イチジクの食効について

KW:健康食品・機能性食品・生薬・果実・イチジク・無花果・ムカカ・ペクチン

 

Q:健康食品としてイチジクを原材料とした製品が市販されているが、これの食効について

A:通常、イチジクと呼称されている果実は、クワ科の植物で、漢方名『無花果(ムカカ)』(和名:イチジク)の乾燥した花托である。

イチジク(Ficus carica L.)。

落葉低木若しくは小高木。高さは10mに達し、乳汁がある。

異名として阿駅(アエキ)・底珍(テイチン)・天生子(テンセイシ)、映日果(エイジツカ)、優曇鉢(ユウドンハチ)・蜜果(ミツカ)・文仙果(ブンセンカ)・品仙果(ヒンセンカ)等が報告されている。

  • [成分]:果実にはブドウ糖、果糖、蔗糖、クエン酸と少量のフマール酸、コハク酸、マロン酸、ピロリジン-カルボン酸、蓚酸、リンゴ酸、キナ酸及び植物成長ホルモン(オーキシン)を含む。乾燥果、未熟果及び植物の乳汁は抗腫瘍成分を含むとされている。乳汁中にはアミラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ等を含む。
  •  
  • [薬理]:無花果は豊富な栄養分を含み、食用にされる。
    便秘の時には、食物性の軽い下剤になる。
    樹の乳液(ラテックス)には、ラットの移植性肉腫を抑制する成分が含まれる(注射時)。
    乾燥果の水抽出物から活性炭、アセトン処理を経て得られる物質には、抗エールリッヒ肉腫の作用がある。
    未熟果実から得られる乳汁は、ラット移植性肉腫とマウスの自然性乳癌を抑制し、腫瘍を壊死させることができる。
    また移植性腺癌、骨髄性白血病、リンパ肉腫の成長を遅らせ、退化させることができる。この乳汁をラットに0.02mL、ウサギに0.05mL静脈注射すると、直ちに致死する。解剖すると内臓の毛細血管に損傷が見られ、腹腔内注射の状況もこれと類似している。
    皮下注射は局部の壊死を起こすが、経口投与では無毒である。
    石油エーテル、エチルエーテル抽出物は、ウサギ・ネコ・イヌに対していずれも降圧作用があり、呼吸はやや興奮を示す。
    ネコの瞬膜試験では、神経節遮断作用はない。降圧作用の原理は、末梢性のものによると推定されている。
  • その他:主成分は糖で、約10%(乾果は66%)含まれ、ビタミン・ミネラル類も少量ずつまんべんなく含まれている。この他食物繊維のペクチンがあり、腸運動を活性化し、便秘に効果的である。更に三大栄養素の分解酵素が含まれているので、その効果は多様である。
    また無花果には抗炎症作用があり、喉痛、痔疾に効果がある。葉の煎剤を痔の患部に塗布すると効果的であるとされている。果肉や葉からでる白色乳汁に含まれるペプチドは血圧抑制作用があり、外用では疣贅の治療に用いる等の報告がされている。

なお、無花果可食部100g当たりの栄養成分値は下記の通りである。

  エネルギー 水分 蛋白質 脂質 炭水化物-糖質 炭水化物-繊維 灰分
生果 43kcal 87.7g 0.6g 0.1g 10.4g 0.7g 0.5g
乾果 271kcal 22.0g 3.8g 0.6g 66.0g 4.4g 3.2g
缶詰 83kcal 78.4g 0.5g 0.1g 19.9g 0.8g 0.3g

 

無機質
Ca P Fe Na K Mg Zn Cu
26mg 16mg 0.3mg 2mg 170mg ? ? ?
170mg 100mg 1.9mg 12mg 1100mg      
30mg 30mg 0.1mg 8mg 110mg      

 

ビタミンA   ビタミン
カロチン A効力 B1 B2 ナイアシン C  
12μg 0 0.03mg 0.03mg 0.2mg 2mg 生果
30μg 17IU 0.05mg 0.05mg 1.0mg 0 乾果
0 0 0.02mg 0.02mg 0.1mg 0 缶詰

なお、上表のうち項目の無いものについては測定値の記載が無いことを意味する。

[015.9.FIG:2007.3.21.古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  2. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
  3. イチジクFIGパンフレット[(株)コーワリミテッド 〒171-0031 東京都豊島区目白3-14-20 ]
  4. 香川芳子・監修:四訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2000