KW:薬名検索・アリシン・allicin・アリイン・aliin・ニンニク・チアミン・thiamine・vitaminB・ビタミンB
Q:アリシンの効能について
A:アリシン(allicin)は鎖状含硫化合物の一つで、植物中の抗菌成分としてニンニク[Allium sativum (Liliaceae)]中に含まれている。更にニンニクの鱗茎中にはallicinの前駆物質としてのアリイン(aliin)が含まれているが、aliinは無臭無刺激性の針状結晶である。
ニンニク中のaliinを含む細胞が破壊されると、共存する酵素allinaseによって分解され、ニンニク特有の刺激強臭の油状物質であるallicinを生ずる。
ニンニク中の含硫アミノ酸アリイン(aliin)はニンニクを擂り潰すと共存する酵素allinaseの作用でニンニク特有の臭成分allicinを生成するが、allicinはヒト消化管内のチアミン(thiamine:vitaminB1)と容易に反応し、アリチアミン(allithiamine)を形成する。allithiamineはvitaminB1分解酵素(aneurinase:thiaminase)の作用を受けず、優れた腸管吸収と高い血中濃度を示し、生体内でthiamineに復元して機能するが、服用後ニンニク臭が出る欠点があった。この臭いの発生のない類似化合物が合成され、活性vitaminB1(フルスルチアミン:fursultiamine)として使用されている。
allithiamineに含まれるallicinはにニンニクの強臭の原因物質であるため、この臭気の少ない物質が求められ、allithiamine類似のプロスルチアミン(prosultiamine)が合成された[アリナミン注射液10mg]。しかし、prosultiamineにも注射時にニンニク臭が見られるため、fursultiamineが新たに合成された等の報告がされている。
ニンニク中の成分であるアリシン(allicin)は、チアミン(thiamine)と反応してアリチアミン(allithiamine)となる。allithiamineの血中濃度は長時間維持されるため、vitaminB1の働きが通常より長く持続するという効果が期待されている。
医薬品としてのvitaminB1の適応は次の通りである。
○ビタミンB1欠乏症の予防及び治療
○ビタミンB1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、甲状腺機能亢進症、妊産婦、授乳婦、はげしい肉体労働時等)
○ウェルニッケ脳症
○脚気衝心
○下記疾患のうちビタミンB1の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合
●神経痛
●筋肉痛、関節痛
●末梢神経炎、末梢神経麻痺
●心筋代謝障害
●便秘等の胃腸運動機能障害
●術後腸管麻痺
ビタミンB1欠乏症の予防及び治療、ビタミンB1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給、ウェルニッケ脳症、脚気衝心以外の効能・効果に対して、効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでないとする注意が添付文書中に記載されている。
1)田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002
2)アリナミン注射液10mg添付文書,2007.8.改訂
3)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル 2008;医学書院,2008
4)林 輝明・他監修:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健用食品-;東洋医学舎,2008改訂新版
[011.1.ALL:2008.6.29.古泉秀夫]