るかどうかは不明である。

[副]不安・鎮静、振戦、下痢、乳汁分泌過多等が報告されている。治療中止後に少数の症例で不眠症が起こり得る。
殆どの患者が気付く本剤の最も一般的な副作用は、鎮静作用である。低用量、高用量の両者に発現し、服用後24時間以内に始まり、2-3日後に最大に達し、次の何日間かに衰退していく傾向が見られる。鎮静は増量しなければ通常1週間経過後に消失するが、2000mg/日より多い量ではある程度の鎮静か疲労感を感じるかもしれない。

錐体外路系の徴候として妄言、多弁、振戦が10%程度報告されている。これらは時に咬痙やパーキンソン症候群を伴っている。
憂鬱、幻覚、見当識障害、錯乱状態等。これらの発現は用量依存性の可能性があり、適量に調節することで消失するかもしれない。
下痢は約10%の患者に起こり、激しい場合がある。止瀉剤の併用投与が必要な場合がある。

稀に胸部に腫れ物が出来たり、乳漏症、鼻閉、唾液分泌減少、口渇、悪心、腹部痛、陰萎、射精不能が起こるかもしれない。結晶尿症(要注意)、一時的排尿障害、血尿が数人の患者で認められた。血液系統として好酸球増多、貧血、血小板減少症、血小板増加症、またS-GOT増加、末梢における浮腫、過敏反応、蕁麻疹、咽頭の浮腫等が見られる。

 

1)薬名検索事典;薬業時報社,1991
2)飯野靖彦・監訳:スカット・モンキーハンドブック-基本的臨床技能の手引き;MEDSi,2003
3)国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.415,1992.9.30.
4)Demser添付文書,1985

 

[011.1.DEM:2009.1.1.古泉秀夫]

「ツルドクダミについて」

金曜日, 4月 10th, 2009

KW:薬名検索・ツルドクダミ・漢方薬・カシュウ・何首烏・タデ科・赤斂・セキレン・地精・首烏・蔓どくだみ

 

Q:ツルドクダミについて

 

A:次の通り報告されている。

カシュウ(何首烏)[日華子諸家本草]。

[異名]地精[何首烏録]、赤斂(セキレン)[理傷続断秘方]、首烏[経験方]、陳知白[開宝本草]、紅内消[外科精要]、馬肝石[本草綱目]、黄花烏根・小独根[雲南中草薬選]。

[基原] タデ科タデ属の植物。何首烏(和名:ツルドクダミ)の塊根。

[原植物]ツルドクダミ(葉がどくだみ様で、つる性のため命名)、Polygonum multiflorum Thunb.、中国原産。享保5年(1720)に渡来。塊根を漢方薬用に栽培。現在は逸出し野生化している。

野苗・交茎・交藤・夜合・桃柳藤[何首烏録]、赤葛・九真藤[斗門方]、

「OPC-67683について」

金曜日, 4月 10th, 2009

KW:薬名検索・治験記号・OPC-67683・nitroimidazo-oxazole・抗結核薬

 

Q: 治験記号OPC-67683の薬剤について

 

A:OPC-67683(nitroimidazo-oxazole)は大塚製薬で創薬された新規のnitroimidazole誘導化合物の抗結核薬である。本薬はin vitroで、耐性臨床分離株を含む結核菌にMIC値6-24ng/mLと強力な活性を示し、既存抗結核薬との交叉耐性は見られなかった。

in vivoでは、結核菌kurono株感染IRCマウスモデルに対する1日1回28日間経口投与で、肺内生菌数を指標とした有効性は、rifampicin、isoniazidと比べて6-7倍強力であった。ICRマウスへの本剤0.625mg/kg単回経口投与で、血漿中有効濃度は、100.4ng/mL、肺内有効濃度は273ng/gであった。本剤と既存結核剤との併用で、in vitro、in vivoの何れにおいても拮抗作用は認められなかった。

結核菌H37Rv細胞内感染のTHP-1ヒトマクロファージに対し、本剤、isoniazid、rifampicinは72時間曝露で抗結核菌活性を示したが、ethambutol 、streptomycin、pyrazinamideは最大6.25μg/mLでも活性を示さなかった。本剤、isoniazid、rifampicinの90%殺菌濃度はそれぞれ215、123、>780ng/mLで、本剤の細胞内活性は、濃度と時間に依存した。2、4、8、24時間のパルス処理では、本剤の抗結核菌活性はisoniazid、rifampicinと比べて、それぞれ1.8、3.2倍強力であった。本剤は同結核菌感染A549II型肺胞内皮細胞内でも同様の活性を示したことから宿主細胞のタイプに係わらず、細胞内で抗結核菌活性を発揮することが明らかになった。

本剤は比較的良好に経口吸収され、殆どの組織に分布した。分布量は肝臓>腎臓>肺>心臓>小脳>脾臓>血漿の順で、肺組織内濃度は血漿中の3-7倍であった。本剤は肝ミクロゾームで代謝されず、血漿中に主要代謝産物は存在しなかった。また肝ミクロゾームの何れのCYP酵素に対しても阻害活性を示さなかったことから、他剤と併用投与した場合に、薬物動態的相互作用を起こさないことが示唆された。
本薬は2005年12月に米国Washington DCで開催された45th ICAAC国際学会で初めて世界に公表され、世界中から注目を集めるトピックスとなった。現在本薬は海外で第II相臨床試験を継続中である。国内においても第I相臨床試験を終了しており、2007年度から第II相臨床試験に入る予定とされている。

結核患者の年間発生数は少ないとはいえ、一定数以下に減少しようとしない現状があり、更に多剤耐性菌の発現が問題となっている。新しい抗結核薬の開発に対する期待は大きい。本剤が早い時期に臨床現場で使用できるようになることを期待したい。

 

1)ミコール酸阻害作用を有する結核治療剤-OPC-67683;New Current,17(2):18-20,2006.1.10.

 

[011.1.OPC:2008.2.5.古泉秀夫]