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「抗不安薬の効力比較について」

木曜日, 1月 10th, 2008
 

KW:臨床薬理・効力比・筋弛緩作用・睡眠薬・ベンゾジアゼピン系・benzodiazepine系・作用特性・抗不安作用・催眠鎮静・抗痙攣・抗うつ・血中濃度半減期・作用持続時間

 

Q:ベンゾジアゼピン系抗不安薬の効力比較について

 

A:抗不安薬としてbenzodiazepine系薬物が臨床で繁用されている。それらの薬理効果は、情動と関係する大脳辺縁系に分布するbenzodiazepine受容体に作用して、GABAの作用を増大させることにより抗不安作用を発現すると考えられている。以下にbenzodiazepine系抗不安薬の効力比較を示す。

体に作用して、GABAの作用を増大させることにより抗不安作用を発現すると考えられている。以下にbenzodiazepine系抗不安薬の効力比較を示す。

抗不安薬

註1.力価:各種資料により分類に相違が見られるため、文献?の分類に従った。
註2.筋弛緩作用・抗痙攣作用の力価は文献?の判定に従った。
註3.抗不安作用・催眠鎮静作用・抗うつ作用の力価は文献?の判定に従った。
註4.力価の漢字表記は文献?の表記に従った。

上表に見られるとおり、各薬剤の力価は報告者により若干の相違があり、『評価は確立していない』ということが出来る。従って本表の利用に際しては、あくまで参照程度と考えることが必要である。なお、高齢者には中力価・中期作用型が有用とする報告が見られる。

作用時間区分による適用

短期作用型
(6時間以内)
1)不安発作(パニック障害)に対する頓用に有用。
2)連用後に中断すると反跳性不安・退薬症候を起こしやすい。
3)高力価・短期作用型では健忘や譫妄・錯乱の報告がある。
4)高齢者には投与を避ける。
中期作用型
(12-24時間以内)
1)高齢者への投与可能。
2)全般性不安障害に対して1日1回(せいぜい2回)連用。
長期作用型
(24時間以上)
1)服薬回数を削減できる。
2)依存者の離脱に有効。
3)連用によって体内蓄積を起こすおそれがある。
4)高齢者には投与を避ける。
5)全般性不安障害に対して1日1回(せいぜい2回)連用。
6)benzodiazepine依存者に対しては、長期作用型に変更して離脱を図る。代替薬として抗うつ薬が有用。
超長期作用型
(90時間以上)
1)高齢者には投与を避ける。

力価区分による適用

?高力価型
 
1)標準1日最低用量:5mg≧
2)高齢者には高力価・短期作用型(譫妄・健忘を惹起する恐れ)を避ける。
 
?中力価型
 
1)標準1日最低用量:6mg<10mg
2)高齢者には中力価・中期作用型が有用。
 
?低力価型
 
1)標準1日最低用量:10mg≦
2)高齢者には低力価・中期作用型が有用。
 

[015.4.BEN:2003.11.11.古泉秀夫]

 
1)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
2)融 道男:向精神薬マニュアル;医学書院,1998
3)田中良子・編:臨床で役立つ-薬効別服薬指導マニュアル 第3版;薬業時報社,1990
4)大内尉義・他編:疾患と治療薬-医師・薬剤師のためのマニュアル 改訂第5版;南江堂,2003

アロエとワーファリンの相互作用

木曜日, 1月 10th, 2008

KW:健康食品・漢方薬・相互作用・アロエ・キダチアロエ・ワーファリン・ビタミンK含有量

Q:アロエとワーファリンの相互作用。アロエジュース中にビタミンKは含まれているか。

A:キダチアロエロイヤルエキス(株式会社ひらたヘルシー;群馬県群馬郡群馬町棟高1675-20TEL.0120-40-3433)の分析資料によれば、次の含有成分が報告されている。

分析試験項目 結果
水分 98.2%
蛋白質 0.1%[窒素・蛋白質換算計数;6.25]
脂質 0.1%
繊維 0
灰分 0.5%
糖質 1.1%[計算式:100-(水分+蛋白質+脂質+繊維+灰分)]

また、アロエ中の主な成分一覧として、次の資料が紹介されている。

植物フェノール類
アントラキノン類 アロエエモジン、クリソファノール、ラバルベロン、ラムノサイド
クロモン誘導体 アロエシン、フェルロイアルアロエシン、クマロイアルアロエシン
糖類-単糖類 グルコース、キシロース、マンノース、アラビノース、フルクトース、ガラクトース
糖類-多糖類 セルロース、アルドナンテーゼ、ムチン、D-マンノース
ビタミン類 ビタミンA,B1,B2,B6,B12,C,E,パントテン酸、葉酸
ミネラル類 カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン、クロム、銅、ゲルマニウム、塩化物、硫酸塩
アミノ酸類 トリプトファン、ロイシン、イソロイシン、リジン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、チロシン、ヒスチジン、アルギニン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン
酵素 アリナーゼ、アミラーゼ、カタラーゼ、オキシダーゼ、リパーゼ、アロエカルボキシペプチダーゼ、プロテアーゼインヒビター、アロエレクチン様物質、TNF様物質、アンチトリプシン中和物質、トリプシン様プロテアーゼ、セルラーゼ
その他 ヘキスロン酸、ペテログルタミン酸、グルクロン酸、タンニン、葉緑素、植物ホルモン、カサンスラノールI・II、アロエチン酸ペンタヒドロキシフラボン、ヒドロキシクロモン、サポニン、カルシウムオキサレート、ムコポリサッカラーゼ複合体、ミルセンリモネン、コニフェニールアルコール、2-メチル-2- フィチン-6-クロマノール、グルコサミン、ヘコゲニン、サボゲニングルコシド、コリン、コリンサリチル酸塩

 

以上の成分表中に具体的にビタミンKの記載はされていない。

但し、その他の成分中に「葉緑素」の記載がされており、植物の光合成において葉緑素の生成にビタミンKが重要な役割を果たしているとする報告もされていることから、葉緑素が存在する植物ではビタミンKがその成分中に存在することは否定できない。また、ワーファリン錠の添付文書中に上記成分との相互作用の記載はされていないが、アロエ中に含有する成分の全てについて、薬理作用等が解明されているとは限らないので、ワーファリン錠服用中の患者がアロエジュースを飲用している場合、アロエジュースの飲用中断はないと仮定して、トロンボテスト等の検査結果を見ながら判断する。

その他、日本薬局方の記載を参照すると、アロエ(aloe)、別名ロカイ。アロエ末のラット経口投与による潟下効果はbarbaloin含量に比例し、塩酸テトラサイクリン前投与で著明に減弱するが、これはbarbaloinの腸内菌による代謝的活性化を示唆するものである。ヒト糞便菌叢又はラット盲腸内菌叢の作用でbarbaloinからaloe-emodinanthroneの生成が認められるが、この代謝物はラット結腸粘膜の傍細胞透過性を増大させることなどにより、結腸内腔液量を増加させる。アロエ及びaloinは、ヒト又はラットにおいて排便促進作用を有する。

本品の副作用として、大量の服用は腹部の疝痛と骨盤内臓器の充血を起こすので、妊娠時、月経時、腎炎、痔疾の場合などには注意するとされている。

[510.FD38.015.2ALO][1996.7.8.・1999.3.22.一部改訂.古泉秀夫]


  1. 株式会社ひらたヘルシー・私信1996.5.31.
  2. 第12改正日本薬局方解説書;広川書店,1991
  3. ワーファリン錠添付文書,1995.7.改訂
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI-News,No.1556,1997.6.11.より転載。

アセトアミノフェンの苦味マスキング法

木曜日, 1月 10th, 2008

KW:物理・化学的性状・苦味マスキング法・アセトアミノフェン・acetaminophen・添加物・矯味用賦形剤・製剤処方

 

Q:ライ症候群発生以来小児用バファリンに代えてアセトアミノフェンが使用されるようになったが、苦くて服用し難いの苦情が相次いでいる。投薬法の工夫を教えて下さい。

 

A:acetaminophen[ピリナジン(山之内製薬)]は、非ピリン系の解熱・鎮痛剤であり、その添付文書中に「小児に対する安全性は確立していない」の記載が見られるが、小児に投与されているのは事実である。尚、本品の性状について、添付文書中の記載を見ると、白色の結晶又は結晶性の粉末で、臭いはない。

エタノール又はピリジンに溶け易く、熱湯、イソアミルアルコール又は温イソアミルアルコールにやや溶け易く、水又は温湯にやや溶け難く、エーテルに極めて溶け難い。水酸化ナトリウム試液に溶け、飽和水溶液は僅かに酸性であるとされているが、味に関する記載はされていない。

本品の原末を口中に含んだ場合、その直後には苦味感がないが、口内で本品が溶けた段階では、質問の通り苦味感があり、あるいは小児では服用困難の苦情が出る可能性は否定できない。また、本品を乳鉢中で微粉末化し乳糖と1:1の割合で混合した場合の味について確認したが、苦味感は増す傾向が見られた。

次に矯味用賦形剤の処方例について調査したところ、次の処方例が報告されていた。

  P-S(10) P-S(20)
  処方 製剤処方 処方 製剤処方
sodiumcyclohexylsulfamate(シクラミン酸ナトリウム) 0.1g 100g 0.2g 200mg
ice-creamessenceNo.500
(アイスクリーム・エッセンスNo.500*)
適量 10mL 適量 10mL
starch(澱粉) 0.3g 300g 0.3g 300g
lactose(乳糖) 適量 600g 適量 600g
全量 1g 1000g 1g 1000g

 

[注]アイスクリーム・エッセンスNo.500は、本品50gにつき10滴の割合で添加する。

  • 調製法:澱粉の一部にアイスクリーム・エッセンスNo.500を加えた後、各薬品を5号篩(50メッシュ)で篩過し、常法に従って散剤とする。
  • 貯法:気密容器
  • 応用:甘味賦形剤として用いる。

その他、ココア末0.1gに乳糖0.9gを加えた賦形剤を苦味のマスキング剤として使用している例、及びココア末に5%-10%のサッカリンナトリウムを添加し、マスキング剤として使用している例等が報告されており、これらの報告例に従って賦形剤を調製し、添加することで、 Acetaminophenの苦味は防げるものと考える。

[114.FD15.014.47AC][1991.3.13.・1999.3.26.一部修正.古泉秀夫]


  1. ピリナジン添付文書,1986
  2. 野上寿:薬局製剤とその解説;南山堂,1964,p.41
  3. 稲丸量一・他:小児科領域における繁用賦形剤について;薬局,36(4):489-494(1985)
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.42,1991.3.19.より転載

アマランサスについて

木曜日, 1月 10th, 2008

KW:健康食品・アマランサス・アトピー・amaranthus・成分・組成・カルダータス・ヒポコンドリアカス・ケニアッタ

Q:粟・稗等の餅の中にアマランサスを入れた物が市販されており、アトピーに良いと新聞に書いてあったが、このアマランサスとは何か

A:新聞報道[1991.10.3.朝日新聞・朝刊-神奈川版]によれば、

猿害に縁遠い転間作物・アマランサスを神奈川-真鶴農協[TEL.0465-68-1225]が栽培として、ミカンの減反後地に「健康食品」として使われる作物アマランサスの試験栽培を始めている。粟に似た実を粉にし小麦粉に混ぜ、パンやうどんに加工して同農協で販売する計画。アマランサスは中南米が原産、その実にはミネラルや蛋白質を多く含み、アトピー性皮膚炎で愛用する人も多い

等の報道がされている。

尚、amaranthusについて、次の報告がされている。

アマランサスは、インカの古代食物として長い伝統と歴史を持つが、儀式用食物として用いられていたため、邪教の食物としてその価値が認められず、ヨーロッパにも紹介されず、19世紀に入りアジアに紹介された。その後アフリカに導入され、野菜や穀物としての利用が広がってきた。アマランサスは、野菜として夏期の高温でも良く生育し、C4植物の性質を持ち、他の野菜の生育しない不良環境でも良く育つだけではなく、蛋白質・ビタミンC・鉄・カルシウム・線維等、特に昨今栄養として要求される成分を極めて豊富に含んでいる。

アマランサス茎・葉の主要成分(乾物100g当たりの成分量)

乾物重量 15.0g
カロチン 5.7mg
6.9mg
カルシウム 410mg
ビタミンC 64mg
蛋白質 4.6g
脂質 968mg

アマランサスの穀実は、疑穀類といわれ、穀物でない穀物として分類されている。穀類の栄養成分は、蛋白質や脂質、線維等のほか、カルシウム・リン・鉄・カリウム等を豊富に含み、他の穀類にない優れた成分組成を持っている。更に近年、食物性アレルギーのアトピー性皮膚炎にアマランサスが有効であるとして、御飯やパンに約10%混ぜて調理すると、アレルギーが回避できるとする報告がみられる。

アマランサス実の栄養成分組成比較(可食部100g当たり)

廃棄率(%) ?
エネルギー 372kcal
水分 9.8g
蛋白質 13.0g
脂質 7.3g
灰分 4.6g
炭水化物
糖質 61.3g
繊維 4.0g
無機質
Ca 152mg
P 485mg
Fe 111mg
Na 6.9mg
K 969mg
ビタミン
B1 0.06mg
B2 0.20mg
ナイアシン 1.7mg
C 0

食物連鎖の中で、どの様な作用があるのかは解明されていないが、脂質の中に占める脂肪酸が炭素数16のパルミチン酸と18のステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が脂肪酸総量の97.33%を占め、これがアトピーの回避機作と深い係わりがあるのではないかとされている。

アマランサスの種類

 

■ カルダータス[AmaranthscaudatusL.](餅・タイプ)
子実利用。→ヒユ科の植物。センニンコク(和名)、老槍穀(ロウソウコク)。葉はベタイン、蓚酸塩を含む。種子にはフィトヘマグルチニンと脂肪油を含み、その中には飽和脂肪酸23.8%、不飽和脂肪酸71%、不鹸化性物質3.2%を含む。脂肪酸中にはパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸を含む。不鹸化性物質には4種類のステロイドを含み、その中の一つはβ-シトステロールである。
■ ヒポコンドリアカス(ウルチ・タイプ)
子実利用・野菜利用
■ ケニアッタ(ウルチ・タイプ)
子実利用・野菜利用
■ トリカラー[AmaranthustricolorL.]
鑑賞用花き・野菜利用。→ヒユ科の植物。雁来紅(和名)ハゲイトウ。→大量のビタミンC、アマランチン含む。
■パイアム
野菜

アマランサスの利用
機能性食品 アトピー性皮膚炎等
健康食品
  1. うどん・ソバ→乾麺(5%程度混入)
  2. 生麺(10%程度混入)
  3. パン・クッキー(カルダータス)
  4. その他→御飯(10?20%)/雑炊(20?25%)

[59.FD19.011.1AMA][1992.1.21.・1999.4.9.一部修正.古泉秀夫]


  1. SDIC・私信,1992
  2. 真鶴農協・私信,1992
  3. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典[第一巻];小学館,1985,p.399
  4. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典[第三巻];小学館,1985
  5. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典[第四巻];小学館,1985,p.2761
  6. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.243,1992.1.23.より転載