アセトアミノフェンの苦味マスキング法
木曜日, 1月 10th, 2008KW:物理・化学的性状・苦味マスキング法・アセトアミノフェン・acetaminophen・添加物・矯味用賦形剤・製剤処方
Q:ライ症候群発生以来小児用バファリンに代えてアセトアミノフェンが使用されるようになったが、苦くて服用し難いの苦情が相次いでいる。投薬法の工夫を教えて下さい。
A:acetaminophen[ピリナジン(山之内製薬)]は、非ピリン系の解熱・鎮痛剤であり、その添付文書中に「小児に対する安全性は確立していない」の記載が見られるが、小児に投与されているのは事実である。尚、本品の性状について、添付文書中の記載を見ると、白色の結晶又は結晶性の粉末で、臭いはない。
エタノール又はピリジンに溶け易く、熱湯、イソアミルアルコール又は温イソアミルアルコールにやや溶け易く、水又は温湯にやや溶け難く、エーテルに極めて溶け難い。水酸化ナトリウム試液に溶け、飽和水溶液は僅かに酸性であるとされているが、味に関する記載はされていない。
本品の原末を口中に含んだ場合、その直後には苦味感がないが、口内で本品が溶けた段階では、質問の通り苦味感があり、あるいは小児では服用困難の苦情が出る可能性は否定できない。また、本品を乳鉢中で微粉末化し乳糖と1:1の割合で混合した場合の味について確認したが、苦味感は増す傾向が見られた。
次に矯味用賦形剤の処方例について調査したところ、次の処方例が報告されていた。
P-S(10) | P-S(20) |
処方 | 製剤処方 | 処方 | 製剤処方 | |
sodiumcyclohexylsulfamate(シクラミン酸ナトリウム) | 0.1g | 100g | 0.2g | 200mg |
ice-creamessenceNo.500 (アイスクリーム・エッセンスNo.500*) |
適量 | 10mL | 適量 | 10mL |
starch(澱粉) | 0.3g | 300g | 0.3g | 300g |
lactose(乳糖) | 適量 | 600g | 適量 | 600g |
全量 | 1g | 1000g | 1g | 1000g |
[注]アイスクリーム・エッセンスNo.500は、本品50gにつき10滴の割合で添加する。
- 調製法:澱粉の一部にアイスクリーム・エッセンスNo.500を加えた後、各薬品を5号篩(50メッシュ)で篩過し、常法に従って散剤とする。
- 貯法:気密容器
- 応用:甘味賦形剤として用いる。
その他、ココア末0.1gに乳糖0.9gを加えた賦形剤を苦味のマスキング剤として使用している例、及びココア末に5%-10%のサッカリンナトリウムを添加し、マスキング剤として使用している例等が報告されており、これらの報告例に従って賦形剤を調製し、添加することで、 Acetaminophenの苦味は防げるものと考える。
[114.FD15.014.47AC][1991.3.13.・1999.3.26.一部修正.古泉秀夫]
- ピリナジン添付文書,1986
- 野上寿:薬局製剤とその解説;南山堂,1964,p.41
- 稲丸量一・他:小児科領域における繁用賦形剤について;薬局,36(4):489-494(1985)
- 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.42,1991.3.19.より転載