『アルツハイマー病治療薬ipidacrineについて』

KW:薬名検索・ipidacrine・塩酸イピダクリン・amiridine hydrochloride・塩酸アミリジン・ipidacrine hydrochloride hydrate・塩酸イピダクリン水和物・アルツハイマー病・AD治療薬・NIK-274・CAS-90043-86-0

 

Q:アルツハイマー病治療薬ipidacrineについて

A:ipidacrine hydrochloride(塩酸イピダクリン)は、acetylcholine esterase阻害作用、Kチャンネルブロック作用及びNa、K-ATPase阻害作用を持つ薬剤として創薬された。

現在までに得られたipidacrineのコリン作動性神経系を賦活する機序としては、acetylcholine esterase阻害作用が考えられている。本品は近年学習・記憶障害を改善するための新たな作用機序として、長期増強現象を起こす作用を有している。またipidacrineは、米国でアルツハイマー病治療薬として承認されているtacrineに見られる肝障害が、治験段階では殆ど認められていない。

別名:ipidacrine hydrochloride hydrate(塩酸イピダクリン水和物)(日研)。

治験記号:NIK-274。

CAS-90043-86-0。

C12H16N2・HCl・H2O=242.75。

化学名:9-amino-235678-hexahydro-1H-cyclopenta(b)quinoline hydrochloride hydrate

本品は軽・中等度アルツハイマー型痴呆(AD:Alzheimer disease)改善又は進行抑制、特にAD患者の日常生活活動能力改善剤として有用である。本品は学習促進・記憶増強作用を有し、AD治療薬として有用である。またacetylcholine esterase抑制、筋肉・神経線維に対する直接作用による末梢神経系統の興奮刺激剤としても有用である。

更に本品は旧ソ連保健省により『amiridine hydrochloride(塩酸アミリジン)』として認可されており、効能・効果は「成人では、末梢神経系疾患(神経炎、多発性神経炎、多発性神経症、多発性神経根神経症)、球麻痺及び不全麻痺、運動機能障害を伴う中枢神経系器質性障害の回復期、筋無力症と各種筋無力症候群、脱髄性疾患の総合療法、AD及びアルツハイマー型老年痴呆、また産科では人工破水又は分娩前羊水流出後の陣痛促進にも用いられる」とされている。

臨床試験段階の副作用としては易怒、食欲不振、攻撃性、妄想、譫妄、腹痛(萎縮性胃炎)、嘔気・嘔吐、赤血球数増加、ヘマトクリット増加、薬疹が認められた(45mg投与群)。食欲不振、下痢、腹痛、全身倦怠感、嘔吐が認められた(75mg投与群)。入院を要した重篤な副作用としては譫妄、急性肺炎、食欲不振、脱水症状、性欲亢進が認められたと報告されている。

本品は1987年に臨床試験を開始し、1989年から第II相臨床試験、1992年9月から第III相臨床試験を開始した。しかし、“プラセボとの有意差が申請には不十分”として、1995年7月に試験のやり直しを決定、試験を実施したが、現在では開発が中止されている。

 

1)アルツハイマー病治療薬の現在と未来;クリニカルプラクティス,19(1):24(2000.1.)
2)アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有する抗痴呆剤-塩酸イピダグリン;New Current,14(13):10-15(2003.6.10.)
3)特許情報;New Current,15(26):45-46(2004.12.1.)

  [011.1.IPI:2007.2.20.古泉秀夫]