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アニサキス症について

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:薬物療法・アニサキス症・anisakisis・幼虫寄生・消化管障害・海産魚類・ニシン・サバ・アジ・サケ・スルメイカ・イルカ・アザラシ・海産哺乳類

 

Q:アニサキス症の治療とアニサキスの抵抗性

 

A:アニサキス症(anisakisis)は、アニサキス亜科に属するアニサキス属(アニサキスI、II型)及びテラノパ属(テラノパA、B型)の幼虫の寄生による消化管障害を称する。これらの幼虫は本来海産魚類(ニシン、サバ、アジ、サケ、スルメイカ)に寄生し、海産哺乳類(イルカ、アザラシ)体内で成虫となる。

ヒトが感染魚肉を生食すると幼虫が胃や小腸粘膜に穿入し急性腹[部]症を呈する。我が国で発生したアニサキス症の大部分はイルカ類の胃に寄生する Anisakissimplexの幼虫によるもので、サバ、サケ、マス、スルメイカ等の生食により感染する、嘔気、嘔。発症は全国的に見られるが、最近では九州で激増している。

このほかにオットセイ、アシカ等の胃に寄生するPseudoteranvadecipienceの幼虫によるアニサキス症で、タラ、ホッケ、オヒョウ等の生食で感染し、主として北海道、青森県、日本海沿岸本州北部で発生している。

両者の臨床症状に大差はないが、Pseudoteranvadecipienceの幼虫によるアニサキス症は胃症状にのみ局限している。原因食としては、シメサバ、バッテラ寿司等が圧倒的に多い。食後3?8時間で絞り上げるような上腹部痛、嘔気、嘔吐、悪心を訴え、内視鏡で胃壁浸入中の幼虫を認める。1?5日後吐、筋性防御無き下腹部痛、腹水貯留を示すときは幼虫の回腸末端部侵襲を疑う。

治療方針

 

胃アニサキス症の場合、内視鏡による浸入虫体の確認に続き生検鉗子で摘出する。出血部位を観察するうちに虫体が出てくることもある。激痛のため内視鏡が使用できない場合や食事直後のため内視鏡観察の出来ない場合、抗アレルギー剤の静注、メベンダゾール投与を行う。腸アニサキス症は原則ととして開腹手術することなく、メベンダゾール投与とともに保存療法として消炎剤投与、輸液、腸管通過障害に腸紐の使用などを試みる。

1)抗アレルギー剤

強力ネオミノファーゲンC

40mL
デカドロン 2mg
生理食塩水 20mL

以上静注が有効とされる。

2)駆虫薬
 

メベンダゾール錠(mebendazole)

100mg/回
1日2回(朝・夕) 3日間経口投与
3)その他
内視鏡の届かない部位に、アニサキスの幼虫が残存している可能性がある場合、pyrantelpamoate[コンバントリン錠]の1回頓用を試みる。但し、本症の薬物療法は、あくまで補助的手段である。

なお、アニサキス幼虫の抵抗性について、次の報告がされている。

水道水・蒸留水中での生存期間及び消毒剤、熱、酸、アルカリに対する抵抗性(試験液1mLに対しアニサキス幼虫1匹を入れ、経過観察。虫体を刺激してから5分間全く動かない場合『死』と判定した)

試験対象物 条件

結果( )内検体数

水道水 室温 最長14日生存(10)
37℃ 7日以内死滅(10)
蒸留水  

最長20日生存(5)

ホルマリン 1% 最長6日生存(5)
5% 最長250分生存(5)
10% 最長170分生存(5)
アルコール 10% 最長5日生存(5)
20% 最長180分生存(5)
30% 100分以内に死滅(5)
50% 25分以内に死滅(5)
70% 5分以内に死滅(5)
100% 1分以内に死滅(5)
高温(温湯浸漬) 45℃ 生存期間61-78分(10)
50℃ 8秒で死滅(5)
60℃ 1秒で死滅(10)
70℃ 瞬時に死滅(10)
低温(水道水、冷蔵庫で冷却) ?10℃ 1日以内に死滅(10)
?15℃ 5時間以内死滅(10)
?20℃ 3時間以内死滅(10)
塩酸 pH:0.8 最長11日生存(10)
pH:2.0 最長112日生存(5)
pH:2.4-2.8 最長90日生存(5)
pH:3.4 最長64日生存(5)
pH:4.6-4.8 最長51日生存(5)
3%-石炭酸 pH:5.4 1日以内に死滅(10)
1%-硫酸 pH:1.6 最長8日生存(10)
1%-乳酸 pH:2.2 最長30日生存(10)
5%-酢酸 pH:2.0 最長32日生存(10)
食酢 pH:2.0 最長35日生存(10)
1%-水酸化ナトリウム pH:13.2 1日以内に死滅(10)
1%-水酸化カリウム pH:12.2 最長6日間生存(10)
1%-炭酸ナトリウム pH:11.4 最長35日生存(10)

[035.1ANI:2000.3.2.古泉秀夫]


  1. 南山堂医学大辞典,1992
  2. 日野原重明・他監修:今日の医療指針;医学書院,1991
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2000
  4. 川田茂宏:大阪医科大学誌,26:224-244(1968)
  5. 西山利正・他:臨床と微生物,23(2):157-160(1996)

アルカリイオン水での薬の服用について

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:物理化学的性状・相互作用・アルカリイオン水・酸性水・陽イオン・陰イオン・水酸化イオン・水素イオン・陰極反応・陽極反応

 

Q:現在、アルカリイオン水を飲用しているが、アルカリイオン水で薬を服用することに差し障りはないか

 

A:アルカリイオン水の性状について、次の通り報告されている。電解槽にカルシウムイオン(乳酸カルシウム)を含む原料水を入れ、水に直流電圧を放電すると、直流電流が流れ、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン等の陽イオンは陰極に引き寄せられ、塩化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等の陰イオンは陽極に誘引される。両極間に掛かる電圧が十分に大きければ、電極表面において接触している水は電気分解され、下記の反応が生じる。

  • 陰極反応:2H2O + 2e? → H2 + 2OH?
  • 陽極反応:2H2O → O2 + 4H+ + 4e?

陽極側では水酸化イオン(OH?)、陽イオン及び溶存水素(H2)が多くなり、pH値の高いアルカリイオン水が生成され、陽極側では水素イオン(H+) 、陰イオン及び溶存酸素(O2 )等が多くなり、pH値の低い(弱)酸性水が生成される。

生成水 pH 酸化還元電位 陽イオン 陰イオン 溶存気体
アルカリイオン水 9-10程度 低い 増加 減少 水素
(弱)酸性水 4-6程度 高い 減少 増加 酸素、(塩素)

 

医療用具としての承認を受けているアルカリイオン整水器は、次の効能・効果が承認されている。

  • アルカリイオン水:飲用して慢性下痢、消化不良、胃腸内異常醗酵、制酸、胃酸過多
  • 酸性水:弱酸性のアストリンゼントとして美容に用いられる。

アルカリイオン水の作用機序については、現段階で明確に解明されていないが、カルシウムを添加してpHが弱アルカリ性となることから『水酸化カルシウム[Ca(OH)2]』が含まれていることになり、水酸化カルシウムに由来する薬理作用の発現が予測される。

以上の各報告を受けてアルカリイオン水飲用時の注意事項について、次の報告がされている。

(1)アルカリイオン水を飲用するときには、次のことに注意する。
[1]医薬品服用時の水としてアルカリイオン水を使用しない.
[2]無酸症の診断をされた者ではアルカリイオン水を飲用しない。
(2)アルカリイオン水を飲用して異常を感じたとき、又は飲用を続けても症状の改善が見られない場合は、医師又は薬剤師に相談する。

(3)持病を有する者又は身体の弱っている者では、アルカリイオン水を飲用する前に医師又は薬剤師に相談する。

なお、アルカリイオン水での薬の服用については、『薬を服用するときは常水でおのみ下さい。アルカリイオン水そのものが効能・効果の認められる水ですので、他の薬と同時に服用することは避けてください』の注意が求められている。

その他、calcium製剤の相互作用として、

  1. テトラサイクリン系抗生物質とカルシウム製剤の併用により、テトラサイクリン系抗生物質の吸収を阻害することがある。
  2. カルシウム製剤の服用により消化管内・体液のpH上昇、併用薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがある。
  3. カルシウム製剤とビタミンDとの併用により、高カルシウム血症が現れやすくなる。
  4. カルシウム製剤は、ジギタリスの作用増強の可能性があるとされており、ジギタリス中毒症状発現の可能性。
  5. リン酸エストラムスチンナトリウムではカルシウムイオンとの間に、不溶性の複合体形成の報告。

等の報告がされており、注意が必要である。

[014.4.ALK:2003.6.24.古泉秀夫]


  1. アルカリイオン水整水器協会:http://www.3aaa.gr.jp/wa/index.html.,2003.6.24.
  2. 第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001
  3. エストラサイトカプセル添付文書,2001.9.改訂

アドヒアランスについて

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:語彙解釈・アドヒアランス・adherence・コンプライアンス・compliance・服薬遵守・non-compliance・服薬非遵守

 

Q:アドヒアランスとコンプライアンスの違い

 

A:各語の語意について以下の通り解説されている。

語彙 adherence compliance
語意
  1. 密着、粘 着;執着、固執、固守;忠実(fidelity);(強固な)愛着、支持。
  2. 粘着作用;粘着性、粘着力。(精神的な)固守、執着、忠実。
  3. その他、
    1.(………に対する)執着、固守;信奉、支持。
    2.(まれ)(………に対する)粘着、付着。
  1. (命令、申 し出・要求などに)従うこと、黙従、屈服。
  2. 素直さ、従順、(特に)無気力で追従的な素直さ、卑屈。
  3. 応諾、承認。
  4. 協力;服従。
  5. [物理] ひずみとそれを起こす外力との比。
  6. 1.(要求・希望などに)そうこと、承諾。
    2.人の言いなりになること、従順さ、追従。
  7. その他
    1.(要求・命令等に)従うこと.
    2.追従、へつらい。

医療関係解釈

adherence は、患者が治療に能動的に参加できること。患者が実行可能な治療内容であること。患者のセルフケア能力・社会心理的な状態、患者-医療関係者の人間関係等を重視したもので、医療関係者側の因子の影響を受ける。 薬剤関係で見ると 『服薬』に関連してcomplianceは『服薬遵守』と訳され、『コンプライアンスが良い(高い)』、『コンプライアンスが悪い(低い)』と表現されている。

 

■『服薬遵守』という概念は、『医療従事者の指示に、患者がどの程度従っているのか』という視点での評価がされるということである。その判断の基準は、あくまでも医療従事者の側にあり、指示通り服薬できない患者については、患者側の問題として判断され、『服薬遵守』を高めるためには、患者を説得するという行為が行われる。

しかし、non compliance(服薬非遵守)は、全ての要因が患者側にあるわけではなく、医療関係者と患者の信頼関係の不足(患者情報の収集不足、患者の生活習慣に対する無理解、服用困難な処方や剤形の選択、あるいは事前の十分な服用意義の説明不足等)のため、多くは医療従事者側の独善的な思いこみに、その要因の殆どがあるということができる。

■adherenceは、compliance の維持・向上のために志向された概念であり、「熟練した医療従事者達が『患者は治療に従順であるべき』という患者像から離脱することを意図した概念(Stanton,1987)」、「医療従事者-患者間の関係及び相互作用に着目(Ley,1988)と紹介されている。

■adherenceという用語、概念についての認識は「第12回日本エイズ学会 総会(1998.12.1-2)サテライトシンポジウム」において取り上げられた結果であると考えられる。

■現在の抗HIV療法は、服用方法の複雑化(食前、食後、食間等の組み合わせ)、副作用・相互作用も多く、患者には大きな負担となっている。また、慢性の感染症疾患として長期間服用しなければならないための動機付けが困難、服薬非遵守が交差耐性の発現を起こした場合、使用可能な薬剤が少ない、更には経済的な負担が大きいこと等が問題として指摘される。

これらの患者において、服薬率を高めるためには、『医療従事者の指示をいかに守らせるか』だけではなく、薬剤・患者・医療関係者側のそれぞれの因子を総合的に考え、『患者が参加し、実行可能な薬物療法を計画、実行』することが必要である。

ただし、complianceにしろadherenceにしろ、外国では医療関係者が実地医療の中で生み出した思想であるが、我が国の場合、『単なる受け売り』に過ぎず、その認識において差が見られるのはやむを得ないが、患者対医療関係者の関係を真に見直す契機となるよう努力することが求められる。

(参照)アドヒアランスの維持
1. 処方に関して
予測される副作用と対処をあらかじめ説明し、副作用が発現した場合は適切に対処する。服薬条件を単純化する(例えば薬剤毎の食前・食後投与を一括)。有害な薬物相互作用に注意。可能であれば、服薬回数、錠数の少ない処方に変更する。
2. 患者に対して
患者が理解し、受け入れられる服薬計画。治療の意義・目標を説明し理解を求める。最初の処方箋を書く前に、患者が服薬のできる環境を整える時間を設ける。家族・友人の支援を求める。患者の食事時間、日々のスケジュールに合わせた処方、副作用を回避する処方を作成する。
3. 医療関係者に関して
患者との信頼関係の確立。患者にとっての情報源となり、継続的な援助と観察を行う。医療関係者が休暇中などにも患者の問題に対して対応できるよう連絡体制を整える。アドヒアランスの状況を観察し、維持が困難な場合は、来院回数を増やす、家族・友人の支援を求める、医療者チームの中の専門職を紹介するなどの対策をとる。新たな疾患(うつ状態、肝臓病、衰弱、薬物依存など)が出現した場合、アドヒアランスへの影響を考慮し、対処する。医師、看護師、薬剤師、カウンセラー、ソーシャルワーカーなどがチームとなり、アドヒアランスを維持するための対策を考え、互いに患者と密接に連絡を取りながら支援を行う。

[615.8.ADH:2002.11.25.古泉秀夫・2004.2.11.改訂]


  1. 竹林 滋・他:ライトハウス英和辞典;株式会社研究社,1984
  2. 小西友七・代表編:ジーニアス英和辞典;株式会社大修館書店,1995
  3. 堀 成美:アドヒアランスを左右する因子;看護学雑誌62(11),1998
  4. 東京都衛生局医療福祉部エイズ対策室;AIDS News Letter,7-1(65),1999.1.1
  5. 小学館ランダムハウス英和大辞典;?小学館,1979
  6. http://www.hivjp.org/guidebook/guide_07.html (2004.2.11.)

アダラートの脱カプセル化について

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:物理化学的性状・特殊用例・粉末化・脱カプセル化・アダラート・ニフェジピン・nifedipine

 

Q:アダラートの脱カプセル調剤は可能か

 

A:アダラート(バイエル薬品)は、1Cap.中にニフェジピン(nifedipine)5mg・10mgを含有する橙色の軟カプセル剤で、カ プセル内容物は黄色?帯赤黄色の粘性の液体である。

剤型 ×
温度安定性
湿度安定性
光安定性 ×
水溶解性 ×
力価 ×
臭い
融点
総合判定 ×

 

nifedipineは黄色の結晶性の粉末で、臭い及び味はない。アセトン又はジクロルメタンに溶け易く、メタノール、氷酢酸又はエタノール (95)にやや溶け難く、ジエチルエーテルに溶け難く、水には殆ど溶けない。また光によって変化する。わずかに吸湿性を示す。融点:172-175℃。

本剤原薬の安定性試験の結果を見ると固体状態では比較的安定であるが、吸収性を高めるための液体状態では、耐熱試験の一部で力価の低下が認められている。

また、本品原薬は光に対する安定性が悪く、次の試験結果が報告されている。

試料 保存条件 保存容器 試験成績
固体状態 直射日光照射 無色粉末用アンプル 4日間で外観変化、含量低下 (含量32.2%)
同上 室内散乱光下 同上 10日間変化は認められず安 定であった。
液体状態 直射日光照射 蓋付褐色サンプル瓶 1.5時間後全て分解した。
同上 室内散乱光下 同上 3時間後含量低下が認められ た(含量84.2%)

 

無色透明のガラス瓶中においては比較的短時間で光分解するが、褐色ガラス瓶中においては、24時間後に痕跡程度に光分解物が認められたに過ぎ なかった。またアルミフィルムで包装した褐色ガラス瓶中においては光分解は認められなかった。』

その他、本剤添付文書中の2.重要な基本的注意の(2)として『まれに過度の低血圧を起こし、ショック症状や一過性の意識障害、脳梗塞があらわれることがあるので、その様な場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、速効性を期待した本剤の舌下投与(カプセルをかみ砕いた後、口中に含むか又はのみこませること)は、過度の降圧や反射性頻脈をきたすことがあるので、用いないこと。』とする記載がされている。

以上の各報告から本剤のカプセル内容物は液状をしているため、簡単に脱カプセルすることは困難であり、病院等で看護師が服薬介助を行う場合以 外、実施は困難であると考えられる。また、前もって予製剤することは、製剤の安定性が担保できないため回避すべきである。

[014.4.NIF:2004.10.4.古泉秀夫]


  1. アダラート添付文書,2002.9.改訂
  2. アダラートインタビューフォーム,1999.10.作成

アダラートL錠の粉末化について

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:物理化学的性状・特殊用例・粉末化・錠剤粉砕・アダラートL錠・ニフェジピン・nifedipine・徐放錠

 

Q:アダラートL錠の粉末化調剤は可能か

 

A:アダラートL錠(バイエル薬品)は、1錠中にニフェジピン(nifedipine)10mg・20mgを含有する淡赤色のフィルムコーティ ング錠である。

なお、本剤の製剤上の特性について『粒度分布が一定である微粉化ニフェジピン(micronized nifedipine)を用いることにより吸収遅延型又は溶出持続型が達成されたことによる持効錠』とされている。

剤型 ×
温度安定性 ?
湿度安定性 ?
光安定性 ?
水溶解性 ?
力価 ?
?
臭い ?
融点 ?
総合判定 ×

なお、本剤の粉末化については、インタビューフォーム-X-3.薬剤取扱い上の注意点として『本剤は徐放性のフィルムコーティング錠であり、粉砕により作用持続性及び光に対する安定性が失われることが考えられるため、 粉砕して使用しないこと』とする注意事項の記載がある。

従って、本剤を粉末化することは本剤の製剤特性である持効性を喪失させるため行ってはならない。

なお「L」の略号はLong actingの略記である。

[014.4.NIF:2004.10.4.古泉秀夫]


  1. アダラートL錠添付文書,2001.10.改訂
  2. アダラートL錠インタビューフォーム,1999.10.作成

アダラートCR錠の粉末化について

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:物理化学的性状・特殊用例・粉末化・錠剤粉砕・アダラートCR錠・ニフェジピン・nifedipine・有核錠・徐放錠

 

Q:アダラートCR錠の粉末化調剤は可能か

 

A:アダラートCR錠(バイエル薬品)は、1錠中にニフェジピン(nifedipine) 10mg(帯赤灰色)・20mg(淡赤色)・40mg(淡赤褐色)を含有する徐放化システム(有核錠)を導入したフィルムコート錠である。また本剤は nifedipineを一定速度で放出する徐放性の外層部と、それよりも薬物放出速度が速くなるよう設計された内核錠から構成された有核錠である。

従って本剤を粉末化した場合、薬物放出特性、消化管通過速度及び消化管の運動性を考慮したとされる製剤特性が破壊される。

剤型 ×
温度安定性 ?
湿度安定性 ?
光安定性 ?
水溶解性 ?
力価 ?
?
臭い ?
融点 ?
総合判定 ×

 

なお、本剤の粉末化等について、添付文書中に次の注意事項が記載されている。

『9.適用上の注意-(1)服用時:本剤は割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのま まかまずに服用させること[割ったり、かみくだいたりして服用すると、血中濃度が高くなり、頭痛、顔面紅潮等の副作用が発現しやすくなる可 能性がある]。』

従って、如何なる理由であれ本剤を粉末化することは、本剤を使用する意味を失うことになる。

本剤商品名の『CR』の略号はControlled Releaseを略記したものである。

[014.4.NIF:2004.10.4.古泉秀夫]


  1. アダラートCR錠添付文書,2001.10.改訂
  2. アダラートCR錠インタビューフォーム,1999.3.作成

アクリルアミドの毒性について

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:毒性・中毒・アクリルアミド・acrylamide・発癌性・ポテトチップス・フライドポテト・経皮吸収・土壌凝固剤・接着剤

 

Q:新聞報道されていたアクリルアミドの毒性について

 

A:新聞報道の内容は

『世界保健機関(WHO)の食糧農業機関(FAO)の合同専門委員会が、ポテトチップスやフライドポテトなど高温で調理された食品に含まれる化学物質アクリルアミドについて「健康に有害な恐れがあるかも知れず、食品含有量を低減すべきだ」との勧告を出した。

アクリルアミドは、地下工事の土壌凝固剤などに広く使用される化学物質で、動物実験で発癌性が指摘されていた。更に2002年スウェーデンの研究によって、炭水化物の多い芋類などを120℃以上で焼いたり、揚げたりした加工食品にも含まれていることが新たに判明した。

厚生労働省も同年に国内製品での含有を確認しており、過度の摂取をしないよう呼びかけるとともに、詳細なデータ収集作業を進めている』     [読売新聞,第46325号,2005.3.7.]

とするものである。

アクリルアミド(acrylamide)—–[独]Acrylamid

 

  • 別名:プロペンアミド(propenamide)、CH2=CH-CONH2:71.08。
  • 無臭の白色結晶。
  • 比重1.122(20℃)、融点:84.5℃、沸点:87℃(266Pa)、125℃(3,325Pa)。
  • 水(30℃で水100mLに 215.5g溶ける)、アルコール、アセトンに可溶、ベンゼン、ヘプタンに不溶。
  • 室温で安定、溶融すれば激しく重合する。

 


用途

 

  1. 凝集剤:acrylamide系ポリマーとして水中に懸濁する粒子に作用させ、これを凝集沈降させる。また沈降物の含水率を減らしてろ過などを容易にする。→下水・屎尿処理等。
  2. 土壌改良剤:土粒子を団粒化し、空気の流通性、水浸透性、保水性を改良する目的で、ポリアクリルアミドの加水分解物が開発されている。
  3. 繊維改質及び樹脂加工:合成繊維を含む各種繊維に対して、acrylamideをカルバモイル化又はグラフト重合させ、繊維そのものの基礎物性を改良したりセルロース系織物のシワ防止、防縮、風合いの改良を目的とした樹脂加工等に使用される。
  4. 紙力増強剤:従来から使用されている澱粉、水溶性アミノ樹脂等の代替あるいは併用の形で実用化されている。
  5. 接着剤:ポリアクリルアミドをフェノール樹脂溶液とともに使用したガラス繊維の接着剤、合成ゴム系エマルジョン等と併用した感圧接着剤。
  6. 塗料:アクリル系熱硬化性塗料の原料。
  7. 石油回収剤:ポリアクリルアミド水溶液を地下油層中に注入し石油二次回収を行う。

 

毒性

 

  • 許容濃度0.3mg/m3(皮膚)、ACGIH 0.03mg/m3(TWA)、管理濃度0.3mg/m3。IARC 2A。経皮吸収有り。皮膚、呼吸器、消化管より吸収され、皮膚障害、言語障害、末梢神経炎、小脳性失調などを起こす。中毒症状は主に慢性障害で、神経症状と肝障害を起こす。
  • 粉体、水溶液ともに皮膚から容易に吸収される。生体内に吸収されたacrylamideは分解されやすく、蓄積性が少ないことから中毒からの回復は比較的早いという報告も見られる。
  • acrylamide は皮膚から吸収されやすいのが特徴で、工場での中毒の多くは経皮中毒である。足先からの麻痺で始まり、知覚麻痺から運動麻痺へと進む。
  • 運動失調、四肢冷感、筋力低下、知覚異常、腱反射消失、末梢の関節の位置感覚の減弱、末梢の振動感覚の減弱などが見られるが、圧感は残る。
  • 小脳失調のような症状も見られる。職業性の経皮慢性中毒が殆どであるが、自宅前の道路の下水管埋設のための薬液注入工法に使った地盤凝固剤acrylamideが井戸水に混入し、井戸水を使用していた一家5人に中毒事故が発生したという甚だ稀な事例も見られる。

 

刺激性

 

ウサギ(皮膚) 50mg/3day mild 500mg/24hr mild
ウサギ(眼) 10mg/30sec rinse mild 100mg/24hr moderate

 

急性毒性(LD50:mg/kg)

 

  経口 腹腔内 皮膚
ラット 124 90 400
マウス 170 70 (RTECS)  

 

恐らくヒトに発癌性がある。

その他『アクリルアミド問題の経過』として以下の報告が見られる。

1)スウェーデン食品庁の報告

平成14(2002)年4月、スウェーデン食品庁が、炭水化物を多く含む食材(注1)を高温で加熱して製造した食品(例えばポテトチップス、フライドポテト、ビスケットなど)に、アクリルアミドという化学物質が高濃度に含まれていると世界ではじめて発表した。これはストックホルム大学との共同研究で明らかになったもので、加熱しない生の食材や蒸してつくる食品にはアクリルアミドが見つからないことから、高温加熱によりアクリルアミドが生成すると考えられる。アクリルアミドは発ガン性をもつのではないかと考えられている物質である。 (注1)当初の報告では「炭水化物を多く含む食品」との表現であったが、その後研究でアスパラギンとブドウ糖などが、加熱により反応して、アクリルアミドが生成するということが解明されてきた。

2)各国の対応

スウェーデンと同様の結果がイギリス、ノルウェー、スイス、アメリカなどからも報告されている。アクリルアミドの存在が報告されたのがポテトチップスやフライドポテトなど、日常的に口にする食品であることや、アクリルアミド濃度が飲料水の基準値に比べて高いことなどから、世界中で大きな関心を呼んでいる。しかし、揚げたり焼いたりして作られた食品に高濃度のアクリルアミドが含まれているという報告が出されたが、これらの政府機関では、消費者の食事内容の変更、調理方法の変更については何ら改善方法を示していない。

[63.099.ACR:2005.3.28.古泉秀夫]


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  2. 独立行政法人食品総合研究所:アクリルアミド問題の経過;http://aa.iacfc.affrc.go.jp/keika.html,2005.3.20.
  3. 内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療;南江堂,2001
  4. 化学物質と法規制;http://www.chemlaw.co.jp/index.htm,2005.3.20.
  5. 14303の化学商品;化学工業日報社,2003

アサイベリーについて

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:健康食品・機能性食品・アサイベリー・Acai berry・アサイ・Assai・Assai palm・ヤシ科植物・ワカバキャベツ・ワカバキャベツヤシ

 

Q:健康食品の一種としてTV放映されていたアサイベリーについて

 

A:アサイベリー(Acai berry又はAssai berry)又はアサイと呼称される植物は、

  • ブラジル名:Acai
  • 学名:Euterpe oleracea Mar.
  • 英名:Assai palm
  • 和名:ワカバキャベツ・ワカバキャベツヤシ

等で標記されるヤシ科植物である。

Assaiは南米北部に自生し、アマゾン地方を中心として川沿い等の低湿地帯に生育し、年間を通して花が咲くとされている。果実は乾期に収穫され、6月-12月が主な収穫期だとする報告が見られる。

Assaiは通常株立ちし、幹の数は20以上に達するとされている。

木の高さは20m程度で、時に30mに達するものも見られる。

幹の径は約 12cm程度で、葉はヤシ科植物に特有の形態を示す。

花が咲き、実を付ける花序は、1本に3-4個付くとされている。

果実から搾取される果汁液は黒紫色で、果汁そのものに甘味はないとされている。また果実から採取する液には油分が豊富に含まれており、アイスクリームや種々の飲料に加工される。シリアルやタピオカの粒を混ぜて摂食も可能である。

よく「甘くないぜんざいのようなもの」というたとえで紹介されるが、食感はそれに限りなく近い。

新芽は「パルミット」とよばれる高級食材となる。

カロリー 水分 蛋白質 繊維 Ca P Fe カロテン VB1
247.00kcal

45.9g

3.80g

16.9g

118.00
mg

58.00
mg

11.80
mg

9mg

0.35
mg

 

VB2 ナイアシン VC 糖度 酸度 pH ポリフェノール アミノ酸
0.01mg 0.40mg 900mg 6.00% 0.13% 5.21 赤ワインの30倍

 

Feはレバーの約3倍、繊維は牛蒡の約3倍、Caは牛乳と同等とする報告がされている。

ただし、植物中の成分は、生育する環境によって、必ずしも一定していないので、含有成分について過信することは避けなければならない。

[015.9.ACA:2005.11.29.古泉秀夫]


  1. アマゾン群馬の森通信;http://amazon-gunma.hp.infoseek.co.jp.htm,2005.6.28.
  2. ワイルドフルーツサプリメント;http://www.frutafruta.com/c-02a.html,2005.6.28.
  3. http://amazon-gunma.hp.infoseek.co.jp/j-forest-watching06.htm,2005.11.29