「添付文書を読む-慎重投与・併用注意」

                                                                  医薬品情報21
                                                                        古泉秀夫

 

後輩からメールが来た。“添付文書中に書かれている『慎重投与』・『併用注意』について、処方鑑査時に医師にどう対応すべきか”という質問である。特に相互作用に対する『併用注意』について、同一処方せんに『併用注意』の記載がある薬物が処方されている場合、その都度、医師に確認して調剤するのかという質問である。

確かに『薬の添付文書上でしばしば見られる言葉の一つ』として、『慎重投与』や『併用注意』がある。

慎重の国語辞典的解釈は、

『慎も重も同じく、おもんじる意。その時どき先ず何をすべきかに留意し、やり過ぎたり、やり残したりすることが無いように気をつける様子。』

となっている。

つまりは物事の中庸をいけということのようであるが、それならば薬を投与する場合の『慎重』とは、どのようにするのか、甚だ分かり易い言葉のようであるが、その行動となると甚だ曖昧な言葉で、解るようで解らないということのようである。

しかし、いずれにしろ、子供が花火に火を付けるように、屁っ放り腰で、遠くから怖々火を付けるということではなく、薬の場合は、より具体的な対応の仕方を明確にしておかなければならない。

つまり薬でいう『慎重』とは、患者の原疾患、患者の症状、合併症、患者の体質、既往歴、家族歴等を検討して投与する薬を決定すると同時に、薬の組み合わせ(併用薬剤)等から、副作用の発現や重篤化の危険性を予測し、投与の可否判断、用法・用量の決定等、特に注意が必要な場合、臨床検査の実施や患者に対する細かな観察が必要であることを意味している。

『慎重投与』は、あくまで『慎重投与』であって『禁忌』ではない。

従って、その薬の使用を禁止しているわけではなく、投与に際しては、適切な『用法・用量』を選択し、患者の状況を把握するため、適切な検査を行い、その結果として投与が可能ということであり、適当に投与すればいいということではない。

更に投与後についても、定期的に血液・肝臓・腎臓等の検査を継続することも『慎重投与』の中に含まれていることを認識しておくことが必要である。

その意味では、投与後もただ漫然と投与を継続するだけではなく、投与している薬の効果や副作用について、十分に監視することが必要だということである。更に患者持参薬を減らすためにも、処方内容を検討し、患者が飲みきれないと感じている薬は、減らす努力が必要なのである。医療費の抑制について、診療を制限する方策ではなく、診療の無駄、特に薬の無駄を省く方向で検討することも必要なのではないか。

『併用注意』については、注意喚起事項であり、禁止事項ではない。

更に『慎重投与』も『併用注意』も、あくまでも『………調剤すること』ではなく、『………投与すること』である。その意味でいえば、医師向けの注意事項であり、処方する薬については、医師が十分に承知して投与するということが基本原則となっている。更に併用により作用が増強する可能性があるとされる薬剤の場合、意図的に作用の増強を求めて併用される場合も考えられる。

医師が自分の処方する薬について十分に承知していると考えることが前提であるとすれば、『禁忌』以外の条件下にある薬が、同一処方せんに記載されているからといって一々確認を取ることは必要ない。『投与禁忌』や『併用禁忌』の管理下にある薬が同一処方せんに記載されている場合については、医師の誤記も考えられるので、確認するとともに訂正を求めることが必要である。

                                                                  (2008.2.11.)