牡蠣肉の効用

KW:漢方薬・健康食品・牡蠣・oyster・ボレイ・含有成分・亜鉛欠乏症・銅欠乏症

 

Q:牡蠣の効用について

A:牡蠣(oyster)の食品成分分析結果として次の報告がされている(可食部100g当たり含有量/生)。

エネルギー 水分 蛋白質 脂質 灰分
78kcal 81.9g 9.7g 1.8g 1.6g
炭水化物
糖質 繊維
5.0 0
無機質
Ca P Fe Na K Mg Zn Cu
55mg 130mg 3.6mg 280mg 230mg 70mg 40,000μg 3,500μg
ビタミンA ビタミン(mg)
レチノール カロチン A効力 E効力 D B1 B2 B6 B12 K ナイアシン C
7μg 55μg 55IU 1.2 0 0.16 0.32 0.09 38.9μg 0 2.0 4
コレステロール 食塩相当量
50mg 0.7g

 

食品としての牡蠣の特徴は、その可食部100g中に40mgの亜鉛(Zn)及び3.5mgの銅を含有するということである。

その他、牡蛎肉(ボレイニク)として漢方薬での使用が報告されている。 イタボガキ科の動物。近江牡蛎等の肉。

成分]:近江牡蛎と大連湾牡蛎は、グリコーゲン63.5%、タウリン1.3%、10種の必須アミノ酸1.3%、無機塩(銅、亜鉛、マンガン、バリウム、リン、カルシウム)17.6%、グルタチオン、ビタミンA・B1・B2・D及びF(リノレン酸とリノール酸)を含む。

ヨード 1?11.53ppm(乾燥重量)を含む。脂質中に一種の糖脂質を含み、この糖は2分子グルコースと1分子フコースで構成されている。他に一種のスフィンゴリピドがあり、糖(グルコース、アラビノース、フコース)22.0%、ヘキソサミン7.26%、メチルペントース10.45%、リン0.47%を含む。別の報告によると長牡蛎の脂質中にステロールを含み、この水素化物はブラシカステロールに似ている。

亜鉛の体内における生理作用について、次の報告がされている。

無機質 人体の所在 生理作用 欠乏症状 含有食品
亜鉛

成人体内に約2g含まれる。皮膚・硝子体・前立腺・肝臓・腎臓に多い。インスリン構成元素

炭酸脱水素酵素・乳酸脱水素酵素等の成分である。核酸、蛋白質の合成に関与

充分に成長しない。 皮膚障害、味覚障害

皮膚障害、味覚障害 魚介類、獣鳥鯨肉類、牛乳、玄米、糠、豆、木の実

成人の体内に約0.1g含まれる。筋肉・骨・肝臓に多い。

骨髄でヘモグロビンを作るとき鉄の利用をよくする。腸管からの鉄の吸収を助ける。

ヘモグロビンの成分が減少し、貧血になる。骨折・変形を起こす。

肝臓(牛)

 

<亜鉛の欠乏>:亜鉛はRNAとDNAの合成を受け持つ酵素を含む 100以上の酵素の構成要素であることから、身体に広く存在する。亜鉛含有量が最も高い組織は、骨、肝臓、前立腺と精巣である。亜鉛の血中レベルは食事に含まれる亜鉛の量に依存する。肉、レバー、魚介類は豊富な亜鉛源であるが、穀類はそうではない。

全粒穀類のシリアル(siriar:穀物)には、亜鉛の吸収を抑制する繊維やリン酸塩などの物質が含まれる。一部のヒトが習慣的に食べるクレー(cray:粘土)は、亜鉛の吸収を抑制し、亜鉛の欠乏を惹起する。亜鉛を吸収できない遺伝性疾患である腸性先端皮膚炎も亜鉛の欠乏を引き起こす。

症状としては食欲不振、脱毛、皮膚炎、夜盲症、味覚障害がある。生殖器官の活動は損なわれ、その結果として性的発達の遅れ、男子では精子産生の低下が起こる。成長も遅くなることがある。身体の免疫系と傷の治癒力が害される場合がある。小児におけるこの欠乏症の初期徴候は、発育遅延、食欲不振、味覚障害、及び毛髪中の亜鉛量の低下である。

健康な成人による亜鉛の食事性摂取量は6?15mg/日で、おおよそ20%を吸収する。

<銅の欠乏>:銅はエネルギー産生、抗酸化、ホルモンであるアドレナリンの合成及び結合組織の形成に必要な様々な酵素の構成要素である。銅の欠乏症は健康なヒトには稀である。早産児、あるいは重度の栄養不良から回復中の乳児に最も一般的に生じる。長期にわたり静脈内(非経口)栄養補給を受けているヒトも銅が欠乏する危険に曝されている。殆ど毎日の食事に2 ?3mgの銅が含まれているが、そのうち約半分しか吸収されない。代謝に必要な量より多く吸収された銅は全て胆汁から排泄される。

以上の報告から特に最近若年子女に増加傾向が見られるとする味覚障害の予防あるいは薬剤の副作用として亜鉛キレート能に起因する味覚障害の発現が報告されているが、その予防等に役立つことが推定される。その他、最も大量に含まれるグリコーゲン(glycogen:糖源)は、動物に見られるグルコースを構成糖とする多糖であり、生体維持にとって重要な役割を果たしている。またタウリン(taurine)は、生体において肝臓、筋肉に多く存在するとされるが、肝機能の強化に重要であるとされている。

 

[015.9OYS:2000.6.29.古泉秀夫]


  1. 香川芳子・監修:四訂食品成分表;女子栄養大学出版部,1999
  2. 福島雅典・総監修:メルクマニュアル 第17版 日本語版;日経BP社,1999
  3. 福島雅典・総監修:メルクマニュアル 医学情報[家庭版];日経BP社,1999
  4. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998