Archive for 1月 4th, 2008

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エフェドラ属(genus ephedra)に分類される植物

金曜日, 1月 4th, 2008

KW:薬名検索・健康食品・エフェドラ属・genus ephedra・麻黄・Ephedra Herba・草麻黄・華麻黄・田麻黄・ephedrine・pseudoephedrine

 

Q: エフェドラ属に分類される植物としてどの様なものがあるか

 

A: 麻黄(Ephedra Herba)基原植物であるEphedra spp.は、ユーラシア大陸に約40種、アフリカに11種、アメリカ大陸南部に約30種分布しているが、これを薬として活用し、現在も頻用しているのは、漢民族及びその文化圏の人々だけであるとする報告がされている。

麻黄属(genus ephedra)に属する植物として、次の植物名が確認できたが、本表以外の麻黄属の植物名については不明である。

学名 成分等

Ephedra sinica Stapf麻黄(マオウ)

(英名:Ephedra Herba)

別名:華麻黄(カマオウ)・草麻黄(ソウマオウ)・田麻黄(デンマオウ)

遼寧、河北、河南、山西、陜西、内蒙古などの乾燥地に自生する。多年生草本状小低木、高さ20-40cm。主アルカロイドの(-)-ephedrine、抗炎症性の本体(+)- pseudoephedrine、ephedroxaneの他、副アルカロイドとして(-)-norephedrine、(-)-N- methylephedrine、(-)-N-methylpseudoephedrine、(+)- norpseudoephedrine等、アルカロイドの揮発性成分ベンジュールメチルアミンを含んでいる。

このうち主要成分はL-ephedrineである。

Ephedra equisetina Bunge木賊麻黄(モグゾクマオウ・トクサマオウ)

河北、山西、陜西、内蒙古、 甘粛、新疆、四川西部などの乾燥地に自生する。小低木、高さ30-50cm。主要成分は(-)-ephedrine、(+)-pseudoephedrine である。
Ephedra intermedia Schrenk et C.A.Meyer中麻黄(チュウマオウ) 甘粛、新疆、青海、内蒙古な どの砂地に自生する。低木、高さ1mに達する。多量の(-)-ephedrineを含む。
Ephedra linkiangensis Florin麗江麻黄(レイコウマオウ) 雲南、四川に分布。草質茎を 麻黄として使用。
Ephedra przewashii Stapf膜果麻黄(マクカマオウ) 内蒙古、新疆、甘粛、青海に 分布。草質茎を麻黄として使用。
Ephedra distachya L.双穂麻黄(ソウスイマオウ) 東北、新疆に分布。草質茎を 麻黄として使用。

 

なお、国内では、dietary supplement中に『麻黄』を配合することは禁止されているが、米国では痩身目的のdietary supplementに配合されていた。しかし、今回、米国においてもdietary supplement中に麻黄を配合することは禁止された。

『米FDAは、Ephedra含有栄養補助食品の販売禁止の予定を発表するとともに、ephedra含有栄養補助食品の安全性について消費者向けの警告を発行(2003年12月30日付)。

ephedra製品の購入および使用を速やかに中止するよう消費者に対し警告。また、2003年12月30 日に、ephedrineアルカロイド含有の栄養補助食品による疾病または傷害の過度のリスクについてfinal ruleを発表する予定であることを製造業者に通知(2003年12月30日付)』とする報告がされている。

 

[011.1.EPH:2004.3.9.古泉秀夫]


  1. 伊澤一男:薬草カラー大事典;株式会社主婦の友社,1998
  2. 奥田拓男・他:天然薬物・生薬学;廣川書店,1993
  3. 和漢薬ハンドブック;富山県薬剤師会,1992
  4. 高木敬次郎・他:和漢薬物学;南山堂,1983
  5. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  6. http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/diet/jirei/ephedra.html#17,2004.3.9.

エトポシド注の安定性

金曜日, 1月 4th, 2008

KW:物理化学的性状・安定性・エトポシド注・etoposide・VP- 16・結晶析出・ラステット注

 

Q:エトポシド注投与中の点滴ライン中に結晶を認めた。以前同様の組み合わせの化学療法メニューを行った時には、結晶の析出は認めなかった。結晶析出の理由は

 

A:etoposide(VP-16)の性状について、次の通り報告されている。

*etoposideは、白色の結晶又は結晶性の粉末である。メタノールにやや溶け難く、エタノール(99.5)に溶け難く、水に極めて溶け難い。融点:約260℃ (分解)。

なお、etoposideの製品であるラステット注(日本化薬)の性状について、微黄色-淡黄色澄明のわずかに粘性の液であるとされている。pH: 3.5-4.5 (本剤5mLを生理食塩液500mLで希釈時)・ 3.3-4.3 (本剤5mLを生理食塩液250mLで希釈時)、浸透圧比: 約1 (本剤5mLを生理食塩液500mLで希釈時)・約2 (本剤5mLを生理食塩液250mLで希釈時)。

また、本剤投与時の注意として『100mgあたり250mL以上の生理食塩液等の輸液に混和し、30分以上かけて点滴静注する』。適用上の注意として『1.調製方法:本剤は溶解時の濃度により、結晶が析出することがあるので0.4mg/mL濃度以下になるよう生理食塩液等の輸液に溶解して投与すること。溶解後はできるだけ速やかに使用すること』とする記載がされている。

*etoposideは水に極めて溶け難く、高濃度水溶液の場合、結晶を析出する。結晶析出までの時間は、高濃度の方が早く、溶解液の種類によっても異なる。

ラステット注では、実使用例として、次の注意事項を配布している。

*稀釈後永く放置しておくと結晶が出てきますので、適切な時間で点滴静注して下さい。

希釈倍率

濃度(生理食塩水稀釈時)

結晶析出迄の最小時間 希釈液使用制限時間
100 約0.2mg/mL:1瓶を500mLに加えて稀釈 9時間 6時間以内
50 約0.4mg/mL:2瓶を500mLに加えて稀釈 4.5時間 3時間以内
40 約0.5mg/mL:2.5瓶を500mLに加えて稀釈 4.5時間 3時間以内
33 約0.6mg/mL:3瓶を500mLに加えて稀釈 3時間 2.5時間以内
25 約0.8mg/mL:4瓶を500mLに加えて稀釈 45分 30分以内
20 約1.0mg/mL:5瓶を500mLに加えて稀釈 30分 20分以内

 

その他の報告として *輸液配合後の結晶析出までの時間は、次の通り報告されている。

  0.4mg/mL 0.6mg/mL 0.8mg/mL
生理食塩液 24時間 6時間 2時間
5%-ブドウ糖 36時間 8時間 2.5時間

また、いずれの輸液で稀釈したとしても、0.6mg/mL以上の濃度で投与する際には、濃度が増すにつれて結晶析出時間が早まることが認められるので、点滴時間の設定には十分な注意が必要であるとする報告が見られる。

[014.4.ETO:2005.3.8.古泉秀夫]


  1. ラステット注添付文書,2005.2.改訂
  2. 柳沢孝次・他:エトポシド注の各種輸液稀釈後の結晶析出に関する検討;新薬と臨床,45(5):999-1002(1996)
  3. 幸道秀樹・他:エトポシド注(ベプシド、ラステット)輸液配合後の結晶析出の検討;化学療法の領域,11(6):165-168(1995)
  4. 国立国際医療センター医薬品情報管理室・編:医薬品情報,27(4): 322-323(2000)