「フェノキシエタノール添加の意味」

 

KW:語彙解釈・フェノキシエタノール・phenoxyethanol・法定表示成分・表示指定成分・種別認可基準・抗菌保存剤・消毒剤・防腐剤

 

Q:無添加、防腐剤不使用と表示された化粧水にフェノキシエタノールが配合されていましたが、企業側はこれは防腐剤ではなく、ただのアルコールだと主張しています。企業側の言い分は通用するものなのでしょうか?

 

A:フェノキシエタノール(phenoxyethanol)は、防腐・殺菌剤として化粧品等に添加される成分の一つであるが、緑茶などの自然界に天然物として存在する成分であり、パラベンなどと比較すると毒性は弱いとする報告が見られる。略号:PE。

phenoxyethanolは、グリコールエーテルというアルコールの一種である。また緑膿菌に対して殺菌作用をもつが、殺菌作用は万能ではない。phenoxyethanolは分子内にフェノキシ基とヒドロキシエチル基をもち、各種化学品の優れた溶媒となる。その他工業用中間体として各種製品の原料に広く使用されている。また殺菌作用をもつため香粧品分野にも利用されている(化粧品種別許可基準,1994に収載)。

phenoxyethanolの使用制限は、パラベン同様に製品100g中に1g以内である。しかし、phenoxyethanolは、『表示指定成分』にはなっていない。含有量も他の成分に比べ、多くは微量であり、表示していない場合もある。企業の中には情報開示の意味から表示をしている。

用途分類:抗菌保存剤・消毒剤

平成13年4月1日(2001年)以降、化粧品の規制緩和が実施されたが、それ以前は約2,800種の使用可能成分(種別認可基準)が承認されており、そのうち102種類の成分(法定表示成分)について、その名称を記載することが義務付(昭和55年=1980年)られていた。この『表示指定成分』は、アレルギー等の皮膚障害をおこす恐れのある製品の使用を自ら避けることができるよう表示されることが義務付けられていたもので、この表示指定成分が添加されていない化粧品について『無添加化粧品』と呼称していた向きがあるが、実際には『表示指定成分無添加化粧品』ということであった。

但し、2001年4月1日以降、規制緩和の一環として、化粧品の製造・輸入販売に関する許可制度が緩和された。その中で最も大きく変わるのは、化粧品に配合される成分の規制が事実上廃止され、原則的には配合成分、配合量の制限が撤廃されることになった。但し、それに伴い許可業者には化粧品に配合されている成分を全て表示することが義務付けられることになった。

化粧品に関する許可制度新旧対照表

  2001年4月1日以前 2001年4月1日以降
許認可 化粧品への使用が許可されている成分リスト(『種別許可基準』という)内での成分のみからなる化粧品は、事前の届出により製造(輸入)が可能。リストにない基準外の成分を使用する場合には事前に厚生大臣の許認可(承認)が必要。 成分規制は事実上廃止。配合禁止成分リストと配合制限成分リスト(配合上限や使用できる化粧品を制限)を定め、該当しない成分は許可業者の自己責任で自由に使用できる。防腐剤・紫外線吸収剤・タール色素に該当する新規成分は、登録する必要あり。
表示 表示が義務付けられている成分(102成分)を配合する場合のみ表示の義務 原則として全成分表示。非開示成分として承認を受けた成分を除き、配合した全ての成分を配合量が多い順に記載(1%以下の成分と着色料は順不同)。小容器のものについては表示方法の特例が認められる。
届出 製造・輸入する製品について事前に成分・分量表を添付した製品届を提出。 製造・輸入する製品について販売名のみの一覧表を事前に届出。

 

なお、phenoxyethanolの効能の範囲については、防腐成分とされており、配合目的:化粧品の変敗を防ぐに分類されている。

 

1)永井 恒司・監修:医薬品添加物ハンドブック;薬事日報社,2001
2)中山和子:薬事衛生-化粧品の規制緩和について;都薬雑誌,23(3):41-46(2001)
3)化粧品全成分表示へ;読売新聞,2000.3.28.
4)化粧品の成分全て表示へ;朝日新聞, 2000.3.28.

   [615.8.PHE:2007.5.28.古泉秀夫]