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パラベン類の安全性

水曜日, 12月 26th, 2007

KW:副作用・安全性・添加物・食品添加物・医薬品添加物・パラベン類・paraben・パラオキシ安息香酸エステル類

 

Q:医薬品等の添加物として使用されているパラベン類の安全性について

A:医薬品の添加物として使用されているパラベン類(paraben)で局方に収載されているのは次の4品目である。

一般名

パラオキシ安息香酸 エチル
(ethyl parahydroxyben-zoate)

パラオキシ安息香酸 ブチル
(butyl prahydrxyben-zoate )
化学名 ethyl 4-hydroxyben-zoate butyl 4-hydroxybenzoate
純度 本品を乾燥したものは定量す るとき、パラオキシ安息香酸エチル(C9H10O3)99.0%以上を含む。 本品を乾燥したものを定量す るとき、パラオキシ安息香酸ブチル(C11H14O3)99.0%以上を含む。
性状

本品は無色の結晶又は結晶性 の粉末で、臭い及び味はなく。舌を麻痺する。本品はエタノール(95)、アセトン又はジエチルエーテルに溶け易く、熱湯にやや溶け難く、水に極めて溶け難い。

本品の飽和水溶液は僅かに酸性である。

融点:116-118℃。

貯法:密閉容器。

本品は無色の結晶又は白色の 結晶性の粉末で、臭い及び味はなく、舌を麻痺する。本品はエタノール(95)、アセトン又はジエチルエーテルに溶け易く、熱湯に溶け難く、水に殆ど溶けない。

融点:69-72℃。

貯法:密閉容器。

本質 製剤原料、保存剤。 製剤原料、保存剤。
名称

ethylparaben[NF]ethyl hydroxybenzoate[BP]

eyhl parahydroxybenzoate[EP]

ethyl-4-hydroxybenzoat[DAB]

パラオキシ安息香酸エチル[食添]:benzoic acid,4-hydroxy-,ethyl ester。

butylparaben[NF]butyl hydroxybenzoate[BP]

butyl parahydroxybenzoate[EP]

パラオキシ安息香酸ブチル[食添]:bebzoic acid

4-hydroxy-n-buthysrter

来歴

Graeve により1866年に合成されているが、サリチル酸や安息香酸に比べて抗菌作用が弱いので、このエステルも始め使用されなかった。1924年 Sabalitschkaが飲食物の防腐、防黴に力のあることを発表してから次第に用いられるようになった。

これらのエステル類はアルキル基が長いほど抗菌性は大であるとされている。外国ではエチル、プロピルが繁用される。

体内動態

家 兎に0.4g/kg経口投与すると、生体内で容易に加水分解され大部分はパラオキシ安息香酸及びその抱合体として排泄される。未変化体は24時間尿中に投与量の0.2-0.9%が検出されるのみである。

抱合体としてはエステル型及びエーテル型のグルクロナイド、グリシン抱合体、硫酸抱合体が認められる。投与したパラオキシ安息香酸エステルはいずれも投与量の約1/3が遊離のパラオキシ安息香酸として、残りはグルクロナドその他の抱合体として排泄される。

グルクロナイドはいずれの場合もエーテル型がエステル型より多い。

薬効薬理

粘 膜(消化管、直腸、腟)から吸収されると、安息香酸同様の代謝を受ける。そのエステルは、酸に比べて静菌作用が強く、アルキル基が大となるほど抗菌作用も強力となる。

通常、2種又はそれ以上のエステル剤を併用するときは、抗菌作用に相乗効果と抗菌スペクトルの拡がりがあらわれる。

安全性 毒 性もアルキル基が大になるほど小となる傾向を示し、安息香酸やパラクロル安息香酸に比べて弱い。
適応

防腐作用を利用し、医薬品(注射剤、シロップ、点眼剤、軟膏、ゼリー等)化粧品並びに食品などの保存剤として利用される。他のエステルとの併用が多い。

通常 0.1-02%くらいの濃度で添加される。

急性毒性 パラオキシ安息香酸イソプロピル参照。
亜急性毒性  
慢性毒性 パ ラオキシ安息香酸エチル(40%)とパラオキシ安息香酸プロピル(60%)の混合物を15mg/kg及び1,500mg/kgのレベルで飼料に添加しラットに18ヵ月間与えたところ、15及び1,500レベルでは成長の促進が見られる。1,500mg/kgのレベルでは初期に成長の遅延が見られたが、その後対照と同じになった。死亡率や組織学的検査では異常は認められなかった。別の実験でパラオキシ安息香酸エチルを飼料に2%添加し、ラットの全生涯にわたり与えたところ、最初の2ヵ月間に成長の遅延が見られたが、以後正常に復し、死亡率、血液、主要組織には異常は認められず、腫瘍の発生もなかった。
発癌性  
変異原性

微生物突然変異試験–(?)染色体異常誘発試験—-(+)

(ハムスターSCEs )

 

一般名

パラオキシ安息香酸 プロピル (propyl parahydroxybenzoate)

パラオキシ安息香酸 メチル (methyl parahydroxybenzoate)

化学名 propyl 4-hydroxybenz-oate methyl 4-hydroxybenz-oate
純度

本品を乾燥したものは定量す るとき、パラオキシ安息香酸プロピル(C10H12O3)99.0%以上を含む。

本品を乾燥したものは定量す るとき、パラオキシ安息香酸メチル(C8H8O3)99.0%以上を含む。
性状

本品は無色の結晶又は白色の 結晶性の粉末で、臭い及び味はなく、舌を麻痺する。本品はエタノール(95)、エタノール(99.5)、アセトン又はジエチルエーテルに溶け易く、熱湯に溶け難く、水に極めて溶け難い。融点:96-99℃。貯法:密閉容器。

本品は無色の結晶又は白色の 結晶性の粉末で、臭い及び味はなく、舌を麻痺する。本品はエタノール(95)、アセトン又はジエチルエーテルに溶け易く、熱湯にやや溶け易く、水に溶け難い。融点:125-128℃。貯法:密閉容器。

本質 製剤原料、保存剤。 製剤原料、保存剤。
来歴

1947 年CavillとVincentにより合成された。パラオキシ安息香酸のエステル類は水に難溶であり、使用に際して不便を生じるので、更に水に溶け易くし、その簡便化を図るため、側鎖状アルキルエステルが考案され、その結果イソブチル及びイソプロピルが開発された。昭和38年食添として指定、昭和57年使用基準の一部が変更された。

用途 保存料、防カビ剤として用いられる。単独で用いられることは少なく、通常、イソプロピルエステル、ブチルエステルなどの他のエステル類と混合して、水中油型の乳剤として用いる。このようにして用いると醤油などへの溶解方法が簡易になり、またブチルエステル単独より2-3倍溶け易くなる。なお、微生物に対する最小発育阻止濃度は、 Asp.niger:160μg/mL、Mucor circinelloides:
96μg/mL,
Asp.orizae:160μg/mL
である。酸型保存料と異なり、pHの影響は殆ど受けない。
パラオキシ安息香酸ブチル参 照
代謝 パラオキシ安息香酸ブチル参照 パラオキシ安息香酸ブチル参照
急性毒性 ラット(経口)LD50: >10,000mg/kg
マウス(皮下)LD50 :2,600mg/kg
マウス(経口)LD50:2,500mg/kg
マウス(腹腔)LD50:520mg/kg
ウサギ(経口)LD50:5,000mg/kg
イヌ(経口)LD50:5,000mg/kg
亜急性毒性 ラットに0.01- 1.0g/kgの割合で6ヵ月間経口投与を反復しても、成長や臓器の肉眼、組織学的検査による異常を認めなかったという。 雌雄ラットに5、2.5、 1.25、0.25%のパラオキシ安息香酸イソプロピルを混餌で13週間与えた。死亡動物はなかったが、雄の2.5%以上で体重の増加抑制が見られた。血清生化学検査で、γ-GTPが雄の2.5%、雌の1.25%以上で増加、総コレステロールが雄の2.5%以上で増加、アルカリフォスファターゼ・尿素窒素が雌の1.25%以上で増加した。病理組織学的に小葉中心性の肝細胞肥大が雄の2.5%、雌の5%以上で見られた。雄の5%では腎臓の近位尿細管上皮細胞質に好酸性滴状物が認められた。
発癌性 雌雄ICRマウスに0.6、 0.3、0.15%検体混餌飼料を102週間投与した実験では、有意の腫瘍発生はなく、発癌性は認められなかった  
変異原性 微生物突然変異試験 (?)
染色体異常誘発試験 ラット骨髄(±)
微生物突然変異試験 (?)
染色体異常誘発試験 (?)

パラオキシ安息香酸エステル類を経口投与すると、速やかに吸収、代謝、排泄されるが、代謝はエステル鎖の長さ、動物種、投与経路によって異なる。

メチル、エチル、プロピル及びブチルエステルは主として肝、腎で、一部は筋肉で速やかに加水分解される。しかし、イヌに2.0mg/kgを静注した場合、脳には4種のエステルの未変化体、脾臓にはエチルとブチルエステルが検出された。

parabenとは、パラオキシ安息香酸エステル類の総称である。化粧品や医薬品の保存料として広く使用されている。paraben類の抗菌作用は、その酸に比べて静菌作用が強く、非常に広範囲の微生物に有効である。

アルキル基が大きくなるほど抗菌活性は強くなり、毒性は小さくなる。pHの上昇で抗菌活性は低下する。サリチル酸や安息香酸に比べてはるかに毒性が低く、皮膚刺激や過敏症なども少ないといわれている。

ただし、サリチル酸と構造が似ているためにアスピリン喘息の起因物質になる可能性がある。パラベン類の場合、単独でなく併用することによって相乗効果が現われ、より少量で防腐力を高めることができる。

防腐剤は全ての化粧品に対して、配合制限(100g中の最大配合量の範囲内)が定められている。paraben類を防腐剤として化粧品に配合する場合、合計量として1%までの使用が認められている(紫外線吸収剤としては合計量として 4%まで配合できる)。

化粧品による皮膚障害(化粧品皮膚炎)は、1970年代後半以降、日本の化粧品メーカーが安全性を重視するようになり、わが国における化粧品は低アレルギー性・低刺激性になっており、化粧品による接触皮膚炎の頻度は減少していているはずであるが、海外で購入した化粧品によるトラブルや、「自然派化粧品」と称して配合されている正体不明の天然成分(植物エキス)によって起こるアレルギー性接触皮膚炎は、依然として報告されている。

化粧品皮膚炎の原因として報告されているのは、基礎化粧品に使用されている殺菌防腐剤や乳化剤、美容液等に配合されている保湿剤、増粘剤による刺激反応が多い。

化粧品の全成分表示については、平成13年4月1日から成分の承認制度を廃止する等の規制緩和が行われた。この規制緩和は企業責任を前提としており、成分の安全性の確認と全成分表示等消費者への情報提供を求めている。つまり、現在、化粧品については原則として配合されている成分を全て表示しなければならないこととなっている。

また、新たな化粧品基準として、配合禁止リストであるネガティブリスト(防腐剤、紫外線吸収剤及びタール色素以外の成分)と配合制限リストであるポジティブリストが定められている。化粧品原料は、配合禁止・配合制限リスト収載成分及び特殊成分(防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素)リスト以外の成分は、原則として企業の責任で自由選択ができることになっている。

paraben類は内分泌かく乱作用を持つ可能性があることが指摘されている。 paraben類は保存料として一般の環境で広範囲に使用されている。

これらの物質にはヒト体内で代謝する経路があることが知られているが、環境中での大量消費に伴いヒト体内に常時供給がある場合、体内中(血液等)で検出される可能性が高く、代謝物を含めての内分泌かく乱作用の可能性についての検討が必要である。そのため、ヒトがこれらの物質を摂取する経路の解明、摂取してからの体内中での挙動

、代謝、排泄等について調査を行うための迅速で高感度な分析方法の開発を行い、併せて実試料の分析によるヒト健康への影響について研究を行った。

  1. paraben類を模擬飲料として摂取した生体内での挙動を確認したところ摂取直後20分以内に血液中にparaben類が検出されるとともに代謝物であるパラヒドロキシ安息香酸(PHBA)濃度の増加が確認された。PHBAの血中濃度はその後急速に低下し8時間後ではほぼ初期濃度まで回復した。同時に行った尿試料の結果、尿からもparabenが検出された。また、PHBA濃度は、試飲後20時間近く影響が残った。
  2. paraben類の摂取経路として食品に分類されない栄養ドリンク剤について調査をした結果、paraben類を含むドリンク剤の場合、平均で50ppm程度添加されており、比較的大きなparabenの摂取源であることが確認された。

化学的な物質の安全性の検討については、通常、動物実験によって行われるが、その結果が直ちにヒトに外挿できるわけではない。従って、使用範囲・使用期間等を勘案した疫学調査が行われるが、調査対象数によっては必ずしも説得力のある資料が得られるわけではない。

また、化学物質の安全性は、99.99%が安全であるとされても、残りの0.01%に過敏症等の発現する可能性は残されており、paraben類の安全性についても『ほぼ安全に使用できる範囲』と理解しておくことが必要である。

[065.PAR:2005.3.7.古泉秀夫]


  1. 第十四改正日本薬局方解説書;広川書店,2001
  2. 鈴木郁生・他監修:第7版 食品添加物公定書解説書;廣川書店,1999
  3. http://www.kumayaku.or.jp/y_faq9.htm,2005.3.7. 織田 肇 (大阪府立公衆衛生研究所)・他:クロロベンゼン類及びパラベン類の分析法開発と実試料の分析;平成11年度厚生科学研究費補助(生活安全総合事業), http://www.nihs.go.jp/edc/houkoku11/11-11/11-11- oda5.html,2005.3.7.

「慢性膀胱炎の治療」

水曜日, 12月 26th, 2007

KW:薬物療法・慢性膀胱炎・急性膀胱炎・膀胱腫瘍・膀胱結石・留置カテーテル・間質性膀胱炎・放射線性膀胱炎・膀胱結核

 

Q:特に原因もなく、細菌の検出はないそうですが、疲れたり、冷房に当たっていると慢性膀胱炎の症状がでるという女性の患者。慢性膀胱炎の原因及び治療法について

 

A:慢性膀胱炎は、急性膀胱炎から移行する場合と、徐々に膀胱炎症状が出現して継続する場合があるが、いずれの場合も感染を遷延させる基礎疾患を有するか、あるいは特殊な膀胱炎の場合であるとされている。
基礎疾患としては膀胱腫瘍、膀胱結石、留置カテーテルを含めた異物の存在、前立腺肥大症や神経因性膀胱など残尿の原因となる疾患、糖尿病や悪性腫瘍又は免疫抑制剤や抗癌剤投与などの、全身的な感染防護機構の低下などをもたらす疾患などが挙げられる。また、特殊な膀胱炎としては、間質性膀胱炎、放射線性膀胱炎、膀胱結核などがある。

慢性膀胱炎の自覚症状は、急性症に比べて軽度で、頻尿、排尿痛、残尿感、下腹部不快感等を訴えるが、膿尿のみで自覚症状が殆どないこともあり、基礎疾患の症状が全面にでることが多い。

膀胱神経症は、器質的な原因がなく、尿所見に異常は認めないにもかかわらず、頻尿、尿失禁、排尿痛、下腹部不快感、残尿感などの膀胱症状を訴えるものであり、精神的情緒不安定状態から惹起される心身症の一つである。主な症状から神経性頻尿、心因性頻尿、刺激膀胱、過敏膀胱などとも呼ばれており、多少ニュアンスは異なるが、膀胱神経症よりも神経性頻尿の名称の方が一般的である。

神経性頻尿は主として青壮年期の神経質な女性に多く、仕事上の心配や夫婦間をはじめとする家庭内の問題など、精神的刺激になる要因は多彩で、中でも不満足な性交、あるいは性交に対する罪悪感などの性的葛藤が原因となっていることが多く、幼小児期に夜尿症の既往がある者に多いともいわれている。

神経性頻尿の特徴は、睡眠中や他のことに注意が向いているときには症状があまり顕著ではなくなることであり、夜間の尿意による覚醒は殆どない。神経性頻尿と神経因性膀胱とは全く別個な疾患であり、膀胱性神経症は下部尿路支配神経は全く正常であるのに対し、神経因性膀胱は大脳、脳幹部、脊髄及び末梢神経、すなわち下腹、骨盤、陰部神経など、膀胱と尿道を支配する神経系の何れかが障害されることにより生ずる病態である。

膀胱壁は内側から粘膜・筋肉・漿膜という層になっている。間質性膀胱炎は間質(粘膜と筋肉の間)に炎症が慢性的に続く病気で、普通の膀胱炎とは異なり、細菌以外の原因によって発症すると考えられているが、現在のところ発症原因は不明である。症状としては昼夜を問わず何回もトイレに行く頻尿、膀胱にあまり尿がたまっていないのに、急に排尿がしたくなる尿意切迫感が殆どの例で見られる。特徴的な症状は膀胱の痛みで、この痛みは尿がたまって膀胱が広くなるときに強くなり、排尿すると軽くなる。間質性膀胱炎の場合、これらの症状が良くなったり悪くなったりの繰り返しで、時には自然軽快も見られる。また刺激物(アルコール、コーヒー、紅茶、唐辛子、ワサビ等)を摂取した後に症状が悪化することも少なくない。

以上の報告から慢性膀胱炎の発症原因は、種々の要因が考えられるため、専門医の診察を受け、慢性膀胱炎の原因を明確にすることが必要である。

ただし、間質性膀胱炎の場合は、現在、完治させるべき治療法はなく、症状を和らげることが治療の目的になるとされている。その方法としては抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛剤、抗アレルギー薬の経口投与等が挙げられているが、いずれにしろ専門医の診断結果を得なければ、治療の方策は立てられない。

 

1)土田正義:慢性膀胱炎と膀胱神経症の鑑別診断・治療;日本医事新報,No.3224(1976.2.8.)
2)門脇和臣:「間質性膀胱炎」とはどの様な病気なのでしょうか;きょうの健康,6:141(2004)
3)上田朋宏:排尿障害-見逃される間質性膀胱炎-抗アレルギー薬や抗うつ薬でも改善;Nikkei Medical,10:127-131(2003)

                                                [035.1.URI:2004.10.12.古泉秀夫]

herb (ハーブ)による有害作用

月曜日, 12月 24th, 2007

KW:副作用・健康食品・ハーブ化合物・植物性医薬品・副作用・有害作用・アルニカ花・arnica flos・西洋タンポポ・dandelion・茴香・ウイキョウ・fennel・ニンジン・人参・ginseng・緑茶・green tea・ガラナ・guarana・スペイン甘草・liquorice・パッションフローラ・passion flower・プロポリス・propolis・タイム・thyme

 

Q:ハーブの有害作用としてどの様なものが報告されているか

A:herb化合物(植物性医薬品)の単独又は従来医薬品との併用による有害事象について、次の報告がされている。

italyのUniv.Veronaに通院中の女性外来患者について5ヵ月間にわたり調査を行った。調査終了女性患者1044例のうち491例 (47%)が過去1年間に少なくとも1種類のherbを使用していたと回答した。そのうち272例(55.4%)は herbのみの使用であったが、219例(44.6%)は従来医薬品と併用していた。

使用されていたherbは73種類、併用群では32種類であった。herb使用491例のうち47例 (9.6%)が有害事象を経験しており、22例(8.1%)はherbのみの使用、25例(11.4%)は従来医薬品との併用例であった。有害反応に関連している可能性のある併用薬剤はNSAIDs、抗生物質、benzodiazepines、血圧降下剤及び経口避妊薬が含まれていた。

なお、47例中29例(61.7%)では、以下の有害反応について医師に報告されていなかった。

herbの名称 副作用 herbの性状等
dandelion 胃腸障害文献[2]:治療に用いる際の副作用については何も知られていない。本品の乳白色液に頻繁に触れた場合、接触性皮膚炎。

西洋タンポポ草・根。キク科。原植物:Taraxacum officinale Weber。英名:comm-on dandelion。薬用部分:葉・根。根には脂肪酸、糖質、生葉にはミネラル、ビタミンB1、ビタミンA、ビタミンCの他、葉緑素等を含有する。 その他、トリテルペン類等を含む。カリウム含有量多い。

fennel 胃腸障害文献[4]:茴香油はエストロゲン様作用が示唆-乳癌・子宮癌・卵巣癌・子宮内膜症・子宮筋腫患者は摂取回避。人参、セロリ、蓬、セリ科植物に過敏症の者は、茴香にも過敏症発現の可能性。 和名:茴香(ウイキョウ)。薬用部分:成熟果。セリ科。原植物:Foeniclum vulgare MILL。[局]Foeniculi fructus。[英名]fenn-el、fennel fruit。

2-6%の精油のうち50-70%迄は甘味のあるウイキョウ油で、更に20%までは苦くて、樟脳様の味がする(+)-fen-choneからなる。その他 methylchavicol、anisaldehyde及び二、三のテルペン系炭化水素(特にα-pinene、α-phellandrene、 limonene)が見られる。更にウイキョウは脂肪油、蛋白質、有機酸類及びフラボノイド類を含む。臭いはアネトールを主とした芳香である。臭いが強く、やや甘味があるものを良品とする。

ginseng 心血管障害文献[2]:比較的稀で、用量の多い場合又は非常に長期に連用した場合、不眠症、神経過敏、下痢(特に朝)、月経閉止期の出血、高血圧。 人参・根。ウコギ科のアメリカニンジン、朝鮮人参。原植物名:Panax ginseng C.A.Meyer。別名:Panax schinseng NEES (オタネニンジン)。[英]Ginseng root。2-3%のギンセノサイド(トリテルペンサポニン)。ginsenosid類のうちRg1、Rc、Rd、 Rb1、Rb2、Rb0が量的に圧倒的である。約0.05%の精油(limo-nene、terpineol、citral、 polyacetyl-ene類)。糖、澱粉などのように普遍的に存在する物質。
green tea 心血管障害虚血(避妊薬併用)文献[4]:適量経口摂取は安全。多量経口摂取はcaffeineの副作用発現が予測。妊娠中・授乳中適量であれば緑茶の経口摂取は安全性示唆、多量摂取危険性示唆。緑茶caffeineは胎盤通過し、早産や低体重児出生の危険性高める報告。過剰摂取は便秘、消化不良、眩暈、動悸、不整脈、興奮、不眠、頭痛、利尿、不安、胸焼け、食欲不振、下痢。慢性的-長期・多量摂取で耐性、習慣性、精神的依存性発現可能性。 茶、[英]Tea、 Black tea、 Green tea、 Chinese tea。[学名]Camellia sinensis (L..) Kuntze 、つばき科[チャ属]。茶は中国原産であり、その利用は何千年も昔にさかのぼる。製造工程により緑茶、ウーロン茶、紅茶などがある。緑茶は現在でも世界でもっともよく飲まれている茶飲料である。caffeine、少量の他のxanthine alkaloid(テオブロミン、テオフィリン、ディメチルキサンチン、xanthin、adenine等)も存在する。また、多量のtanninあるいはフェノール物質(5-27%)も含有、flavanol(catechin)ユニットおよび没食子酸ユニットを構成しており、緑茶の方が紅茶より多く含有している。茶の他の成分としては4-16.5%の脂質、フラボノイド、アミノ酸、ステロール、ビタミンCがあり、フレーバーおよび芳香化学物質だけでも300以上の化合物がある。蛋白質、トリテルペノイド等も含有。茶に存在する特定の成分、特にtannin物質の カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート等を含有する。エピガロカテキンガレートは抗酸化性を有しており、EGCGが最も強力である。
guarana 神経学的障害文献[4]:過剰摂取で排尿痛、腸管痙攣、嘔吐。

caffeine含有物は不眠症、いらつき、動揺、吐気、嘔吐、尿量増加、頻脈、不整脈、頻呼吸、痙攣、耳鳴、頭痛、妄想、ひきつけの原因の可能性。

ガラナ。[学名]Paull-inia cupana Kunth。英名:guarana。むくろじ科[ガラナ属]の常緑で攀縁性のつる植物。南米のアマゾン地域に自生する。栽培すると2mほどの潅木に成長。薬用部分は種子(ガラナ子)。砕いて炒った種子をキャッサバ澱粉とともに水で練って円筒形にし、燻煙乾燥し固めたものをガラナエキス(通称ガラナ)と呼ぶ。ガラナエキスに カフェイン、テオブロミン、d-カテキン、タンニンを含む。種にはグァラニン(guaranine) と呼ばれるcaffeine類似の成分7%含むが、習慣性はなく、代謝される時間もより長くかかるため、穏やかな持続性の興奮作用が得られる。
liquorice 心血管障害神経学的障害。高血圧クリーゼ(避妊薬併用)文献[2]: glycyrrhizinとglycyrrhetinのミネラルコルチコイド作用のため、長期にわたり多量(1日50g以上)摂取で低K血症、高Na血症、浮腫、高血圧及び心臓障害惹起。極端な場合、全ての病徴を伴う偽アルドステロン症の発症。 スペイン甘草。根・匍匐枝(走茎)。マメ科、多年生草本。原植物名:Glycyrrhizia glabra L.。[英]Liq-uorice root、Sweet root。含有成分:2-15%のトリテルペンサポニン類、中でも特に蔗糖より50-100倍も甘いグリチルリチン及び24-ハイドロキシグリチルリチン。グリチルリチン酸は加水分解によりdiglucuronic acidとアグリコンのglycyrrheti acidを与える。その他に、アグリコン部が一部判明している。その他多数のトリテルペンサポニン類を含む。
passion flower 皮膚障害アナフィラキシーショック(benzo-diazepines併用) 文献[2]:未知。 チャボトケイソウ。トケイソウ科。原植物名:Passiflora incarnata L。[英]Passion flower、Maypop。含有成分:2.5%までのフラボノイド、特にvitex-in、saponarin、orien-tin等のようなグルコシル化合物。約0.05%のmaltol。少量の青酸配糖体、特にgynocar-din。組成未知の微量精油。harmaneアルカロイドの存在。
propolis

胃腸障害皮膚障害(全身性アレルギー)文献[4]:安全性未確立。妊娠中・授乳中は使用回避。蜂や蜂生成物に過敏症の者、特に喘息患者は使用禁忌。外用で用いた場合(化粧品を含む)、接触性皮膚湿疹発現の可能性。

propolisはミツバチが樹木の特定部位(新芽、蕾、樹皮など)から採取した樹液や色素などに、ミツバチ自身の分泌液を混ぜてできた巣材である。ハチの巣から分離するため純物質を得ることは難しく、巣の副産物が含まれる。また、産地や抽出方法によってその構成成分が異なる。フラボノイド(ピノセンブリン、ガランギン、ピノバンクシン等)。ブラジル産プロポリスはp- cumaric acidをはじめ、artepillin C, drupanin等が主な成分であり、その他の各地域(国)産プロポリスはchrysin、pinocem-brin、galangin等が主成分。
thyme 皮膚障害文献[2]:未知。文献[4]:全草を用いれば安全であるが、抽出された精油はいかなる量でも有害、専門家の指示がなければ経口摂取禁忌。精油は皮膚、粘膜に炎症・過敏症惹起の可能性。精油経口摂取で、むかつき、嘔吐、胃痛、頭痛、眩暈、痙攣、昏睡、心停止、呼吸停止の可能性。

チムス草。薬用部分:葉部・花部。原植物名:Thymus vulgaris L.(タチジャコウソウ)。 Thymus zygis L.(スペインタチジャコウソウ)シソ科。[英]Common Thyme、Garden Thy-me、Rubbed Thyme、Herb of Thyme、成分:精油成分1.0-2.5%。精油には主としてモノテルペン異性体であるthymol(30-70%)とcarvacrolが含まれている。フェノールの一部は生薬中でグルコシッドあるいはガラクトシドとしても存在している。更に精油中にはp-cymene、camph-ene、 limoneneの様なその他のモノテルペンも存在している。精油の組成は生薬の産地や収穫の時期によって、著しく変動する。

[510.HER:2006.6.12.古泉秀夫]


  1. 植物性医薬品(ハーブ化合物)の使用に関する安全性への影響:外来女性患者による調査;医薬関連情報,3:1479(2006)[Cuzzolin L. et al;Eur.J.Clin.Pharmacol.,62(1):37-42(2006.1. [翻訳])
  2. 井上博之・監訳:カラーグラフィック西洋生薬;廣川書店, 1999
  3. 第14改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001
  4. 「健康食品」の安全性・有効性情報;
    http: //hfnet.nih.go.jp/contents/detail498.html,2006.6.12.
  5. 古泉秀夫・編著:わかるサプリメント-健康食品Q&A;じほう,2003

プラセンタエキスについて

月曜日, 12月 24th, 2007

KW:薬名検索・プラセンタエキス・placentaextract・プラセンタ・placenta・胎盤・新陳代謝促進

Q:プラセンタエキスについて

A:プラセンタ(placenta)は、胎盤のことであり、胎児の発育成長のためには必要不可欠な組織である。プラセンタエキス(placentaextract)は胎盤の持つ生理活性を失活させることなく有効成分を抽出したものである。プラセンタエキスは身体が本来保持している生理活性を高めることにより、新陳代謝の促進、自律神経・ホルモンのバランス調整、免疫力、抵抗力の強化等の作用を持つと報告されている。

また、シミ、シワ、肌荒れ等の皮膚の老化を解消し、メラニン色素の形成・定着を防止する等の作用も報告されている。プラセンタは中国でも古くから強壮・強精・不老長寿の薬として「紫河車」・「胞衣」の名称で利用されてきた等の報告が見られる。また、加賀の三大秘薬の一つである「昆元丹」中にも配合されているとする報告もされている。

なお、胎盤抽出物を原料とする薬物として、次の製剤が報告されている。

商品名(会社名)

ラエンネック

[(株)日本生物製剤]

メルスモン
[メルスモン製薬(株)]
日本標準商品分類番号 873259 873259

来歴

1933年Filatovらは、冷蔵ヒト胎盤を初めて臨床に使用した。我が国では1951年稗田らがヒト胎盤を肝硬変患者に埋没療法を施したのが最初であった。

ソ連の医学者フィラートフ(1933年)は、「生体組織(細胞)は、その生活を脅かすような外的因子が作用するとき、組織の中には、生物学的過程を刺激する物質-生物原刺激素?が産生される」という仮説を立て、これを「組織療法」として応用した。本剤はこの「組織療法」製剤の一つである。

組成 本剤は、ヒト胎盤の水解物で主として諸種のアミノ酸を含有し、1管2mL中に112mgの水溶性物質を含有する。

新生胎盤を冷蔵し、独特な方法で抽出したアミノ酸、核酸関連物質、無機物質を成分とする胎盤抽出物で、1管2mL中に100mgを含有する製剤である。無痛化剤としてベンジルアルコール0.03mLを含有。

効能・効果 慢性肝疾患における肝機能の改善 更年期障害、乳汁分泌不全
用法及び用量 通常、成人1日1回2mLを皮下又は筋肉内に注射する。症状により1日2?3回注射することができる。 通常、1日1回2mLを毎日又は隔日に皮下注射する。
薬効・薬理

*抗脂肝作用:本剤は抗脂肝作用を有し、脂肪沈着の減少、肝細胞の脂肪変性の改善が認められる(ラット)。

*組織呼吸賦活作用:本剤は肝のコハク酸脱水素酵素の活性を高め、組織呼吸を促進して、新陳代謝を活発にする(ラット)。*肝の部分欠損再生促進作用:本剤は、肝の部分的切除部を新生細胞で修復し、肝実質の再生を促進する(家兎・ラット)。

*間質結合織の呼吸促進作用:本剤はCCL4連続12週間投与によるラット肝障害の繊維増殖を抑制し、かつ一旦増殖した間質結合織をも吸収することが、組織学的に確認されている。

*組織呼吸促進作用:ラット肝臓の組織呼吸に及ぼす本剤の作用をワールブルグ法により測定した結果、本剤は生理食塩液の約5.7倍の呼吸促進作用を認めた。
*創傷治癒促進作用:ラットを用いた実験的火傷において、本剤は対照に比較し、創傷治癒促進作用を示した。*抗疲労作用:マウスによる水中遊泳疲労試験において、本剤は抗疲労性を認めた。
*硝子体及び結膜下出血の吸収促進作用:ウサギ眼球の硝子体及び球結膜下に対し実験的出血を起こし、その吸収促進作用を観察した結果、本剤は対照に比較して出血吸収促進作用を示した。

なお、胎盤製剤の各種成分について、現在までに確認されたものとして、次の報告がされている。

  • 核酸関連物質:ウラシル、アデニン、グアニン、チミン、シトシン。
  • アミノ酸:リジン、アラニン、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、グリシン、バリン、セリン、チロシン、フェニルアラニン、スレオニン、アルギニン、プロリン、シスチン、イソロイシン、メチオニン、ヒスチジン。
  • ミネラル:ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄等。
  • その他:キサンチン等。

なお、使用されている胎盤には、ヒト胎盤及び牛胎盤があるとされている。

[011.1.PLA:2000.3.14.古泉秀夫]


  1. http://www.tsm.gr.jp/million/placentainfo.htm,2000.3.14.
  2. http://www.nava21.ne.jp/,2000.3.14.
  3. ラエンネック添付文書,1993.3.改訂
  4. メルスモン添付文書,1993.3.改訂

マコモの薬効について

月曜日, 12月 24th, 2007

KW:健康食品・漢方薬・マコモ・ハナガツミ・真菰・黒穂病菌・マコモ墨・マコモ耐熱菌・作用機序・伝承効果

 

Q:岸辺に生える植物の"マコモ"を服用している患者がいる。身体によいといわれており、お風呂にも入れるとされているが、これは具体的にどの様な作用があるのか。

A:マコモ→ハナガツミ。ZizanialatifoliaTurez.。日本各地及び台湾、中国、インドシナ、東シベリアの熱帯から亜熱帯に分布、沼地に生えるイネ科の大型多年草。

マコモ(真菰)→沼や川などの水辺に群生する稲科の大型多年草である。大きいものは2mを越え、地方によりコモガセ、コモガヤ、マコ、チマキグサ、カツミ、ハナカツミ、ガッゴなどとも呼ばれている。わが国では田圃の水路など至る所の湿地帯に見られ、更に中国大陸や沖縄、北米インディアンの間では現在でも食用としているといわれる。

中国では黒穂病菌の寄生した若い茎を菰角(こもづの)といい食用とし、菌の成熟したものは油を加えてマコモ墨といい眉墨とした。

効用・効果:マコモを母体にして発生させる微小単細胞生物は「マコモ耐熱菌」と名付けられ、製品化された。

マコモ耐熱菌については、未だ科学的に解明されていないとされているが、マコモ耐熱菌は微生物ながら病疫微生物ではない。マコモ耐熱菌は無数の繊毛で被われ、体内で芽胞を形成する。芽胞中に自身が生きるための栄養を蓄え、1000℃の高熱にも死なないマコモ耐熱菌は、三つの形に変化し、体内から代謝物質を排出するが、この代謝物質が人体に有効ではないかとされている。

「マコモ」は、全て手作りで、野生の真菰を刈り取る。太陽光により乾燥。乾燥した真菰を砕断し、特許技術を駆使して「マコモ」を作り上げる。マコモ耐熱菌の酸化抑止力から還元性食品とする健康食品である。

「マコモ」風呂については、マコモを湯船に入れ入浴するとされているが、お湯を換えずに継続使用するとする紹介がされている。

なお、真菰の伝承されている効果は高血圧、肝炎、糖尿病、胃腸病などである。

水分(減圧乾燥法) 2.4% 灰分 29.0%
蛋白質 15.8% カルシウム 672mg/100g
脂質(ソックスレー抽出法) 0.4% リン 252mg/100g
繊維 13.0% 鉄分 61.2mg/100g
糖質 39.4% 100g中のカロリー 229Kcal

なお、上記以外の微量成分については報告されていない。また、本品は健康補助食品であり、薬効の標榜はされていないため、詳細な薬理作用等は不明である。

商品名:MAKOMOHARMONY100U・マコモ

製造元:株式会社マコモ
[〒988-02宮城県気仙沼市字岩月千岩田196-1]

発売元:光苔株式会社
[〒988宮城県気仙沼市田中前2-10-1TEL.0226-470-4571]

[510.FD38.015.4ZIZ][1996.7.2.・1999.3.23.一部修正.古泉秀夫]


  1. 牧野富太郎:原色牧野植物大図鑑;北隆館,1986
  2. マコモ販売株式会社・私信,1996.6.24.[東京都新宿区若葉1-20ハイネス四谷302号TEL.03(3559)7092FAX.03(3350)5857]
  3. 健康考古学研究会・編:マコモの不思議;株式会社日本通信教育連盟,1995
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI-News,No.1555,1997.6.10.より転載。

マンネンタケの薬理作用について

月曜日, 12月 24th, 2007

KW:漢方薬・マンネンタケ・霊芝草・霊芝・サルノコシカケ科・薬理作用・作用機序・抗がん作用・血栓性静脈炎

 

Q:マンネンタケには抗癌作用があるといわれているが、その作用機序と開発状況また血栓静脈炎に対する効果は報告されているか

 

A:マンネンタケ(Ganoderma japonicum Lloyd)は、サルノコシカケ科に属する植物で、霊芝草と呼称されるものである。

霊芝草のうち紫芝の成分としてエルゴステロール、有機酸(リシノレイン酸、フマル酸など)、グルコサミン、多糖類、樹脂、マンニトール等を含有し、またベタイン、γ-ブチロベタイン等のアミノ酸誘導体を含有する。

霊芝草のうち赤芝は、マンニトール、α-ミコース、ステアリン酸、安息香酸、エルゴステロール、15種のアミノ酸、4 種のペプチド及び4 種の塩基等を含有する。

霊芝草の作用として動物実験の結果として、中枢神経系の抑制作用・循環器系に対する血圧下降作用として先降後昇を示し、同時に尿量が顕著に増加する。赤芝は冠状動脈の血液流量を増加し、急性の実験性心筋虚血無酸素症に対する保護作用があることが実証されている。

また呼吸器系統に対し気管支平滑筋に対する痙攣解除作用を示し、肝臓保護作用・細網内皮系の食作用増強作用等が報告されており、白血球減少症の治療にも用いられる等の報告が見られる。

尚、霊芝草に由来する治療薬の開発についてはLZ-8(明治乳業)が見られる。

本品はサルノコシカケ科のキノコ、マンネンタケの菌体に含まれるアミノ酸110個でできた分子量12,420Da の蛋白質で、動物実験でアレルギー反応を抑制する強力な作用を確認。スギ花粉のアレルギー症や関節リウマチ等、過度の免疫反応が原因で起こる病気の治療に有望な新しい免疫調節剤であるとされている。

その他、LZ-8は糖尿病モデル動物-NODマウスに対して、発症抑制効果と治療効果を示し、実験的アレルギー反応ばかりでなく、自己免疫疾患にも有効であることが示唆された。

その他、霊芝草と癌治療の関係では、グルカンあるいは酸性蛋白多糖体で、この高分子多糖体が、サルノコシカケの胞子を培養して菌糸塊を作ることに成功して発見された抗腫瘍物質であるとする報告もみられる。

[510.FD18.038GAN][1991.11.5. ・1999.4.6.一部改訂.古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1985,p.2731
  2. NHS- DIC治験薬データベース,1991
  3. 帯津良一・編著:がんを治す大事典;二見書房,1991
  4. 紀光助・他:新しい免疫調節剤LZ8のNODマウスへの効果;第19回日本免疫学会総会・学術集会記録,19:456(1989)
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.199,1991.11.8.より転載

麻酔薬とアルコールの関係について

月曜日, 12月 24th, 2007

KW:臨床薬理・麻酔薬・アルコール・飲酒・効力低下・エタノール・ethanol・耐性・身体依存性・依存性・塩酸ケタミン・ketamine・ペントバルビタールナトリウム・pentobarbital・アルコール症患者・交差耐性・全身麻酔薬

 

Q:飲酒の習慣のある者は麻酔が効き難いという話を聞くが、実際はどうか

A:注射用全身麻酔剤であるケタラール10・50(三共)[塩酸ケタミン:ketamine hydrochloride]の添付文書中に次の記載が見られる。

使用上の注意-1.慎重投与(1)急性・慢性アルコール中毒の患者[一般にアルコール中毒患者は麻酔がかかりにくい。]

また、全身麻酔剤であるネンブタール注射液(大日本)[ペントバルビタールナトリウム:pentobarbital sodium]の添付文書では、重大な副作用-2)依存性の項に「連用により、薬物依存傾向を生じることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること。特にアルコール中毒、薬物依存の傾向又は既往歴のある患者、重篤な神経症患者に対しては注意すること。………」

とする記載がされている。

その他、ethanolの耐性・身体依存性について、次の報告がされている。

ethanolの慢性的な摂取は、ethanol代謝機能を亢進する。しかし、飲酒を中止すると代謝機能は数週間以内に次第に低下し、禁酒しているアルコール症患者ではethanol代謝速度は正常者と同じである。

ethanolを慢性的に摂取していると、薬力学的耐性が出現する。従って中毒症状を起こすためには、正常者の場合よりも高い血中濃度が必要となる。アルコール症患者の中には、血中ethanol濃度が200mg/dL以上であっても、難しい仕事を完全にやってのけるヒトもいる。200mg/dL といえば大部分の研究者が顕著な中毒であると規定している量の2倍に相当する。しかし、致死量が著しく増大するわけではなく、呼吸抑制を伴った重篤な急性中毒が、慢性アルコール中毒に附随して出現することもある。

ethanolとそれ以外の薬剤の交差耐性は、中枢神経系内の薬力学的耐性、又は代謝がより促進されたために起こるものとされている。 ethanolを摂取していると肝ミクロゾーム分画に存在する酵素の活性が上昇するからである。ethanolに対して耐性を起こしているヒトは、一般に全身麻酔薬と交差耐性を持っている。この交差耐性は、おそらく薬力学的耐性に由来したものであろう。更に交差耐性はそれほど飲酒量の多くないアルコール症患者にだけ見られる。血中アルコール濃度が高くなると、他の薬物はethanolの作用に対して相加的に作用する。更に同一酵素系を競合することによって、相互の代謝系を阻害しあうこともある等の報告が見られる。

以上の各報告から飲酒者の場合、麻酔薬に対する耐性が生ずる可能性があることが予測されるが、その飲酒量は日常一般的に摂取するethanol量を超えた量であると考えられる。

[015.4.ETH:2003.6.2.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
  2. ケタラール10添付文書,1999.1.改訂
  3. ネンブタール注射液添付文書,1999.2.改訂
  4. 藤原元始・他監訳:グッドマン・ギルマン薬理書;廣川書店,1992

マジックマッシュルームについて

日曜日, 12月 23rd, 2007

KW:薬名検索・マジックマッシュルーム・magicmushroom・脱法ドラッグ・麻薬原料植物・幻覚作用・脱法ドラッグ・サイロシビン・psilocybin・シロシビン・サイロシン・psilocin・シロシン

 

Q:マジックマッシュルームを摂取したことを理由として、麻薬及び向精神薬取締法違反で逮捕されたという記事を見たが、キノコが、何時から麻薬に指定されたのか

A:幻覚作用を惹起するキノコ「マジックマッシュルーム (magicmushroom)」を摂食したとして、麻薬及び向精神薬取締法違反容疑で逮捕されたとの報道がされたのは2004年1月30日である。

従来脱法ドラッグの一種として市販されていたマジックマッシュルームは、平成14年5月7日に公布された政令改正により、麻薬原料植物に指定され、平成14 年6月6日以降これらの植物は麻薬として取り扱われるので、輸入、輸出、栽培、譲り受け、譲り渡し、所持、施用、広告という行為のすべてが法違反として扱われる。

■麻薬原料植物として指定された植物

  • (1) 3-[(2-ジメチルアミノ)エチル]-インドール-4-イルリン酸エステル(別名サイロシビン)及びその塩類を含有するきのこ類
  • (2) 3-[2-(ジメチルアミノ)エチル〕-インドール-4-オール(別名サイロシン)及びその塩類を含有するきのこ類

マジックマッシュルームとは、幻覚作用を惹起するキノコの俗称で、毒キノコの一種である。乱用されているのは、主にキノコを乾燥させたものである。乱用されるマジックマッシュルームは、主として次のキノコと考えられている。

  • Psilocybe cubensis(シロシベ・クベンシス、和名:ミナミシビレタケ)
  • Copelandia cyanescens(コーポランディア・キアネンシス、和名:アオゾメヒカゲタケ) ただし、これ以外の名前で呼ばれているものもあるので、注意が必要である。マジックマッシュルームには、サイロシビン(psilocybin:シロシビン)やサイロシン(psilocin:シロシン)という麻薬成分が含まれている。
  • psilocybin:メキシコ産茸の一種であるpsilocybe mexicanaに含まれるアルカロイドである。健常人に経口投与すると不安が著しくなり、知覚障害、思考力減退、幻視、多幸感、リジン現象などが見られる。
  • psilocin:メキシコ産茸の一種であるpsilocybe mexicanaに含まれるアルカロイドで、サイロシビンと同様に幻覚薬である。

マジックマッシュルームに含まれる麻薬成分のpsilocybinや psilocinは、中枢神経系に作用し、中枢神経の興奮や麻痺、幻覚を起こす。

主な症状は幻覚、酩酊状態、狂乱、発熱などで、摂食してから15-60分後に発現する。摂食後2週間から4カ月後、飲酒やストレス、睡眠不足、他の薬物の服用等によって、幻覚などの精神症状が再び現れる『フラッシュバック現象(再燃現象)』が起こることがある。

[011.1.PSI:2004.3.2.古泉秀夫]


  1. マジックマッシュルーム食べた疑い-打楽器奏者逮捕;読売新聞,第 45924号,2004.1.30.
  2. http://www.kenkou.metro.tokyo.jp/yakumu/m- sitei/mm.html,2004.2.1.
  3. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1993

ミルラチンキについて

日曜日, 12月 23rd, 2007

KW:薬名検索・myrrh・ミルラ・ミルラチンキ・ミルラDAB9・没薬・モツヤク・ゴム樹脂・薫香料・殺菌・脱臭

 

Q:OTC薬のうがい薬に配合されているミルラチンキとは何か

A:ミルラはCommiphora属の諸植物の皮層からから分泌され、空気中で乾燥したゴム樹脂である。

  • [英]myrrh(ミルラ)、Arabian myrrh。[独]Myrrhe、[ラ]myrrha。
  • 和名:没薬(モツヤク)。
  • 原植物:ゴム樹脂の化学組成がミルラDAB9に該当する全てのCommiphora属植物。特にCommiphora molmol Engler、カンラン科(Burseraceae)。その他、北東アフリカ、アラビア等に産するCommiphora abyssinica Engl.(カンラン科)等から得たゴム樹脂を含む固形樹脂とする報告も見られる。
    本品は不規則な円形をした粒子又は多孔性の塊で、大きさは不揃い。褐色ないし黒褐色、淡橙褐色ないし暗橙褐色を呈し、黄色、無色ないし淡黄色の部分もある。表面は普通灰色ないし黄褐色の粉をふいたようである。臭いは酸っぱく、芳香性、味は苦く、芳香性、渋みがあり、噛むと歯に粘り着く。
  • 含有成分:組成は非常に複雑で、一部しか知られていない。40-60%のエタノール可溶部の精油は専らセスキテルペン類から成っており、主成分はゲルマクラン、エレマン、ユーデスマン及びグアヤン型のフラノセスキテルペン炭水化物である。その他精油中にセスキテルペン炭化水素類(例えばβ及びδ -elemene、β-bourbonene、β-caryophyllene、humulene)やセスキテルペンアルコール類(例えばelemol) が存在する。おそらくフラノセスキテルペン類のいくつかは、局方ミルラに特徴的なものである。50-60%-のエタノール不溶部(粗ゴム質、又は粗粘液質)は約20%の蛋白質と約65%の炭水化物(galactose、4-O-methylglucuronic acid、arabinoseから成る)を含んでいる。
  • 適応:多くはミラルチンキDAB9として殺菌、脱臭及び顆粒化促進作用があるため、風邪による口腔や咽頭部の炎症の際に塗布剤、含嗽剤や洗浄剤として用いられる。但し、本品に収斂作用はない。

その他、古来、薫香料として珍重され、チンキ剤を刺激、防腐薬とする。古代エジプトでは、死体を保存するのに、摘出した内臓の空洞に防腐の目的で本品を詰め込んでミイラを作った。ミイラの語源は本生薬を原義とする等の報告も見られる。

[011.1.MYR:2006.1.31.古泉秀夫]


  1. 薬科学大辞典 第3版;広川書店,2001
  2. 井上博之・監訳:カラーグラフィック西洋生薬;廣川書店, 1999

緑内障患者に使用可能な抗アレルギー薬

日曜日, 12月 23rd, 2007

KW:薬物療法・抗アレルギー薬・緑内障患者・気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・蕁麻疹・湿疹・皮膚炎・皮膚掻痒症・痒疹・酸 性抗アレルギー薬・塩基性抗アレルギー薬

Q:緑内障患者に使用可能な抗アレルギー薬について

A:抗アレルギー薬とは、I型アレルギー反応とそれに続発するアレルギー性炎症を抑制する薬剤である。ことにマスト(肥満)細胞からのメディ エーターの生成・遊離を抑制する薬剤、あるいはその作用に拮抗する薬剤の総称である。

なお、緑内障患者に投与可能な薬剤ということであれば、作用として『抗アセチルコリン作用』の報告されていない薬剤を選択する。

一般名・商品名(会 社名)

承認適応

抗コリン作用
amlexanox
ソルファ錠(武田)
気管支喘息、アレル ギー性鼻炎 報告無
pemirolast potassium
アレギサール錠(田辺三菱)
気管支喘息、アレル ギー性鼻炎 報告無
repirinastロメット錠

(田辺三菱)

気管支喘息 報告無
sodium cromoglicate
インタール吸入カプセル
(アステラス)
気管支喘息、アレル ギー性鼻炎 報告無
インタール内服用
(アステラス)
食物アレルギーに基づくアトピー性皮膚炎 報告無
tazanolast
タザノールカプセル(鳥居)
気管支喘息 報告無
tranilast
リザベンカプセル(キッセイ)
気管支喘息、アレル ギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎 直接拮抗作用無
一般名・商品名(会 社名) 承認適応 抗コリン作用
azelastine hydrochlorideアゼプチン錠(エーザイ) 気管支喘息、アレル ギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、アトピー性皮膚炎、皮膚掻痒症、痒疹 報告無
bepotastine besilate
タリオン錠(田辺三菱)
アレルギー性鼻炎。蕁 麻疹、皮膚疾患に伴う掻痒(湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚掻痒症) 報告無
cetirizine hydrochlorideジルテック錠(第一三共) アレルギー性鼻炎。蕁 麻疹、湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚掻痒症。 報告無
ebastine
エバステル錠(大日本住友)
蕁麻疹。湿疹・皮膚 炎、痒疹、皮膚掻痒症。アレルギー性鼻炎。 抗コリン作用弱
emedastine difumarate
ダレンカプセル(オルガノン)
アレルギー性鼻炎、蕁 麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚掻痒感、痒疹 報告無
epinastine hydrochlorideアレジオン錠(ベーリンガー) 気管支喘息。アレル ギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚掻痒症、痒疹、掻痒を伴う尋常性乾癬 報告無
fexofenadine hydrochloride
アレグラ錠(アベンティス)
アレルギー性鼻炎、蕁 麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚掻痒症、アトピー性皮膚炎)に伴う掻痒 報告無
ketotifen fumarate
ザジテンカプセル(ノバルティス)

気管支喘息、アレル ギー性鼻炎、湿疹・皮膚炎、蕁麻疹、皮膚掻痒症

報告無
olopatadine hydrochlorideアレロック錠(協和醗酵)

アレルギー性鼻炎、蕁 麻疹、皮膚疾患に伴う掻痒(湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚掻痒症、尋常性乾癬、多形滲出性紅斑)

報告無
oxatomide
セルテクト錠(協和醗酵)

成人:アレルギー性鼻 炎、蕁麻疹、皮膚掻痒症、湿疹・皮膚炎、痒疹。

小児:気管支喘息、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、痒疹。

報告無
一般名・商品名(会 社名) 承認適応 抗コリン作用
ozagrel hydrochloride
ベガ錠(小野)
気管支喘息 報告無
ramatroban
バイナス錠(バイエル)
アレルギー性鼻炎 報告無

seratrodast

ブロニカ錠(武田)

気管支喘息 報告無
montelukast sodium
シングレア錠(万有)
気管支喘息 報告無
pranlukast hydrate
オノンカプセル(小野)
気管支喘息。アレル ギー性鼻炎 報告無
zafirlukast
アコレート錠(アストラゼネカ)
気管支喘息 報告無
一般名・商品名(会 社名) 承認適応 抗コリン作用
suplatast tosilate
アイピーディ(大鵬)
気管支喘息、アトピー 性皮膚炎、アレルギー性鼻炎 報告無

[035.1.ANT:2003.10.27.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003

「ルチンについて」

日曜日, 12月 23rd, 2007

KW:機能性成分・健康食品・ルチン・rutin・エンジュ・槐花・カイカ・ビタミンp・vitamin P・vitamin様物質・ビタミン様物質・血管補強薬

Q:ルチンを含有する生薬及びルチンの作用

A:ルチン(rutin)は、植物界に広く分布するクエルセチンの誘導体。淡黄色-淡緑黄色の結晶。水に難溶。C27H30O16=610.53。融点:192℃。フラボノール配糖体。血管補強薬。毛細血管の強化、血管の補強作用がある。脳出血、高血圧の予防、肺出血、紫斑病、網膜出血などに経口投与する。

[独]Rutin、[仏]rutine、[ラ]rutinum。

香料植物として有名なミカン科のヘンルーダ(Ruta graveolens)から最初に得られたが、後にマメ科のエンジュ(Sophora japonica)の花蕾(生薬名:槐花:カイカ)、タデ科のソバ(Fagopyrum esculentum)等からも単離され、天然に広く分布している。槐花のルチン含量は10-28%に達する。加水分解するとクエルセチン、L-ラムノース、D-グルコース各1分子を生じる。ラムノース(1-6)グルコースをルチノース(rutinose)という。主な生理活性は毛細血管収縮作用であり、古来より止血薬として用いられてきたが、その作用はそれほど強くなく一過性である。また毛細血管の抵抗力を高め、透過性の増大を抑制する作用(ビタミンP)を示す代表的化合物である。

ルチンはvitamin Cの研究中に発見されたビタミン様物質で、vitamin Pの一種である。ジャガイモの花、中国産の豆であるエンジュの葉・蕾・未熟果などに含まれ、食品中ではソバに特徴的な成分であるとされている。

1日摂取量として30mgとする報告がされており、ソバ一食分で十分摂取可能であるとされている。またルチンはvitamin Cの吸収を助け、vitamin Cの酸化を防御するとされている。

1)薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990

2)今堀和友・他監修:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998

3)中村丁次・監修:最新版からだに効く-栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001

[015.9.RUT:2005.5.14.古泉秀夫]

横紋筋融解症について

日曜日, 12月 23rd, 2007

KW:語彙解釈・副作用・横紋筋融解症・rhabdomyolysis・横紋筋・骨格筋・striated muscle・ミオパシー・myopathy・筋症・ミオグロビン・myoglobin・statin系・HMG-CoA還元酵素阻害薬

Q:横紋筋融解症について

A:横紋筋=骨格筋(striated muscle)。

横紋筋融解症(rhabdomyolysis)は、骨格筋細胞の融解、壊死により筋体成分が血中へ流出した病態である。その際、流出した大量のmyoglobin(ミオグロビン)により尿細管に負荷がかかる結果、急性腎不全を併発することが多い。また稀ではあるが呼吸筋が障害され、呼吸困難になる場合もある。

従って血液透析などの適切な措置が必要となる。

骨格筋の崩壊は、外傷、熱射病、痙攣発作、低カリウム血症、動脈[性]不全、圧挫症候群、インフルエンザ、毒物中毒など多くの原因による。

服用薬剤の副作用の場合、初期症状に気付いた場合には、直ちに服用を中止し、主治医を受診するよう注意する。

  • 症状:発症時の自覚症状として、四肢の脱力、腫脹、痺れ、痛み、赤褐色尿(myoglobin尿)等があり、これに腎不全症状として無尿、乏尿が加わる場合もある。発症は急性、亜急性、緩徐発症を示し、筋痛、筋力低下は下肢・大腿部に局限することが多いが、全身性のこともあり、呼吸筋、嚥下筋が障害されることもある。従って歩行障害、運動障害、呼吸障害、意識障害など様々な症状を来す場合がある。
  • 検査所見myoglobinCPK(クレアチニンホスホキナーゼ)などの筋逸脱酵素の急激な上昇が認められる。
newquinolone系薬剤 1-6日間と短期間の服用で急激に発症。
bezafibrate 1日-2年の間で発症が報告されている。2週間以内が50%以上。
HMG-CoA還元酵素阻害薬 1年以内が殆どであり、4ヵ月以内が50%と報告。
  • 前駆症状:『手足の痺れ、手足の脱力感、手足・肩・腰・全身の筋肉が痛んだり、こわばったりする。全身倦怠感、尿色調が赤褐色』。

以上の症状が見られたら直ちに服薬を中止し、主治医に受診する。

横紋筋融解症

HMG-CoA還元酵素阻害薬(pravastatin、 simvastatin、fluvastatin)、fibrate系(clofibrate、bezafibrate)で起こるので、筋痛、筋力低下、 CPK上昇が見られ血中、尿のmyoglobinが上昇し、尿細管壊死による急性腎不全を伴う。横紋筋融解症は腎障害があるとき起こりやすいため重篤な腎障害(クレアチニン2.5mg/dL以上)には用いてはならない。

横紋筋融解症の発症機序
  1. コレステロールの減少が原因で筋膜の流動性が亢進。細胞膜障害の発現。Clコンダクタンスがブロックされることにより発症。
  2. コレステロール生合成系の中間代謝物産生系が抑制され、イソペンテニルアデニンピロリン酸の減少によるtRNA合成阻害、Rasのゲラニルゲラニン化の抑制等。
  3. 細胞内Caの増加による細胞死による

等の機序が報告されているが、未だ定説はない。

総評

statin系の薬剤は、副作用は非常に少ない薬とされている。

しかし、脂溶性のcerivastatin sodium(セリバスタチンナトリウム)は、高頻度の筋炎並びに横紋筋融解症を発症し、更にそれに起因する死亡例が世界中で200例に及んだことから 2001年cerivastatinは世界市場からの撤退を余儀なくされた。

最近10年間のstatinを用いた大規模臨床試験から換算すると、 statin投与による救命症例と死亡症例の比率を見ると、救命が1万-10万例に対し死亡は1例といわれている。

myopathy(ミオパシー)の発現頻度は、我が国では5%未満といわれているが、諸外国では10倍以上にCPKが増加した場合、myopathy発症を考えるとされているが、発症頻度については7万例に1例と算定されている。

myopathyは単に筋肉痛、易疲労感を感じるだけのもの、更に血中のCPKのみが上昇する。また重症例では横紋筋融解症のため急性腎不全により死亡する等の症例も存在する。

但し、statinによる横紋筋融解症は100万処方に1例と算定されている。myopathyの初期症状は、筋肉痛よりも筋肉がだるい等の訴えがあることに注意が必要である。

その他

statinの副作用について、『一般に忍溶性がよい。筋肉及び肝臓での副作用は、用量関連性の傾向がある。

治療を開始する前にクレアチンキナーゼ(CK)及びアミノトランスフェラーゼ(ATs)濃度を測定すること。筋肉症状が現れた場合には、CKの測定を繰り返し行う。

aminotransferases濃度は定期的に測定した方がよい。多くの薬剤(主にフィブラート、シクロスポリン、抗真菌薬、マクロライド系抗菌薬及び抗レトロウイルス薬)が、statinとの併用によりmyopathy及び/又は肝毒性のリスクを高めることがある。

statinは動物で発癌性を示すが、殆どの研究でstatin服用患者の発癌率が増加したという証拠は示されていない』とする報告も見られる。

HMG-CoA還元酵素阻害薬による筋痛症及び関節痛の両者は、本薬投与中止後2-3週間で回復するの報告が見られる。

尚、statin系薬剤の体内消失予測時間は下表の通りである。

一般名・商品名(会社名)

半減期 体内消失時間
atorvastatine calcium hydrate
リピトール錠(アステラス)
約9.44hr. 約47hr.
fluvastatin sodium
ローコール錠(ノバルティス)
約1.32hr. 約6.6hr.
pitavastatin calcium
リバロ錠(興和)
約11.6hr. 約58hr.
pravastatin sodium
メバロチン錠(第一三共)
約1.5hr. 約7.5hr.
rosuvastatin
クレストール錠(アストラゼネカ)
約20.2hr. 約101hr.
simvastatin
リポバス錠(万有)
約2-12hr. 約10-60hr.

HMG-CoA還元酵素阻害薬は、コレステロール生合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を特異的かつ拮抗的に阻害する。その作用はコレステロール合成の主要臓器である肝臓、小腸に選択的であるとされているが、薬物が体内から消退した後も、何等かの影響が持続するものと考えられる。

myopathy(筋症)

筋肉自体が侵されて生じる疾患の総称。筋症は筋肉に病変が起こっている場合で、筋肉は種々の原因で侵されるが、外因による筋障害も多く、ステロイドミオパシー、クロロキンミオパシー、ビンクリスチンミオパシーなどがある。こうしたミオパシーの際には、一般的には四肢近位筋である肩、腰などの筋の脱力が目立ち、立ち上がり動作、階段の昇降などに困難を自覚することが多い。

筋症では、広範な筋肉痛、筋肉圧痛、脱力感や著明なCK(CPK)*の上昇がみられる。

*CK(CPK):creatine kinase(CK:クレアチンキナーゼ)・creatine phosphokinase(CPK:クレアチンホスホキナーゼ)。基準値:57-197 IU/L(男性)、32-180 IU/L。

[615.8.HMG:2006.4.17.古泉秀夫]


  1. 医学大辞典;南山堂,2001
  2. 日本病院薬剤師会・編:重大な副作用回避のための服薬指導情報[1];薬業時報社,1997
  3. 名尾良憲・他編著:臨床医薬品副作用ハンドブック;南山堂,1999
  4. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006
  5. 和田 攻・総監修:医学生物学大辞典;朝倉書店,2001
  6. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2001
  7. 多田紀夫:HMG-CoA還元酵素阻害薬の副作用;ドクターサロン,50(4):246-252(2006)
  8. ローコール錠添付文書,2005.5.
  9. 高久史麿・監修:臨床検査データブック;医学書院,2003-2004
  10. 心疾患又は高コレステロール血症のない抗リスク患者へのスタチンの使用;The Medical Letter<日本語版>,22(1):1-3(2006.1.2.)
  11. 中村誓志・他:シンバスタチンによるミオパチーが発症した1例;医療薬学,32(4):342-345(2006)
  12. 二見高弘・他:連載・HMG-CoA還元酵素阻害剤(3)-有用性から有害事象まで-横紋筋融解症について;医薬ジャーナル,42(3):1062-1069(2006)
  13. リポバス錠インタビューフォーム,2003.2.

ワーファリン錠と青汁の相互作用

金曜日, 12月 21st, 2007

KW:相互作用・ワーファリン錠・warfarin potassium・青汁・クロレラ・ビタミンK・新百年青汁・百年青汁・キューサイ青汁・葉緑素・モロヘイヤ・ケール・麦若葉末・大麦若葉

 

Q:栄養士から相談があったが、青汁とワーファリン錠の相互作用に関する資料はあるか

A:ワーファリン錠(エーザイ)[warfarin potassium]の添付文書中に健康補助食品である青汁の記載はされていないが、「クロレラ食品は本剤の抗凝血作用を減弱するのでひかえること」の記載がされている。

クロレラ食品記載の理由は「植物中のビタミンK(ビタミンK1)は、葉緑体中で光合成時のエネルギー変換反応の中心的役割を果たしている。健康食品として市販されているクロレラは、緑藻植物であり多量の葉緑素を含んでいることから、クロレラ中にビタミンKが多量に含まれていることが予測される。クロレラは医薬品ではなく、食品であるため含有量は一定していない。また製造する企業によっても含有量が異なることも考えられるが、

クロレラ1日摂取量(約10g)では葉緑素として約0.2g、ビタミンK1は約0.1mg含有しているの報告がある。

また、臨床報告もされており、トロンボテスト値(TT値)が5?15%で安定していたwarfarin療法中の63 歳の男性がクロレラを摂取するようになってTTちが55%と高値を示した。クロレラ摂取を中止するとTT値は10%前後に回復したが、再びクロレラを摂取したところ50%程度に再度上昇した。患者の摂取したクロレラ食品を分析したところ、クロレラ100g中にビタミンK1は3.6mg含有していた。

その他の報告によると75歳の男性がクロレラ摂取後10?20%に安定していたTT値が、58%と著明に上昇し、クロレラ中止により再度低下した。その後、再度クロレラを摂取したところ、同様の影響が認められた。

クロレラはその摂取量、摂取期間、個人差等を考慮すべきであるが、warfarin療法中の患者で、トロンボテスト値に変動がみられる例では、クロレラ摂取の有無を確認する必要がある。以上からwarfarin服用者に対しては、大量のビタミンKを含有するクロレラ摂取は禁止すべきである。」としている。

一方「青汁」については、自家製のものが摂取されているほか、販売各社によりその原料も異なるため、何を原料とした「青汁」かの確認が必要であるが、当室において新聞広告等から入手している製品の情報に基づき検討した結果を報告する。

商品名 取扱会社 原料名
新百年青汁 ロイヤル食品株式会社:〒812福岡市博多区博多駅南2丁目4-24 ロイヤル福岡ビル モロヘイヤ・ケール・麦若葉末・無臭ニンニク・ローヤルゼリー・コラーゲン・ビタミンC・蜂蜜等
百年青汁 ロイヤル食品株式会社電話0120-8-11831 モロヘイヤ・ケール・無臭ニンニク
キューサイ青汁 キューサイ青汁(株)福岡市中央区草香江1-7-16 ケール
大麦若葉青汁-ナイスグリーン (株)宇治田原製茶場〒610-88 電話

0120-08-5000

大麦若葉

新百年青汁及び各原料植物の報告されている可食部100gあたりの成分分析結果は、次の通り。

  新百年青汁 モロヘイヤ ケール
エネルギー 229kcal 73-83kcal 33kcal
水分   76.4-77.0g 88.4g
蛋白質   3.6-5.0g 3.4g
脂質   0.6-0.9g 1.6g
炭水化物-糖質   11.6-15.5g 1.4g(繊維)
炭水化物-繊維   1.0-3.4g  
灰分   2.3-2.7g  
蓚酸   870mg  
β-カロチン 14.4mg 14.3mg(10.826mg) 31.45mg
ビタミンA効力 8000 IU 7940IU(937-940IU)  
ビタミンB1 0.26mg 0.72mg(0.72mg) 0.08mg
ビタミンB2 1.36mg 4.95mg(4.95mg) 0.09mg
ビタミンB6     0.26mg
総ビタミンC 6200 mg 62-168mg(62mg) 110mg
ビタミンE 13.0mg 14.1mg  
ナイアシン   1.2mg 1.0mg
ビオチン     0.5μg
パントテン酸     0.09mg
ビタミンk   640μg  
鉄分 61.5mg 3.8mg(2.7mg) 1.7mg
カルシウム 1750 mg 498mg(410mg) 130mg
カリウム 2960 mg 920mg(920mg) 450mg
マグネシウム 400mg   34mg
リン            (92.8mg) 61mg
ナトリウム     43mg
亜鉛   590-1490μg 0.4mg
  580-637μg 0.03mg
マンガン     0.8mg
植物繊維 36.4g 5.3g(11.8g)  
スーパーオキシド消去活性(SOD) 49000unit    
総クロロフイル (葉緑素) 494mg    
残留農薬
BHC
DDT
アルドリン
ディルドリン
エンドリン
検出せず    

なお、原料植物について、次の報告がされている。

モロヘイヤ

シナの木科(Tiliaceae)のコルコルス属(Corchorus)に属する1年草の植物。コルコルス属は和名でツナソ属といい約40種以上が知られ、熱帯アジア・アフリカ(エジプトを中心)にかけて広く分布している。ツナソ(綱麻;英名ジュート)属は大別して麻の原料となるものと葉菜として食用となるものがあり、モロヘイヤは後者に属し、学名はCorchorus Olitriusである。

その葉は甘味があり、ねばねばして美味。古くから食用にされ、クレオパトラも食べたという。モロヘイヤの語源は宮廷野菜を意味するムルーキーヤがなまったものであるという通説から、宮廷野菜、王様の野菜ともいわれ、またミドリのととろ、アラブ野菜、ビタミンの固まりなどと呼ばれる。→タイワンツナソ (Corchorus Olitrius L.)、ナガミツナソ

(Tossa jute,Jews mallow(英))

ケール(緑葉甘藍・羽衣甘藍;var acephala DC Brassica Oleracea L.)

ケールは不結球のキャベツで変種名のアセファラは無頭を意味し、紀元前にヨーロッパでキャベツの野生種から最小に栽培化されたものはケールの元始型のようなものだったと思われる。その原ケールは変異性に富み、結球性のキャベツや花茎の発達するブロッコリーなどを分化した。現在のケールは原ケールがさらに巨大化し、縮葉化したものと推定されが、現在のケールの中にも様々なタイプがある。例えば葉のちじれた縮葉型、茎の肥大するマローケール、直立性のツリーケール、暖地性のコラードなどがある。

コラード(collard)

近年種苗カタログなどにでている。コラードと呼ばれる系統は暖地性のケールで、この名はColewort(キャベツ草)の誤りだといわれる。我が国で栽培されているコラードは丸葉系である。

以上の各報告に見られる通り、いずれもビタミンKの含有量については報告されていないが、原則として緑黄色野菜にはビタミンKが含有されていると考えるべきであり、百年青汁の例を見るまでもなく葉緑素が存在するとすれば、ビタミンKの存在も一定推定できる。

したがってワーファリン錠服用者では、青汁の摂取を医師に報告するとともに、TT値の変動に注意すべきである。

[3332.015.2WAR:1997.4.3.・1999.3.23.一部修正.古泉 秀夫]


  1. ワーファリン錠添付文書,1996.7.改訂
  2. 青崎 正彦・他監修:warfarin の適正使用情報;エーザイ株式会社,1996
  3. 新青汁百年パンフレット
  4. モロヘイヤ速報
  5. モロヘイヤ協会資料[〒166 東京都杉並区阿佐ヶ谷南2-13-7 電話03-5378-1540]
  6. 牧野 富太郎:改訂版 原色牧野植物大図鑑-合弁花・離弁花編-;北隆館,1996
  7. 熱帯植物研究会・編:熱帯植物要覧;養賢堂,1991
  8. 杉 靖三郎・監修:健康・栄養食品事典96-97改訂版,1996
  9. 奥崎 政美:モロヘイヤの成分;日本医事新報,NO.7345,1996.2.3.
  10. 根本 幸夫:健康食品はやわかり;曜曜出版,1991
  11. 青葉 高:日本の野菜-葉菜類・根菜類;八坂書房,1983

GLP-1について

金曜日, 12月 21st, 2007

KW:薬名検索・GLP-1・glucagon-like peptide 1・glucagon・insulin secretagogue・インスリン分泌促進物質・点鼻薬

Q:開発中のGLP-1関連薬剤について

A: GLP-1はglucagon-like peptide 1の略称である。膵glucagon及びenteroglucagonの共通の前駆物質であるpreproglucagon構造の中に、更に二つの glucagon様配列が含まれていることがわかり、GLP-1及びGLP-2と名付けられた。膵からは両者が結合した不活性な形で分泌され、消化管からは活性型であるGLP-1(7-36)の形で分泌され、インスリン分泌増強物質(インクレチン)として作用している。

現在、GLP-1に基づく医薬品として、次の薬物が治験段階として報告されている。

治験記号 一般名(企業名) 概要
  insulinotropin(米・Scios)

薬理:insulin secretagogue(インスリン分泌促進物質)。糖尿病用剤。剤形:静注・点滴静注。本品はインスリン放出ホルモンであり、血糖値を過度に低下せずに糖尿病患者の血糖値を調節する。インスリン非依存性糖尿病治療薬として開発中(第II相臨床試験)である。抗肥満薬としての効果も期待されている。現在中断の可能性。

SUN-E7001 ?     (日・Suntory)

insulin secretagogue(インスリン分泌促進物質)。糖尿病用剤。その他のホルモン剤。 インスリン非依存性糖尿病を適応として、orphan drug指定。

剤形:点鼻薬。前臨床段階。

本品はグルカゴン様ペプチド(GLP-1)のアミノ酸残基7番目から36番目までのペプチドで、大腸菌を用いた遺伝子組換えによって製造される。

血糖値上昇時に膵臓のβ細胞に作用してインスリン分泌を促進するとともに、gluca-gonの分泌を抑制する。

[011.1.GLP:2004.4.13.古泉秀夫]


  1. 医学大辞典;南山堂,1992
  2. 最新医学大辞典 第2版;医歯薬出版株式会社,1996
  3. 明日の新薬CD-ROM版,2002.6.21

LG21について

金曜日, 12月 21st, 2007

KW:薬名検索・LG21・乳酸菌・ラクトバシルスガッセリー・lactobacillus gasseri ・プロビオヨーグルトLG21・ピロリ菌

 

Q:ピロリ菌関係で出てくるLG21とは何か

A:LG21は乳酸菌『lactobacillus gasseri OLL 2716株(ラクトバシルスガッセリーOLL 2716株)』の略号である。

明治乳業では、胃潰瘍などの危険因子の一つとされるヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)に対し、強い抗菌作用を持つ乳酸菌をヨーグルトに加えた製品を2000年3月から発売した。同社が保有する乳酸菌を混合するもので、乳酸菌の抗菌作用でピロリ菌を減少・消失させる。

明治乳業・わかもと製薬・東海大学医学部の共同研究では、胃中にピロリ菌のいる30人にLG21を配合したヨーグルト90gを1日2回、8週間摂食させた。その結果、26人でピロリ菌が減少、このうち3人は菌が消失した。又、胃粘膜の荒れも改善されていた。更に6人について内視鏡検査したところ、菌は 1/10?1/100に激減していたとしている。研究グループでは、乳酸菌は安全性も高く、耐性菌も生じないと思われるが、完全に除菌できるとは言い切れないため、『治療』ではなく、『予防』として期待できるとしている。

LG21配合ヨーグルトの商品は『プロビオヨーグルトLG21』である。

東海大学医学部消化器内科におけるピロリ菌除菌方法の検討過程の中で、乳酸菌がピロリ菌に有効ではないかと考えられ、わかもと製薬が持っている L.salivarius WB1004株を用いピロリ菌感染マウスで実験した結果、効果があることが実証された。更にピロリ菌に対する効果を出すためには乳酸菌とピロリ菌の接触時間を長くする必要があることから食品形態とすることが望ましいということが解り、「WB1004」乳酸菌をヨーグルトの形態で摂取すると胃内滞留時間が長くなることが判明した。

しかし、「WB1004」はヨーグルトにした際、菌数維持が困難なことが判明、胃酸に強く、ヨーグルトに適正のある菌種の選択をすべく約200株の乳酸菌株から選定を行い、「乳酸菌LG21株」を発見した経緯がある。

[011.1LG:2000.4.13.古泉秀夫]


  1. 明治乳業-乳酸菌、ピロリ菌退治;日刊工業,2000.1.28.
  2. ピロリ菌減らす乳酸菌-LG21:読売新聞,2000.1.28.
  3. 明治乳業 ピロリ菌抑える乳酸菌-ヨーグルトに配合;日経産業新聞,2000.2.15.
  4. 明治乳業株式会社広報室・私信,2000.4.13.