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L-カルボシステインの催奇形性

金曜日, 12月 21st, 2007

KW:催奇形性・L-カルボシステイン・L-carbocisteine・胎児毒性・ムコダイン錠・システイン誘導体・cysteine derivatives

 

Q:現在、妊娠中であるが、ムコダイン錠の処方が出た。服用することで奇形発生あるいは胎児への影響はないか

A:ムコダイン錠(杏林製薬)はL-carbocisteineを含有する気道粘液調整・粘膜正常化剤である。添加物としてクロスカルメロースナトリウム、ポリビニルアルコール(部分鹸化物)、ショ糖、脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、タルク(500mg錠のみ)を含む。

システイン誘導体(cysteine derivatives)の一つであるcarbocisteineは、喀痰中のmucoproteinに作用し、mucoproteinのS-S結合を開裂することによって低分子化し、喀痰の粘稠度を下げるとされている。本剤の作用機序として特に細胞増殖に影響する毒性は報告されていない。

本剤の添付文書中に記載されている『妊婦・授乳婦等への投与上の注意』は、以下の通りである。

『妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい [妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]』

過去に催奇形作用の症例が報告されている薬物のうち、ヒトでの催奇性がほぼ確実と考えられている危険評価点5に属する薬物として、抗てんかん薬: phenytoin、trimethadione、抗凝血薬:warfarin、抗悪性腫瘍剤:busulfan、その他の皮膚外用薬: etretinate等が報告されており、その他危険度評価1-3に属する薬物139種が報告されているが、その中にcarbocisteineは含まれていない。また、妊娠中期・後期に服用を注意すべき薬物例中にも含まれていない。

また、本剤は1965年にフランスで、1968年スイス・1970年ベルギー・1972年英国・1975年西ドイツ・1980年日本でそれぞれ発売されている。我が国で発売されてから既に24年が経過しており、本剤の適応から過去に妊娠初期等に妊娠に気付かず服用した事例が全くないとは考えられない。

しかし、現在までに本剤による催奇形性の報告はされておらず、短期間の本剤の服用により胎児に重大な影響を及ぼすとは考えられないため、妊娠中の一定期間、本剤を服用したとしても特に問題はないと考えられる。

[065.CAR:2004.10.26.古泉秀夫]


  1. ムコダイン錠添付文書,2001.7.改訂
  2. 藤原元始・他編:医科薬理学;南山堂,1986
  3. 高柳一成・編:薬の安全性-その基礎知識;南山堂,2000
  4. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  5. ムコダイン錠・シロップインタビューフォーム, 1994

amezinium metilsulfateとdextromethorphan hydrobromideの相互作用

金曜日, 12月 21st, 2007

 

KW:相互作用・amezinium metilsulfate・dextromethorphan hydrobromide・リズミック錠・メジコン散・併用禁忌

 

Q:メジコンとリズミックがレセプトコンピュータでは相互作用対象薬として検索されるが、その理由は

A:両剤の添付文書中に記載されている作用機序及び相互作用は下記の通りである。

  amezinium metilsulfate
リズミック錠(大日本住友)
dextromethorphan hydrobromideメ
ジコン散・錠(塩野義)
作用機序

本剤はノルエピネフリン (norepinephrine)と競合して末梢の神経終末に取込まれ、norepinephrineの神経終末への再取込を抑制するとともに、神経終末においてnorepinephrineの不活性化を抑制し、交感神経機能を亢進させる[添付文書,2003.6] 。本剤は交感神経刺激剤に属する低血圧症治療剤である。本剤はα刺激作用により、散瞳を惹起し、前立腺を収縮させる。

臭化水素酸デキストロメトル ファンは、延髄にある咳中枢に直接作用し、咳反射を抑制することにより鎮咳作用を示す。臭化水素酸デキストロメトルファンの肝代謝に関する酵素の分子種はo-脱メチル化ではCYP2D6、N-脱メチル化ではCYP3A4である。
相互作用

-併用注意-ドロキシドパ[血圧の異常上昇]:ドロキシドパから変換したノルエピネフリンの末梢神経終末における再取込と不活性化が本剤により抑制。 norepinephrine[血圧異常上昇]:本剤によりnorepinephrineの末梢神経終末における再取込と不活性化が抑制[添付文書, 2003.6]。

*ドロキシドパ(norepi-nephrineの前駆物質)。

-併用禁忌-MAO阻害剤(phenelzine)[臨床症状:痙攣、反射亢進、異常高熱、昏睡等]:デキストロメトルファンは中枢のセロトニン濃度を上昇させる。MAO阻害剤はセロトニンの代謝を阻害し、セロトニンの濃度を上昇させる。併用によりセロトニンの濃度が更に高くなるおそれがある[添付文書, 2003.6]。

[禁忌]MAO阻害剤投与中の患者。

添付文書を見る限り両剤間に相互作用があるとする記載はされていない。従ってレセプトコンピュータに導入されている相互作用データを作成した当事者でなければ、何故に検索されるのかの理由は不明であるが、資料によっては、amezinium metilsulfateの特徴として、間接的な交感神経刺激薬、交感神経内MAO阻害作用、交感神経内より放出されたノルアドレナリン再取込抑制作用を持つ等の報告がされており、相互作用データ中にamezinium metilsulfateの薬理作用として“交感神経内MAO阻害作用”が記載されていれば、dextromethorphan hydrobromideの添付文書中のMAO阻害剤(phenelzine)に反応した可能性が考えられる。

[015.2.AME:2004.12.13.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  2. リズミック錠IF,1995.8.(改訂3版)
  3. 水島 裕・編集:今日の治療薬-解説と便覧-;南江堂,2004

「ラウレス硫酸ナトリウムについて」

金曜日, 12月 21st, 2007

KW:薬名検索・ラウレス硫酸ナトリウム・sodium laureth sulfate・SLES・ラウリルエーテル硫酸ナトリウム・sodium laurylether sulfate・ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム・sodium polyxyethylene laurylether sulfate

 

Q:ラウレス硫酸ナトリウムについて

 

A:ラウレス硫酸ナトリウム(sodium laureth sulfate:SLES)は、別名としてラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium laurylether sulfate)。化学名としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium polyxyethylene laurylether sulfate:SPLES)等が報告されているが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムのINCI名が『sodium laureth sulfate(ラウレス硫酸ナトリウム)』である。

本品は定量するとき、表示量の90-110%に対応するポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム[C12H25NaO4・(C2H4O)n]を含む。本品は無色-淡黄色の液又はワセリン様の物質で、僅かに特異な臭いがある。

1933年にUlrich、Saurweinによる報告が最初である。ポリオキシエチレン基を持つ非イオン界面活性剤の末端水酸基を硫酸化して得られ、疎水基の種類、オキシエチレン鎖長、対イオンの種類により数多くの化学構造が考えられるが、この型のものが液体シャンプー用原料を中心に洗浄剤、起泡剤として1950年代中頃から市販品が登場し広く普及するに至っている。

ラウリルアルコールに酸化エチレンを付加重合して得られるポリオキシエチレンラウリルエーテルをクロルスルホン酸、又は無水硫酸で硫酸化し、水酸化ナトリウム液で中和して製造する。硫酸化はラウリル硫酸ナトリウムの製法に準じる。

性状:市販品は主として23 -30%水溶液、若しくは60-70%ワセリン様で無色-淡黄色である。pH:7.5(1%水溶液)。水に溶解する。エタノールに溶ける。キシレンには不溶。一般性状は酸化エチレンの付加モル数により異なり、モル数が増大すれば水溶性が上昇し、溶液粘度は減少する。未反応のラウリルエーテルや無機塩の存在は粘度を上昇させる。酸化エチレンの付加モル数が2-4の硫酸塩が刺激性、溶解性、粘度、泡立ちの点から適当とされ、広く用いられている。本品は硫酸エステル塩であるため、酸性では分解する。

付加モル数 SPLES分子量
1 332.44
2 376.49
3 420.54

 

作用:本品はラウリル硫酸Naよりも皮膚に対する作用が温和で刺激が少なく、シャンプーとして使用した場合、比較的しなやかな感触を髪に残す。

応用:本品の高濃度水溶液は、粘稠なゲルとなり、また曇り点が低いために透明な高粘度のシャンプーの配合に適している。

有害性:皮膚を刺激する。眼に重大な障害を及ぼす危険性がある。

環境影響:調査した範囲では、環境への悪影響を示す情報はない。

廃棄:産業廃棄物取扱業者に委託する。

物理的・化学的危険性:通常の取扱いでは危険性は低い。

応急措置

1]吸入した場合:被災者を新鮮な空気の場所に移動させ、必要に応じて医師の受診を受ける。

2]皮膚に付着した場合:多量の水及び石鹸を用いて洗い流し、症状が出た場合等、必要に応じて医師の診断を受ける。

眼に入った場合:即座に目蓋を開いて流水で15分間以上洗浄し、直ちに医師の処置を受ける。

3]飲み込んだ場合:水で口の中を洗浄し、コップ1-2杯の水又は牛乳又は生卵を飲ませ、医師の処置受ける。被災者の意識がない場合は、上記の経口摂取は禁忌である。

ラウレス硫酸Naの毒性

急性毒性:ラット経口(LD50):>2000mg/kg

眼刺激性:強い刺激性が認められた(ウサギ,OECD405法)

皮膚腐蝕性:non data

皮膚刺激性:non data

変異原性:陰性(Ames試験(サルモネラ菌 TA98、TA100)

癌原性:non data

水棲生物毒性:コイ稚魚LC50範囲:107-143mg/L(48時間)

 

 

1)湯浅正治・他編著:化粧品成分ガイド第3版;フレグランスジャーナル社,2005

2)日本化粧品工業連合会・編:日本汎用化粧品原料集夢第4版;株式会社薬事日報社,1997

3)化粧品原料基準 新訂版;株式会社薬事日報社,1999

4)日本公定書協会・編:化粧品原料基準 第二版註解[I];株式会社薬事日報社,1984

5)花王株式会社-製品安全データシート;http://chemical.kao.co.jp,2007.1.29.

[011.1.SLE:2007.1.29.古泉秀夫]

烏龍茶の脂肪代謝促進作用

水曜日, 12月 19th, 2007

 

KW:健康食品・烏龍茶・脂肪代謝促進作用・茶・緑茶・青茶・Camellia sinensis L.・ツバキ科・カテキン・エピガロカテキンガレート・アッサム種

Q:烏龍茶でいわれている脂肪代謝促進作用について

A:茶(学名:Camellia sinensis L.)はツバキ科の植物で、原産地は揚子江、メコン川、イラワジ川、プラマプトラ川などの大河上流が集まる中国西南部の雲南省からビルマ北部、アッサム地方にわたると考えられている。

我が国で栽培されている茶の種類は大きく二つに分けられ、寒さに強い中国種(Camellia sinensis L.var.sinensis)と寒さに弱いアッサム種(Camellia sinensis L.var.assamica)に分類される。

一般に飲用される茶類は緑茶、紅茶、烏龍茶等があるが、これらは全て同じ茶樹の葉から作られており、加工の仕方により緑茶、紅茶、烏龍茶等に分けられる。

茶の模式図

茶青:半発酵茶。烏龍茶。成熟した新梢を用い、通常17工程を経て完成するといわれているが、上品質のものほど手数をかけている。

途中で加熱により酵素活性を止め、乾燥するので半発酵茶といわれる。醗酵は最初に葉を日光に当てて行い、その後、室内で萎凋(葉を萎らせる)が行われる。做青(青色だし)の工程があるのが特徴である。

これらの一連の過程で、烏龍茶に特有の香気成分が生じるものと考えられている。

また一般的にテアフラビン(紅茶色素)が紅茶の 10%程度含まれているとされる。

烏龍茶の効用としていわれているのは、

  • 食欲増進
  • 消化促進
  • 脂肪分解
  • 代謝亢進

等である。

最もよく知られているのは、脂肪分解作用である。烏龍茶を食中・食後に飲めば、脂肪代謝を促進して、肥満の予防に役立つ。この烏龍茶の作用は、食欲増進、消化促進に加えて、脂肪分を円滑に分解し、過剰な脂肪分が体内に残らないように働きかけるもので、肥満の予防作用はその結果の一つにしかすぎない。烏龍茶の効用で大事なのは、食欲を増進する中で、体の栄養バランスを正常に保つよう働くことである。

また烏龍茶は花粉症などアレルギーに効果のあることが、最近の研究で明らかにされた。これは烏龍茶に含まれるカテキン類がアレルギーの原因となるヒスタミンの放出を抑制するためと見られている。緑茶や紅茶より烏龍茶の方が改善効果が強く、特に烏龍茶の茎に含まれているカテキン類から高い効果が得られたとされている。

現在、我が国で市販されている烏龍茶の中で良質とされているのは、福建省・武夷山に産する武夷岩茶(鉄羅漢等)と、同じく安渓に産する鉄観音である。

烏龍茶の醗酵度は半醗酵で、その製法には微妙な感覚が要求され、永年の経験が生きている。醗酵は生葉を粉砕せずに日光に当て、更にその後、室内で葉を萎ませながら葉内の酵素活性を高める。

この過程で、生葉中にない香気成分(ネロリドール、インドール、ジャスミンラクトンなど)が発現するといわれている。その他、烏龍茶にはカフェインが少ない、また烏龍茶では緑茶と異なり解毒・殺菌作用が変質しない等の報告がされている。

緑茶には渋味成分としてポリフェノールの一種であるカテキンが含まれている。ラットの餌にラードやコレステロールを加え、カテキンを添加すると、糞中に排泄される脂肪やコレステロールの量が増え、血中脂質を改善することが明らかになった。

カテキンが血中脂質を正常化する理由の一つとして、胆汁酸の排泄を増やすことが挙げられている。胆汁酸は肝臓でコレステロールを原料に作られ胆汁に含まれて脂肪を乳化して消化を助けた後、腸から吸収されて肝臓に戻り、再利用される。

ところがカテキンを与えると胆汁は再利用されず排泄されるため、コレステロールが血液中で増加しない。血中脂質が減少すると肝臓に蓄積される脂肪が減少するため、脂肪肝を改善し、肝臓の機能も高まるとされている。

烏龍茶の脂肪分解の作用が、カテキンにあるとすれば、緑茶と烏龍茶の間に差はないはずであるが、緑茶と烏龍茶のカテキンについて、次の報告がされている。

緑茶は新鮮葉を蒸すことにより酸化酵素の働きを止め、緑色を保持させたものであり、この製造工程では、エピガロカテキンガレート(緑茶タンニン)を含む他のカテキン類はほとんど変化していない。

烏龍茶や紅茶は加熱処理せずに、自然に葉を萎びさせ、醗酵させるもので、その過程でカテキン類は酸化重合してプロアントシアニジンポリマー、theasinensins、theaflavinsやthearubigin(色素)などに変化する。

以上の各報告から、茶葉中に脂肪分解に作用する成分が含まれていることは確かであるが、緑茶と烏龍茶では製造過程の差により、烏龍茶の含有成分がより強力に働くようになっており、更に総合的な効果として、脂肪分解作用を示すものと考えられる。

[015.9.CAM:2004.12.14.古泉秀夫]


  1. 健康産業新聞社/「ハーブ」プロジェクトチーム・編:薬用ハーブの機能研究;健康産業新聞社,1999
  2. 奥田 拓道・監修:健康・栄養食品事典,2004
  3. 中村丁次・監修:最新版からだに効く 栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001
  4. 田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002

イソジン洗眼液について

水曜日, 12月 19th, 2007

KW:適応外使用・特殊用例・イソジン液・povidone- Iodine・イソジン洗眼液・イソジン点眼液・承認適応外・院内製剤・療養担当規則

Q:院外処方せんで「16倍イソジン液・ 洗眼用」の処方が出されたが、調剤薬局としての対応はどうすればよいか。なお、設備がないため無菌調製はできない。

A:現在、市販されているイソジン液(明治製菓)の承認適応として『洗眼』 の適応はないため、『承認適応外』使用に該当する。

保険医療機関に勤務する保険医は、『保険医療機関及び保健医療養担当規則(療養担当規則)』の遵守を義務付けられているが、『療養担当規則』の第19条において『保険医は、厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物を患者に施用し、又は処方してはならない』の規定が定められており、上記処方せんは療養担当規則に違反する。

保険薬局に勤務する保険薬剤師は、医師同様、療養担当規則の遵守が義務付け られており、『厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物を調剤してはならない』ことが定められている。

従って、薬剤師は処方医に疑義照会することが必要であ り、ヨウ素を成分とする洗眼殺菌剤として市販されている『PA・ヨード液-0.2%[ポリビニルアルコール・ヨウ素包接化合物](日本点眼薬研究所)』へ の処方変更を依頼すべきである。

商品名(会社名)

イソジン液(明治製菓)

PA・ヨード液
(日本点眼薬研究所)
組成

povidone-Iodine 100mg/mL(有効ヨウ素として10mg)

添加物:濃グリセリン・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル

polyvinylalcohol・potassium iodide(有効ヨウ素として2mg)

添加物:パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル

承認適応 手術部位(手術野)の皮膚の消毒、手術部位(手術野)の粘膜の消毒、皮膚・粘膜の創傷部位の消 毒、熱傷皮膚面の消毒、感染皮膚面の消毒 角膜ヘルペス、洗眼殺菌
取扱い上の注意 本剤は外用消毒剤であるので、経口投与、吸入、注射、眼及び体腔内(腹腔内、胸腔内等)に使用し ないこと。 (有効塩素濃度0.2%の原液を通常、添付希釈液で4-8倍に希釈して用いる)

なお、処方医があくまで原処方である『16倍イソジン液・洗眼用』に拘るの であれば、院内処方に変更し、医師の属する医療機関内で処理すべきである。

  8倍 16倍
イソジン液 125mL 62.5mL
蒸留水 全量1000mL 全量1000mL
  • 調製法:イソジン液を蒸留水で8倍に希釈する。0.22μmメンブランフィ ルターで濾過し、滅菌済み褐色ガラス瓶(500mL)に分注する。
    以上の操作は無菌操作法で行う。121℃-20分間、高圧蒸気滅菌を行う。
  • 適応:眼科手術時の結膜嚢の消毒。
  • 使用期限:1週間。冷暗所保存。
  1% 5%
10%-イソジン液 10mL 2.5mL
注射用水 全量100mL 5mL
  • 調製法:10%-イソジン液に注射用水を加え、混和した後、0.22μmメ ンブランフィルターで濾過後、5mL遮光点眼容器に分注する。以上の操作は無菌操作法で行う。
  • 適応:結膜嚢の消毒
  • 使用期限:1カ月、遮光・冷所保存

 

[035.4.POV:2003.8.25. 古泉秀夫]

  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
  2. 基本医療六法;中央法規,2002
  3. 日本病院薬剤師会・編集:病院薬局製剤第4版;薬事日報社,1997
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26 (4):333-334(1999)
  5. イソジン液添付文書,2001.6.
  6. PA・ヨード液添付文書,1999.12.改訂

半減期と過量投与時観察時間について

土曜日, 12月 15th, 2007

KW:臨床薬理・半減期・T1/2・ t1/2・過量投与時観察時間・薬物動態理論・一次速度過程

Q:sumatriptan製剤であるイミグラン注(GSK)の添付文書中、過量投与の項に『本剤のT1/2は約2時間であり、過量投与時には少なくとも10時間、あるいは症状・徴候が持続する限りは患者をモニターすること』の記載があるが、10時間の根拠について

A:添付文書の過量投与の項に『半減期の5倍』の時間を観察期間とする記載がされているのは、sumatriptan製剤のみではない。

薬物動態理論によれば、『一次速度過程が適応になる場合、体内の薬物が体内から消失するには、T1/2の5倍あればいい』といわれている。薬物の血中濃度が定常状態に達した状態で投与が中止された場合、体内から殆どの薬物が消失するには、T1/2(β)の5倍の時間がかかると報告されている。

例えば、最高血中濃度40μg/mL・半減期2時間の薬物の場合、下表の推移を経て体内薬物濃度は減衰すると考えられる。

  1 2 3 4 5 6
半減期 2時間 2時間 2時間 2時間 2時間 2時間
血中濃度 20μg/mL 10μg/mL 5μg/mL 2.5μg/mL 1.25μg/mL 0.625μg/mL

 

blood   その他、催吐・胃洗浄・活性炭投与等、体内薬物の強制排泄を目的とした種々の処置を実施することにより、体内薬物の排泄を強化する処置が取られており、体内薬物の消失時間とされている半減期の5倍の時間あるいは症状・徴候が持続する期間、患者のモニターを継続することにより、患者回復の目安とすることが可能であるとの判断によるものと考えられる。

ただし、腎機能・肝機能の障害がある場合には、排泄速度は低下すると考えられるので、注意が必要である。

                                                                                        [015.4.EXE:2005.5.5.古泉秀夫]

 

 

1.高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2005
2.菅野 彊:これからのDrug Information-新しい医薬品情報活動の技術;医薬ジャーナル社,1998
3.平田純生:症例から処方を考える-効くはずの抗菌薬が効かない?-薬剤師だからできるPK/PDに基づいた投与設計;薬局,56(5):2011-2021(2005)

一般用医薬品(かぜ薬)の催奇形性について

金曜日, 12月 14th, 2007

KW:催奇形性・催奇性・奇形児・かぜ薬・一般用医薬品・OTC ・妊婦・絶対過敏期・相対過敏期

「かぜ薬の製造(輸入)承認基準」(昭和62年4月1日改正)において、かぜ薬の有効成分・配合量等が規定されている。使用上の注意については、「日薬連申し合わせ(平成9年2月20日付)」が報告されているが、妊婦への投与については、
「2.次の人は服用前に医師又は薬剤師に相談すること。?(11)妊婦又は妊娠していると思われる婦人」と記載されている。
なお、承認基準には記載されていないが、使用上の注意中に記載のみられる塩化リゾチーム、イブプロフェンの2剤について追加した。
相談された医師・薬剤師が、何に依拠して回答するのか、根拠の一助とすべく、報告されている資料の整理を行った。

妊娠1カ月:最終月経の開始日を0週0日とし、4週間が1カ月、0週0日-3週6日まで
妊娠2カ月:4週0日-7週6日まで
安 全 期:月経周期28日型の場合、月経初日から33日目(3終末まで)→残留性のない薬剤の場合、催奇形性の可能性はない。
絶対過敏期:最終月経開始日から28日-50日目(妊娠4週?7終末まで→胎児の中枢神経、心臓、消化器、四肢などの重要臓器が発生・分化し、催奇形に対し最も敏感な時期。)
相対過敏期:51日-84日目

[分類]・薬剤名 評 価 概要
[114]acetaminophen
アセトアミノフェン
B→
推定無影響

A→

B:動物生殖試験では、胎仔への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験は実施されていないもの。あるいは動物生殖試験で有害な作用(又は出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期3カ月の対照試験では実証されていない。またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠のないもの[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。
絶対過敏期に服用した5例と相対過敏期に服用した1例においていずれも健常児を出産(2。
A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない(11。
[441]alimemazine tartrate
酒石酸アリメマジン
推定無影響 妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい(4。

妊婦への使用については、安全性を示した疫学調査報告はない。

パリの12大学病院で1963-1969年の間に行われた調査では、妊娠第1三半期にフェノチアジン系薬剤を服用した315人の妊婦の出産結果は11例(3.5%)に奇形があり、対照群の1.6%より有意に多かったこの報告では薬剤の構造による層別解析を実施、本剤を含めてα位に炭素数3の側鎖を有するフェノチアジン類にのみ奇形発生の有意な増加がみられた。しかし、同様の構造を持つフェノチアジン系薬剤、クロルプロマジンに関する多くの報告で、明らかな催奇形性はみられないことが示唆されている。

絶対過敏期に3日間服用した1例と相対過敏期に11日間服用した1例は、いずれも健常児を出産(2。

[222]alloclamide hydrochloride
塩酸アロクラミド
data未詳 中枢性、非麻薬性の鎮咳薬(16
[234]aluminum hydroxide gel
水酸化アルミニウムゲル(乾燥水酸化アルミニウムゲルとして)
dried aluminum hydroxide gel
乾燥水酸化アルミニウムゲル
推定無影響 該当する記載はされていない(4。
水酸化アルミニウムの妊娠中期・後期の使用は安全である。これは胃酸を中和するためと、リン酸塩性腎結石症の治療に使用される。
若干の研究は、母親が水酸化アルミニウムの常習摂取者であった場合に、胎児に深部健反射の亢進、低マグネシウム血症、そしておそらくは高カルシウム血症の発生を示してきた(15。
[234]aluminum hydroxide・magnesium carbonate
水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル
推定無影響 三ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムの妊娠中期・後期における使用は、慢性的高投与量にならない限り安全である。これらは胃中の酸を中和するために使用される。
うとうと状態を伴った新生児の高マグネシウム血症、筋トーヌスの低下、呼吸ジストレス(困難)と心血管障害が常習的に大量にマグネシウムを内服した母親の新生児に報告されている。また常習的に三ケイ酸マグネシウムを内服した母親の新生児にケイ酸塩性腎結石症が報告された(15。
[234]aluminum hydroxide・ sodium bicarbonate
水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物
推定無影響 妊娠中の重炭酸ナトリウムの使用は、他の治療剤がより好ましいので、比較的禁忌である。これは胃酸を中和するために使用されるが、全身性に吸収される。全身的吸収が作用時間を短縮し、その結果、症状のリバウンド的増悪が生じる。また慢性的使用によってアルカローシスが発生する。吸収されるナトリウム負荷又は浮腫や体重増加をもたらす。これらの理由で、制酸療法が必要であると考えられるときは、より全身性の少ない他の薬剤を使用することが勧められる(15。
[234]aluminum hydroxide・calcium carbonate・magnesium carbonate
水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物
推定無影響 ■妊娠中期・後期における炭酸マグネシウムの使用は、慢性的大量投与が行われない限り安全である(15。
[234]aminoacetic acid
アミノ酢酸
原則無影響 本質:アミノ酸。glycine。1820年ゼラチンの加水分解物中から結晶として単離、この結晶は甘味を有するので糖の1種であると考えゼラチン糖と命名されたが、1946年glycocol、1948年glycineに改められた。食品添加物として収載。本薬は物質代謝上重要な意義をもっているが、必須アミノ酸ではなく、セリンなどから生体内で生合成される。本薬からはクレアチン、グルタチオン、グリココール酸、ポルフィリン、プリンなど生理的に重要な多くの物質が生成される。本薬の解毒作用も古くから知られており、例えば安息香酸は馬尿酸となって尿中に排泄される。両性化合物で胃液に対して緩衝作用を有する。また、クレアチン合成を促進する。本薬の血管拡張作用はテトラエチルアンモニウムブロミドやプロカインほどではないが、エタノールより強いとする報告がされている。本薬を大量に静注すると流涎、悪心などを起こす。

混合アミノ酸製剤に用いられる。その他、進行性筋ジストロフィー、重症筋無力症の際に尿中にクレアチニンが排泄されるが、これの合成を促進するため本薬を与え、効果が得られている。また、本薬の10?30gを200mLの水に溶解して1日3回服用すると、代謝亢進による放熱に伴う末梢血流の増加が現れるので、閉塞性末梢血管障害に用いられる。制酸薬としては150?300mgを炭酸カルシウム350?700mgと毎食後併用する。また胃酸欠乏時には本薬の塩酸塩を内服するが、1回200mgの服用で希塩酸0.6mLを用いたと同じ効果が得られる。

[114]aspirin
アスピリン

*第3三半期に最大投与量を服用した場合はD

C→D

→D

C→

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。

動物実験で催奇形作用が、またヒトで妊娠末期に投与された患者及びその新生児に出血異常が現れたとの報告があるので、妊婦(12週以内あるいは妊娠末期)又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

理由:分娩5日前の投与で、母親10人中6人(分娩中、分娩後の出血が多い)、新生児10人中9人(点状出血、血尿、頭血腫、結膜出血等)に出血傾向がみられている(外国データ)(4。

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠はあるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(例えば、生命が危険にさらされているとき、又は重篤な疾病で安全な薬剤が使用できないとき、あるいは効果がないとき、その薬剤をどうしても使用する必要がある場合)[FDA薬剤胎児危険度分類基準](2。

奇形発生の危険度が最も高い絶対過敏期に本剤服用の22例、相対過敏期に服用した1例においていずれも健常児を出産(2。

C:催奇形性はないが、その薬理作用によってヒト胎児及び新生児に有害な作用を及ぼすか又は及ぼす可能性の疑われる薬。この作用は可逆的なものである(11。

各種動物実験で本剤が先天障害を来すことが示されている。しかし、ヒトに対して本剤が催奇形性を持つという決定的な証拠はまだ得られていない。aspirinの様な薬剤は、プロスタグランジンの合成を阻害する。妊娠末期に使用すると、動脈管の早期閉鎖を来したり、分娩を遷延させる場合がある。aspirinはその抗血小板作用により、新生児、母胎のいずれに対しても出血時間を延長する。aspirinを含む製剤は妊娠後期には避けるべきである(11。

[114] aspirin aluminum
アスピリンアルミニウム
  動物実験で催奇形作用が、またヒトで妊娠末期に投与された患者及びその新生児に出血異常が現れたとの報告があるので、妊婦(12週以内あるいは妊娠末期)又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠末期のラットに投与した実験で、弱い胎児の動脈管収縮が報告されている(4。
[211]caffeine
カフェイン・無水カフェイン
B→

A→
原則無影響

B:動物生殖試験では、胎仔への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験は実施されていないもの。あるいは動物生殖試験で有害な作用(又は出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期3カ月の対照試験では、実証されていない。またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠のないもの[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない(11。

胎盤を通過し、また母乳中に容易に移行するので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦には長期連用を避ける(4。

催奇形の危険度が高い妊娠初期に本剤含有配合剤服用の85例中84例は健常児出産。1日量として150mg含有の総合感冒剤服用の女児1例で1歳児検診時に重複腟がみられたが因果関係不明(2。

なお、コーヒー中に100mg、紅茶中に50mg、インスタントコーヒー中に65mg含有等の報告。

[211]caffeine and sodium benzoate
安息香酸ナトリウムカフェイン
推定無影響 caffeine参照
[441]carbinoxamine diphenyldisulfonate
ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン

[441]carbinoxamin maleate
マレイン酸カルビノキサミン

C→ C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。

ヒスタミンH1受容体拮抗薬。マレイン酸クロルフェニラミンとほぼ同様の作用を持つと考えられる。強力な抗ムスカリン作用(17

マウスの妊娠第6日から第12日に本剤100mg/kgを経口投与した生殖試験では、胎仔死亡率が僅かに大きい以外は胎仔及び新生仔と対照群との差はなかった。

ラットの妊娠第9日から第14日に、本剤80mg/kg/日を経口投与した生殖試験では、自然分娩後の発育が多少劣る以外異常を認めなかった。

ヒトにおける50,282組の母子に関する調査では、使用例の少ないその他の抗ヒスタミン剤として、本剤を含む12種の薬剤を服用した113例の調査結果が挙げられている。これらの薬剤に曝露された母子は1組であった。これらの薬剤に妊娠初期4カ月の間に曝露されたことにより、奇形の発生頻度は増加しないと報告されている。113例中本剤に曝露された母子は2例(2。

[441]d-chlorpheniramine maleate
d-マレイン酸クロルフェニラミン

[441]dl-chlorpheniramine maleate
dl-マレイン酸クロルフェニラミン

C→

A→推定無影響

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない(11。

妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(4。

ラットとウサギでヒト常用量の数十倍に当たる量を投与した試験で、催奇形性は認めなかった(2。

妊婦の使用に関して催奇形性あるいは胎児毒性を示唆する症例報告あるいは疫学調査はない(2。chlorpheniramineに体内で曝露された児に、先天性の奇形がみられる頻度は増加しないとするレトロスペクティブな調査が報告(2。

奇形発生の高い絶対過敏期あるいは相対的過敏期に本剤配合薬を服用した4例で健常児出産(2。

[222]cloperastine fendizoate
フェンジゾ酸クロペラスチン

[222] cloperastine hydrochloride
塩酸クロペラスチン

data未詳 本薬は抗ヒスタミン薬ジフェンヒドラミンと類似構造を有し、1961年ミン作用と気管支筋弛緩作用を有するる(16
[224]codeine phosphate
リン酸コデイン
C→
推定無影響

A→

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。

?類似化合物(モルヒネ)の動物実験で催奇形作用が報告されているので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

?分娩前に投与した場合、出産後新生児に禁断症状(多動、神経過敏、不眠、振戦等)が現れることがある。

マウス、ラット、ハムスターにヒトの臨床用量の4-125倍を投与したが奇形発生頻度は増加しない。

第1三半期に563人の胎児が体内でコデインに曝露された。このうち32人に奇形が発生した。奇形の種類は呼吸器系、泌尿生殖器系、腫瘍、ダウン症候群、中枢神経系の奇形であった。このうち呼吸器系との奇形の関係は統計的に有意さがあった。

いくつかの研究では、妊娠初期のコデイン使用によって、呼吸器奇形、幽門狭窄、鼠径ヘルニア、心循環系奇形及び口蓋裂等の奇形と関連があると報告されている。これらの研究では原因因子をコデインと断定していないが、妊娠中の使用は慎重にすべきであると示唆している。

第1三半期にコデインを含有する薬剤を服用した630人の婦人から産まれた子供に先天的奇形は認められなかったとする報告がされている(2。

オーストリア医薬品評価委員会の先天異常部会による評価では、妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に多数使用されてきたが、奇形発現頻度の増加はなく、胎児に対する直接、間接的な有害作用は観察されない薬剤に分類(2。

絶対過敏期に服用した14例において全例健常児を出産(2。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない(11。

[222]dextromethorphane hydrochloride
臭化水素酸デキストロメトルファン

[222]dextromethorphane phenolphthalein
デキストロメトルファン・フェノールフタリン塩

A→
推定無影響
A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない(11。dextromethorphane含有の鎮咳剤を、第1三半期に服用した妊婦の奇形発生の調査では、300名の女性から24例の奇形児が出生した。この頻度はこの調査における母集団の奇形発生率と統計的に有意さはなく、本剤と催奇形の関連性は認められなかっった(2。

本剤の妊娠中の投与は安全である(2。

奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に、本剤を服用した15例において全例健常児を出産(2。dextromethorphaneは鎮痛・呼吸抑制作用がなく、鎮咳作用のみ強い。また臨床効果はコデインにほぼ等しい(16。

[441]difeterol hydrochloride
塩酸ジフェテロール
data未詳 ?
[441]difetero phosphate
リン酸ジフェテロール
data未詳 ?
[224]dihydrocodeine phosphate
リン酸ジヒドロコデイン
A→
推定無影響
A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない(11。

?類似化合物(モルヒネ)の動物実験で催奇形作用が報告されているので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。 ?リン酸ジヒドロコデイン・10倍散については、分娩前に投与した場合、出産後新生児に禁断症状(多動、神経過敏、不眠、振戦等)が現れることがある(4。

[234]dihydroxidealuminum・aminoacetic acid
ジヒドロキシアルミニウムアミノ酢酸塩(アルミニウムグリシネート)
data未詳 ?
[441]diphenhydramine hydrochloride
塩酸ジフェンヒドラミン

[441]diphenhydramine salicylate
サリチル酸ジフェンヒドラミン

[441]diphenhydramine tannate
タンニン酸ジフェンヒドラミン

C→
推定無影響

A→
推定無影響

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない(11。

妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい(4。■diphenhydramineの服用により兎唇の発生が高まる可能性を無視できないとの疫学調査結果が報告されている(4。

50,282組の母子に関する調査では、第1三半期に595組が本剤に曝露された。また、妊娠中何らかの時期に本剤に曝露された母子が、2,948組あった。いずれの群においても奇形との関連性を示唆する証拠は認められなかった。数種の奇形と関連している可能性はあるが、統計的な有意さは明らかでない(2。

599例の口蓋裂を有する児の群と590例の口蓋裂のない児の群を比較した調査では、第1三半期に子宮内でdiphenhydramineに曝露されたのは、前者で20例、後者では6例と有意さがみられた。母親のdiphenhydra-mine服用と口蓋裂の発生に統計的に有意な関連が認められたと報告されている(2。

1971年の奇形を有する児の調査では、第1三半期に抗ヒスタミン剤に曝露された児に奇形のみられる頻度は、対照群と比較してむしろ少なかったの報告。本調査でdiphenhydramineは2番目に繁用されていた(2。6,509人の母親の調査で、第1三半期に本剤を使用した270例では、薬剤の使用と催奇形に関連性を認められなかった(2。

妊娠中に本剤を毎日150mg/kg服用していた母親から産まれた子供に、離脱症状として全身のふるえと下痢が発生したとの報告がある。フェノバルビタールによる治療で症状は改善した(2。

[441]diphenylpyraline hydrochloride
塩酸ジフェニールピラリン

[441]diphenylpyraline teoclate
テオクル酸ジフェニールピラリン

B2(11 B2:まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない(11。

ラットを用いた実験(2.5-37.5mg/kg/日経口投与・妊娠1-15日)において、催奇形作用及び着床阻止作用は認められなかった。

妊婦への使用について、催奇形性を示唆する症例報告も疫学調査もない。妊婦の本剤服用は、催奇形の危険度を上昇させないことを示唆した以下の報告がある。 ヒトにおける50,282組の母子に関する調査では、使用例の少ないその他の抗ヒスタミン剤として本剤を含む12種の薬剤を服用した113例の調査結果が挙げられている。これらの薬剤に曝露された母子は1組であった。これらの薬剤に妊娠初期4カ月の間に曝露されたことにより奇形の発生頻度は増加しないと報告されている。113例中本剤に曝露された母子は1組であった(2。

[114]ethenzamide
エテンザミド
推定無影響 サリチル酸系製剤(アスピリン等)には動物実験で催奇形作用が報告されているものがあるので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する(4。
サリチルアミドの誘導体で、毒性が少なく、鎮痛作用は比較的強い。ヒト、動物の生殖に及ぼす影響、催奇性あるいは胎仔毒性に関する報告はされていない(2。
奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に本剤を服用した39例において全例健常児を出産(2
[441]fenethazine hydrochloride
塩酸フェネタジン
data未詳 ?
[224]guaifenesin
グアイフェネシン
A→
推定無影響
A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない(11。
生薬エキス製剤については、生殖試験の報告はない(2。
[314]hesperidin
ヘスペリジン
data未詳 ?
[114]ibuprofen
イブプロフェン
B→
C→
acetaminophen参照
C:催奇形性はないが、その薬理作用によってヒト胎児及び新生児に有害な作用を及ぼすか又は及ぼす可能性の疑われる薬。この作用は可逆的なものである(11。
非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)は、プロスタグランジン合成阻害作用があり、妊娠後期に投与すれば、胎児の動脈管閉鎖や出産・分娩の遷延を来す。妊娠最終月にNSAIDの継続投与を行う場合は、その適応がある場合だけに限定すべきである。分娩予定日前の数日間はプロスタグランジン合成阻害作用を持つ薬の使用は避けるべきであろう(11。
[441]isothipendyl hydrochloride
塩酸イソチペンジル
data未詳 妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい(7。
妊婦への使用について、安全性を確認した疫学調査はない。また、催奇形性を示唆する症例報告・疫学調査もない(4。
[114]lactylphenetidine
ラクチルフェネチジン
data未詳 ?
[395]lysozyme chloride
塩化リゾチーム
推定無影響 医療用添付文書にも記載無し。

ラットの妊娠前・初期、器官形成期、周産・授乳期に50?4000mg/kg/日をそれぞれ経口投与したところ、催奇形性は認められず、新生児の発育も順調であった(12。

リゾチームは涙液・鼻汁・白血球等生体内に広く分布するものであり、また本剤は卵白から生成した製剤であるため、曝露による催奇形性の可能性は殆どないと考えられる。

[234]magnesium carbonate
炭酸マグネシウム
推定無影響 該当する記載はされていない(4。
妊娠中期・後期における炭酸マグネシウムの使用は、慢性的大量投与が行われない限り安全(15。
[234]magnesium silicate
ケイ酸マグネシウム
推定無影響 該当する記載はされていない(4。
三ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウムの妊娠中期・後期における使用は、慢性的高投与量にならない限り安全である(15。
[234]magnesium oxide
酸化マグネシウム
推定無影響 該当する記載はされていない(4。
magnesium silicate参照
[234]magnesium hydroxide・aluminum potassium sulfate
水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物
推定無影響 ?
[234]magnesium aluminometasilicate
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
推定無影響 マウスの妊娠7日-12日目までの6日間3,000mg/kg及び6,000mg/kgを毎日1回投与したが、マウスの胎仔に対する催奇形作用、発育抑制作用はなかった(2。
奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に服用した8例、相対過敏期に服用した2例のいずれもが健常児を出産(2。
[441]mebhydrolin napadisylate
ナパジル酸メブヒドロリン
A→ A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない(11。
[222]dl-methylephedrine hydrochloride
dl-塩酸メチルエフェドリン

[222]dl-methylephedrine saccharinate

dl-塩酸メチルエフェドリンサッカリン塩

C→
推定無影響

A→
推定無影響

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない(11。

妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(4。

生薬エキス製剤については、生殖試験の報告はされていない(2。

[441]methdilazine hydrochloride
塩酸メトジラジン
B2→ B2:まだ、不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない(11。
[222]noscapine
ノスカピン

noscapine hydrochloride
塩酸ノスカピン

data未詳 特に記載されていない(4。
本品はアヘンアルカロイドの1種で、従来、有用な薬理作用が認められなかったが、1954年鎮咳作用が認められた。咳中枢を抑制するが、呼吸はむしろ興奮的に作用する。コデインに匹敵する鎮咳作用が期待されたが、それほどではなくコデインの1/2?1/10程度である(16。
[222]pentoxyverine citrate
クエン酸ペントキシベリン
data未詳 ■特に記載されていない。
[224]potassium guaiacolsulfonate
グアヤコールスルホン酸カリウム
data未詳 ■生薬エキス製剤については、生殖試験の報告はない(2。
[441]promethazine methylendisalicylate
プロメタジンメチレン二サリチル酸塩
C→

C→

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。

妊婦の使用で催奇形性を示唆する症例報告・疫学調査はない。妊婦の本剤服用が、催奇形の危険度を上昇させないことを示唆した以下の報告がある(2。

先天性の奇形を有する836人の乳児に関する調査で、妊娠第1三半期に母親が本剤を使用した群と、使用しなかった836人の対照群との間に有意差はみられなかった。

50,282組の母子に関する調査では、妊娠第1三半期に本剤に曝露された114人の児に奇形発生の危険度の増加はみられなかった。

奇形発生の危険度が最も高い絶対過敏期に本剤配合感冒剤を服用した22例中1例で左眼に強度斜視を認めた以外、いずれも健常児を出産した(2。

C:催奇形性はないが、その薬理作用によってヒト胎児及び新生児に有害な作用を及ぼすか又は及ぼす可能性の疑われる薬。この作用は可逆的なものである(11。 妊娠後期に、フェノチアジン系薬を大量に投与すると、新生児に持続性の錐体外路障害を来すことがある(11。

[114]sasapyrine
サザピリン(サリチロサリチル酸)
data未詳 ?アスピリンにおいて、動物実験(ラット)で催奇形作用が、また、菲地で妊娠末期に投与された患者及びその新生児に出血異常が現れたとの報告があるので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(5。
?妊娠末期のラットに投与した実験で、弱い胎児の動脈管収縮が報告されている(5。
[114]salicylamide
サリチルアミド
C→ C:催奇形性はないが、その薬理作用によってヒト胎児及び新生児に有害な作用を及ぼすか又は及ぼす可能性の疑われる薬。この作用は可逆的なものである(11。 ヒト常用量の数倍量を投与した生殖試験では、胎仔喪失及び奇形の発生がみられた(2。
[222]sodium dibunate
ジブナートナトリウム
data未詳 ?
[234]synthetic aluminum silicate
合成ケイ酸アルミニウム
data未詳 該当する記載がされていない(4。
[234]synthetic hydrotalcite
合成ヒドロタルサイト
推定無影響 ラット、マウスで異常は認められていない(2。
奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に、服用した2例において、健常児出産(2 。
[441]thonzylamine hydrochloride
塩酸トンジルアミン
data未詳 ?
[222]tipepidine citrate
クエン酸チペピジン
data未詳 これまでの動物実験では、妊娠中の投与に関して有害性を示す報告はないが、ヒトでの妊娠中の投与に関して知見が無く、安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(4。
[441]tripelennamine hydrochloride
塩酸トリペレナミン
C→ C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。
[441]triprolidine hydrochloride
塩酸トリプロリジン
C→

A→

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない(11。

抗ヒスタミン剤を投与された患者群で、奇形児の出産率が高いことを疑わせる疫学調査結果があるので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい(6。

[312]vaitamin B1及びその誘導体並びにそれらの塩類 A→C
原則無影響
A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はない。C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。
[312]vaitamin B2及びその誘導体並びにそれらの塩類 A→
原則無影響
A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はない。
[314]vaitamin C A→C
原則無影響
A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はない。C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準]。
[510]茴香 推定無影響 生薬の妊婦への使用について、催奇形性を示唆する症例報告はない。また現在までに疫学調査も報告されていない(2 。
本品の粉末は芳香健胃薬として配合されており、その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]黄柏 推定無影響 奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に服用4例で健常児出産(2。
苦味健胃薬の配合成分であり、その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]桜皮(オウヒ) 推定無影響 鎮咳去痰薬。鎮咳薬の配合成分であり、その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]黄連 推定無影響 奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に服用した3例において、健常児出産(2。
健胃薬の配合成分であり、その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]遠志 推定無影響 去痰薬。鎮咳薬の配合成分であり、その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もない。
[510]ガジュツ(莪朮) 推定無影響 健胃薬の配合成分であり、その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]カミツレ 推定無影響 かぜ薬の配合成分。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]甘草 原則無影響 奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に服用した2例、絶対過敏期と相対過敏期にわたって服用した2例及び相対過敏期に服用した1例において健常児出産(2。
鎮痛・鎮痙薬、胃腸薬、去痰薬。種々の漢方製剤に配合されている。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。また、甘草は、植物本体を直接摂取する事例があるが、その結果奇形児の出生が増加したとの報告もされていない。また、本品を食品として摂取する地方もあるが、奇形発生が地域に偏在して発現したの報告もされていない。
[510]桔梗 推定無影響 去痰薬。本品の主成分はサポニンで有り、サポニンについてはA(11とする評価がされている。

本品は鎮咳薬に配合されており、その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。

[510]桂皮 推定無影響 奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に服用した12例中、1日だけ服用した例で左口蓋裂がみられたが因果関係は不明。その他はいずれも健常児出産。また、絶対過敏期と相対過敏期にわたって服用した1例においても健常児出産(2。
健胃薬の配合成分であり、その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]ゲンチアナ 推定無影響 奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に服用した7例において、健常児出産(2。
健胃薬の配合成分であり、その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]ゴオウ(牛黄) 推定無影響 牛の胆嚢中に生じた結石。解熱、鎮静、苦味清涼等の作用がいわれている。本品は中国において6世紀以前より広く用いられているの報告がされているが、それに伴って地域的に奇形児発生増加の報告はされていない。
[510]車前子
[510]車前草
推定無影響 去痰薬。鎮咳・去痰剤に配合される。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もいない。
[510]シャジン(沙参) 推定無影響 鎮咳・去痰薬。鎮咳・去痰剤に配合される。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もない
[510]獣胆(ユウタンを含む) 推定無影響 熊胆。動物の胆汁を乾燥させたもの。健胃薬、消化薬。健胃薬の配合成分。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もない。
[510] 生姜 原則無影響 本草綱目に妊婦禁忌の記載(2 。
奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に服用した17例、相対過敏期に服用した1例においていずれも健常児出産(2。
健胃薬。健胃薬の配合成分。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
なお、ショウガは、食物として摂取されるが、本品の摂食により奇形児の出生が増加したとする報告もされていない。
[510] 石蒜(セキサン)
(彼岸花)
推定無影響 去痰薬。鎮咳・去痰薬の配合成分。その意味では、現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もない。
[510]セネガ 推定無影響 去痰薬。本品の主成分はサポニンで有り、サポニンについてはA(11とする評価がされている。

本品は鎮咳・去痰薬に配合されており、その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もない。

[510]蒼朮 推定無影響 健胃薬。健胃薬の配合成分。その意味では、現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]竹節人参 推定無影響 健胃薬。本品の主成分はサポニンで有り、サポニンについてはA(11とする評価がされている。

健胃薬の配合成分。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。

[510]丁子 原則無影響 健胃薬。健胃薬の配合成分。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]地竜 推定無影響 解熱鎮痛薬。本品はかぜ薬に配合される。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]陳皮 原則無影響 健胃薬。健胃薬の配合成分。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]南天実 推定無影響 鎮咳去痰薬。本品はかぜ薬に配合される。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もない。
[510]人参 推定無影響 保健強壮薬、健胃薬。
奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に服用した2例において健常児出産(2。
本品の主成分はサポニンで有り、サポニンについてはA(11とする評価がされている。
健胃薬の配合成分。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]貝母 推定無影響 鎮咳去痰薬。本品はかぜ薬に配合される。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もない。
[510]白朮 推定無影響 健胃薬。健胃薬の配合成分。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。
[510]麻黄 推定無影響

A→

鎮咳去痰薬。本品はかぜ薬に配合される。その意味では現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もない。
A:麻黄中に含まれるephe-drineについて「多数の妊婦及び妊娠可能年齢の女性に使用されてきた薬だが、それによって奇形の頻度や胎児に対する直接・間接の有害作用の頻度が増大するといういかなる証拠も観察されていない」(11とする報告。

1)高久 史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,1998
2)佐藤 孝道・他編:実践 妊婦と薬;薬業時報社,1992
3)第十二改正日本薬局方解説書;廣川書店,1991
4)JPDI;薬業時報社,1996
5)サリナ錠添付文書,1995.10.改訂
6)ベネン散・錠・シロップ添付文書,1995.10.改訂
7)アンダントールリッチ添付文書,1993.10.改訂
8)トクレス散添付文書1995.7.改訂
9)薬名検索辞典;薬業時報社,1991
10)Merck Index ,1996
11)雨森 良彦・監修:妊娠中の投薬とそのリスク;医薬品・治療研究会,1993
12)イチーム錠・細粒・顆粒添付文書,1996.12.改訂
13)第十三改正日本薬局方解説書;廣川書店,1996
14)日本薬局方外生薬規格;薬事日報社,1989
15)柳沼

『妊娠中・妊娠可能婦人への投与を回避すべき薬剤』

水曜日, 12月 12th, 2007

妊娠中の薬物投与について、次の報告がされている。

妊娠した女性の90%が48種類もの医療用医薬品とOTC薬物を使用していた。最も一般的に服用される薬剤は制吐薬、制酸薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、抗菌薬、精神安定薬、催眠薬、利尿薬、社会的薬物・違法薬物などである。
それでも薬物が惹起する奇形は、全ての胎児の先天異常の僅か2-3%に過ぎない。多くの奇形は、遺伝的、環境的、又は未知の原因の結果として起こる。
胎児への薬物効果は、大部分は胎齢、薬効、用量によって決まる。

受胎後20日以内:受胎後20日より前に投与された薬物は、『全てか無かの効果』、胚を殺すか全く影響しないかの、どちらの効果も示し得る。この段階では催奇形性はあまり起こらない。
器官形成期(3-8週の間):催奇形について危険な時期である。この段階で胎児に到達する薬物は、測定しうる効果を示さないか、又は流産、亜致死的な解剖学的欠損(真の催奇形性)、後になって現れる永久的な微細な代謝又は機能的不全(潜在的な胎児障害)等を惹起する。
妊娠中期・後期:器官形成期の後に投与された薬物は、催奇形は起こしにくいが、正常に形成された胎児の器官や組織の機能と成長を変化させることがある。

通常、先天異常の発生頻度は約3%あるいは約4%等とする報告がされている。報告されている発生率に基づき計算すると、薬物が原因と考えられる奇形発生は約0.06-0.12%と計算できる。従って、薬物の曝露に由来する催奇形性の発現率は、極く僅かであるといえる。

下記の一覧表は、文献2及び文献3[Federal Register 1980;44:37434-67]に収載されている危険度分類基準[D]・[X]に属する薬剤をまとめたものである。日本・米国・オーストラリアの各国における使用医薬品の相違、原著資料の作成時期の相違等もあって、全ての薬剤についての情報は入手出来なかった。また、国内の資料はその性格上添付文書の記載内容に止めた。3種類の情報を比較参照し、催奇形性等について相談された際の参照資料とされたい。なお、添付文書については、最新の添付文書を参照すること。

薬品名 添付文書 オーストラリア医薬品評価委員会基準 FDA薬剤胎児危険度分類基準

[311]alfacalcidol

アルファロール(中外)

[1]妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性[ヒト妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験(ラット)で大量投与の場合、胎仔化骨遅延等[添付文書,
19 98.6.改訂]
  D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*:生命が危険にさらされるとき、重篤な疾病で安全な薬剤が使用できないとき、効果がないとき、その薬剤をどうしても使用する必要がある場合)

Aminoglycoside antibiotics

[613]gentamycin

ゲンタシン注(シエリング・プラウ)

[613]amikacin

アミカマイシン注(明治製菓)

[613]isepamycin

イセパシン注(シエリング・プラウ)

[613]tobramycin

トブラシン注(塩野義)

[613]astromicin

フォーチミシン注(協和)

[613]dibekacin

パニマイシン注(明治製菓)

[613]sisomycin

シセプチン注(アステラス)

[613]bekanamycin

カネンドマイシン注(明治製菓)

[613]ribostamycin

ビスタマイシン注(明治製菓)

[613]micronomicin

サガミシン注(協和)

[613]spectinomycin

トロビシン注(大日本住友)

[613]paromomycin

アミノサイジン錠(協和)

[613]fradiomycin

フラジオ腸溶錠(日本化薬)

[613]streotomycin

硫酸ストレプトマイシン注(明治製菓)

[613]kanamycin

硫酸カナマイシン注(明治製菓)

[613]arbekacin

ハベカシン注 (明治製菓)

妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性[新生児に第8脳神経障害が現れるおそれがある。また、動物実験(モルモット)で新生仔に外有毛細胞の消失が見られたとの報告][ゲンタシン注添付文書,1998.

4.改訂]。

妊婦・妊娠可能性婦人-治療上の有益性[新生児に第8脳神経障害が現れるおそれがある。][硫酸カナマイシン注射液添付文書,1998

.3.改訂]。

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める・高めたことが推定・高めることが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。 gentamycin及び他のアミノグリコシド系薬剤は胎盤を通過する。gentamycinは胎児の腎に選択的に取り込まれ、未熟なネフロン細胞に障害を与えることが証明されている。一部のamino-lycosideに関しては、体内で曝露を受けることにより聴神経の障害が起こるという報告。化学的構造の類似性から考えて、全てのamino-ycoideは胎児に対して腎毒性、聴神経毒性を持っていると考えなければならない。母体の血中濃度が治療域にあることが、胎児への安全性を保証するものでないことを留意

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[112]amobarbital
イソミタールソーダ注 (日本新薬)

[1]妊娠中投与-新生児の出血傾向、呼吸抑制等惹起-慎重投与。[2]分娩前連用-出産後新生児に禁断症状(多動、振戦、反射亢進、過緊張)発現の可能性[添付文書,1999.3.改訂]

  D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

Angiotensin convert-ing enzyme inhibitor

[214]captopril

カプトリル錠(第一三共)

[214]enalapril

レニベース錠 (萬有)

[214]alacepril

セタプリル錠(大日本住友)

[214]delapril

アデカット錠(武田)

[214]cilazapril

インヒベース錠(エーザイ)

[214]lisinopril

ゼストリル錠(ゼネカ)

[214]benazepril

チバセン錠(ノバルティス)

[214]imidapril

ナトリル錠(田辺三菱)

[214]temocapril

エースコール錠(第一三共)

[214]quinapril

コナン錠(田辺三菱)

[214]trandolapril

オドリック錠(アベンティス)

禁忌:妊婦・妊娠可能婦人。[1]妊娠中期及び末期にアンジオテンシン変換酵素阻害剤を投与された高血圧症の患者で、羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全及び羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形等が現れたとの報告。[2]妊娠中に本剤を投与された重症高血圧症の患者で、羊水過少症、また、その新生児に低血圧・腎不全等が現れたとの報告[カプトプリル錠,1999.12.改訂]

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、高めたことが推定される薬、高めるであろうことが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。-ACE阻害剤は胎児の子宮内での死亡を来すことがあり、妊娠中は使用すべきでない(captopril・enalapril )  

Antidepressant drugs

[117]amitriptylinel

トリプタノール錠・注(萬有)

[117]clomipramine

アナフラニール錠・注(ノバルティス)

[117]nortriptyline

ノリトレン錠(大日本住友)

[117]imipramine

トフラニール錠・注(ノバルティス)

妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性[三環系抗うつ剤(イミプラミン)では、動物実験(ウサギ)で催奇形性(外形異常)が報告][ノリトレン錠添付文書,199
8.11.改訂]。
C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こすことが疑われる薬、これらの効果は可逆的なこともある。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

Antityroid drugs

[243]propylthiouracil
チウラジール錠(田辺三菱)
[243]thiamazole
メルカゾール錠(中外)

[1]妊娠中投与-安全性未確立。胎児に甲状腺腫、甲状腺機能抑制惹起の報告。[2]妊婦・妊娠可能婦人-投与時、定期的に甲状腺機能検査実施、甲状腺機能を適切に維持-投与量調整。[3]新生児に出生後しばらくは、甲状腺機能抑制が、また、その後甲状腺機能亢進発現の可能性[チウラジール錠添付文書,199

9.11.改訂]。

C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こすことが疑われる薬、これらの効果は可逆的なこともある(propylthiou-racil)。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[112]bromvalerylurea
ブロバリン錠・末(日本新薬)

[ブロム化合物として]

胎児障害の可能性-妊婦・妊娠可能婦人-投与回避[添付文書,199
9.9.改訂]
 

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[113]carbamazepine
テグレトール錠・細粒(ノバルティス)

妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性-本剤を投与する場合、可能な限り単独投与[妊娠中に投与された患者の中に、奇形児( 二分脊椎を含む)や発育障害児を出産した例が多いの疫学調査報告、また本剤を単独投与された患者群に比較し、他の抗てんかん剤(特にバルブロ酸ナトリウム)と併用して投与された患者群に奇形児を出産した例が多いとの疫学調査報告]。[2]分娩前に本剤又は他の抗てんかん剤と併用した場合、出産後新生児に禁断症状(痙攣、呼吸困難、嘔吐、下痢、摂食障害等)発現の報告。[3]妊娠中の投与により、新生児に出血傾向。[4]妊娠中の投与により、葉酸低下が生じるとの報告[添付文書,2000.5.改訂]

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、高めたことが推定される薬、高めるであろうことが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。-本剤単独使用の場合約1%の二分脊椎が生じるものと考えられる。他の抗てんかん薬を併用した場合、更にリスクが増大するということを示唆するヒトでの証拠も得られている。  

[117]chlorpromazine
ウインタミン錠・注 (塩野義)

妊婦・妊娠可能婦人-投与回避[動物試験(齧歯類)で、大量で胎仔死亡、流産等の胎仔毒性が報告。また、妊婦に投与した場合、新生児に振戦等が発現][添付文書,2000.3.改訂]

C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こすことが疑われる薬、これらの効果は可逆的なこともある。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[641] chloroquine・hydroxychloroquine

国内市販無

 

D:chloroquine及びその関連物質は胎児に神経障害を引き起こすことがあり、聴覚、平衡、視覚障害を惹起。マラリア予防に用いる場合は用量も少なく、投与することによってもたらされる母児への利益の方がリスクを上回るため使用可。

 

[249]clomifene
クロミッド錠(塩野義)

-排卵誘発剤-

禁忌:妊婦。動物実験で胎児毒性・催奇形作用が認められており、またヒト妊卵に対する安全性未確立。従って妊娠初期の不注意な投与を避けるため、次の点に注意。1)投与前少なくとも1カ月間及び治療期間中は基礎体温を必ず記録させ、排卵誘発の有無を観察する。2)無月経患者においては投与前にGestagen testを行い、消退性出血開始日を第1日として5日目に、また投与前に自然出血(無排卵周期症)があった場合、その5日目に投与を開始する。3)投与後基礎体温が高温相に移行-投与中止。必ず妊娠成立の有無を確認。[添付文書,1998.4.改訂]。

B3:妊婦及び妊娠可能年齢の女性への使用経験はまだ限られている薬だが、奇形やヒト胎児への直接・間接的有害作用の発生頻度増加は観察されていない。動物を用いた研究では、胎仔への障害の発生が増えるという証拠が得られている。しかし、このことがヒトに関してどの様な意義を持つかは不明である。

X:動物又はヒトでの試験で胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上胎児への危険性の証拠がある場合、又はその両方の場合、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性が大きいもの。ここに分類される薬剤は、妊婦・妊娠可能性婦人禁忌。

[113]clonazepam
リボトリール錠(中外)

妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性(母体のてんかん発作頻発を防ぎ、胎児を低酸素状態から守る)が危険性を上回ると判断時のみ投与。分娩前に連用した場合、出産後新生児に禁断症状(神経過敏、振戦、過緊張等)発現、他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されている[添付文書,1999.7.改訂]

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める・高めたことが推定される・高めるであろうことが強く疑われる薬-薬理学的な副作用を伴うこともある。-本剤はベンゾジアゼピン系薬剤の一つで、胎盤を通過して胎児へも移行し、新生児の低血圧、呼吸機能低下、低体温を見る場合がある。この系統の薬剤では新生児の離脱症候群も報告。  

[245]cortisone 
コートン錠(萬有)
[245]hydrocortisone
コートリル錠(ファイザー)

妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性[動物実験(マウス)で催奇形作用報告、また、新生児に副腎不全を惹起]。[cortisone 10mgをマウスの妊娠8日から14日迄の各日に単回投与試験、及び2.5mgを、妊娠9日から14日の各日を投与初日として4日間連続投与した試験において、口蓋裂の発生][コートン錠添付文書,2000.3.改訂]

A:多数の妊婦及び妊娠可能年齢の女性に使用されてきた薬だが、それによって奇形の頻度や胎児に対する直接・間接の有害作用の頻度が増大するといういかなる証拠も観察されていない。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

Cytotoxic drug(細胞毒製剤)

[421]cyclopospha-mide

エンドキサンP錠・注(塩野義)

[421]dacarbazine

ダカルバジン注(協和醗酵)

[422]methotrexate

メソトレキセート錠(ワイス)

[422]fluorouracil

5-FU錠(協和醗酵)procarbazine

ナツラン(中外)

[その他の細胞毒製剤]

[以下FDA基準]

[399]azathioprine

イムラン錠(GSK)

[421]thiotepa

テスパミン注(大日本住友)

[421]busulfan

マブリン散(ワイス)[422]ercaptopurine

ロイケリン散(ワイス)

[422]cytarabine

キロサイド注(日本新薬)

[424]vincristine

オンコビン注(塩野義)

[424]vinblastine sulfate

エクザール注(塩野義)

[423]doxorubicin

アドリアシン注 (協和)

[423]daunorubicin

ダウノマイシン注(明治製菓)

[423]bleomycin

ブレオ注(日本化薬)

[429]cisplatin

ランダ注(日本化薬)

妊婦・妊娠可能婦人投与回避[催奇形性を疑う症例報告があり、また、動物試験(ラット)で催奇形性作用が報告されている。][エンドキサン添付文書,2

000.3. 改訂]。
妊婦・妊娠可能婦人-投与回避。[催奇形性を疑う症例報告があり、また、動物実験(マウス、ラット及びウサギ)で催奇形作用が報告されている][メソトレキセート添付文書,2000.3.改訂] 。
禁忌。[動物実験(ラット、ウサギ)の腹腔内投与で内蔵奇形、化骨不全等の催奇形性が報告。][ダカルバジン注添付文書,1998.4.改訂]

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、高めたことが推定される薬、高めるであろうことが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(*)

[249]danazol
ボンゾール錠(田辺三菱)
[246]methyltestosterone
エナルモン錠(あすか製薬)
[244]metenolone
プリモボラン錠(シエーリング)

禁忌[女性胎児の男性化惹起の報告][ボンゾール錠添付文書,199

9.10.改訂]

禁忌:女性胎児の男性化を起こすことがある][エナルモン錠添付文書,1998.10.改訂]。

D:ヒト胎児に奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める・高めたことが推定・高めるであろうことが強く疑われる薬-薬理学的な副作用を伴うこともある。-蛋白同化ステロイド、男性ホルモン及び他のアンドロゲン作用を持つ薬剤には、胎児の男性化作用があり、妊娠中は回避。  

Diabetes drugs

[396]acetohexamide
ジメリン錠(塩野義)
[396]tolbutamide
ラスチノン錠・末(アベンティス)
[396]chlorpropamide
アベマイド錠(小林化工)
[396]tolazamide
トリナーゼ錠(大日本住友)

妊娠・妊娠可能婦人-投与回避[スルホニルウレア系薬剤は胎盤を通過-新生児の低血糖、巨大児が認められている。また、動物試験(ラット)で催奇形作用が報告][ジメリン錠添付文書,1 999.3.改訂]

C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用の惹起が疑われる薬、効果は可逆的なこともある(tolbutamide)。
■経口血糖降下剤
妊娠中は厳重に正常血糖値を維持-インスリン治療に切り替えることによって最もよく達成。

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[112]diazepam
セルシン錠・注(武田)

[1]妊娠(3カ月以内)・妊娠可能婦人-治療上の有益性[妊娠中の本剤投与を受けた患者の中に奇形児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告]。[2]妊娠後期の婦人-治療上の有益性[新生児に哺乳困難、筋緊張低下、嗜眠、黄疸の増強等惹起]。[3] 分娩前連用で、出産後新生児に禁断症状(神経過敏、振戦、過緊張等)発現[添付文書,1999.10.改訂]

C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こすことが疑われる薬、これらの効果は可逆的なこともある。

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

参照(文献6)
Intial Evidence of Risk:口頭裂(大々的コホート研究、ケースコントロール研究で、リスクの増加無)

Diuretic

[213]ethacrynic acid

エデクレル錠(萬有)

[213]pironolactone

アルダクトンA錠・細粒(モンサント)

[213]triamterene

トリテレン(大日本住友)

[213]chlortalidone

ハイグロトン錠(ノバルティス)

[チアジド類]

[213]trichlormethiazide

フルイトラン錠(塩野義)

[213]hydrochlorothiazide

ダイクロトライド錠(萬有)

[213]penflutiazide

ブリサイド錠(旭化成)

[213]methclothiazide

エンデュロン錠(大日本住友)

[213]cyclopenthiazide

ナビドレックス錠(ノバルティス)

[213]benzylhydrochloro-thiazide

ベハイド錠(杏林)

妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性[妊娠中の投与に関する安全性未確立][エデクリル錠添付文書,

1999.1.改訂]。

妊娠後期には治療上の有益性が危険性を上回ると判断時のみ投与[チアジド系薬剤では新生児又は乳児に高ビリルビン血症、血小板減少等を起こすことがある。また、利尿効果に基づく血漿量減少、血液濃縮、子宮・胎盤血流量減少が現れることがある][ダイクロトライド錠,1998.3.改訂]。

B3:妊婦・妊娠可能年齢の女性への使用経験はまだ限られている薬だが、奇形やヒト胎児への直接・間接的有害作用の発生頻度増加は観察されていない。動物を用いた研究では、胎仔への障害の発生が増えるという証拠が得られている。しかし、このことがヒトに関してどの様な意義を持つか不明(spironolactone)

C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こすことが疑われる薬、これらの効果は可逆的なこともある(triamterene)。

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(*)

[113]ethotoin
アクセノン錠・末(大日本住友)

妊娠中に本剤を単独、又は併用投与された患者に、奇形児(口唇裂、口蓋裂等)を出産した例が多いとの疫学的調査報告。妊婦・妊娠可能性ある婦人-治療上の有益性(母体のてんかん発作頻発を防ぎ、胎児を低酸素状態から守る)が危険性を上回ると判断時投与[添付文,1999.5.改訂]   D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(*)

[311]etretinate
チガソンカプセル(中外)

催奇形性の症例報告。妊婦・妊娠可能婦人-投与回避[本剤投与中又は投与中止後2年以内に妊娠した患者で、胎児、新生児の頭蓋顔面欠損、脊椎欠損、四肢欠損、骨格異常等が発現の報告][添付文書,1999.9.改訂]。

X:胎児に対して永続的な障害をもたらす危険性が高く、妊娠中や妊娠可能期には使用すべきでない薬-本剤は治療量の範囲内で使用しても催奇形性がある。使用中止後も4-5カ月は体内に蓄積している。本剤治療中あるいは治療中止後2年以内の患者が妊娠した場合、胎児に奇形を生ずるリスクは高い。 X:動物・ヒトでの試験で胎児異常証明、ヒトでの使用経験上胎児への危険性の証拠-薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性が大きいもの。区分される薬剤は、妊婦・妊娠可能婦人-禁忌

[112]flunitrazepam
サイレース錠・注(エーザイ)

[1]動物実験で催奇形作用が報告。妊婦・妊娠可能婦人-投与回避。妊娠動物(ラット)に投与した実験で、50mg/kgの用量で催奇形作用発現。分娩前に連用した場合、出産後新生児に禁断症状(神経過敏、新鮮、過緊張等)発現が、他のベンゾジアゼピン化合物(ジアゼパム)で報告[添付文書,1998.7.改訂]

C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こすことが疑われる薬、これらの効果は可逆的なこともある。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

Folicular hormone drugs[卵胞ホルモン剤]

[247]estradiol

エストラダームTTS(ノバルティス)

[247]estradiol benzoate

オバホルモン水懸注(あすか製薬)

[247]estradiol dipropionate

オバホルモンデポー注(あすか製薬)

[247]estradiol valerate

プロギノンデポー注(シエーリング)

[247]ethinylestradiol

プロセキソール錠(あすか製薬)

[247]mestranol

デボシン錠(塩野義)

[247]estriol

エストリール錠・水懸注(持田)

[247]estriol propio-nate

エストリールデポー注(持田)

[247]estriol acetate benzoate

ホーリンデポー注(あすか製薬)

[247]estrogens  conjugated

プレマリン錠・注(旭化成)

禁忌:妊婦・妊娠可能性ある婦人。[1] 妊婦・妊娠可能性ある婦人- 投与回避[妊娠中投与に関する安全性未確立]。[2]卵胞ホルモン剤を妊娠動物(マウス)に投与した場合、仔の成長後膣上皮及び子宮内膜の癌性変性を示唆する結果報告。また、新生仔に投与した場合、仔の成長後膣上皮の癌性変性を認めたとの報告[プレマリン錠添付文書,199 9.6.改訂] B1:妊婦及び妊娠可能年齢の女性への使用経験はまだ限られているが、この薬による奇形やヒト胎児への直接・間接的有害作用の発生頻度増加は観察されていない。動物を用いた研究は不十分又は欠如しているが、入手しうるデータは、胎仔への障害の発生が増加したという証拠は示されていない。 X:動物又はヒトでの試験で胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上胎児への危険性の証拠がある場合、又はその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性が大きいもの。ここに分類される薬剤は、妊婦又は妊娠する可能性のある婦人には禁忌。

[247]fosfestrol
ホンバン錠・注(杏林)

承認適応:前立腺癌

別名:リン酸ジエチルスチルベストロール(diethylstilbestrol phosphate)

その他の注意:女性に対する適用はないが、妊娠中ジエチルスチルベストロールを投与された母親から生まれた女児に、成長後膣癌が発生したとの報告[添付文書,1998.4.改訂]。 X:胎児に対して永続的な障害をもたらす危険性が高く、妊娠中や妊娠の可能性のある時期には使用すべきでない薬 。 X:動物・ヒトでの試験で胎児異常が証明、あるいはヒトでの使用経験上胎児への危険性の証拠がある場合、又はその両方の場合で、薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性が大きい。ここに分類される薬剤は、妊婦・妊娠可能性ある婦人-禁忌

Iodine contrast media
[ヨード造影剤]

[721]iohexol
オムニパーク注(第一三共)
[721]iopromide
プロスコープ(田辺三菱)

妊娠・妊娠可能婦人-診断上の有益性[妊娠中投与に関する安全性未確立。また、本剤投与の際にはX線照射をともなう][オムニパーク添付文書,1999.3.改訂]。   D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[117]lithium
リーマス錠(大正富山)

禁忌:妊婦・妊娠可能婦人。[1]動物実験(ラット、マウス)で催奇形作用、またヒトで心臓奇形の発現頻度の増加報告、妊婦・妊娠可能性ある婦人-投与回避。[2]分娩直前に血清リチウム濃度の異常上昇を起こすことがあるので、妊娠末期の婦人-投与回避[添付文書,199

9.8.改訂]。

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める・高めたことが推定される・高めるであろうことが強く疑われる薬-薬理学的な副作用を伴うこともある。-本剤は胎児の循環血液中に入る。新生児で甲状腺機能障害を起こしたという報告。また本剤を妊娠中に用いた場合、心血管系奇形を起こす可能性示唆するデータがある。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[112]lorazepam
ワイパックス錠(ワイス)

妊娠中の投与に関する安全性未確立、妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性。妊娠中に他のベンゾジアゼピン系化合物の投与を受けた患者の中に奇形児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学調査報告。分娩前に連用した場合、出産後新生児に禁断症状(神経過敏、振戦、過緊張等)の発現が、他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告*妊娠動物(マウス)にlorazepamを大量投与した実験で、胎仔に口蓋裂及び眼瞼裂を認めたとの報告[添付文書,1998.12.改訂]

C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こすことが疑われる薬、これらの効果は可逆的なこともある。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

Corpus luteum hormone drugs[黄体ホルモン剤]

[247]medroxyproge-sterone acetate
ヒスロン錠(協和醗酵)
[247]norethisterone
ノアルテン錠(塩野義)
[以下FDA基準]
[247]progesterone
ルテウム油性注(あすか製薬)
[247]hydroxyproge-sterone caproate
オオホルミンルテウムデポー注(あすか製薬)
[247]dydrogesterone
デュファストン錠(第一三共)
[247]chlormadinone acetate
ルトラール錠(塩野義)

禁忌。妊婦・妊娠可能婦人-投与回避[妊娠初期・中期に投与した場合、まれに新生女児の外性器の男性化惹起][ノアルテン錠添付文書,1998.12.改訂]。

その他の注意:黄体ホルモン剤の使用と先天異常児出産との因果関係は、未確立であるが、心臓・四肢等の先天異常児を出産した母親では、対照群と妊娠初期に黄体又は黄体・卵胞ホルモン剤を使用していた群との間に、有意差があったの疫学的調査報告[ルトラール錠添付文書,1998.7.改訂]

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、高めたことが推定される薬、高めるであろうことが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。-受胎後8週以後に使用すると胎児の男性化を引き起こすことがある。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(*)

[211]metaraminol bitartrate
アラミノン注(萬有)

妊婦・妊娠可能婦人への注意事項記載無[添付文書,199 8.8.改訂] C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を惹起が疑われる薬、これらの効果は可逆的なこともある。

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[232]misoprostol
サイトテック錠(モンサント)

禁忌[本剤には子宮収縮作用があり、妊婦で完全又は不完全流産及び子宮出血が見られたとの報告][添付文書,1998.9.改訂] X:胎児に対して永続的な障害をもたらす危険性が高く、妊娠中や妊娠の可能性のある時期には使用すべきでない薬- 本剤は妊婦に使用してはならない。流産を惹起し、危険な出血をもたらす可能性。  

Oral contraceptive
[経口避妊薬]

[254]ethinylestradiol
オーソM21(ヤンセン協和)
[254]ethinylestradiol
トライディオール21(ワイス)

禁忌。妊娠が確認された場合には投与を中止。なお、2周期連続して消退出血が発来しなかった場合、妊娠している可能性があるため、妊娠の有無について確認[妊娠中の服用に関する安全性未確立][オーソM21添付文書,2000.5.作成]

参照(文献6)
Intial Evidence of Risk:先天性欠損(脊椎、肛門、心臓、気管、食道、腎臓、四肢)、男性化、偽半陰陽(妊娠3カ月期に服用した人と、普通の奇形の人で、一般的な奇形、遺伝子的な奇形の2つのメタアナリスで関係なし)

X:動物・ヒトでの試験で胎児異常が証明、あるいはヒトでの使用経験上胎児への危険性の証拠がある場合、又はその両方の場合、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性大。ここに分類される薬剤は禁忌

[392]penicilamine
メタルカプターゼ (大正富山)

(D-penicilamine)

禁忌(慢性関節リウマチ)・原則禁忌(ウイルソン病 他)妊婦・妊娠可能性ある婦人。

妊婦:催奇形性を疑う症例報告。妊婦・妊娠可能婦人-投与回避。但しウイルソン病(肝レンズ核変性症)には、治療上の有益性[添付文,1999.12.改訂]

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、高めたことが推定される薬、高めるであろうことが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。-本剤はヒト胎児で弛緩性皮膚を来す。

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[112]pentobarbital calcium
ラボナ錠(田辺)

これらの薬剤は新生児に低血圧、呼吸抑制、低体温をきたすことがある。妊娠中の継続的使用や分娩最中の投与は避けるべきである。

[1]妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性[類薬(フェノバルビタール)で催奇形作用報告。また、妊娠中の投与で、新生児の出血傾向、呼吸抑制等を惹起]。[2]分娩前に連用しない[出産後新生児に退薬症候(多動、振戦、反射亢進、過緊張等)が発現][添付文書,1998.4.改訂]

C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こすことが疑われる薬、これらの効果は可逆的なこともある。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認

[113]phenobarbital
フェノバール錠(三共)
[113]primidone
マイソリン錠 (大日本)

[1]妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性(母体の癲癇発作頻発を防ぎ、胎児を低酸素状態から守る)。本剤を投与された患者の中に、奇形児(口唇裂、口蓋裂等)を出産した例が多いとの疫学的調査]。[2]妊娠中にやむを得ず本剤を投与する場合には、可能な限り単独投与[妊娠中に他の抗てんかん剤(フェニトイン)と併用して投与された患者群に、奇形児を出産した例が本剤単独投与群と比較して多いとの疫学的調査]。[3]妊娠中の投与により、新生児に出血傾向、呼吸抑制等惹起。[4]分娩前に連用で、出産後新生児に退薬症候群(多動、振戦、反射口唇、過緊張等)発現[マイソリン錠添付文書,1999.5.改訂]

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、高めたことが推定される薬、高めるであろうことが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。- 妊娠中primidone・phenobarbitalを単独又は他の抗てんかん薬と併用した場合、新生児に血液凝固障害を来すことがある。これは出産前に母体にビタミンKを予防的に投与することで防止できる。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(*)

[113]ethosucimide
ザロンチンカプセル(第一三共)
[113]sultiame
オスポロット錠(ウェルファイド)

*これらの薬剤を服用することによって、新たなリスクが加わるかどうかについては、未だ不明である。

[1]妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性(母体の癲癇発作頻発を防ぎ、胎児を低酸素状態から守る)[妊娠中に本剤を投与された患者の中に、奇形児(口唇裂、口蓋裂等)を出産した例が多いとの疫学的調査]。[2]妊娠中にやむを得ず本剤を投与する場合、可能な限り単独投与する[妊娠中に他の抗てんかん剤(フェニトイン)と併用して投与された患者群に、奇形児を出産した例が本剤単独投与群と比較して多いとの疫学的調査]。[3]妊娠中の投与により、新生児に出血傾向、呼吸抑制等惹起。[4]分娩前に連用した場合、出産後新生児に退薬症候群(多動、振戦、反射口唇、過緊張等)発現[マイソリン錠添付文書,1999.5.改訂]

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、高めたことが推定される薬、高めるであろうことが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。- 妊娠中primido
ne・phenobar
bitalを単独又は他の抗てんかん薬と併用した場合、新生児に血液凝固障害を来すことがある。これは出産前に母体にビタミンKを予防的に投与することで防止できる。
D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(*)

[113]phenytoin
アレビアチン錠(大日本住友)

胎児ヒダントイン症候群の特徴的奇形パターン(子宮内胎児発育遅延、小頭症、精神発達の遅延、頭部・顔面の奇形、爪と指骨の低形成、鼠径ヘルニア等)

妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性(母体の癲癇発作頻発を防ぎ、胎児を低酸素状態から守る)[妊娠中に本剤を投与された患者の中に、奇形児(口唇裂、口蓋裂等)を出産した例が多いとの疫学的調査]。妊娠中にやむを得ず本剤を投与する場合には、可能な限り単独投与する[妊娠中に他の抗てんかん剤(特にプリミドン)と併用して投与された患者群に、奇形児を出産した例が本剤単独投与群と比較して多いとの疫学的調査]。妊娠中の投与により、新生児に出血傾向、呼吸抑制等を起こすことがある。分娩前連用-出産後新生児に退薬症候群(多動、振戦、反射亢進、過緊張等)が発現。妊娠中の投与により、葉酸低下の報告[添付文書,1999.5.改訂]。

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、高めたことが推定される薬、高めるであろうことが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。-妊娠中の本剤使用は児の頭部顔面領域異常、精神・身体発育の障害を伴うことが多く、またこれより頻度は少ないが、口蓋裂や心臓奇形を伴う。これらの症状の組み合わせは「胎児ヒダントイン症候群」と呼ばれることもある。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(*)

[641]quinine
塩酸キニーネ(丸石)

禁忌。妊婦・妊娠可能婦人-投与回避[胎盤を容易に通過することが知られており、流産・早産・死産・奇形等惹起][添付文書,200
0.2.改訂]。

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める・高めたことが推定される・高めるであろうことが強く疑われる薬-薬理学的な副作用を伴うこともある。-ヒト、動物のいずれに対しても、本剤を大量に用いれば難聴、発育障害、四肢・頭部の奇形等の胎児障害を惹起。本剤は子宮収縮作用もあることから、流産の恐れ

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの

[311]retinol palmitate
チョコラA錠・注(エーザイ)

禁忌:妊娠3カ月以内・妊娠希望婦人へのビタミンA 5000/日以上の投与(ビタミンA欠乏症の婦人は除く)。妊娠3カ月以内・妊娠希望婦人-ビタミンA欠乏症の治療に用いる場合を除き投与しない[外国において、妊娠3カ月から妊娠初期3カ月までにVA

を10000IU/日以上摂取した女性から出生した児に頭蓋神経堤等を中心とする奇形発現の増加が推定されたとする疫学調査]。[チョコラA錠添付文書,2000.2.改訂]。

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、高めたことが推定される薬、高めるであろうことが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。-過量の本剤摂取は先天障害を引き起こす。服用前にビタミンAを補う必要があるのかどうかを考えてみること。通常、オーストラリア人の食事は、ビタミンAの1日標準必要量2500IUを十分に含んでいる。

A→X:動物・ヒトでの試験で胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上胎児への危険性の証拠がある場合、又はその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性が大きいもの。ここに分類される薬剤は、妊婦・妊娠可能性ある婦人-禁忌。

[112]secobarbital
アイオナールナトリウム注(ウェルファイド)

[1]妊婦に投与する場合慎重投与[妊娠中に投与すると、新生児の出血傾向、呼吸抑制等を惹起]。[2]分娩前連用-出産後新生児に禁断症状(多動、振戦、反射亢進、過緊張等)発現[添付文書,1999.4.改訂]

  D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[430]sodium chromate-51Cr injection

放射性クロム酸ナトリウム注射液(第一ラジオアイソトープ研究所)

[430]sodium pertechnetate-99mTc injection

テクネゾール(第一ラジオアイソトープ研究所)

[430]gallium citrate-Ga67 injection

クエン酸ガリウム-Ga67注射液(第一ラジオアイソトープ研究所)

[430]iodinated human serum albumin-(131I) injection

放射性ヨウ化ヒト血清アルブミン注射液(第一ラジオアイソトープ研究所)

妊婦・妊娠可能婦人・授乳中婦人-原則投与回避-診断上の有益性が被曝による不利益を上回ると判断[授乳中の婦人は投与後少なくとも3日間は授乳しないの報告][テクネゾール添付文書,1998.10.改訂]

妊婦・妊娠可能婦人・授乳中婦人-原則として投与しない。診断上の有益性が被曝による不利益を上回ると判断。また、クエン酸ガリウムは授乳している乳房に集積するため、授乳する場合には投与後少なくとも2週間の期間を取った方が望ましい[クエン酸ガリウム-Ga67注射液添付文書,1998.10.改訂]

  X:動物・ヒトでの試験で胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上胎児への危険性の証拠がある場合、又はその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性が大きいもの。ここに分類される薬剤は、妊婦又は妊娠する可能性のある婦人には禁忌。

[113]valproate
デパケン錠(協和醗酵)

胎児バルプロ酸症候群の特徴的奇形パターン(二分脊椎、扁平鼻橋、眼内角贅皮、小口症、短頭症、細く長い指や凸状の爪、尿道下裂、精神運動発達の遅延、低体重等)

原則禁忌。妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性[二分脊椎児を出産した母親の中に、本剤の成分を妊娠初期に投与された例が対照群より多いとの疫学的調査、また、本剤の成分を投与された母親に、心室中隔欠損等の心奇形や多指症、口蓋裂等の外表奇形その他の奇形の報告。また、特有の顔貌(前頭部突出、両眼離開、鼻根扁平、浅く長い人中溝、薄い唇等)を有する児を出産したとする報告。妊娠中にやむを得ず本剤を投与する場合には、可能な限り単剤投与する[他の抗てんかん剤(特にカルマバゼピン)と併用して投与された患者の中に、奇形児を出産した例が本剤単独投与群と比較して多いとの疫学的調査]。妊娠中の投与により、新生児に肝障害、低フィブリノーゲン血症等が発現。動物実験(マウス)で、本剤が葉酸代謝を阻害し、新生児の先天性奇形に関与する可能性があるの報告[添付文書,1999.9.改訂]

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、高めたことが推定される薬、高めるであろうことが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。-妊娠初期(first trimester)に本剤を使用すると胎児の神経管形成不全、特に二分脊椎の危険性が増大する可能性が疑われている。本剤服用中の女性が妊娠した場合、先天奇形を出生前に診断するため、超音波診断や羊水穿刺等の検査をルーチンに行うよう勧めるべきである。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(*)

tetracyclines antibiotics      

[615]tetracyclines

アクロマイシンV(ワイス)

[615]demethylchlortetra-

cycline

レダマイシンカプセル(ワイス)

[615]minocycline

ミノマイシン錠・注(ワイス)

[615]doxycycline

ビブラマイシン錠・注(ファイザー)

妊婦・妊娠可能婦人-治療上の有益性[胎児に一過性の骨発育不全、歯牙の着色・エナメル質形成不全を起こすことがある。また、動物実験(ラット)で胎児毒性が認められている][アクロマイシン添付文書,1998.12.改訂] D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める・高めたことが推定される・高めるであろうことが強く疑われる薬-薬理学的な副作用を伴う。-TC系薬剤は乳歯のmineralisa-
tionの時期(妊娠中期、後記、新生児期及び8歳までの小児期)に、エナメル形成を抑制、歯の変色を来すことがある。TCはまた、成長期の骨格に蓄積。従って、妊娠中期・後期には使用回避。
D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[113]trimetyadione
ミノ・アレビアチン錠(大日本住友)

禁忌:妊婦・妊娠可能婦人。妊娠中に本剤を単独又は併用投与されたてんかん患者の中に、奇形児を出産した例が非服用群と比較して有意に多いとの疫学調査、妊婦・妊娠可能婦人-投与回避[添付文書,199

9.10.改訂]

  D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

Vaccine

[631]yellow fever vaccine
黄熱病ワクチン
(Pasteur merieux connaught)

*一般に市販されていない。注射の必要があれば検疫所で受ける。

例え妊婦にワクチンを使用しても、副作用として幼児、胎児への感染は報告されていない。 B2:妊婦・妊娠可能年齢女性への使用経験は限定されている薬だが、奇形やヒト胎児への直接・間接的有害作用の発生頻度増加は観察されていない。動物を用いた研究は不十分又は欠如-入手しうるデータでは、胎仔への障害の発生が増加したという証拠無。 D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認(*)

[631]Dried live attenuated rubella vaccine
乾燥弱毒生風しんワクチン(化血研)
[631]Dried live attenuated mumps vaccine
乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン(武田)
[631]Dried live attenuated measles vaccine
乾燥弱毒生麻しんワクチン(武田)
[631]variola virus vaccine
天然痘ワクチン-非売品-

禁忌(摂取不適当者):妊娠していることが明らかな者。本剤は、妊娠可能婦人においては、あらかじめ約1カ月間避妊した後接種及びワクチン接種後約2カ月間は妊娠しないよう注意[乾燥弱毒性生風しんワクチン添付文書,2000.3.改訂]。
禁忌(摂取不適当者):妊娠していることが明らかな者[乾燥弱毒性生おたふくかぜワクチン添付文書,1999.4.改訂]
禁忌(摂取不適当者):妊娠していることが明らかな者[乾燥弱毒生麻しんワクチン1999.4.改訂]。

B2:妊婦・妊娠可能年齢女性-使用経験限定、奇形やヒト胎児への直接・間接的有害作用の発生頻度増加は観察されていない。動物を用いた研究は不十分又は欠如-入手しうるデータでは、胎仔への障害の発生が増加したという証拠無。

妊娠可能年齢の女性は、妊娠前に風疹に対する抗体検査を実施。血清反応が陰性の女性-現在妊娠中でないことを確認した上で、全員に風疹ワクチンを接種。風疹ワクチンの接種は胎児の感染を惹起、接種する女性に対して、最低月経2周期の全期間、避妊を行うよう注意。しかし、これまでのところ血清反応陰性で妊娠中又は妊娠直前に風疹ワクチンの接種を受けた母親から生まれた生存児(約400人)のうち風疹様の先天性欠損をきたした例はない。この経験から、妊娠中風疹ワクチンを接種した場合-中絶を勧める必要はない。

X:動物又はヒトでの試験で胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上胎児への危険性の証拠がある場合、又はその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性が大きいもの。ここに分類される薬剤は、妊婦又は妊娠する可能性のある婦人には禁忌。

[333]warfarin
ワーファリン錠(エーザイ)

胎児ワーファリン症候群(骨形成障害、耳の奇形、低体重児、難聴、眼の異常、妊娠3カ月目服用のCNS欠損、背中及び腹部の奇形)

禁忌。妊娠・妊娠可能婦人-投与回避[点状軟骨異栄養症等の奇形及び出血による胎児死亡の症例報告][添付文書,
1999.4.改訂]

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める・高めたことが推定される・、高めるであろうことが強く疑われる薬-薬理学的な副作用を伴うこともある。-本剤は胎児に対する特異的な障害を来す(胎児warfarin症候群)。胎児の血中に入るおそれがあり、出血や死亡を来したという報告。

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの
薬品名 添付文書 オーストラリア医薬品評価委員会基準 FDA薬剤胎児危険度分類基準

 

その他、文献6では「最初奇形があるとされていたが、その後安全性が認められた薬剤」として、次のことがいわれている。
Spermicides(殺精子剤):Intial Evidence of Risk(四肢欠損、ガン、ダウン症、尿道下裂症):メタアナリシス(meta-analysis:メタ分析)でリスクの増加なし。
Salicylates:Intial Evidence of Risk(口蓋裂、先天性心欠損):大々的なコホート研究でリスクの増加なし。
Bendectin (doxylamine plus pyridoxine):Intial Evidence of Risk(心臓・四肢欠損):2つのメタアナリシス(meta-analysis:メタ分析)でリスクの増加なし。

1)福島雅典・総監修:メルクマニュアル 第17版 日本語版;日経BP社,1999
2)雨森良彦・監修:妊娠中の投薬とそのリスク;医薬品・治療研究会,1993
3)佐藤孝道・他編:実践妊娠と薬;薬業時報社,1992
4)Martindale 32Ed.,1999
5 )林 昌洋・監修:服薬指導Q&Aシリーズ-妊婦・授乳婦編;医薬ジャーナル社,1996
6)Gideon Koren,M.D.,Anne Pastuszak,M.Sc.,Shinya Ito,M.D., Drugs in Pregnancy:The New England Journal of Medicine,Vol.338,No.16,1128-1137(1994)
7)雨森良彦・監修:妊娠中の投薬とそのリスク(第4次改訂版);医薬品・治療研究会,2001

                [015.11.TER.2000.1.28.古泉秀夫・2000.7.14.一部修正・2004.1.18.改訂・2007.12.9.一部修正]

夾竹桃(Oleandere)の毒性

月曜日, 12月 10th, 2007
対象物 夾竹桃(Oleandere)
成分 葉に強心配糖体のオレアンドリン(oleandrin)の他、ネリアチン、アジネリン(adynerin)、デアセチルオレアンドリン、ウルソール酸、オレアノール酸、樹皮にジギトキシゲニンあるいはウザリゲニンの配糖体であるオドロシドA、B、D、F、G、Hの他、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などを含む。
一般的性状 キョウチクトウ[学名:Nerium indicim Mill.(=N.odorum Soland.ex Ait.)]。キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木。夾竹桃(英名:Rose Bay、Oleandere)。
夾竹桃 分布:インド原産。日本には享保9年(1724年)に渡来し、観賞用に庭園等に植栽される。
形態:樹高3mになる。若枝はやや太く、緑色の微毛がある。葉は通常三輪生し厚い皮質の線状披針形で長さ15-27cm、尖頭で全縁無毛。花期は8月。
薬用部分:葉、樹皮(夾竹桃<キョウチクトウ>)。必要 時に葉、樹皮を採集し、水洗い後日干しによる。
薬効・薬理:夾竹桃には古くから強心作用のあることが証明されており、葉に最も強い効果が見られた。 オレアンドリンはジキタリス配糖体類似の強心作用があり、ジギトキシンよりその作用が強く、また顕著な蓄積性を持ち、3日で56%が排出される。オレアンドリンは熱に対して比較的安定で、やや強い催吐作用があり、血管に対して低濃度で拡張し、高濃度で収縮させる。利尿作用はジギタリスより弱い。夾竹桃は打撲の腫れ、痛みに用いられる。強心成分を含むが、心臓病に素人療法を施すのは危険なため、使用すべきではない。使用法:打撲の腫れ、痛みに夾竹桃10-20gを400mLの水で煎じ、この煎液で患部を洗う。
毒性 oleandrinは、植物全体に含まれ、毒性は青酸カリよりも強く、致死量は0.30mg/kgで あるとされる。フランスで発生した死亡事故について、警察の調査によると、7人が死亡した際、バーベキューの串に使っていたのが、夾竹桃の枝だったという。火に焼かれることでoleandrinが染み出し、肉や野菜にも染み込んだ。その食材を食べた為、7人もの人間が死亡してしまったという。また、oleandrinは熱によって分解されにくい性質があり、生木のまま燃やすと、その煙にも毒成分が含まれる為、吸い込むと危険であるという。その為、十分乾燥させ、燃やしているときは近づかないように注意する。
夾竹桃には種々の強心配糖体が含まれているが,量的にもっとも多いのは oleandrinである。アグリコンはオレアンドリゲニン(oleandrigenin)で,これとオレアンドロース(oleandrose)と呼ばれる糖がO-グリコシド結合したものがoleandrinである。キョウチクトウの生葉中ではoleandrinはさらゲンチオビオース(gentiobiose:グルコース2分子がβ1→6結合した二糖類)と結合したオレアンドリンゲンチオビオシドとして存在している。この物質は
oleandrinよりも毒性はやや低いといわれている。植物内や動物の消化管内でこの2分子のグルコースが酵素により切断されるとoleand-rinになる。夾竹桃中の有毒物質の量は、植物の成熟時期によって異なり、開花時期がもっとも多いといわれている。また致死量については,乾燥葉として 50mg/kg(牛-経口)と報告されている。
症状 oleandrin は、体内に入ると神経細胞の興奮、筋肉の収縮が起こり、肝機能は低下する。その結果、下痢・嘔吐・目まい、更には心臓麻痺を惹起するという。通常であれば、ヒトの体内に入り得ないoleandrinであるが、夾竹桃には多く含まれるという。
処置 夾竹桃摂取者に関する具体的な処置法は確認できなかった。以下にジギタリス以外の強心配糖体による中 毒発現時の処置として報告されている例を参照として紹介する。
[1]血清カリウム値を1時間おきに測定し、高いようであればケイキサレートの経口投与又はブドウ糖とインスリンの静注を行う。入院時の値が6.4mEq/L 上は極めて予後が悪いと考えておかなければならない。
[2]房室ブロックにはフェニトイン(アレビアチン注射液)を1回25mg(小児:1回0.5-1.0mg/kg)、1-2時間おきに静注する。心室性不整脈 対しては、初回量15mg/kg(総量1gまで)、1分間0.5mg/kgを超えない速度で静注する。維持量は2mg/kgを成人で12時間おき、小児で8時間おきに、必要に応じて静注する。できれば血清中フェニトイン濃度を測定し、10-20μg/mLを保つようにする。
[3]心室性頻脈、二段脈にはリドカインが有効。初回量1mg/kgを静注。必要なら0.5-1.0mg/kgを20分後に静注する。維持量として10- 0μg/kg・minを点滴静注する。
[4]血液透析や血液灌流ではalkaloid・強心配糖体を除去することはできない。
事例 検死解剖の結果、カプセルの中に薬の代わりに入っていた、粉末状の夾竹桃の樹皮を摂取したための毒死と判明。直接的に手を下した犯行ではないが、有効な殺人方法だ。夾竹桃はカリフォルニアではごくありふれた低木である。事実、ファイフ家の裏庭にも1本植えてあった。カプセルの入っていた薬瓶から、彼自身のものだけでなくニッキの指紋も検出された[スー・グラフトン(嵯峨静江・訳):アリバイのA;早川書房,1992]。
備考 夾竹桃の粉末をカプセルに入れてという話を読んだとき、夾竹桃が有毒植物であるということを知らなかったので、まさかという思いが先に立ったのと、カプセルに入るくらいの量で、即、致死的状況に陥るということについては、眉唾物であるというのが正直なところ。しかし、調べてみると意外と毒性が強というのと、燃えてでる煙も厄介者のようであり、高速道路で火災が起きて夾竹桃が燃えている場所には近寄るなとは、車を運転する友人へのお節介な忠告。
文献 1) 三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
2)植松 黎:毒草を食べてみた;文藝新書,20003)植松 黎:毒草の誘惑;講談社,1997
4)http://www.ntv.co.jp/,2004.8.8.
5)http://ss.niah.affrc.go.jp/,2004.8.8.
6)Namera, A. et al. 1997. Rapid quantative analysis of oleandrin in human blood by high-performance liquid chromatography. Jpn. J. Legal Med. 51:315-318.
調査者 古泉秀夫 調査年月日 2004.8.17.

芫青(ゲンセイ)の毒性

月曜日, 12月 10th, 2007
対象物 芫 青(ゲンセイ)
成分

青斑猫はカンタリジン1%以内を含有する。
カンタリジン(cantharidin):白色結晶。カンタリスの有効成分で、約0.6%含まれている。

一般的性状

芫青(ゲンセイ)、英名:spanish fly、ヨーロッパ産カンタリスのことで、基原はアオハンミョウ(青斑猫)、学名:Litta vesicatoria(L.)De Geer(ツチハンミョウ科:Meloidae)である。
斑猫カンタリス(cantharis英名:cantharide)。日本産のマメ ハンミョウ(豆斑猫)Epicauta gorhami Marseul、中国産のMylabris phalerata Pallas又はM.cichorii Linné(Meloidae)である。本品を乾燥したものは定量するとき、カンタリジン(C10H12O4:196.21)0.6%以上をを含む。本品は不快な刺激性の臭いがあり、味は僅かに辛 い。本品の粉末は皮膚の柔らかい部分又は粘膜に付けば痒くなり、甚だしけば発疱する。皮膚刺激薬として外用され、毒性が強いため内用されることはない。
ヨーロッパ産のものは『芫青』という。

甲虫目ツチハンミョウ科の昆虫。体長は細長く約20mm。頭部は赤色、前胸、 前翅は黒色で、黄色い縦線がある。大豆の葉などを食害する成虫は、体内に猛毒成分を含有する。昆虫の豆斑猫は、発疱剤として使用されている。カンタリジンは以前、一種の催淫剤として使われた。しかし、強い刺激作用があり、内服すると腎障害を起こす。豆斑猫は不快臭を持つ灰黒色の甲虫で、皮膚粘膜に付くと痒くなり、赤く腫れて水疱ができる。早朝虫の活動が鈍いときに集めて乾燥し、生薬として用いられる。
豆斑猫(Epicauta gorhami Marseul)。日本に分布する昆虫で、乾燥した虫体をカンタリスとして薬用に供されたが、豆斑猫が大豆などの葉を食害し、農薬の影響によって激減し、更に副作用が強いこともあって、現在はあまり使用されない。
カンタリジンには皮膚刺激作用があり、発毛、発泡の目的で外用され、また、利 尿剤として内服されることもある。
カンタリスチンキ(cantharidis tincture):カンタリス(粗末)100gをエタノールに溶かし、1000mLとしたチンキ剤で、黄褐色澄明の液。皮膚の刺激剤で、脱毛症、禿頭に本剤の1%-稀エタノール溶液を塗布する。
カンタリス軟膏(cantharidis ointment):発疱膏ともいう。皮膚刺激薬。カンタリスにラッカセイ油、蜜鑞、テレビンチナ、クロロホルム、塩酸を配して軟膏としたもの。類緑黄色
である。肋膜炎、リウマチ、神経痛に適用する。

毒性

胃腸管から吸収され、皮膚からの吸収はわずか。腎より排泄される。10-30mgは致命的なことがあ る。
カンタリジン(ヒト致死量:約30mg)。有毒成分は皮膚からも吸収される。

症状

経口摂取:口と喉の灼熱感、腹痛、悪心・嘔吐、下痢、吐血、無尿、血尿、遅く弱い脈拍と低血圧症、昏 睡、痙攣が見られる。また呼吸障害で死亡。排尿時の劇痛。腎障害。
誤飲時、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢等の消化器系症状が発現する。血圧低下、尿毒 症、呼吸不全等を起こし、死亡することがある。

内服時、尿路を刺激し、男性性器の勃起を促すが、有毒成分が排出される時に腎 臓炎や膀胱炎を誘発し、少量でも反復使用すると慢性中毒の危険がある。

処置

[1] 多量の水で胃洗浄。塩類下剤(油又はアルコールは不可)。
[2]痛みにはモルヒネ15mgを皮下注射。
[3]興奮と痙攣にはジアゼパム5-10mgを緩徐に静注、あるいは筋肉深く注射。
[4]循環器ショックには補液点滴静注。出来れば血管収縮剤。
[5]電解質障害に対して適切な治療[6]食道が酷く侵されたときには、胃洗浄の前にチオペントン静注による麻酔を必要とするかもしれない。

事例

「芫青は、いわばご禁制の薬です。身分も使い途も明らかでない客に、芫青を売ることはご法度なんですよ」
「それはどうしてなんです」
「芫青は、斑猫ともいう。このうえなく貴重な妙薬として用いられる一方、人の命を奪う恐ろしい毒にもなるのがこの斑猫だ」
「芫青とは、斑猫のこと………!」[笹沢佐保:八丁堀・お助け同心秘聞<御定法破り編>-毒薬と小町娘;祥伝社ノン・ポシェット,1997]

備考

豆斑猫について、薬科学大辞典ではハンミョウ科としているが、他の資料ではツチハンミョウ科とされている。しかし、有毒の豆斑猫はツチハンミョウ科に属するとするのが正解で、ハンミョウ科に属する斑猫は、有毒昆虫ではないとされている。なお、第七改正日本薬局方解説書に記載されている豆斑猫の形態については、豆斑猫の特徴である頭部の赤について何ら説明が無く「頭部はほぼ心臓形で艶のある灰褐色を呈し………」となっているが、このような外形を持つ豆斑猫がいるのかどうかは、昆虫の専門家ではないので不明である。本文中の豆斑猫の図は描いたものである。

文献

1) 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
2)大木幸介:毒物雑学事典-ヘビ毒から発ガン物質まで-講談社ブルーブック,1999
3)白川 充・共訳:薬物中毒必携第2版;医歯薬出版株式会社,1989
4)小川賢一・他監修:危険・有毒生物;学習研究社,20035)第七改正日本薬局方解説書;廣川書店,1961

調査者 古泉秀夫 記入日 2004.8.23.

狐の手袋の毒性

月曜日, 12月 10th, 2007
対 象物 キツネノテブクロ(狐の手袋)・ジギタリス。[英] Foxglove、Farycaps。
成 分 Digitalis purpurea Linneの葉は強心配糖体、サポニン、酵素などを含むが、有効成分の強心配糖体はdigitoxin、gitoxin、 gitaloxinで、これらは生薬調整中にpurpurea glucoside A、B、glucogitaloxinから生成したものである。gigoxinは含まれない。その他プレグナン配糖体(diginin、 purpuronin等)、ステロイドサポニン(F-gitonin、desgalactotigonin等)及びフラボノイド(luteolinとその配糖体)を含む。その他リピド、ステロイド、脂肪酸などを含む。
一般的性状 キ ツネノテブクロ属(ジギタリス属)、ごまのはぐさ科 (胡麻葉

草科)。 [学名]Digitalis purpurea Linne(Scrophulariaceae)。属名のままの名で手袋の指の意。西欧及び南欧原産。薬用として栽培する2年草又は多年性草本。有毒部:葉。 本品はジギタリスの葉を60℃以下で乾燥し、葉柄及び主脈を除いて細切したものである。本品は定量するとき、1gにつき8-15ジギタリス単位を含む。本 品は主としてジギタリス末製造原料とされる。本品は弱い臭いがあり、味は極めて苦い。
古くからヨーロッパの民間薬として知られていたが、1775年英国の医師William Witheringによって臨床実験が行われ、その重要性が認められ、以後『強心利尿薬』として各国薬局方に収載されるようになった。

毒性 本品の最も主要な作用は心筋に直接働いてその収縮力を増強させることである。これはジギタリス配糖体の筋線維膜Na+、K+-

ATPase 阻害作用に基づくNa+ポンプ抑制効果、細胞内Na+濃度が上昇し、Ca2+の流入を促進することによると考えられている。ジギトキシンは消化管から容易に吸収され、血中の大部分はアルブミンと結合し、腎臓の尿細管における再吸収も大きいので、排泄されにくく、蓄積作用を起こしやすい。
ジギタリス投薬中しばしば悪心・嘔吐が見られるが、これは吸収後における嘔吐中枢の刺激によるものであるとともに、胃粘膜に対する局所刺激からの反射作用によるものである。ジギタリスによる最も大きな副作用は不整脈で、期外収縮がよく見られることである。量が多すぎると頻脈が起こるが、この場合には心室振戦を起こすおそれがあるので、投与を中止する。
78歳の女性がコンフリーと間違えてジギタリスの葉3枚を油で炒めて食べた。4時間後から腹痛、嘔吐、下痢が発現し、翌日には著しい徐脈、低血圧となり、次の日心室細動で死亡した。

44歳の男性はジギタリスをコンフリーと間違え、葉を10枚程度採取、1978年10月4日にホウレン草と一緒にジュースにして約180mLを飲んだ。2時間後から吐き気が見られ入院、徐脈、複視、房室ブロックが認められた。脈拍は40/分となり、不整脈が著しく、10月8日に死亡した。
1986年5月11日、64歳の男性は、滋養強壮目的でコンフリーと間違えてジギタリス葉5枚をミキサーにかけジュースとして飲用した。2時間後嘔気、嘔吐、不整脈が発現、次第に周囲のものが黄色く二重に見える等の症状が見られた。幻覚、不穏、錯乱状態となり、心電図上房室ブロック、著しい洞性徐脈、頻発する心室性期外収縮が見られた。不整脈は12日間、不穏、錯乱は13日間、心電図異常は15日間、黄視症は18日間持続し、退院するまでに1ヵ月以上かかった。

69歳の女性がコンフリー葉と間違え、ジギタリス葉約10枚を胡麻和えにして食べたところ、2時間半後位に嘔吐、腹痛が起き、2日目意識混濁状態になり、3日目不整脈が著しく、急性心不全で死亡した。

症 状 嘔吐が80%に見られる。摂食後数時間で発現するが、中毒の重症度とは関係ないとされる。25%の症例で不安を伴う興奮が見られ、錯乱性の迷走、幻覚が現れ、てんかん様発作を見ることもある。頭痛、筋肉痛、脱力感も見られる。

心筋の種々の部位で障害が起こり、その部位が刺激伝導路上で、下方に位置するほど危険である。刺激伝導障害と自動能の障害が同時発生する場合が殆どである。死亡は65%が心室細動、25%が長時間の無収縮、10%が急性循環不全によるものである。高カリウム血症は重症度を示す重要な因子である。

過量投与時-徴候・症状:精神状態の変化,悪心・ 嘔吐,徐脈,視力障害,心ブロック,不整脈,低カリウム血症(慢性の過量投与時),高カリウム血症(急性の過量投与時)等があらわれる。

処置 対症療法:血清カリウム値が5.5mEq/L以上の高カリウム血症の場合、炭酸水素ナトリウム(1mEq/kg) の静注、又はグルコース

(0.5g/kg)+インスリン(0.1unit/kg)療法を用いて細胞内へのカリウム取り込みを促進するか、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(0.5g/kg)を経口投与して排泄を促進する。これらの手段で改善しない場合は、血液透析法を施行する。洞性徐脈や高度房室ブロック及び洞進出ブロックの際は、硫酸アトロピン(0.5-2.0mg)の静注が第一選択なる。心室頻拍、期外収縮、又は二段脈の際は、フェニトイン(5分毎に100mg又は1gを50mg/分以下の速度)や塩酸リドカイン(1.0mg/kgを静注後1-4mg/分静注)を投与する。また硫酸マグネシウム(2gを20分以上かけて静注後1-2g/時を静注)は血中のマグネシウム濃度が正常であってもジギタリス中毒の際の不整脈には有効である。急性ジギタリス中毒の際に致死性不整脈が生じ、抗不整脈薬に反応せず循環動態が保てない場合や心停止の際には経皮的心肺補助法(PCPS)を導入する。
吸収の阻害:摂食後1時間以内であれば胃洗浄を考 慮する。活性炭を投与する。
排泄の促進:分布容積が小さいが蛋白結合率が高い digitoxinでは血液透析法は無効であるが、血液潅流法は有効である。分布容積が小さく腸肝循環を受けるdigitoxinでは活性炭の繰返し投与 が非常に有効である。
ジギトキシン錠の添付文書では、次の通り記載されている
1.過量投与の管理では、併用薬剤による過量投与、相互作用の可能性、薬物動態等を考慮する。

2.連続心電図モニターを行う。digitoxinによる調律異常が疑われた場合には投与を中止する。
3.気道を確保し,換気と灌流を維持する。バイタルサイン、血液ガス、カリウムとdigitoxin濃度をモニターする。
4. 活性炭の投与で薬物の吸収を減らすことができる。
5. 徐脈や心ブロックにはアトロピンやペースメーカーを用いる。
6.過量投与時の強制利尿、腹膜透析、活性炭による血液吸着の有効性は確立されていない。

事 例 「ま さか、毒薬ではなかったんだろうな」戻ってきた時の長助の表情から推量して、東吾はいったのだったが、
「いや、毒にもなります。それもかなり強い毒です」
「薬にもなるんだろう」
「わたしの口癖を盗みましたね」
しかし、宗太郎の表情は笑っていなかった。
「あの薬の出所についてすぐ調べてください。死んだ年寄りの他に、あの薬を服用している者はいないか」
「なんなのだ、あれは……」
「持ち込んだのは、まず異人でしょうが、清国経由で入って来ることも考えられなくはありません」

自分は長崎でイギリス人の医者から聞いたことで、その折、実物も見ているのだが、と前おきして宗太郎は紙包みを開いた。黒茶色の粉末が子供の手のひとにぎ りほど入っている。
「むこうでは狐の手袋と呼ばれている植物で丈は三尺程度にも伸び花は紅紫色、葉は上面が濃い緑で、裏が白っぽい灰色、柔らかい毛のようなものが生えている そうです」
宗太郎の説明を、源三郎までが気味悪そうに聞いている。
「もともとは花がきれいなので、むこうの人は庭などに植えていたようですが、その葉に薬効があるのを、イギリスの医者が紹介した。今から六、七十年ほど前 のことだといいます」

「なんに効くのだ」と東吾。

「利尿剤ですね。腎臓が悪くなって尿の出がよろしくないような場合に用いるのですが、或る種の心臓の病にも効果がある。但し、連用は危険で、葉柄や葉の主 脈のような部分は用いてはならないといわれています」
「要するに使い方によっては死人が出るってことだな」
源三郎が立ち上がった。
「八文屋のおきみに訊いてみましょう」[平岩弓枝:御宿かわせみ31-江戸の精霊流し-亥の子まつり;文春文庫,2006.4.10.]

備考 今回は『狐の手袋』と呼称される『ジギタリス葉』を取り上げた。作者は日本の作家の中では、毒使いの上手い作家で、その作品毎に多種多様の毒物を見せてくれるが、各毒物の記述は正確である。なお、現在、国内ではジギタリス葉の主成分であるdigitoxinについては、合成されたdigitoxinの製剤が市販されており、それが専ら使用されているため、医療機関で係わるとすれば、市販製剤の過量投与あるいは誤用による事故ということになるが、巷ではコンフリー葉の誤用としてジギタリス葉が摂取されるという事例が報告されている。しかし、現在ではコンフリー葉の摂食は禁止されており、その意味では今後、誤用は減るのかも知れない。
文献 1)原色牧野日本植物図鑑 I;北隆館,2003
2)海老原昭夫:知っておきたい身近な薬草と毒草;薬事日報社,2003

3)第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001
4)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療-;南江堂,2001
5)ジギトキシン錠(digitoxin)「シオノギ」0.025mg・0.1mg添付文書,2005.4.
6)相馬一核・監修:イラスト&チャートで見る急性中毒診療ハンドブック;医学書院,2005

調査者 古泉秀夫 記 入日 2006.8.6.

『卵アレルギー既往患者への投与に注意を要する薬剤改訂第5版』

金曜日, 12月 7th, 2007

KW:卵 [同義語:玉子・鶏卵・卵黄・卵白・発育鶏卵・精製卵黄レシチン・卵黄レシチン・卵黄油・高度精製卵黄レシチン・卵白加水分解物]・[関連語:鶏肉・鶏肉由来のもの・ニワトリ胚初代培養細胞 ]

食物とアレルギーとの関係について、次の報告がされている。

食物は、成人においてはアレルゲンとしての重要性は低い。食事性抗原によるアレルギーの発現機序も、IgE抗体由来のI型アレルギー反応以外のII、III、IV型反応の関与がいわれている。その他、食品添加物による過敏反応などもあり、食物の摂取と症状・疾患の因果関係が明確ではない場合も多い。

鶏卵によるアレルギーは、動物性食物によるアレルギーに分類されるが、牛乳、鶏卵(特に卵白)、魚介類(鯖、鰹、鰊、イカ、タコ、蟹、海老、牡蛎)や肉類(牛・豚肉、ハム、ソーセージ等)等が挙げられている。牛乳に感作されている場合、乳製品であるバター、チーズ、牛乳を含む菓子類、卵に感作されている場合には、卵を使用した菓子、マヨネーズ等に対しても反応する。

その他、食物によるアレルギーの場合、食事性抗原とは異なる仮性アレルゲン(ヒスタミン様物質を含有することによりアレルゲンとなり得る物質)に起因するアレルギーも、発現するとされている。仮性アレルゲンを含有する食物として、ほうれん草、茄子、筍、山芋、里芋、蕎麦、空豆、落花生、松茸、栗、夏みかん、蛸、烏賊、海老、鰹、鮪などが挙げられている。

また、食物アレルギー症状の原因となる食物について、患者332名中118人(35.54%)が、鶏卵に由来するものであった。また、42人(12.65%)は、卵白がその原因であったとの報告がみられる。ちなみに牛乳による食物アレルギー症状の発現は、18.67%とされている。

症状発現の時間的経過として、食物摂取後1時間以内に症状の発現する即時型と1時間以後に症状の発現する非即時型に分類されているが、即時型の症状として、多くは摂取後15分以内に

『口中のかゆみ、嘔気、嘔吐、鼻汁、目のかゆみ』 → 時に『アナフィラキシー・ショック』

等が発現すると報告されている。その他の症状として

呼吸器症状 鼻汁、鼻閉、くしゃみ等の鼻アレルギー症状。咳嗽、喘鳴、呼吸困難等の喘息症状。
消化器症状 嘔吐、腹痛、下痢等の胃腸症状。口内炎、口角炎、肛門掻痒症、過敏性大腸炎。
皮膚症状 湿疹、蕁麻疹、皮膚の発赤、皮膚掻痒症。

等が挙げられている。

特に若年者では、食事性抗原によるアレルギーの発現がみられる率が高いとされているため、薬剤の使用に際しては、食物アレルギーと薬との関係について十分認識した上で、患者相談に対応することが必要である。

患者への注意事項(参照) §今までに薬や鶏卵によるアレルギー症状(例えば発熱、発赤、関節痛、ぜんそく、かゆみなど)を起こしたことがある方は、次の点にご注意下さい。?「インフルエンザHAワクチン」の予防接種を受ける方は、前もって医師に申し出て下さい。?過去に鶏卵等によるアレルギー症状を経験されたことがある方は、医師又は歯科医師の診察を受ける際には、忘れずにそのことを申し出て下さい。

?過去に鶏卵等によるアレルギー症状を経験されたことがある方は、薬局で薬を購入する際、前もって必ず薬剤師にご相談下さい。

     
[分類]一般名・商品名(会社名) 添付文書標記 機序等
[219]alprostadil
パルクス注(大正富山)
リプル(田辺三菱)
高度精製卵黄レシチン 18mg/1mL
高度精製卵黄レシチン 36mg/2mL
鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤成分→過敏症の既往歴ある患者]
[245]dexamethasone palmitate
リメタゾン注(田辺三菱)
卵黄レシチン 12mg/mL
鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤成分→過敏症の既往歴のある患者]
[6313]dried live attenuated measles vaccine乾燥弱毒生麻しんワクチン(武田)
乾燥弱毒生麻しんワクチン(田辺三菱)
[鶏卵の胎児初代培養細胞で増殖]
鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤成分→アナフィラキシーの既往があることが明らかな者]
[本剤成分→アレルギー呈するおそれある者。]
*弱毒生麻しんウイルスを伝染性の疾患に感染していないニワトリの胚初代培養細胞で増殖させて得たウイルス液を精製。
[631]dried live attenuated mumps vaccine乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン (武田) 鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤成分アナフィラキシーの既往]
慎重投与→[本剤成分→アレルギー発現可能性]
*ニワトリの胚初代培養細胞
[631]dried live attenuated rubella vaccine乾燥弱毒生風しんワクチン(田辺三菱) 鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤成分→アナフィラキシーの既往]慎重投与→[本剤成分→アレルギー発現可能性]
*ウズラ胚初代培養細胞
[631] influenza HA vaccineインフルエンザHAワクチン(田辺三菱) 慎重投与
投与禁忌(3
本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対して、アレルギーを呈するお それのある者;本剤はインフルエンザA型ウイルス及びB型ウイルスを個別に発育鶏卵で培養、増殖したウイルスを処理して調製
[395]lysozym chloride
アクディーム錠・顆粒(あすか)
オペック錠・顆粒(大正富山)
ノイチーム錠・顆粒(エーザイ)
レフトーゼ錠・顆粒(日本新薬)
投与禁忌 卵白アレルギーの既往歴のある患者;本剤の成分は卵白由来の蛋白質で、卵白アレルギーがある患者においてアナフィラキシーショックを含む過敏症状の報告
[325] 消化態経腸栄養剤
エンテルード(テルモ)
鶏卵注意記載無 *卵白加水分解物が配合されているため、卵アレルギーを有する患者でアナフィラキシー・ショックが疑われる症例の報告がある(18。
[329]soybean oil
イントラリピッド(テルモ)
精製卵黄レシチン 12g/1000mLイントラリポス(大塚)
精製卵黄レシチン 3g/250mL

イントラファット注射液(日本製薬)
精製卵黄レシチン2.4g/200mL・6g/500mL

鶏卵注意記載無 重大な副作用:ショック、アナフィラキシー反応-呼吸困難、チアノーゼ等があらわれた場合投与中止、適切な処置。
*特に「鶏卵」に関する注 意事項は記載されていない。
[111]propofol
1%-ディプリバン注(アストラゼネカ)
精製卵黄レシチン 12mg/mL・大豆油100mg/mL
鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤又は本剤成分→過敏症の既往歴ある患者]

医療用医薬品として、鶏卵が関係する医薬品は比較的少ない。インフルエンザHAワクチンでは、添付文書中に「本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対して、アレルギーを呈するおそれのある者」として明確に「慎重投与」の記載がされている。その他の鶏由来の調製がされているワクチンについては、その添付文書中に特に鶏卵アレルギーとの関連情報は記載されていないが、使用に際し注意が必要であると考えられる。イントラリピッド関連の注射剤についても、組成中に「精製卵黄レシチン」の配合がされているが、「鶏卵」に関連する注意事項の記載はされていない。

参照:患者(男、生後14カ月)は、呼吸症状の治療のため入院し、入院後数時間以内に急性呼吸器不全を生じたため、当院に転送されてきた。既往歴としてアトピー性疾患、特に反応性気道疾患及び湿疹が著しかった。これまでに6回入院していた。卵、ピーナッツオイルに対するアレルギーが記録されていた。転送される前にpropofol及びrocuroniumを用いて緊急挿管が行われたが、病院の記録には具体的な用量は記載されていなかった。挿管処置から約30分後に緊急輸送機が到達時、患児は低血圧(83/34mmHg)及び頻拍(165/分)であった。患児の危篤状態は propofolに対するアナフィラキシー反応によると思われた。生食液をボーラス(bolus)投与し、ter-butalineをボーラス静注後、持続注入した。その反応の3時間前に換気による呼吸補助とmethylprednisoloneを投与されていた。生食液ボーラス投与から25分後、依然として頻拍状態であったが、BP(血圧)は126/85mmHgに改善していた。その後5分間に血圧が101/55mmHgに低下し、生食液を再投与した。バイタルサインは改善し、安定していた。挿管から2時間後に当院に到着後、小児ICUに入院した。患児は入院5日間で改善し、保護者は今後propofolを回避するよう指示された。Naranjo probability scaleにより、propofol投与後のアナフィラキシー反応は薬物有害反応である可能性が示された。propofol処方には卵レシチンと大豆油が含まれているので、これらの成分に過敏症の患者にはpropofolの使用は禁忌である。臨床医は特定の食物アレルギーを有する患者における薬物有害事象の可能性について考慮すべきである[Hofer,N.K.et al:Ann.Pharmcother.,37(3):398-401(2003.4)]

塩化リゾチームを含有するOTC薬

対象適応 注意事項 具体的注意
鎮咳去痰薬 投与禁忌 *本剤又は鶏卵によるアレルギー症状を起こしたことがある人[塩化リゾチームを含有する製剤に記載すること]。
外用痔疾用薬 投与禁忌 *本剤又は鶏卵によるアレルギー症状を起こしたことがある人[塩化リゾチームを含有する製剤に記載すること]。
眼科用薬
一般用点眼薬
抗菌性点眼薬
投与禁忌 *本剤又は鶏卵によるアレルギー症状を起こしたことがある人[塩化リゾチームを含有する製剤に記載すること]。
鼻炎用内服薬 投与禁忌 *本剤又は鶏卵によるアレルギー症状を起こしたことがある人[塩化リゾチームを含有する製剤に記載すること]。
歯科口腔用薬
口腔咽喉薬
歯科口腔用薬(内服)
投与禁忌 *本剤又は鶏卵によるアレルギー症状を起こしたことがある人[塩化リゾチームを含有する製剤に記載すること]。

1)高久史麿・監修:治療薬マニュアル;医学書院,1997
2)インフルエンザHAワクチン添付文書,1997.9.改訂
3)梅田悦生:常用医薬品の副作用;南江堂,1996
4)乾燥弱毒生麻しんワクチン添付文書,1996.9.改訂
5)乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン添付文書,1996.11.改訂
6)乾燥弱毒生風しんワクチン添付文書,1996.3.改訂
7)乾燥弱毒生麻しんワクチン添付文書,1996.3.改訂
8)JAPIC・編:一般用医薬品集 1998-99;薬業時報社,1997
9)石井 彰・他:あれるぎーとは;からだの科学,170<5>:34-39(1993)
10)向山 徳子:食物アレルギー;からだの科学,170<5>:62-65(1993)
11)卵アレルギー患者に注意すべき医薬品について:月刊卸薬業,25(10)611-612(2001)
12)食物アレルギーの小児おけるpropofol投与後のアナフィラキシーの可能性(翻訳);医薬関連情報,7:707(2003.7.)
13)JAPIC・編:一般用医薬品集 2007;(財)日本医薬品情報センター,2007

[015.4.ALE:1998.1.20. 古泉秀夫・2003.5.27. 第2改訂・2003.7.15.第3改訂・2003.8.29.第4改訂・2006.8.29.第5改訂]

「アリストロキア酸を含有する生薬・漢方薬」

水曜日, 12月 5th, 2007

厚生省発行の「医薬品・医療用具等安全性情報 No.161号」にアリスト ロキア酸に関する情報が収載された。次に一部調査情報を加え提供する。

[1]概要

アリストロキア酸(aristolochic acid)はアリストロキア属(Aristolochia属)の植物に含有される成分で、腎障害を惹起することが知られている。
日本においては、現在、aristolochic acidを含有する生薬・漢方薬は、医薬品として承認許可を受けたものとしては製造・輸入されていないが、aristolochic acidを含む漢方薬の個人使用に由来すると疑われる腎障害が報告されている。
生薬の呼称は国により異なる場合があり、生薬の取扱いについては注意を要す る。

[2]注意を要する生薬

  局方概要 中国生薬概要


/サイシン
本品はウスバサイシン[Asia-sarum sieboldii F.Maekawa]又はケイリンサイシン[Asiasarum heterotropoides F.Maekawa var.mandshuricum F.Maekawa(Aristolochiaceae) ]の根及び根茎。カンアオイ属(Asarum Linn.)の3属の一つ。

[注意]

1):中国からの輸入品は主として全草であり、鑑別を容易にするため、地上部を付けたままで取り引きされるといわれている。従って、この種の輸入品を国内 に出荷するときは、地上部は切除されなければならない。しかし、根と地上部が丸められているものがあり、地上部を除去するのは困難であるが、限度値以下に 調製すべきである。

2)根及び根茎にはaristolochic acidは含まれないが、地上部にはアリストロキア酸(aristolochic acid)が含まれる

成分:精油2?3%:methyl-eugenol、asaryl ketone、pinene、eucarvone、safrol、cineol、l-asarinin、limonene、2,4,5- trimethoxy-1-allyl-benzene、n-pentadecane、elemicin、3,4,5- trimethoxy-toluene、2,3,5-trimethoxy-toluene、(±)car-3-en-2-on-5-ol、(±)- epoxycaran-2-on-3-ol等を含有する。その他、phenyl-propanoid glycoside、(±)-asarinol A、(±)-asarinol Bを含有する。

辛味物質としてperitolin、2E、4E、8Z、10E-N-isobutyl-2,4,8,10-dodecatetraen-amide及び 2E,4E,8Z,10Z-N-isobutyl-2,4,8,10-dodecatetraenamideの不飽和脂肪酸アミドを含み、いわゆる土細辛 と称する生薬中にはこれらの辛味性不飽和脂肪酸アミドは検出されない。抗ヒスタミン活性物質としてmethyl-eugenol、kakuol、 higenamine及びN-isobutyl dodecatetra-enamideが報告されている。

基原:ウマノスズクサ科の植物。遼細辛(リョウサイシン・和名:ケイリンサイシン)あるいは華細 辛(カサイシン・和名:ウスバサイシン)の根付き全草異名・類縁植物:細辛→小辛(ショウシン)、細草(サイソウ)、少辛(ショウシン)、独葉草(ドクヨウソウ)、金盆草(キンボンソウ)、山人参(サンニン ジン)。ウスバサイシン→西細辛(セイサイシン)、白細辛(ハクサイシン)。遼細辛→北細辛(ホクサイシン)。土細辛:杜衡(トコウ)=馬辛(バシン)、 オオカンアオイ→花臉細辛、花葉細辛(カヨウサイシン)、円葉細辛(エンヨウサイシン)、盆草細辛(ボンソウサイシン)→毛細辛(モウサイシン)、双葉細 辛(フタバサイシン・和名:フタバアオイ)、長花細辛(チョウカサイシン)→黄細辛、茨茹葉細辛(シゴヨウサイシン)→召*葉細辛、金耳環(キンジカ ン)。成分

ケイリンサイシンには精油約3%を含む。その主成分は methyleugenolであり、他にsafrol、β-pinene、euca-rvone、phenol性物質等である。

ウスバサイシンは精油2.75%(あるいは1.9%)を含む。その主成分は methyleugeno(約50%を占める)であり、他にasaryl ketone、pinene、euc-arvone、safrol、1,8-cineol、l-asarinin(約0.2%)等である。◆ウスゲ細辛(ウスバ細辛の変種:A.sieboldii var.se-oulensis Nakai及びA.siebo-ldii var.cineoliferum)の精油成分はウスバ細辛に類似している。

双葉細辛の精油はeuca-rvone 6%、borneolあるいはestragol 7%、1,8-cineol 4%、pinene 2%、methyleugenol 15%、safrol 10%、croweacin 10%、elemicin 8%、saishi-none 0.2%、linalool、germa-cra-1(10),4,7(11)-trien-9α-ol、2-methyl-2-vinyl-3- isopropenyl-5-isopropyl-idene-cyclohexanol等を含む。

円葉細辛の全草はflavo-noid配糖体、アミノ酸、糖類及び精油を含む。

木通/モクツ ウ 本品はアケビ[Akebia quinata Decaisne]又はミツバアケビ[Akebia trifoliata Koidazumi(Lardizabalaceae)]の蔓性の茎を、通例、横切したものである。
[注意]
1)中国等ではアリストロキア酸 (aristolochic acid)を含有する関木通が木通として 用いられることがある
2)日本産のAkebia属植物の茎の構造はいずれも近似して区別がつきにくい。市販の木通の中には、しばしば、他種の植物例えばアオツヅラフジ [Cocculus trilo-bus DC.]、オオツヅラフジ[Sino-menium acutum Rehd.et Wi-ls.]とうのMenispermaceae植物の蔓性の茎を混じることがある。
成分:hederagenin及びolea-nolic acidをゲニンとするサポニン(akeboside St)を含む。その水性エキス中に灰分8%を含み、灰分中約30%はカリウム塩である。
基原:アケビ科の植物。白木通(ハクモクツウ)、あるいは三葉木通(サンヨウモクツウ・和名:ミ ツバモクツウ)、木通(モクツウ・和名:アケビ)の木質茎。異名・類縁植物:通草(ツウソウ)、附支(フシ)、丁翁(テイオウ)、丁父(テイフ)、富藤(フクトウ)、王翁(オウオウ)、万年(マンネン)・万年藤 (マンネントウ)、燕覆(エンフク)、烏覆(ウフク)。現在用いられている木通の薬材は主に関木通、川木通、准通(ワイツウ)、白木通の4種である。

白木通[akebia trifoliata(Thunb.)Koidz.var.australis(Diels)Rehd.]:八月瓜籐(ハチガツカトウ)、地海参(ジカイ ジン)ともいわれる。

関木通[Aristolochia mans-huriensis Kom.]。ウマノスズクサ科の植物。木通馬兜鈴(モクツウバトウレイ・和名:キダチウマノスズクサ)の木質。川木通[Clematis armandi Franch.]。キンポウゲ科の植物。小木通、繍球藤(シュウキュウトウ・和名:シロバナノハンショウヅル)の木質茎。

異名:油木通、白木通、山木通、老虎髭(ロウコシュ)、土木通。

成分:アケビの茎にはakeb-osid 11種が含まれるほか、betulene、myo-inositol、ショ糖が含まれている。またカリウム0.254%も含まれている。アケビとミツバア ケビの茎はstig-masterol、β-sitosterol、β-sitosterol-β-D- glycosidを含んでいる。

関木通にはaristolochic aci-d、 oleanolic acid、hedera-genin(mukurosigenin)等を含む。

関木通の同属植物である鉄線蓮状馬兜鈴[Aristolochia clematis L.]にもaristolochic acidが含まれるとされる。

准通[Aristolochia moupi-nensis Franch.]。ウマノスズクサ科の植物。准通馬兜鈴(ワイツウバトウレイ)の蔓又は根。蔓にはβ-sito-sterol、aristolochic acid、magnoflorine(thalictrine)及び酸性成分などを含む。

川木通の成分調査不能。

防已/ボウイ 本品はオオツヅラフジ[Sinome-nium acutum Rehder et Wilson(Menispermaceae)]の蔓性の茎及び根茎である。
[注意]
1)中国等ではaristolochic acid を含有する広防已(和名:シマノハカズラ)が用いられる。
基原:ツヅラフジ科の植物。粉防己(フンボウキ・和名:シマハスノハカズラ;Steph-amia tetrandra S.Moore)。異名:解離(カイリ)、木防己(モクボウキ)及びウマノスズクサ科の植物、広防己、異葉馬兜鈴。シマハスノハカズラの異名として石蟾蜍(セキセンジョ)、山烏亀(サンウキ)、漢防己、倒地共(トウチコウ)、金糸吊鼈(キンシチョウベツ)、白木香。

広防己[Aristolochia fangchi Wu]。ウマノスズクサ科の植物。防己馬兜鈴。成分:粉防己の根にはalka-loidが約1.2%含まれるが、それらはtetrandrine(fan-chinin,hanfangchin A)、fangchinoline(hanfang-chin B,demethyl tetra-ndrine)、一種のphenol性alkaloid、menisine(mufa-ngchin A)、menisidine(mufangchin B)及びcyclanoline(cisamin)などである。粉防己の根には、この他flavonoid配糖体、ph-enol類、有機酸、精油等が含ま れている。

木防己の根にはtrilobine、isotrilobine(homotril-obine)、magnoflorin(tha-lictrine)、 trilobamine、coklobine、menisarine、normenisarine等の多種類のalkaloidが含まれる。

木香/モツコウ 本品はSaussurea lappa Clarke(Compositae)の根である。学名:Aucklandia lappa DecaisneあるいはSaussurea costus(Falc.)Lipschが採用されている。
成分:精油1?2.5%:costunolide及びdehydrocostuslactoneを主成分とし、α-、β- cyclocostun-olide、alantolactone、isoalanto-lactone、isodehydrocostuslac-tone、 isozaluzanin C、12-meth-oxydihydrodehydrocostuslac-tone等のセスキテルペノイドを含む。血管作用物質、抗突然変異性物質として costunolide及びdeh-ydroc-ostuslactoneが報告されている。
[注意]
1)中国等ではaristolochic acidを含有する青木香南木香が木香として使用されるこ とがある。
基原:キク科の植物。雲木香(ウンモッコウ・和名:モッコウ)、越西木香(エッセイモッコウ)、 川木香(センモッコウ)等の根。
異名:蜜香(ミツコウ)、青木香(セイモッコウ)、五香(ゴコウ)、五木香(ゴモッコウ)、南木香(ナンモッコウ)。
木香[Saussurea lappa Cl-arke]
越西木香[Vladimiria de-nticulata Ling]
川木香[Vadimiria souliei(Franch.)Ling]
以上の他同属植物の大里木香[V.edulis(Franch.)Ling]、木里木香[V.mul-iensis(Hand.-Mazz.)Ling]も 薬用として使用される。
成分:雲木香は精油0.3?3%を含み、その成分はaplo-taxene、α-yonone(イオノン)、β-selinene、saussurea lactone、costunolide、cos-tic acid(木香酸)、costol(木香アルコール)、α-cost-ene、β-costene、costusl-actone(コスツラクトン)、 camphene、phellandrene、dehydrocostuslactone、dihydrodehydrocostuslactone等で ある。この他、根にはstigmasterol、betulin、樹脂、inulin及びsaussurine等を含む。葉はtaraxasterolを 含む。
青木香
基原:ウマノスズクサ科の植物。馬兜鈴(和名:ウマノスズクサ及び北馬兜鈴の根。
異名:馬兜鈴根、土青木香、独行根(ドッコウコン)、兜零根(トウレイコン)、独行木香、土木香、青籐根(セイトウコン)、蛇参根(ダジンコン)、百両金 (ヒャクリョウキン)、土麝(ドジャ)、鉄扁担(テツヘンタン)、沙*薬(シャヤク)。
成分:馬兜鈴の根は精油を含み、精油には有効成分であるaristolochic acid A・C、7-methoxyaristolochic acid A、7-hydroxyaristolochic acid及びaristolone、alantine、debilic acid、magnoflorine(thalictrine)等が含まれる。
南木香
基原:ウマノスズクサ科の植物。雲南馬兜鈴の根。雲南馬兜鈴:Aristolochia yunnanensis Franch.
異名:小南木香、土木香、打鼓藤(ダコトウ)、串石藤(カンセキトウ)、白防己(ハクボウキ)、金不換(キンフカン)、藤子暗消(トウシアンショウ)、地 檀香(ジダンコウ)。
馬兜鈴
基原:ウマノスズクサ科の植物。北馬兜鈴(ホクバトウレイ・和名:マルバウマノスズクサ)又は馬兜鈴(和名:ウマノスズクサ)の乾燥した成熟果実。
成分:馬兜鈴の種子は、aristolochic acidと第4級ammoniumalkaloid、magnoflorine(thalictrine)を含む。根にはmagnoflorine (thalictrine)を含む。

注:『召*』は草冠付・『沙*』はやまいだれ付。

[3]まとめ

いずれも日本薬局方に適合する生薬が使用されていれば問題ないが、生薬の呼 称は国により異なる場合があり、諸外国においては日本薬局方に適合しないaristolochic acidを含有する植物を含む製品が流通している。
生薬・漢方の使用に当たっては、aristolochic acidを含む植物の混入がないよう、原材料籐の確認に留意する必要がある。
aristolochic acidに起因する『Chinese herbs nephropathy(CHN);中国ハーブ腎症』について、次の報告がされている。

1993年ベルギーで肥満治療のため漢方薬が投与された患者(女性)に腎機 能障害が多発し、Chinese herbs nephropathy(CHN)であるとする報告がされた[Vanherweghem,JL.et al:Rapidlyprogressive interstitial renal fibrosis in young women:association with slimming regimen including Chinese herbs.Lancet,341:387-391(1993)]。原因物質として漢方薬中のアリストロキア酸(aristolochic acid)が、その原因であるとされた。
我が国では1997年に成人発症のFanconic症候群を報告[田中敬 雄・他:関西地方におけるChinese herbs nephropathyの多発状況について;日腎誌,39:438-440(1997)]し、その原因として服用漢方薬「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」からア リストロキア酸を同定した。この事例が関西地方で多発していることに憂慮し、社団法人日本腎臓学会では、「薬剤有害事象報告」として学会誌に公告している [社団法人日本腎臓学会:薬剤有害事象報告;日腎誌,39:vi,(1997)]。また、同時期アトピー性皮膚炎に悩む患者が種々雑多な茶葉で構成された 健康食品を摂取し、腎機能低下を来した症例を報告[田中敬雄・他:症例 急速な腎機能低下をきたした民間療法によるChinese herbs nephropathy;日腎誌,39(8):794-797(1997)]し、健康食品に「関木通」含まれ、分析の結果同じくアリストロキア酸を検出し た。この他に国外でも15例で、CHNの自然経過、移植後の経過等に関するまとまった報告がある [Reginster F,et al:Chinese herbs nephropathy presentation,natural history and fate after transplantation.;Nephrol Dial Transplantation,12:81-86(1997)]。

CHNの臨床症状としては、

1)低比重、低分子量蛋白尿
2)重篤な貧血
3)大動脈弁閉鎖不全
4)軽度の高血圧
5)尿糖、無菌性白血球尿
6)左右腎の大きさ不均等
7)摂取中止後も急速な腎機能悪化
8)多くは血液透析に至る
9)尿路系の悪性腫瘍を伴うことがある
10)移植した患者では再発を見ていない
等が記載されている。

なお、aristolochic acid(アリストロキア酸)の毒性について、次の報告がされている。

関木通中のaristolochic acidの毒性として、マウスに本品を静脈注射した場合の致死量は、60mg/kgである。
ラットに1日2.5mg/kgを腹腔内注射するか、5・10mg/kgを経 口投与した場合、30日後も死亡せず、体重増加は対照群と同様であった。
ウサギに0.5・1・1.5mg/kgの腹腔内注射を毎日行い、15日経過 すると全身抑制・食欲減退及び虚脱状態を示した。1.5mg/kgを投与した群は3日目から9日目にかけて死亡するか、衰弱及び著しい体重の減少が見られ た。
最大許容量でもマウス、ラット、ウサギの末梢血管の血液像に特に影響は見ら れない。中毒量に達すると動物の内臓に毛細血管の病変が発生し、出血性梗塞形成及び水腫ができ、腎臓は普遍的に破壊される。この症状は腎小管壊死性ネフ ローゼに属する。

上表を見ると関木通のみならずウマノスズクサ科に属する植物では、 aristolochic acid(アリストロキア酸)の存在が記されている。健康食品として摂取する場合、原料中にこれらの植物の存在が確認されるものについては、摂取を回避す ることが無難である。

1)医薬品・医療用具等安全性情報 No.161,2000.7.(厚生省医薬安全局)
2)第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996
3)上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
4)浜口欣一のweb病理学;http: //plaza20.mbn.or.jp,2000.7.28.

[2000.7.28.古泉秀夫]

鴆(チン)の毒性

水曜日, 12月 5th, 2007
対象物 鴆 毒(チンドク)
成分 不明あるいは蛇毒
一般的性状

『鴆』という鳥は過去に実在していたのか、あるいは王侯貴族の世界で用いられていた毒殺用の毒を婉曲に『鴆』という呼称で曖昧に表現していたのか。その辺は何ともいえないが、石の下に隠れた蛇を捕るのに、糞をかけると石が砕けた等という話しをきくと、白髪三千丈の世界かと思えてくる。しかし、文字として、次の言葉が存在する。
『火扁に鳥』は『鴆』の俗字。一種の毒鳥。その雄を『運日』という。その雌を『陰諧』いう。故に鳥をかく。その羽を酒に浸して飲めば死すという。転じてそ
の酒又は酒にて毒殺する義とす。
鴆肉:毒鳥の肉。
鴆毒:鴆という鳥の毒。
鴆殺:鴆毒を飲ませて、殺すこと。鴆酒:鴆毒を混じたる毒酒。
鴆媒:讒言(ざんげん)をいう。
更に『鴆』について、次の報告がされている。
鴆鳥画像毒薬の歴史は古い。中国では紀元前から知られており、羽毛に猛毒のある鳥が用いられ、名を鴆(チン)といい、かつて揚子江以南に生息していたという。しかし唐代になると政府も存在を認めず、659年の『新修本草』からは「有名無用」の項に入れられてしまう。それで伝説化され、『山海経』の珍奇な動物同様、空想上の毒鳥とも考えられていた。
鴆鳥の毒性は紀元前の『国語』『韓非子』『史記』などに記述があり、漢代字書の『説文』や『爾雅』にも掲載されている。また鴆酒・鴆醴・鴆毒・酖という、羽毛を漬けた酒による毒殺記録は『漢書』『後漢書』『晋書』に数多い。さらに『漢書』の注が引く後漢の応劭は「黒身赤目」といい、陸機・郭璞らの三世紀一流の文人も鴆烏の毒に言及する。『晋書』には、東晋の穆帝が358年3月に生鳥を献上され、激怒して焼き殺した記録もある。
医薬書の初出は、二世紀頃の『神農本草経』で、犀角条に鴆羽の毒性を記す。五世紀末以前成立の『名医別録』から本草の正条品となり、「鳩鳥毛。大毒あり。五蔵に入れば爛して人を殺す。その口は蝮蛇の毒を殺(け)す」と記載されている。後500年頃の陶弘景『本草集注』はこれに形状・生息地・別名・毒性等の注を加えたが、多くは伝聞に基づいているらしい。610年の『諸病源候論』も毒薬として鴆羽等を挙げるが、記載は『本草集注』の範囲を出ない。そして659年の『新修本草』以降、ついに本草の正条品から除外され、存否不詳の鳥となってしまった。
最近、ニューギニアに生息する鳥に、毒鳥がいることが明らかになり、この鳥も羽毛に毒性が強い点などから、鴆鳥も実在していたのではないかと考えられる。ニューギニアのジャングルに棲み、鳴き声からPitohui(モリモズ)属と命名された鳥が報告されたのは1830年のことであるが、シカゴ大のJohn Dumbacherらが偶然その羽に中毒し、毒性に気付いたのは1990年のことである。彼らは鳥類で初めて発見された毒性物質の研究を、『サイエンス』の1992年10月30日号に報告し、その表紙に毒鳥の写真が採用された。

毒性

毒性最強の鳥は、ズグロモリモズ(Pitohui dic-hrous)で、その皮膚 10mgの抽出エキスをマウスに皮下注射すると、痙攣して18-19分で死亡。羽毛25mgのエキスでも15-19分で死に致る。この毒性は骨格筋も示すが、心肝胃腸等には認められていない。毒性の強いPitohui dichrousに擬態す るカワリモリモズ(P. kihocephalus)は、皮膚20mg相当のエキスで16-18分、羽毛50mg相当のエキスでは19-27で、マウスを痙攣ののち死亡させる。しかし胸の筋肉と心肝胃は毒性を示さない。また同属のサビイロモリモズ(P. ferrugineus)も、皮膚40mg相当エキスの皮下投与で30分-40分後にマウスを死亡させるが、羽毛と胸の筋肉に毒性は認められていない。
■Pitohui dichrousは、ヒトに対して一羽で重篤な毒性を十分に示すだろうという。分析の結果、これら毒性の主成分はステロイド系alkaloidの神経毒、ホモバトラコトキシンと確定された。動物実験でマウスにホモバトラコトキシン3μg/kgで投与マウス群の半数が死亡する。これとモリモズ属各鳥の毒性試験から類推して、ホモバトラコトキシンは65gのズグロモリモズで皮膚に15-20μg、羽毛に2-3μgが含まれる。85-95gのカワリモリモズでは、皮膚に6-10μg、100gののサビイロモリモズでは皮膚に1-2μgが含有されると概算された。しかもホモバトラコトキシン(homobatrachtoxine)及び同類毒のバトラコトキシン (batrachtoxine)はコロンビア産のカエル(Phyllobatesaurotaeniaなど)にもあり、皮膚の汁は矢の毒に利用されている。
batrachtoxine:ネズミLD50(皮下)2μg/kg、現在知られている毒物の中で最も強 く、ボツリヌス毒素に匹敵する。低分子量の毒で、半数致死量は僅か0.002mgで、神経膜にあるナトリウムチャンネルが閉じるのを妨げ、神経や筋肉の機能を停止させる。脂溶性。

homobatrachtoxine:ネズミLD50(皮下)3μg/kg。
■Pitohui dichrousを捕捉したとき噛まれた傷口をなめたとこ ろ、口内が痛み、痺れが発現した。更に羽毛を舌にのせたところ、クシャミが出て、口と鼻の粘膜に麻痺と灼熱感を即座に覚えたという。

症状 『鴆』に起因する具体的な症状は報告されていない。
処置 『鴆』に起因する症状に対する具体的な治療法は報告されていない。
事例

翌日、幻之介は禁裏附きの越水重三郎に聞いて室町の医師杉岡尚庵を訪ねた。尚庵は町医者であったが、若い頃から各種の毒の研究を行っており、毒物に詳しいと聞いたからである。
尚庵は陽の光がさんさんと降り注ぐ庭に面した座敷で幻之介を迎えた。歳の頃は還暦を超えたと思われる老人で眉も顎の鬚もすっかり白いものに変わっている。
「毒ということですが、どんなお訊ねなんでしょうか?」
尚庵は茶を勧めると、やわらかい言葉で訊ねてきた。
「鴆毒のことです。猛毒と聞きました。どんな毒なのかお聞きしたいと思いまして」
尚庵の面に微かな笑みの混ざった悪戯っぽい表情が浮かんだ。「祝さまと申されるか。本気で鴆毒のことを信じておるんですか?」
「と申されると?」
「そんなものはこの世にありません。あれは迷信でしてな。宮廷で陰謀に使われる毒というと、昔から鴆毒を上げますが、でも、実際その鴆毒を見た者はおまへん」
………………
「自分の調べたところによりますと、鴆毒というのは鴆という鳥の羽根をもぎ、何日も水にひたしておいて、その底に沈んだものから取るとあります。でも、そのもととなる肝心の鴆という鳥がよう分からんのですわ」
………………
「そうですな。烏頭に翁草やらなんやらを加えて七日ほどぐつぐつ煮て毒を作る方法がありましてな。これは猛毒でおます。例えば指先についたごくわずかなものを舐めても、えらいことになります。むろん、下血に黒い血が混ざることもありますな。で、どなたはんが?」[庄司圭太:闇の鴆毒-花奉行幻之介始末;集英社文庫,2001]。

備考 『鴆』 についてはあくまで仮想毒であり、具体的な症状等は、想定困難である。参照としてPitohui dichrousの事例を紹介したが、毒物の性状が全く同一であるとする保証はない。
文献

1) 上田万年・他編纂:大字典;講談社,1965
2)真柳 誠:目で見る漢方史料館(59)-伝説の鴆鳥と世界初発見の毒鳥;漢方の臨床,40(2):(1993)
3)http://www.joy.hi-ho.ne.jp/tukihara/poison/0020.htm,2004.8.9.
4)http://www.hum.ibaraki.ac.jp/chu-bun/mayanagi.html,2004.8.9.
5)志田正二・代表編:化学辞典;森北出版株式会社,19996)大木幸介:毒物雑学事典;講談社ブルーバックス,1999
7)内藤裕史:中毒百科 改訂第2版;南江堂,2001

調査者 古泉秀夫 記入日 2004.8.12.

トリカブトの毒性

火曜日, 12月 4th, 2007
対象物 ヤマトトリカブト[烏頭(ウズ)・烏喙(ウカイ)・天雄・附子・側子]。生薬名:附子。ウスバトリカブト、ナンタイブシ。カラトリカブト(Aconitumcarmichaeli)。
成分 アルカロイド多数が知られる。アコニチン、メサコニチンの他、強心成分としてヒゲナミンを含む。イサコニチン、アコニン、ヒバコニチン、アチシン、ソンゴリン。
一般的性状 ヤマトトリカブト(Aconitum japonicum):キンポウゲ科トリカブト類に属する。北海道のカラフトブシ、北海道南部から東北地方にかけてのエゾトリカブト、本州中央部に分布するヤマトトリカブト、高山地帯にあり葉が細く切れ込んだホソバトリカブト、北海道大雪山ダイセツトリカブト、利尻島のリシリブシ、本州近畿以西のサンヨウブシとかなり細分されている。化学成分からみて妥当な分類としてトリカブト属が30種、変種が22種、計52種という多くの種類が存在する。
附子は充実した塊根を種々の操作で毒成分を少なくしたもので、塩附子(エンブシ)、炮附子(ホウブシ)があり、これは我が国にも輸入されている。烏頭は減毒加工がされていないので毒性が激しく、あまり用いられない。漢方では鎮痛、強心、興奮、利尿に応用する。
ウスバトリ鳥兜カブト:キンポウゲ科。北海道の高山帯の草原に自生する多年草。有毒部分全草。地下の根は特に毒成分が多い。アルカロイドのアコニチン、メサコニチン、イサコニチンなどを含み、中毒症状は強い痙攣を起こして死亡する。漢方処方に用いられる附子、烏頭という生薬は、ウスバトリカブトと同類の中国産の根を原料にして調製したもので、強心、鎮痙、鎮痛の薬効がある。ただし、これは専門医が用いるもので、一般には毒性が強くて危険である。北海道にはエゾトリカブトの他にテリハブシ、セイヤブシ、カラフトブシ、ダイセツトリカブト、シレトコブシ、ヒダカトリカブトなどが自生する。
ナンタイブシ:関東地方北部、中部地方東部に産する多年草。日光男体山に多く自生することからこの名称がついた。本品の塊根を生薬として使用するが極めて毒性の強い成分が含まれ、有毒植物の代表格である。アルカロイドのジテルペン系で、毒性の強いアコニチン、メサコニチン、アコニン、ヒバコニチンを含み、低毒性成分のアチシンの他ソンゴリンなどを含む。毒性を低くした加工附子が漢方処方に用いられ、鎮痛、鎮痙、強壮などに用いられる。素人療法には不向き。
毒性 代表的な成分のアコニチンは中枢神経の麻痺作用があり、ヒトの致死量は3-4mg(精製された純粋なアルカロイドとして)と毒性が強い。アコニチンは経皮吸収・経粘膜吸収される。トリカブトによる死因は、専ら心室細動ないし心停止である。
マウス(皮下)推定致死量
アコニチン:0.4-0.6mg/kg・メスアコニチン:0.3-0.5mg/kg・ジェスアコニチン:0.2-0.3mg/kg
人推定最小致死量
本植物:1g・チンキ5mL・アルカロイド2mg
人致死量
アコニチン:3-4mg 毒性部位 根>葉>茎
症状 摂食後15-30分、時には直後から舌、口唇、皮膚に痺れが発現し、次第に胸部、手足に拡がり、起立不能になる。皮膚の痺れ感や刺すような痛みが特徴的である。筋肉の硬直感を伴うことがある。煎薬として服用した時は、数分で症状が発現する。極く初期の症状としてはのぼせ、顔面の火照りなどを感じることもある。吐き気、嘔吐がやや遅れて現れる。唾液の分泌亢進、発汗あるいは冷汗、四肢冷感があり、体温が低下することもある。尿失禁あるいは排尿障害があることがあるが、下痢は普通見られない。この時期、例外なく意識は清明である。白血球増多とCK-MM値の上昇が見られるのが普通である。血圧は当初正常であるが、間もなく低下する。不整脈によるものと考えられる。
最も特徴的な症状は不整脈で、摂取後1時間位には出現する。多形性心室性期外収縮、上室頻拍、頻拍型心室性固有調律、変行伝導を伴う上室頻拍、房室ブロック、脚ブロック、多形性心室頻拍とあらゆる不整脈が出現する。
処置 不整脈に対する第一選択薬はフェニトイン注(アレビアチン注)である。
成人25mg/回・小児0.5-1.0mg/kgを1-2時間おきに緩徐に静注する。
重症の不整脈はこの量では不十分で、15mg/kgを総量1g 0.5mg/kg・minを超えない範囲で静注する。
リドカインも心室性不整脈には有効であるが、伝導障害に対しては効果がない。
初回量1mg/kg、必要なら20分後0.5-1.0mg/kg静注する。
徐脈や伝導障害には、アトロピンが有効なことがある。成人0.5mg/回、小児10-30μg/kg(1回0.4mgまで)静注、必要に応じ繰り返す。重症の不整脈は、経静脈的にペースメーカーを留置してペーシングを行う。1度以上の房室ブロックがある時は、予めペースメーカーを挿入しておいた法がよい。
キニジン・プロカインアミド・プロプラノロールは無効のことが多い。
電気的除細動は、しばしば重篤な伝導障害と心室性不整脈を招来することがあり、危険である。■毒物の除去
*催吐、
*胃洗浄(1000倍希釈過マンガン酸塩溶液)*活性炭、牛乳、タンニン酸液投与
*塩類下剤投与
排泄促進
*血液透析-無効。血液吸着は有効との報告がある。
対症療法
*カリウム値の補正
*不整脈の治療(上記参照)
*ステロイドの投与
*抗けいれん剤、鎮痛剤投与■全身管理
*輸液。
*酸素吸入と人工呼吸。
*循環動態の安定。
事例 アルカロイド系?例えばトリカブトの根に含まれる毒はかなりの毒性を示し、しかも、それによって起こる症状は心筋梗塞に極めてよく似ているといわれる。………まもなく解剖結果の詳細が伝えられた。毒物はやはりアルカロイド系のものと断定されたそうだ。ナイトテーブルにあったグラスから、ビールの残りとともに毒物が検出された。………[内田康夫:鳥取雛送り殺人事件;角川文庫,1999]。
備考 別名:継母の毒(古代ローマ)、悪魔の草(独逸)。致命的といわれるトリカブトの量は根で親指大かその半分とされているが、それだけの量を食べ物や飲み物に混合するのは困難であり、相当の苦味を有する。
文献 1) 伊澤一男:薬草カラー大事典;株式会社主婦の友社,1998
2)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療;南江堂,2001
3)植松 黎:毒草の誘惑;講談社,1997
4)西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂6版;医薬ジャーナル,2001
調査者 古泉秀夫 調査年月日 2004.1.12.