飲食物中の蓚酸含有量について

KW:健康食品・機能性食品・食品・蓚酸・oxalic acid・植物・蓚酸低減量・野菜類

 

Q:食品中に含まれる蓚酸の含有量について、測定値は報告されているか

 

A:ヒトの生命維持に必要な栄養成分については、市販されている野菜等の食物全般にわたり測定値の報告がされているが、蓚酸(oxalic acid)は、特に栄養成分として必要性が認められていないため、全食品についての測定値は報告されていないようである。

なお、蓚酸は炭素原子を2個持ち、反応性が高く、金属と塩を作り、生成された塩は極めて溶け難い。

体内での蓚酸塩の沈着により尿路結石が惹起され、蓚酸レベルの高い人に多発する。更に野菜に含まれる蓚酸が、食品中のミネラルと結合し、その結果、これらのミネラルの吸収を阻害する。主にカルシウムと鉄の吸収が阻害されることが報告されており、注意が必要である。

測定値のある一部について、次に紹介する。

表1.食品中の蓚酸含有量(可食部100g中のg量)

食品名 測定部位 可溶性蓚酸 食品名 測定部位 可溶性蓚酸
アカザ 1.690 馬鈴薯 根茎 0.042
ツルナ 1.277 タンポポ 0.037
煎茶* 乾葉 1.044 葉茎 0.036
タケノコ 0.654 キク 花黄 0.035
ホウレン草 葉茎 0.650 春菊 0.027
浜防風 葉茎 0.585 パセリ 0.024
不断草 葉茎 0.580 セロリ 0.022
生姜 0.574 ニラ 葉茎 0.015
茗荷 花茎 0.447 キク 0.012
イタドリ 0.433 トマト 果菜 0.011
茗荷茸 葉茎 0.360 シメジ 全菜 ±
蒟蒻芋 0.175 サラダ菜 ±
ヤツガシラ 根茎 0.175 三つ葉 葉茎(冬) ±
里芋 根茎 0.151 ゼンマイ 葉茎 ±
筍水煮 0.138 ワラビ 葉茎 ±
アカメイモ 根茎 0.125 蒟蒻   0
生茶葉 0.121 土筆 0
葉茎 0.120 フキ 0
薩摩芋 0.103 フキ 0
三つ葉 葉茎(夏) 0.080 胡瓜 果菜 0
ヨモギ 0.063 大根 根茎 0
榎茸 全菜 0.061 紫蘇 青葉 0
大和芋 0.049 根茎 0
ナメコ 全菜 0.043 椎茸 全菜 0

*煎茶の場合1回使用量は2g程度  [中村経子:栄養と食糧,27:33(1974)]

上表の測定値は、可溶性蓚酸としているため、食品中の全蓚酸量として認識するかどうかは別として、植物中には一定量の蓚酸が含まれると考えることは可能である。但し、食物中の蓚酸が、全て体内に摂取されるわけではなく、ゼンマイ・蕨等では前処理として灰汁抜きが行われるため、相当量の蓚酸は植物本体から排出されるものと考えられる。また、茹でるという調理操作を必要とする野菜では、茹でこぼすという前処理によって含有量の低減が可能である。

次にほうれん草中の蓚酸量について、生及び茹でた場合の含有量の推移について、検討した資料を紹介する。

表2.ホウレン草中の蓚酸量の推移(mg/全量g)

  葉身 葉柄 可食部合計
豊葉 840.7/60.42 58.1/29.88 896.3/90.30
ニューアジア 504.2/55.50 35.2/35.40 539.4/90.90
新日本 587.3/53.30 54.3/39.00 641.6/92.30
茹で
  葉身 葉柄 可食部合計
豊葉 415.1/63.75 11.3/24.25 426.4/88.00
ニューアジア 315.7/61.50 13.6/27.10 329.3/88.60
新日本 347.5/58.70 14.2/29.40 361.7/88.10

[草間正夫・他:栄養学雑誌,21(2):13(1965)]

上表から可食部100g中の蓚酸の低減率を計算すると

表3.蓚酸の低減率

ホウレン草種類 低減率(%)
豊葉 51.11
ニューアジア 37.27
新日本 40.86

 

約40%から50%の蓚酸は、茹で汁中に排出されるという結果がでている。タケノコ(茎)の生中の蓚酸量について、可食部100g当たり 654mg、茹でた場合、可食部100g当たり138mgとする測定値が報告されている。この測定値から計算すると低減率は78.9%と計算できる。

また、上表の他、食品100g中の蓚酸量(mg)として次の測定値が報告されている。

食品名 含有量 食品名 含有量 食品名 含有量
ホウレン草 320-1260 リーキ 23-89 レタス 5-20
ナス 10-38 トマト 5-35 林檎 平均15
平均15 平均15 イチジク 80-100
茶葉 300-2000 煎茶 10-18/100mL ココア粉末 500-150

 

以上の報告から植物中に含まれる蓚酸は、生食しない限り茹で汁あるいは煮汁中に相当量溶出することが考えられる。

[015.9.WHE:2007.3.21.古泉秀夫]


  1. 山下光雄:野菜中の蓚酸含有量;日本医事新報社,No.3205:131(1985)
  2. 三浦里代:食品のシュウ酸含量;日本医事新報,No.3993:98-99(2000)