「オレンジベンジンについて」
KW:院内製剤・特殊製剤・オレンジベンジン・石油ベンジン・etroleum Benzin・オレンジ油・Orange Oil・sweet orange oil・bitter orange oil
Q:『オレンジベンジン』なるものが、絆創膏痕の清拭用に用いられていると聞くが、これはどの様なものか
A:院内製剤として調製し、使用しているものと思われるが、処方内容については公表された資料の入手ができないため、調査不能である。
ただし、使用原材料はいずれも局方品として市販されているので、各使用薬物の内容について以下に紹介する。
□[日局]石油ベンジン(Petroleum Benzin): 本品は石油から得た低沸点の炭化水素類の混合物である。
本品は無色澄明の揮発性の液で、蛍光がなく、特異な臭いがある。本品はエタノール(99.5)又はジエチルエーテルと混和する。本品は水に殆ど溶けない。本品は極めて引火し易い。
[貯 法]火気を避け、30℃以下で保存する。気密容器。
[薬効薬理]局所刺激作用が強く、深部の疼痛に対するcounter-irritantとして皮膚に塗布することがある。ジギタリス、バッカク、ホミカ等の生薬の脱脂の他、甲状腺やその他の臓器の脱脂に利用される。軟膏を塗布した皮膚の清拭にも使用される。脂肪、樹脂などの溶剤として用いられる。
[副 作 用]大量の誤飲又は吸入により15分から1時間くらいの間に、急性胃腸炎、嘔吐、眩暈、錯乱、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼ、肺水腫などの症状が現れる。汚染環境に長時間曝露されるときには慢性中毒に陥り、眩暈、頭痛、四肢麻痺、神経痛、全身の衰弱、貧血、記憶力の減退などの他、肝、腎や真菌の脂肪変性、肺炎などの病変が認められる。
[製 剤]複方チアントール・サリチル酸液
□[日局]オレンジ油(Orange Oil):本品はCitrus属諸種植物(Rutaceae)の食用に供する種類の果皮を圧搾して得た精油である。集油率は0.3-0.5%である。本品は黄色-黄褐色の液で、特異な芳香があり、味は僅かに苦い。本品は等容量のエタノール(95)に濁って混和する。
[貯 法]遮光して保存する(主成分のlimoneneは不安定で、光や空気によって酸化、重合し易く、特有の香味が変化し易い)。気密容器。
[名 称]オレンジ油には2種類有り、Citrus sinensis(L.)Osbeckより得られる精油をsweet orange oilといい、Citrus aurantium L.subsp.amara L.より得られる精油をbitter orange oilという。生産量はsweet orange oilの方が多い。
[成 分]主成分はd-limonene約90%であり、その他テルペン類、少量のdecylaldehyde、d-linalool、citral等を含む。果皮を圧縮して得たオレンジ油は、果皮から移行した不揮発性成分(フロクマリン類など)を含んでおり、冷蔵中に結晶として析出することがある。水蒸気蒸留して得たオレンジ油は、それらの成分を含まない変わりに、風味が劣る。
[適 用]賦香料
[製 剤]加香ヒマシ油
[製 法]加香ヒマシ油
ヒマシ油 990mL
オレンジ油 5mL
ハッカ油 5mL
全量 1000mL
以上を秤取し混和して製する。
加香ヒマシ油の処方に配合されているオレンジ油の配合率は0.5%である。なお、オレンジ油の投与経路別最大使用量は、経口投与0.3mL、一般外用剤10mg/gとする報告も見られる。
その他、市販されている洗剤中のオレンジ油の含有量を0.03%とする資料がみられる。これは100mL中にオレンジ油0.03mLが加えられていることを意味する。
従って、石油ベンジン100mL中にオレンジ油0.03mLを加え、着香状態、絆創膏痕の除去状態を検証しながらオレンジ油量を調整することをお勧めする。
但し、石油ベンジンの使用は、皮膚過敏症を惹起するの報告がされているため、使用に際し注意が必要である。
[貯 法]遮光して保存する。気密容器。
1)第十五改正日本薬局方解説書;廣川書店,2006
2)日本医薬品添加物事典;株式会社薬事日報社,2005
[014.16.ORA:2007.3.12.古泉秀夫]