イソジン液の使用濃度について
KW:滅菌・消毒・ポビドンヨード・Povidone-Iodine・イソジン液・有効ヨウ素・遊離ヨウ素
Q:『ポビドンヨードの濃度には、有効ヨウ素濃度と殺菌作用に直接関与する遊離ヨウ素濃度があ る。10w/v%-ポビドンヨード原液では、有効ヨウ素濃度は10,000ppmであり、遊離ヨウ素濃度は1ppmである。100倍希釈した0.1w/v%溶液では、有効ヨウ素は100ppm (0.01w/v%)であるが、遊離ヨウ素濃度は最高濃度25ppmである』とする資料が見られるが、殺菌作用に直接関与する遊離ヨウ素濃度が最高値となる0.1w/v%-ポビドンヨード溶液が最も有効ということか
A:10w/v%-Povidone-Iodine製剤である『イソジン液(明治製菓)』の添付文書に記載されている用法・用量は次記の通りであり。原液での使用を指定している。
手術部位(手術野)の皮膚 の消毒、手術部位(手術野)の粘膜の消毒 | 皮膚・粘膜の創傷部位の消 毒、熱傷皮膚面の消毒、感染皮膚面の消毒 |
本剤を塗布する。 | 本剤を患部に塗布する。 |
なお、Povidone-Iodineの殺菌機序について、次の報告がされている。
Povidone-Iodine液はヨウ素を遊離し、その遊離ヨウ素I2が 水を酸化して生じるH2OI+ が、細菌表面の膜蛋白(-SHグループ、チロシン、ヒスチジン)と反応することにより、細菌及びウイルスを死滅させると推定されている。
理論的には、水溶液において、Povidone-Iodineの100倍希釈濃度で遊離ヨウ素濃度が高いが、この遊離ヨウ素が微生物又は有機物と接触して不活化(蛋白結合ヨウ素等)された後の遊離ヨウ素の補給を考慮すれば、原液又は原液に近い濃度での使用が望ましいと考えられるとする報告が見 られる。
希釈倍率と有効ヨウ素の関係は下記の通りである。
Povidone-Iodine | 有効ヨウ素 | 遊離ヨウ素濃度 | |
原液(10w/v%) | 100mg/mL(10w/v%)100,000ppm) | 10mg/mL(1w/v%)(10,000ppm) | 1ppm |
10倍希釈 | 10mg/mL(1w/v%)(10,000ppm) | 1mg/mL(0.1w/v%)(1000ppm) | |
100倍希釈 | 1mg/mL(0.1w/v%)(1000ppm) | 0.1mg/mL(0.01w/v%)(100ppm) | 25ppm(最高濃度) |
1000倍希釈 | 0.1mg/mL(0.01w/v%)(100ppm) | 0.01mg/mL(0.001w/v%)(10ppm) | 10ppm* |
*:グラフから推定。
以上の各報告から10w/v%-Povidone-Iodine製剤の100倍希釈溶液は、理論的には殺菌力が強いとすることができる。
ただし、臨床現場における微生物の消毒は、必ずしも瞬間的な接触により殺滅可能な菌量とは限らず、一定時間継続的に接触することによる効果が期待される場合もあるので、添付文書の規定濃度で使用すべきである。
[615.28POV:2004.4.6.古泉秀夫]
- イソジン液インタビューフォーム,2002.9.改訂
- イソジン液パンフレットNo.238(AD),2001.7.
- 第十四改正日本薬局方解説書;広川書店,2001
- 小林寛伊・編:改訂消毒と滅菌のガイドライン;へるす出版,2004
- イソジン液添付文書,2001.6.改訂