「野生スイカについて」
KW:健康食品・機能性食品・野生スイカ・カラハリスイカ・シトルリン・citrulline・猛毒活性酸素・ヒドロキシルラジカル・hydroxyl radical・メタロチオネイン・metallothionein
Q:TV放送されていた野生のスイカについて
A:カラハリ砂漠原産の野生スイカ(カラハリスイカ)は、水のない状態で強い光・乾燥に耐えることができるとされている。この強光・乾燥耐性は細胞内に大量のシトルリン(citrulline)を蓄積するためで、citrullineは安定で無害なアミノ酸であるが、肌の大敵である猛毒活性酸素(ヒドロキシルラジカル:hydroxyl radical)を強力に分解する。また、カラハリスイカは保水効果が高いと報告されている。奈良先端科学技術大学院大学は、世界に先駆けて、多くの野生スイカ特許を出願している。
□アフリカのカラハリ砂漠で育つ野生スイカが特定のアミノ酸などの働きで、有害な活性酸素を抑制し、過酷な環境から身を守っていることが突き止められた。この仕組みの解明により、強い日差しや乾燥に強い植物の改良に役立つのではないかといい、原産地のアフリカ南部、ボツワナと共同研究を進めることを決めた。研究者らは、カラハリ砂漠に自生するスイカが、強い日差しと極度の乾燥のため、細胞を傷つける活性酸素が発生しやすい環境なのに水分を豊富に蓄え、枯れないことに注目し、分析した。その結果、葉にアミノ酸の一種citrullineが大量に蓄積され、活性酸素が活動する前に、瞬時に分解していることが分かった。メタロチオネイン(metallothionein)という蛋白質にも同様の働きがあった。
□灼熱の太陽が照りつける南アフリカ・カラハリ砂漠で、青々とした実をつける野生スイカに、生物体内で有害な働きをする活性酸素を消去する物質が大量に含まれていることを奈良先端化学技術大学院大学の横田明穂教授、明石欣也博士らの研究グループが突き止めた。アミノ酸の一種、citrullineで、活性酸素により、遺伝子本体のDNAが傷つくのを効率よく防ぐことが実験で確かめられた。citrullineの含有濃度は53g/Lで、他の生物に比べて1000倍以上も大量に含まれていた。citrullineは、もともと全ての生物体内で働いているので、副作用が少ないこともわかった。安全な活性酸素除去剤として、食品、医薬品、化粧品への応用が期待されている。
□citrullineの活性酸素分解作用について、試験管内で実験を行ったところ、このアミノ酸は、hydroxyl radicalを速やかに分解した。体内で発生した活性酸素がDNAや、生理活性に係る酵素を傷つける前に、即座に分解してしまうことも判明。濃度をあげても、体内の生理作用に悪影響を与えないことも明らかにした。
□citrullineとは、側鎖にウレイド(カルバミド)基(-NHCONH2-)を有する天然アミノ酸。蛋白質中には通常存在しないが、ペプチジルアルギニンデイミナーゼによる翻訳後修飾によりアルギニン残基がシトルリン残基に変換する。C6H13N3O3=175.19。M.Wada(1930)によりスイカの果汁から単離、命名された。生体内では尿素回路におけるアルギニン生合成の中間体として重要。ミトコンドリア中で、オルニチンのカルバモイル化により生成する。
□metallothioneinとは、金属(メタル)をチオール基(チオ)を介して結合している蛋白質(protein)ということでメタロ-チオ-ネインと呼ばれている。1957年にMargoshesとValleeによってマウスの腎皮質からSH基が富むカドミウム結合蛋白として単離されたmetallothioneinは、哺乳類のみならず、両生類、爬虫類、鳥類、魚類、無脊椎動物等動物全般、更には植物や真核微生物、原核生物に至るまで、広くその存在が確認されている。また、metallothioneinは重金属毒性軽減作用を有しており、metallothionein合成を誘導した動物や培養細胞がカドミウムや無機水銀などの有害金属に対し、耐性を示すことが知られている。
□metallothioneinは、ヒトを初め各種動物のみならず藍藻類に至るまで亜鉛、カドミウムなどを結合した状態で見いだされ、metallothionein類として分類されている。多くの哺乳動物でmetallothionein-Iとmetallothionein-IIの2種の亜型が存在し、ヒトやマウスではmetallothionein-IIIとmetallothionein-IVを含めた4種の亜型が確認されている。これらの亜型は、構成アミノ酸(metallothionein-I:61、metallothionein-II:61、metallothionein-III:68、metallothionein-IV:62)のうち20個をシステインが占め、しかもS-S結合を一つも持たず、チロシンなどの芳香族アミノ酸やヒスチジンを含まない低分子蛋白質(分子量:約7,000)である。また栄養素としての微量金属の研究により、中でも亜鉛がmetallothioneinという光防御蛋白質を作ることに注目し、紫外線対策についていくつかの方法が提案されている。
[015.9.CIT:2007.2.13.古泉秀夫]
1)http://bsw3.naist.jp/yokota/research/Plant_High-Tech_Institute/jigyo.html,2005.3.2.
2)http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/shakai/20050302/20050302a4380.html,2005.3.2.
3)http://www.shikoku-np.co.jp/news/news.aspx?id=20050302000347,2005.3.2.
4)http://www.g-osaka.co.jp/new/031117.html,2005.3.2.
5)http://www.north.ad.jp/hobia/contents/seminer18.htm,2005.3.2.
6)http://www.nara-shimbun.com/n_soc/050303/soc050303b.shtml,2005.3.2.
7)http://www.speciale.jp/word/07_metallo_01.html,2007.2.10.
8)佐藤雅彦・他:環境汚染バイオマーカーとしてのメタロチオネインの有用性;環境毒性学会誌2(1):27-34(1999)
9)薬科学大事典 第2版;廣川書店,1990
10)今堀和友・他編:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998