「酸棗仁湯の副作用について」
KW:副作用・酸棗仁湯・さんそうにんとう・酸棗仁湯エキス顆粒・偽アルドステロン症・甘草・酸棗仁・茯苓・川キュウ・知母
Q:酸棗仁湯エキス顆粒の副作用について教えてください。服み始めたら次の症状が見られるようになったのですが、酸棗仁湯の副作用でしょうか
左腕がしびれ、 頭痛、左目の奥の痛み、目を凝らしてみるとズキズキと脈を打つのと同じように画像が脈打ってます。
A:酸棗仁湯(さんそうにんとう)エキス顆粒(医療用)の組成は下記の通りである。
本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス3.25gを含有する。
(日局)酸棗仁 10.0g
(日局)茯 苓 5.0g
(日局)川キュウ 3.0g
(日局)知 母 3.0g
(日局)甘 草 1.0g
添加物:(日局)ステアリン酸マグネシウム、(日局)乳糖
尚、添付文書に記載されている効能・効果、重要な基本的注意等は以下の通りである。
効能・効果:心身がつかれ弱って眠れないもの
用法・用量: 通常、成人1日7.5gを2-3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
重要な基本的注意
1.本剤の使用にあたっては、患者の証(体質・症状)を考慮して投与すること。なお、経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には、継続投与を避けること。
2.本剤にはカンゾウが含まれているので、血清カリウム値や血圧値等に十分留意し、異常が認められた場合には投与を中止すること。
3.他の漢方製剤等を併用する場合は、含有生薬の重複に注意すること。
□副作用(本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、発現頻度は不明である)。
□重大な副作用
1.偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。
2.ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。
□その他の副作用
消化器(頻度不明):食欲不振、胃部不快感、悪心、腹痛、下痢等
で質問の症状に該当する具体的な副作用は記載されていない。
甘草成分中のグリチルリチンの加水分解物であるグリチルレチン酸及びその誘導体カルベノキソロンは腎尿細管細胞の11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(11β-HSD)を阻害する。その結果、細胞内に入ったコルチゾールはコルチゾンへの変換を阻害され、Na貯留、K排泄促進を起こし、アルドステロン症様症状を呈すると考えられる。症状としては高血圧、浮腫を認めることが多く、検査所見では尿中K排泄増加伴う低K血症代謝性アルカローシス、低レニン血症、血中アルドステロン濃度の低下を認める。
初期症状としては『手足の痺れ、筋肉痛、全身のだるさ、疲れやすさ、脱力感(手足に力が入らない感じ)』等が現れる。
甘草大量摂取者に多いとされる偽性アルドステロン症(pseudoaldosteronism)の発現は、グリチルリチンとして120mg程度では問題ないとされているが、グリチルリチンとして75-150mg以下の少量摂取での副作用発現の報告もあり、特に高齢者、腎機能低下患者では注意する必要がある。
副作用の発現時期は、通常3カ月以内とされているが、10日以内や数年を要している場合もある。
薬の副作用を考える場合、
?原疾患の症状との関連はないのか
?既に薬を服用している場合、相互作用は考えられないのか
?追加処方により副作用が発現した場合、追加処方の薬剤に該当する副作用が報告されているのかどうか
等を検討することが必要であり、他に服用している薬剤がないのであれば、その薬剤を中断し経過を見ることで症状が消失すれば、その薬剤の副作用と見ることが可能である。
高血圧:急激な血圧の上昇による頭痛、意識障害等
低カリウム血症:筋力低下、多尿、腎濃縮力低下、糖忍容力低下、心電図上T波の平低化
ミオパシー:筋力低下、筋萎縮症、筋痛、筋の強張り、筋の短縮とこれによる関節可動域制限
その他、不顕性の高血圧があり、Glycyrrhizinateの摂取によって急性に顕在化した可能性も考えられる。従って、直ちに薬の服用を中断するとともに、処方医に検査を依頼することをお奨めする
1)ツムラ酸棗仁湯エキス顆粒(医療用)添付文書,2005.6.改訂
2)医薬品情報Q&A甘草による偽アルドステロン症とは?;日本薬剤師会雑誌55(7):815(2003)
3)南山堂医学大辞典 第19版;南山堂,2006
[065.PSE:2007.4.17.古泉秀夫]