『惰性といわれても仕方がない』
土曜日, 1月 31st, 2009?????? 医薬品情報21
古泉秀夫
5月22日(第47494号)付読売新聞、『島根県益田市の診療所が3月末から約1カ月間、患者37人に対して、血糖測定のために指先などに針を刺して採血する器具を使い回していたことがわかった。県医療対策課によると、クリニックの検査の結果、因果関係は不明だが、うち14人がB、C型肝炎ウイルスに感染していることが確認された。複数の看護職員が自動的に針が交換されると誤解したのが原因という。厚生労働省は同様の器具の使い回しを禁じる通知を出しており、県は同クリニックを行政指導すると共に、今月中にも立ち入り検査する方針。』
同様の医療機器による肝炎感染は2005年に英国で発生。厚労省は2006年3月、医療機関に同様の器具の使い回しを禁じる通知を出した。今回の器具の添付文書にも、「個人の使用に限り、複数の患者に使用しない」、「使い捨てで再使用しない」などと記載している。
5月23日(第47495号)付読売新聞、『血糖値測定用の針付き採血器具を糖尿病患者に使い回していた問題で、同クリニックの看護師が器具の針6本のうち1本を1ヵ月以上使い続けため針先が丸くなり、患者が痛みを訴え、使い回しが発覚したことがわかった。』
5月23日(第47495号)付読売新聞、『採血器具使い回し問題で、記者会見した院長は「昨年6月に納入業者から説明を受けていたが、詳細な操作方法を忘れてしまった」と説明。昨年3月の開業直後から、別の個人使用限定の採血器具を延べ約200人の患者に使い回していたこともわかり、ずさんな実態が明らかになった。』
5月24日(第47496号)付読売新聞、『県は23日夜、記者会見を開き、妊娠中の同クリニック職員が同一の針を自らに使用していた、と発表した。今のところ、この職員に肝炎の感染は確認されていないが、妊娠後期のため、感染を防ぐワクチンを接種できないという。』
5月26日(第47498号)付読売新聞、『島根県ではこの診療所も含め計20の医療機関で同様の不適切な使用が行われていたことが県の調査でわかった。厚生労働省は2006年3月、医療機関などに出した通知で、同種器具の使い回しを禁止しており、使用実態に関する全国調査を行うことを決めた。』
6月3日(第47506号)付読売新聞、『針付き採血器具の使い回し問題で、厚生労働省が2006年3月、全47都道府県に器具の共用を禁じる通知を出したが、北海道、大阪、千葉など32道府県が医師会や医療機関、保健所などに連絡しただけで、直接、各市町村に伝えていなかったことが、読売新聞社の調査でわかった。採血器具の使い回しは2日迄に、岩手、埼玉、大阪、山口など2府12県で糖尿病患者や健康相談の参加者、看護学生ら延べ5000人以上に行われていたことが医療機関などの発表で判明した。』
6月12日(第47515号)付読売新聞、『静岡県の熱海保健所が、針付き採血器具を使い回していた問題で、同保健所は器具4個を10ヵ月にわたって使い続けていた。器具の説明書には「個人の使用に限り、複数の患者に使用しないこと」と明記されており、県医務室は「医療機関の監督官庁(保健所)が、こうしたことを起こし、責任を重く受け止めている』としている。』。『北九州市は12日、入院、通院患者や1998-2003年度に開かれた糖尿病予防教室の受講者に対し、針付き採血器具を計300人に使い回していた、と発表した。市によると採血器具はペン型で血糖値を調べるため針を指先に刺すタイプ。いずれも、針は採血の度に交換していたが、血液が付着する恐れのある先端のカバー部分はアルコール消毒して再利用していた。』。『自治医科大は11日、医学部の実習や学園祭での健康教室で、計約420人に針付き採血器具を使い回し、血糖値を測定していたと発表した。針は1回毎に交換していたが、先端のキャップはアルコール消毒した上で複数回使用していた。同大では、器具の使い回しを禁じた2006年3月の厚生労働省の通知が同大附属病院にしか伝わっていなかったという。』。『静岡県は12日、熱海保健所が、熱海、伊東両市内で2007年5月-2008年3月に開かれた健康祭りなど計12回のイベントで来場者2321人に対しメーカーが複数の人への使用を禁止している針付き採血器具を使い回して血糖値の測定を行っていたと発表した。針は毎回交換していたが、先端部分のキャップはアルコール消毒して複数回使用していた。キャップに血液が付着し、次に採血する人の指など、キャップが当たる場所に傷がある場合には、肝炎などに感染する恐れが出てくるが、県では「リスクは非常に低い」(医療室)としている。』
6月13日(第47516号)付読売新聞、『山梨県は12日、県立中央病院(甲府市)、県立北病院(韮崎市)で糖尿病患者計748人に対し針付き採血器具を使い回した血糖値の測定をしていたと発表。いずれも針は交換し、血液付着の可能性があるキャップ部分をアルコール消毒だけで使い回していた。
岩手県奥州市も12日、1999年4月-2008年5月に、市立の病院や診療所などで血糖値を測定する際、計955人に針付き採血器を使い回していたと発表。
厚生労働省が全国の病院・診療所を対象に実施している調査について、愛知県医師会は12日回答を保留するよう、約8000人の会員に通知した。同県豊田市で今月、注射針を固定するホルダーの使い回しが発覚したため、県がホルダーも調査対象に加え、判明部分は医療機関名を公表することにした。しかし、同医師会は「ホルダーの使い回しによる感染例はなく、結果が公表されれば、不安をあおるだけ」と反発し、回答の保留を決めた。』
6月14日(第47517号)付読売新聞、『埼玉県は13日、県立小児医療センター(さいたま市岩槻区)と県立循環器・呼吸器病センター(熊谷市)て糖尿病患者ら計約230人に対し、針付き採血器具を使い回して血糖値の測定を行っていたと発表した。』
6月25日(第47528号)付読売新聞、『全国の医療機関や健康イベントなどで「針付き採血器具」の使い回しが相次ぎ発覚している問題で、読売新聞が各自治体に取材したところ、少なくとも36道府県で同種事例があり、使い回しの対象者は延べ18万人以上になることが24日分かった。東京など11都県が「調査中」と回答を保留しており、実際の人数は更に多いと見られる。使い回しによる肝炎などのへの感染被害は報告されていないが、医療関係者の間で血液感染への認識が不足している実態が浮き彫りになった。
針自体を使い回していた事例は2件。島根県益田市の診療所と広島市の診療所で計46人が対象となっていた。それ以外はいずれも周辺部のキャップを複数人に使い回していた。厚生労働省は「針を交換しても、皮膚に直接触れる周辺のキャップ部分を取り替えないと、付着した血液から感染する可能性は否定できない。」としている。
一方、健康診断の採血時などに使われ、針を通して「ホルダー」内の筒の中に血液を吸引するタイプの器具でも、少なくとも計8県で約41万人に対し、ホルダーの使い回しがあったことが分かった。同省は、このタイプの器具では「感染する可能性は否定できないが、極めて低い」として、今回の調査対象には含めていないが、複数の患者にホルダーを使い回さないよう通知を出している。』
7月10日(第47543号)付読売新聞、『血糖値を測定する「針付き採血器具」の使い回し問題で、都は9日、都内810カ所の医療機関などで使い回しがあったと発表した。使い回しの対象者数は不明だが、肝炎などの感染報告はないという。厚生労働省の全国調査の一環で、都が14,593カ所の病院などを調べたところ、5.6%にあたる医療機関などで使い回しが行われていた。この採血器具は、血液がキャップに付着する恐れがあるとして、キャップも使い回さないよう通知している。都内のケースも、針は交換していたが、キャップを取り替えていなかった。』
『針付き採血器具』のいわゆる使い回しについて、血液の直接付着する部位である『針』を交換せずに使用していたというのは論外にしても、針は交換しキャップ部分は消毒用エタノールで消毒して使用していたという医療機関や保健所は相当数になるということは、その方法で十分に感染は防げると判断していたということではないか。
英国で感染した事例があるから添付文書の使用上の注意にも記載があり、厚生労働省も通知を出していたというが、ある意味でいえば“羮に懲りて膾を吹く”の感なきにしもあらずである。英国での事例がどの様な経過で感染を起こしたのか、詳細は知らないが、直接傷口に血液に汚染されたキャップをすり付けたり、血の滴りのあるものを接触させない限り感染の機会は限りなく少ないのではないかと思われるがどうであろうか。
厚生労働省の発出文書が医療機関にまで届いていないというが、それは今回に限った訳ではなく、都道府県等を経由してそれぞれの職能団体に下ろされ、職能団体が発行する会誌等の出版物に掲載されるという手順が一般的で、企業が自社製品に係わる文書として持参しない限り相当アンテナを高く張ってないと情報が引っかからないことがある。
添付文書を読まないというのは専門職能としては言い訳のしようがない。特に初めて使用する時には必ず添付文書を読むというのは鉄則であり、更にその製品について何らかの疑念が起これば添付文書を確認するというのも鉄則である。勿論、これは医薬品についての基本原則であるが、医療用具や機器についてもその鉄則に変わりはないのではないか。
薬食安発第0303001号
平成18年3月3日
各都道府県衛生主管部(局)長 殿
? 厚生労働省医薬食品局安全対策課長
採血用穿刺器具(針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないもの)の取扱いについて
採血用穿刺器具とは、血糖値の測定等における微量採血を目的とする穿刺針を装着するために用いる器具であり、本器具には器具全体がディスポーザブルタイプであるもの、針の周辺部分がディスポーザブルタイプであるもの及び針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないものの3種類がある。
このうち、針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないもの(別紙1参照)について、英国医薬品庁は、昨年11月、英国の介護施設におけるB型肝炎の発生(2名死亡)との関係が疑われる旨発表するとともに、ヘルスケア・ワーカー(医療従事者)及びケア・ワーカー(介護従事者)は針の周辺部分がディスポーザブルタイプであるもの又は器具全体がディスポーザブルタイプであるものを用いるべき旨等の注意喚起を行ったところである。また、カナダ保健省も、本年1月、同様の注意喚起を行った。
わが国においては、針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないもの(以下「この器具」という。別紙2参照)については、既に、添付文書の禁忌・禁止の項、警告の項等において「他の人と共用しないこと」等と記載し、注意喚起を図っている。また、この器具によると疑われる感染事例は国内では未だ報告されていない。
しかしながら、この器具の安全使用に万全を期すため、予防的措置として、下記の措置を講ずることとしたので、貴管下関係製造販売業者に対し添付文書の改訂等の指導を行うとともに、貴管下の医療機関等への注意喚起を図られるようお願いする。併せて、民生主管部局にも周知願いたい。
なお、別途、関係団体(別紙3参照)に通知したので申し添える。
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1. 製造販売業者による添付文書の改訂等
* (1)「禁忌・禁止」の項に以下の内容を記載すること。個人の使用に限り、複数の患者に使用しないこと。
* (2)出荷前にこの器具に「複数患者使用不可」のシールを貼付するとともに、既に納入済みの製品にあって、まだシールを貼付されていないものについては、納入先にも同シールを配布し、貼付を依頼すること。
2. 医療機関等への注意喚起
この器具を複数の患者に使用しないよう特段の注意をはらうこと。
以上
(2008.8.17.)