何か違うんじゃあないんですか?

 

魍魎亭主人

政府・与党は、2008年度の診療報酬改定で、現在、病院が570円、個人経営の医院などを含む診療所が710円と異なる価格に設定されている再診料を、同じ価格に統一する方向で調整に入った。統一した再診料は650円-700円程度とする案が有力だ。再診料を病院で引き上げ、診療所で引き下げることにより、医師不足問題の原因となっている病院の勤務医の負担を軽減する狙いがある。

病院の再診料が、診療所より安いことが、患者が診療所よりも病院に通う傾向を助長し、病院勤務医の過剰な負担やそれに伴う勤務医不足の要因になっているとの指摘もある。政府・与党は、再診料の統一により診療所に患者が振り分けられる効果の他、病院の再診料の引き上げが勤務医の待遇改善に繋がることも期待している。

診療所の再診料引き下げについては、開業医の影響力が強い日本医師会などが医院の経営悪化に繋がるとして反対している。政府・与党は、日本医師会に対して?再診料引き下げで、診療所の患者が増える。?診療所による夜間など時間外診療や開業医による往診への診療報酬を手厚くする-等として説得していく方針だ[読売新聞,第47365号,2008.1.14.]。

『病院の再診料が、診療所より安いことが、患者が病院に通う傾向を助長し、病院勤務医の過剰な負担やそれに伴う勤務医不足の要因になっているとの指摘もある』と書かれているが、誰がそういうマヌケなことをいっているのか知りたいものである。患者が診療所ではなく、病院を選ぶのは、仕事の確実性と速さのせいである。更に最近の病院では、その日の朝検査を受ければ、その1時間後には、検査結果が出ており、それに基づいて医師の判断が得られるという、便宜性を評価しているからである。

勿論、病院が通院可能範囲にあるということも重要な要件ではあるが、何かあった場合に他科への紹介も院内ですませることが出来るという患者にとっての便宜性があり、病院に出かけるのである。診療所で同じ結果を得ようとすれば、何れの場合にも、結果を得るまでには、数日間を要することになるのではないか。

診療所の再診料が高いから患者は病院を選ぶのだというように、もし本気で思っていて、それに基づいた改善策を講じたとすれば、その改善計画は失敗する。単に患者が金銭的な問題だけで、自分の命の預け先を選んでいると考えていたとすれば、甚だしくお粗末な発想だといわなければならない。

最近の報道によれば、病院と診療所の再診料の差額解消問題は頓挫してしまったようであるが、病院の医師不足問題は、医師の給与を上げた程度のことで片付く話ではない。抜本的に改善するためには、病院における医師の人員配置を増やし、医師に対して知的再生産の時間を保証することである。朝から晩まで医師が患者の診療に追われている現状の病院の在り方をそのままにして、小手先の手直しをしたとしても、抜本的な解決にはならない。

(2008.2.3.)