『硝酸薬の作用発現時間・持続時間』
1] 硝酸薬は全てのタイプの狭心症に用いられる。狭心症発作寛解のためには、速効型硝酸薬(舌下錠、スプレー式口腔内噴霧薬)を用いる。高齢者など、口腔粘膜が乾燥しやすいヒトにはスプレーが有効。
2] 種類・剤型により効果の発現、持続時間が異なるので、目的に合わせて選択する。
3] 速効性のものは発作の寛解に、持続性のものは発作の予防に使用する。nitroglycerinは急性心不全には第1選択薬である。
4] 不安定狭心症などの重症狭心症には、速効性で、かつ調節性に優れた持続点滴を使用する。
5] 経皮製剤は肝での初回通過効果を受けず、安定した血中濃度が得られる。
6] 一硝酸イソソルビドも二硝酸イソソルビドとの比較で、安定した血中濃度が得られる。
7] 早朝の発作に対しては就寝前に作用時間の長い経皮製剤を使用する。
8] 前負荷軽減作用を有し、心不全治療薬としても使用され、特にnitroglycerinは基礎疾患が何であれ、急性心不全に対する第1選択薬である。
9] 長期使用による予後改善効果は明らかではない。硝酸薬のうち持続型のもの(貼付薬、持続点滴)では、長期使用により薬剤耐性が生じることがある。
10] 血圧が低下することがあるので、特に脳血管障害のある高齢者では注意が必要である。
11] 速効型硝酸薬を使用した場合、2-3分で軽快する。軽快しない場合には、5-10分間程度の間隔で、2錠まで使用し、それでも効果がない場合には心筋梗塞や大動脈解離など他の疾患の可能性もあり、医師へ連絡する。
一般名・商品名(会社名) | 作用発現時間 | 作用持続時間 |
nitroglycerin (日本化薬) |
30sec.-1 min.(舌下錠) | 10-30 min. |
バソレーターRB2.5貼付錠 (三和化学) | 5 min. (発作寛解不適) |
約8 hr. |
ミオコールスプレー (トーアエイヨー) |
1-2 min. | 20-30 min. |
ミリスロール注(日本化薬) |
30 sec.-1 min. | 一過性 |
ミリスロール冠動注用 (日本化薬) |
||
バソレータ軟膏 (三和化学) |
15 min.[IF,1996.1] | 約6-8 hr. [IF,1996.1] |
ニトロダームTTS (ノバルティス) (三和化学) |
貼付約1 hr.後 | 貼付除去する12-24hr.後まで |
amyl nitrite |
30 sec.以内 | 約4-8 hr. |
isosorbide dinitrate [ISDN] |
2 min.前後(舌下投与) |
1.5-2 hr.(舌下投与) |
ニトロールRカプセル (エーザイ) |
30-60 min. | 8-12 hr. |
ニトロール注(エーザイ) | 直後[IF,1994.4] | 5-60min. [IF,1994.4] |
isosorbide dinitrate [ISDN] (キッセイ) |
non data [IF,1994.1] | non data[IF,1994.1] |
フランドルテープS貼付剤 |
48 hr.-50.4 hr. |
|
ニトロールスプレー (エーザイ) |
約1-2 min[IF,1994.2] | 30-120min[IF,1994.2] |
isosorbide mononitrate [MSDN] (トーアエイヨー) |
約5 min(舌下) |
7時間以上 |
1)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2005
2)高久史麿・他監訳:ワシントンマニュアル 第9版;MEDSi,2002
3)日本薬剤師会・編:病気と薬剤 改訂第4版;薬事日報社,1996
[015.11.NIT:2005.11.15.古泉秀夫]