「アムロジンとグレープフルーツの相互作用」
KW:相互作用・アムロジン・ベシル酸アムロジピン・amlodipine besilate・グレープフルーツ・grapefruit・dihydropyridine系・Ca拮抗薬・CYP3A4
Q:アムロジンとグレープフルーツの相互作用は報告されているか
A:アムロジン錠(大日本住友)は、ベシル酸アムロジピン(amlodipine besilate)を主成分とする製剤である。その適応は『高血圧症・狭心症治療薬、持続性Ca拮抗薬』とされている。なお、添付文書中に『grapefruit』との相互作用については何等記載されていない。
amlodipineは、dihydropyridine系の第3世代に属するCa拮抗薬である。本薬は血中濃度半減期が36時間と他のCa拮抗薬に比較して極めて長い。作用発現が緩やかで、作用持続時間が長いため、降圧効果に優れたCa拮抗薬として汎用されている。高血圧症に対する第一選択薬である。
食事の影響:健常成人にamlodipine 5mgをクロスオーバー法により空腹時及び食後に単回経口投与した場合、血清中amlodipineの体内動態値はTmaxが食後投与でやや遅延した以外は、Cmax、t1/2、AUCのいずれにも有意差は認められず、本薬の吸収は食事摂取による影響は受け難いことが確認された。従って、本薬の投与に際しては食前・食後投与の選択は任意で選択できる。
代謝部位及び代謝経路:主として肝臓で代謝される。健常成人16例にamlodipine 5mgを経口投与した時、24時間までの尿中に認められる主な代謝物としてamlodipineのdihydropyridine環が酸化されたpyridine環体とその2位の酸化的脱アミノ体等が認められた。尚、主要代謝物のCa拮抗作用は、最も強力なものでもamlodipineの1/25以下であったの報告が見られる。
代謝に関与する酵素(CYP450等)の分子種:主にCYP3A4により代謝される。
尚、本薬のgrapefruitとの相互作用について、次の報告がされている。
本薬とGF-jとの相互作用については、使用上の注意に設定されていない。その理由はGF-jによるamlodipineの血中濃度の上昇は軽度(Cmax 115%、AUC 116%に上昇)で、血圧と心拍数に影響はなかったとの報告及び薬物動態と血圧に影響はなかったとする、何れも外国人によるdataが報告されていることによる。
cytochrome 450(CYP)酸化系酵素の特徴
?ミクロソームに局在し、他は核膜に弱い活性が認められる。 |
経口投与された薬は主として小腸粘膜から吸収され門脈系に入るが、粘膜壁を通過する際、代謝を受ける。特に人の場合には、CYP3A4の発現量がかなり高く、この分子種により主として代謝される薬では小腸における代謝の関与がかなり高い。
一方、grapefruitについては次の報告が見られる。
grapefruitが薬物の効力に影響することは、最近では広く知られてきている。grapefruitは肝臓ではなく小腸上皮細胞内のCYP3A4及びP-糖タンパク質(MDR1:multidrug resistance protein 1)を特異的に阻害することが知られている。その結果、これらの基質となる薬の代謝及び小腸管腔への排泄が抑制され、吸収量が顕著に増大する事例がある。更にgrapefruit juiceによる抑制効果は、服用する薬によっては、数日間持続することがあるので、そのように薬物を服用する際にはgrapefruit juiceの飲用を中止することが無難である。
grapefruit juiceの飲用がCYP3A4に影響する原因物質として、従来grapefruit juice中の種々の含有成分が標的とされてきた。しかし最近になって6′,7′-Dihydroxybergamottin(DHB)が、原因物質であることが判明してきた。但し、薬物とDHBとの相互作用だけでは説明のつかない現象が見られ、その部分にはP-糖タンパク質が関与していることで説明されている。
DHBはCYP3A4のmechanism-based inhibition(MBI:非可逆阻害)であることが動物実験により確認されたが、更に単なるCYPの阻害剤ではなく、CYP3A4の分解を促進し、CYP3A4を消失する作用を持つことが判明した。
但し、同じCa拮抗剤でも注射剤では相互作用が見られないということもあり、CYP以外にも何らかの因子がgrapefruit juiceとの相互作用に関与していることが予測され、検証の結果小腸でのP-糖タンパク質が吸収・排泄過程で関与していることが判明した。P-糖タンパク質は、小腸上皮細胞で、有害物質などを体外に排泄する作用を持っている。P-糖タンパク質とCYP3A4の基質・阻害剤は相同性が高いことが知られている。
1)アムロジン錠添付文書,2007.12.
2)アムロジン錠「サンド」IF,2008.7.
3)アムロジン錠IF,2008.1.
4)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル 2008;医学書院,2008
5)中野重行・他編:臨床薬理学 第2版;医学書院,2003
6)大西憲明・編著:一目でわかる医薬品と飲食物・サプリメントの相互作用とそのマネジメント;フジメディカル出版,2003
[015.2.AML:2008.8.8.古泉秀夫]