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健食茶による副作用-CPK値の上昇

土曜日, 12月 29th, 2007

KW:副作用・健康食品・ハーブ茶・大陸痩健茶・茶葉大陸痩献茶・CPK値上昇・CPK値上昇原因・ドクダミ・魚腥草・十薬

 

Q:『大陸痩健茶』に『ドクダミ茶』をブレンドして飲用している患者のCPK値が上昇した。原因としてこれらのお茶は考えられるか。

A:CPK(creatine phosphokinase;クレアチンホスホキナーゼ)の基準値は男性で57?197 IU/L、女性で32?180 IU/Lとされている。

通常CPK値の異常は、心筋と骨格筋の障害で上昇する。日常臨床では、急性心筋梗塞の診断に有用で、診断と治療を急ぐ。小さい梗塞巣や不安定狭心症では、経時的に繰り返しの測定が必要な場合がある。心筋と骨格筋ではアイソザイムが異なるので鑑別に有用である。

上記疾患以外の上昇原因として

  1. 激しい運動、筋肉注射、注射液の漏洩、手術後、分娩後、てんかん大発作後、カウンターショック後、小児では採血時の騒擾、筋電図後、こむらがえりがある。運動後は数日間高い。運動選手は高値が続く場合もある。
  2. 溶血でやや高値。
  3. 男性は女性よりも若干高い。
  4. β-遮断剤、クロフィブレート等で上昇することがある。

またCPK値の軽度上昇(基準上限?500 IU/L)では、可能性として急性心筋梗塞、心筋炎、心外膜炎、進行性筋ジストロフィー(Duchenne型、肢帯型)、多発性筋炎、皮膚筋炎、アルコール多飲者、甲状腺機能低下症、周期性四肢麻痺、神経原性ミオパチー、筋強直性ジストロフィー、脳外傷、脳梗塞、β-ブロッカー等が挙げられている。

『茶葉大陸痩健茶』の成分として、次の成分・配合量が紹介されている。

成分 比率(%) g/包 原料の特徴
センナ茎 35 1.05 腸の働きをよくし、宿便を除く。
杜仲茶 19 0.57

中国の落葉樹。茶樹。鎮静・降圧効果。

ギムネマ・シルベスタ 4 0.12

印度、東南アジアに自生する多年草。糖の腸管通過を妨げる作用があり肥満度の高い人ほど効果がある。

キャックロウ 10 0.30

免疫系を刺激する作用があり、抵抗力を高める。

ハブ茶 9 0.27

熱帯アジア原産のマメ科の1年草。便通をよくし、宿便を除く。血圧降下・強壮作用があり、肝臓・腎臓を強化する。

羅漢果 3 0.09

カロリー制限糖尿病患者、ダイエット中の甘味料。

グァバ茶 4 0.12

整腸・血糖降下作用があり血糖の急激な上昇を抑制

紅茶 9 0.27  
シナモン(桂皮) 3 0.09

非常に穏やかな熱の放散と発汗作用。

ジャスミン花 1 0.03 精神安定作用、過剰油分排泄作用
カミツレ
(カモミール)
3 0.09

月経痛緩和、不眠・緊張・不安解消作用。

合計 100% 3g ?

 

ドクダミ(和名)はドクダミ科に属する多年草(学名:Houttuynia cordata Thunb.)で、別名として十薬(重薬)、漢方名『魚腥草(ギョセイソウ)』。その他『臭菜(シュウサイ)』、『臭草』等の異名がある。根の付いた全草を使用する。

  • [成分]:全草に精油が含まれるが、その中には抗菌成分としてのデカノイル-アセトアルデヒド(decanoylacetaldehyde)、ラウリルアルデヒド(laurinaldehyde) 、メチル-n-ノニルケトン(methylnonyketone)、α-ピネリン(α-pinene)、リナロール(linalool)及びカンフェン、 d-リモネン(d-limonene)、ボルニル-アセタート、カリオフィレン、ミルセン(myrcene)、leaf alcohl、citronellal、citronellol、citral、1,8-cineol、ocimene、o-cresol、m- cresol、p-cresol、carvacrol、thymol等を含む。またコルダリンも含まれる。
    花穂及び果穂にはイソクエルシトリン(isoquercitrin:血圧調節作用)が含まれ、葉にはクエルシトリン(血圧調節作用)が含まれる。花・葉・果実のフラボノイドは同じで、アゼリン、クエルシトリン(quercitrin:利尿作用)、クエルセチン(quercetin)、 isoquercitrin、レイノウトリン(reynoutrin)、ヒペリン(hyperin)、ルチン(rutin)を含むの報告もある。根茎の精油にもdecanoylacetaldehydeが含まれる。また、カリウム塩を含む。また、無機物約2.7%を含有し、主成分はカリウム塩で、硫酸塩、塩酸塩として存在するとする報告も見られる。
    魚腥草の悪臭の元凶はdecanoylacetaldehyde、laurinaldehydeで、これには抗菌力がある。乾燥するとこの悪臭は消失し、抗菌力も消滅するとする報告が見られる。
  • [薬理]
    1.抗菌作用:有効成分であるdecanoylacetaldehydeはin vivoでカタル性球菌・インフルエンザ桿菌・肺炎球菌・黄色ブドウ球菌などに対し明らかな抑制作用を持つが、赤痢菌・大腸菌・腸チフス菌に対してはやや劣る。魚腥草から抽出される一種の油状物質は、多くの酵母・真菌に対して成長を抑制する作用を持つ。またin vitroでquercitrinは抗菌活性を示し、oxymethylenemethyl nonyl ketomeには2万倍希釈でAspergillus nigerに対し抗真菌活性が認められるなど、抗微生物活性があるとするのが一般的である。2.抗ウイルス作用:魚腥草はインフルエンザアジアA型京科 68-1株に対して抑制作用を持ち、更にエコーウイルスの成長を遅延させることができるとされている。インフルエンザウイルスに対する抗菌性は弱いとする報告も見られる。3.利尿作用:魚腥草剤は蛙による実験において、毛細血管を拡張し、血流量と尿液分泌を増加し、利尿作用を発揮する。その利尿作用は、おそらく有機物によるもので、カリウムは利尿作用に対し相加的な作用を果たすのみであろうとされている。また、quercitrin の血管拡張作用も影響しているであろうとしている。

    4.その他の作用:魚腥草には鎮痛、止血、漿液分泌抑制、組織再生促進等の作用もある。また動物実験で鎮咳作用を示すが、去痰作用、平喘作用はない。ドクダミ成分「ピレスチン」について、毒性はなく、創傷、胃潰瘍の治癒を促進し、抗炎症作用があり歯槽膿漏、排膿瘍、湿疹に有効であるとしたが、抗トリプシン作用は全く認められないとする報告も見られる。臨床的には慢性腎炎や慢性気管支炎に対する治療効果も報告されている。

その他の報告として、quercitrinが極めて低濃度で、利尿作用を示し、高含量のK+塩と共に十薬(日本薬局方)の利尿活性成分であるとした。

十薬の10%-ringer浸出液を用いて各種薬理試験を行った結果、本浸出液は蛙の瞳孔を収縮させ、蛙の皮膚色素細胞を拡大させ、心臓には直接作用して弛緩期で停止、更に血管に対しては一過性の収縮の後拡張させ、血流量を増大させることを認めた。

また、ネコの血圧を下降させ、子宮・腸管平滑筋に対して周期運動を亢進させることを認めたが、これらの作用は全て灰化ドクダミにも認められ、K+塩の作用と同一であることから、ドクダミのこれらの作用はK+塩によるものであって有機化合物の関与はないとしている。

粉砕器で細粉とし90℃で24時間乾燥したものを5g秤取し、これに水100mLを加え直火を用いて約30分間で50mLになるように加熱し、ガラスフィルターを用いてろ過を行った煎液中の金属類を測定した結果が次の通り報告されている。

乾燥重量当たりの濃度(ppm)

金属 試料 Na K Ca Mg Fe Mn Zn Cu
含有量 全草 212 54,300 770 3,430 500 120 56 26
溶出量 全草 92.1 18,400 110 1,470 250 43 19 4.3

 

食事中に摂取されるカリウムやグリコーゲン分解・体蛋白異化によって遊出するカリウムを排泄するには、腎以外に出口はなく、大便中のカリウムは 10mEq以下(全排泄量の10%程度)であるとされている。腎不全の場合、腎からの排泄率が低下することから高カリウム血症を惹起しやすい状態になりやすい。

『茶葉大陸痩健茶』は、種々の成分が配合されており、個々の成分の作用あるいは複合的な作用は予測困難である。しかし、本剤中に含まれるカリウム量については、その配合成分から見て高いことが予測され、「十薬」については、上記報告の通りカリウム含有量が多い。

従って、患者の腎機能によってあるいは服用中の薬剤があれば、ハーブ茶の飲用により高カリウム血症が発現する可能性が考えられる。

高カリウム血症時の症状については、次の報告がされている。

「血漿中のカリウム濃度が正常上限(5.4mEq/L)を超えて上昇した病態で、体内のカリウム分布の異常による場合と、体内カリウム量の増大に由来する場合とがある。カリウム分布の異常は、アシドーシスや高カリウム性周期性四肢麻痺で認められる。全体カリウム量の増大は、急性及び慢性腎不全、副腎皮質機能低下症のごとく尿中カリウム排泄量が低下した場合、血管内溶血、筋挫傷あるいはカリウム製剤投与などカリウム負荷量の増大がある場合に認められる。症状としては、筋・神経系の興奮異常が主であり、意識障害の他、筋力低下、脱力がしばしば認められ、また心筋の異常として不整脈、伝導障害、心停止等が認められる。」。

以上の報告から血漿カリウム値の上昇が、原因ではないかと考えるが、患者の血漿中カリウム濃度の測定を行うか、あるいは茶の飲用を2週間程度休止し、経過の観察を行い、飲用休止によりCPK値の低下が見られれば、これらの茶の飲用による検査値の異常であるといえる。

[015.9POT:2000.7.12.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・監修:臨床検査データブック;医学書院,1997-1998
  2. 三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
  3. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  4. 生薬ハンドブック;株式会社ツムラ,1989
  5. 高木敬次郎・他編:和漢薬物学;南山堂,1983
  6. 鈴木 章・他:生薬中の金属の溶出;生薬学雑誌,36(3):190-195(1982)
  7. 桜井 寛:薬局よもやまばなし(21)カリウムの話(1)ドクダミ中のカリウム;薬事新報,No.1795:487(1994)
  8. 株式会社ツムラ学術課・私信,2000.7.7.
  9. 伊澤一男:薬草カラー大事典;株式会社主婦の友社,1998
  10. 医学大辞典;南山堂,1992

健康食品中に含まれる鉄剤の吸収について

土曜日, 12月 29th, 2007

KW:健康食品・鉄剤・鉄吸収・ヘム鉄・微量金属・吸収障害

 

Q:鉄剤を服用すると嘔気が起こるため、旭化成の子会社から発売されている健康食品を摂食している。ヘム鉄であるため胃腸障害がなく吸収がよいと言われたが事実か

 

A:本来、鉄分等の微量金属は、食物から摂取すべきであるが、何等かの要因により鉄吸収が阻害されている場合に、鉄剤の投与が行なわれる。

旭フーズ株式会社から市販されている鉄を補強した健康食品として、ヘム鉄を含有する”ふりかけ「鉄之助」”及び”たまご・かつお・たらこ・のりたまご「鉄之助」”等が市販されている。

その他、ヘム鉄入りの水ようかん・黒蜜ゼリー・コーヒーゼリー、ヘム鉄入りウエハース「鉄の国のアリス」、ヘム鉄入りクッキー「ヘマック・ヘムタイム」、ヘム鉄入りキャンデー、ヘム鉄入り飲料「ヘムエース」、ビオイロン450スーパー顆粒等が見られる。

*ヘム鉄と非ヘム鉄

 

鉄分には、肉類やレバーなどの動物性食品に含まれると、大豆やほうれん草などの植物性食品に含まれるがある。

この二種類の体内への吸収率を比較してみるとは摂取した鉄分の15?30% が吸収されるのに対して、は1?10%しか吸収されない。更には、胃や腸に対する刺激性が少なく、他の食物や飲物などで、吸収を阻害されないとされている。

ヘム鉄は、ポルフィリン環という環状の化合物の中央に鉄が結合し、それにポリペプチド(蛋白質の一部)が結合した化合物である。吸収されるときはポリペプチドの部分がはずれ、ポルフィリン環に鉄が結合した型のまま吸収される。従って、鉄は水和物にならない。また、同時に摂取した食物の影響を受けず、アミノ酸の存在により吸収が促進される。

鉄剤の服用で副作用が見られ、健康食品の摂取により必要鉄分の補給が可能であれば、特に薬剤への切り替えは必要ないものと考えられるが、鉄過剰症等の問題もあるため、受診中の医師に1日の摂取量等も含めて相談すること。

尚、各製品中の鉄含有量は、次の通り報告されている。

商品名 鉄含有量 商品名 鉄含有量
ふりかけ    クッキー  
たまご 0.7mg/袋 白ごま 0.6mg/枚
かつお 0.9mg/袋 青のり 0.6mg/枚
たらこ 0.8mg/袋 ヘムタイム 0.8mg/枚
キャンディー    ゼリー  
コーヒー 0.7mg/粒 コーヒー 0.9mg/粒
黒糖 0.9mg/粒 黒糖 0.9mg/粒
プルーン 0.9mg/粒 プルーン 0.9mg/粒
コーラ 0.7mg/粒 グレープ 0.9mg/粒
ウエハース 1.0mg/枚 水ようかん 2.0mg/個
黒蜜ゼリー 2.0mg/個 ヘム鉄飲料fe 4.6mg/缶

[015.9.FER.一部改訂・1998.9.17.古泉秀夫]


  1. 旭化成工業株式会社食品事業部技術研究グループ・私信,1995
  2. 旭フーズ株式会社パンフレット
  3. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.1268(1996.4.8.)
  4. 古泉秀夫・編著:わかるサプリメント 健康食品;じほう,2003

健康食品「グリーンパワー」とは

土曜日, 12月 29th, 2007

KW:健康食品・グリーンパワー・大麦・相互作用・ワーファリン・ビタミンK・麦緑素・グリーンマグマ

 

Q:大麦を原料としたグリーンパワーという健康食品について-ワーファリンを内服しているので相互作用を調査したいがビタミンKの含有量等が不明

A:「グリーンパワー」に直結する情報は検索できなかったが、大麦から次の製品が検索できた。

グリーンマグマ21S[日本薬品開発株式会社;大阪市淀川区三津屋南1-1-26 TEL.03-3256-7096]。本品は大麦の新鮮な若葉を搾汁し、低温で瞬時に粉末化した大麦若葉エキス末(麦緑素)の製品である。

本品は栄養補助食品として1日約5-6gを目安として摂取する。服用方法はそのまま又は冷たい水や牛乳に混ぜて服用する。但し、蛋白質の凝固等が発生するため御湯での服用は避けることとされている。

本品の原材料として、大麦若葉エキス末・デキストリン。本品の組成について、100g当たりの総クロロフィル量は197mg、蛋白質8.7g、脂質0.1g、炭水化物83.0g、ナトリウム366mg、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)1, 600,000unit。熱量367Kcal等の報告がされている。

質問の「グリーンパワー」は本品に相当するものではないかと考えられる。

なお、麦緑素については、糖質、蛋白質、ビタミン、ミネラル、酵素類など、人の生活に欠くことのできない有効成分が含まれている。麦緑素の成分については、可食部100g中として、科学技術庁資源調査会調日本食品分析センターによる次の報告がされている。

麦緑素の成分(可食部100g中、エネルギー100g:302kcal)

成分 含有量 成分 含有量
蛋白質 45.19g カロチン 52,000IU
可消化蛋白 40.58g ビタミンE 51.00mg
脂質 3.20g ビタミンB1 1.29mg
炭水化物 32.19g ビタミンB2 2.75mg
Na 775mg ビタミンB6 0.34mg
K 8,880mg ビタミンB12 80.0μg
Ca 1,108mg ジオチン 48.0μg
Zn 7.88mg 葉酸 640.00μg
Mg 224.7mg ビタミンC 328.8mg
Fe 15.8mg パントテン酸 2.48mg
Cu 1.36mg ナイアシン 10.6mg
P 594.3mg コリン 260.0mg
Mn 5.6mg クロロフィル 1,490.0mg

上表で見るとおり、ビタミンKの測定値は報告されていないが、成分としてクロロフィルが含まれており、クロレラ同様ビタミンKの存在は推定できる。

黄緑色野菜あるいは緑茶等、日常の生活に必須の食品等にビタミンKは相当量含まれており、ワーファリン錠服用者では、急激な食事等の変更は避けるべきである。従って、ワーファリン錠服用者の場合、本品の摂食は回避すべきであると考える。

[510.GRE:1994.1.26.古泉 秀夫] [1998.10.21.一部 改訂]


  1. 露木 英夫・編:健康食品カタログ;大洋書店,1992
  2. 日本薬品開発株式会社・私信,1994
  3. 飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用研究班・編:改訂2版 飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用;薬業時報社,1995
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.893,1994.9.19.収載
  5. グリーンマグマ21S資料

紅葉巡礼

金曜日, 12月 28th, 2007

鬼城竜生

紅葉の写真が撮りたいということで、11月24日(土曜日)六義園に出かけた。蒲田から京浜東北線で田端まで行き、山手線に乗り換えて、駒込駅で降りる。駅を出て本郷通りを左側に行くと直ぐのところに入り口があるが、相変わらずの人気で、立て込んでいた。

しかし、そのうちに気が付いたのだが、入り口300米先という案内板が眼に入り、その入り口を目指すことにしたところ、たいした混雑もなく入園券を手に六義園-001入れることが出来た。駒込駅に近い入り口は“染井門”で、我々が入った入り口に管理所が置かれているところを見ると、どうやらこちらが正門のようである。

六義園は、五代将軍徳川綱吉の信任が厚かった川越藩主・柳沢吉保が、元禄15年(1702年)に築園した“回遊式築山泉水”の大 名庭園で、池を巡る園路を歩きながら変化する景色を楽しめる繊細で穏和な日本庭園であると紹介されている。

庭を見てどの辺りが穏和で繊細なのか、理解できるほどに侘び寂の心があるわけではないので、庭園を見て穏和・繊細なる感銘は受ける前に、これだけの庭を造るためにどれだけの金を掛けたのかという下世話な話である。更にこの別邸に徳川綱吉が何回か招かれた事があるという話を物の本で読んだことがあるが、江戸城から六義園まで相当の距離があるが、これを駕籠に揺られてきたとすれば、駕籠を担ぐ方も乗る方も、相当我慢強いのではないかと変なことに感心した。

明治時代に入り六義園-002三菱の創業者・岩崎彌太郎が別邸として手に入れたようだが、勝ち戦に乗って安く買い叩いたのではないかとつまらぬ事を考えたが、昭和13年(1938年)に東京市に寄付され、昭和28年(1953年)に国の特別名勝に指定されたということである。

しかし、庭が広すぎて、何処に何が植えられているのか、確認するところまで行かず、感動的な紅葉を見ることは出来なかった。 ただ、何日か後で、六義園の紅葉としてTVで放送しているのを見たが、見事な紅葉が映し出されていた。場所と日時が合いさえすれば、それなりの写真が撮れるということのようである。

折角ここまで来たので、旧古河庭園まで足を伸ばしてみようということで、駒込駅から本郷通りを登って旧古河庭園に辿り着いた。今年の7月当たりから左足の太腿に原因不明の痛みを感じるようになっており、長い道を歩くと足を引き摺るようになるため、若干つらかったのと薔薇が有名な庭園という印象を持っていたため、紅葉を撮るという目的からは外れているのであまり期待はしていなかった。

この場所は、明治の元勲・陸奥宗光(1844-1897)の別邸が古河庭園-001 あった場所で、宗光の次男・潤吉(1869-1905)が、足尾銅山で知られる古河財閥の創始者・古河市兵衛(1832-1903)の養子になった際に、邸宅も古河家の所有となったものだという。この庭園の建物は、大正六年(1917年)に古河財閥三代目当主・古河虎之助(1887-1940)が、英国の建築家ジョサイア・コンドルに設計を依頼して建てられたもので、洋風庭園の設計はコンドル自身が行っているが、庭園の大半を占める和風庭園は、京都の庭師・七代目小川治兵衛(1860-1933)、通称『庭師・植治』の手によるものだとされている。

大正初期の代表的庭園であるとされるこの庭は、当初、古河財閥の迎賓館として使われ、戦後は進駐軍の宿舎とされていたが、その後、国の所有とされ、平成18年(2006年1月)国の名勝に指定されたという。

古典様式の洋館の内部見学は、1日何回かに分け、時間と人数の制限をしているよう古河庭園-002で、運が良ければ入館できるようであるが、当日は人数制限の枠外ということで、入館することは出来なかった。『旧古河庭園』は、 テラス式の洋風庭園・和風庭園を絶妙に組み合わせた庭園として評価されているようである。特に和風庭園は、武蔵野台地の裾に入り込んだ低地を取り込み、土地の高低差を利用した庭園となっており、庭の彼方此方に灯籠等も配置されており、素人が写真を撮るには優しいというか、撮りやすい庭ということが出来る。

最も、和・洋両庭園の好みは、人それぞれで違うのだろうが、坂を利用し、水を多用した庭園の佇まいは、日本人好みである。痛めた足を庇いながら、本郷通りの最後の登りを文句を言いながら登ったが、庭園内では、その登った分を下った所に和風庭園があり、下って行く辛さはあったが、決して御損は掛けないという景観が眼前に展開した。

期待していなかった紅葉が、目の前に広がり、庭園の広大さはさておき、紅葉ということでいえば、六義園より数段上ではないかというのが正直なところであった。更にほぼ平らな六義園に比べて、谷底を望むような形で展開する旧古河庭園の方が、見た目には納得出来る庭園だったといえる。

(2007.12.23.)

『混合診療』

金曜日, 12月 28th, 2007

                                                                      魍魎亭主人 

 

弁護士も経験がないとして手を出さなかった混合診療に関する裁判で、厚生労働省を相手にして全くの素人(清郷伸人氏)が、第一回戦で勝ってしまった。驚くべき頑張りというか、執念というか。更に御当人は癌の治療を受けている患者であるということを聞けば、驚異的な意志の強さだといわなければならない。普通、具合が悪ければ、無気力に支配され、闘争心等は持ちようがないと思われるが、それだけでも脅威である。

原則的にいえば、健康保険は、その規定の枠内で診療をすることになっている。従って自由診療との併用は認められず、自由診療を選択すれば全てが自由診療に切り替えられて、診療に係わる経費は全て自費ということになる。

但し、1984年に『特定療養費制度』として高度先進医療、差額ベッド、歯科の選択材料の3種類について差額徴収の導入が認められた。それ以後、政府公認の混合診療(保険外併用療費制度)は増加し、16分野の混合診療が例外的に認められている。つまり厚生労働省が自ら承認した事例については、『保険外併用療法』として実施することが出来るが、それ以外は駄目だということである。

ところで今回の東京地裁の判決で、裁判官は『混合診療について、保険が受け取れないと解釈できる法律上の根拠はない』と判断したと報道されている。確かに法的には、保険診療で受診中の患者が自由診療を選択すると、全てが自費になるという法律は見たことがない。一方、厚生労働省は『基本的な原則は曲げない』として控訴する方針を明らかにしたというが、まあ、厚生労働省としては当然の反応ということだろう。

しかし、正直にいうと、厚生労働省の承認する『保険外併用療費制度』の中味は、金のかかる部分を自費で患者負担させることが目的で、本来保険対応で実施すべきものを弁別しているだけととれないこともない。つまり財源がないから別にしているだけで、財源があれば、差額徴収などする必要は全くないということではないか。その意味では、財源の不足以外に自由診療が存在していることの意味はなく、自由診療と保険診療が混在していても特に問題がないといわれればその通りではないのか。むしろ混合診療を認めることで、全額自費にするよりは、医療の選択の幅が広がるのではないかと思われる。

混合診療を認めることになると、保険診療の基本原則が崩れるとする意見が聞かれるが、歯科診療の部分では、自費診療の部分が多く、とっくの昔に保険診療は崩れかけているといえるが、それによって医療内容の差別化をいう意見はあまり聞かない。その意味でいえば国内で認められていない医療との併用による自由診療の選択は、患者の自己負担を軽減し、医療の選択肢を拡大するということになりはしないか。ただ問題なのは、自由診療部分を限りなく少なくする努力を一方ではしてもらわなければ困るということである。新しい医療が次々に開発されるなか、その取り込みが遅れれば、それこそ自由診療部分は拡大の一途をたどり、保険診療部分は限りなく縮小するということになり、人の命に値段を付けるのかという論議に発展する。

1)読売新聞,第47299号,2007.11.8.
2)読売新聞,第47300号,2007.11.9.

                                                                  (2007.11.18.)

シクロスポリンとグレープフルーツジュースの相互作用

金曜日, 12月 28th, 2007

KW:相互作用・シクロスポリン・ciclosporin・サンディミュン・グレープフルーツジュース・grapefruit juice

 

Q:シクロスポリンを服用している患者の食事箋に「グレープフルーツ禁」の指示が書かれているが、そのような相互作用はあるのか。また、どの程度の量で相互作用が起こるのか。

A:ciclosporinの製剤である『サンディミュン(ノバルティスファーマ株式会社)』の添付文書中に、食品・健康食品に関する相互作用について、次の記載がされている。

 

併用注意

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
グレープフルーツジュース 本剤の血中濃度が上昇することがある。
本剤服用時は飲食を避けることが望ましい
グレープフルーツジュースが腸管の代謝酵素を阻害することによると考えられる。
セイヨウオトギリソウ(St.John’s Wort,セント・ジョーンズ・ワート)含有食品 本剤の代謝が促進され血中濃度が低下するおそれ。本剤投与時はセイヨウオトギリソウ含有食品を摂取しないよう注意。 セイヨウオトギリソウにより誘導された代謝酵素が本剤の代謝を促進すると考えられる。

 

その他、グレープフルーツジュースと本剤の相互作用について、次の報告が見られる。

*10人の健常人(男性:平均年齢 27.6歳、平均体重:76.0kg)を被験者とし、各試験の間に1週間のウォッシュアウト期間を設け、4種類の試験を行った。phase1、 phase2としてciclosporin(75mg/kg)を経口投与し、投与直前及び投与後2時間目に水又はグレープフルーツジュース250mLを飲用させた。phase3、phase4として3時間かけてciclosporin(2.5mg/kg)を静脈内投与し、同様に投与直前及び投与後2時間目に水又はグレープフルーツジュース250mLを飲用させた。

投与24時間までの血液を適時採血し、ciclosporinの全血中濃度を測定した。静脈内投与では、ciclosporinの体内動態にグレープフルーツジュースによる影響は殆ど無かった。しかし、経口投与例では、ciclosporinの全被験者の平均AUCとCmaxは、水を飲用したときに比較して約1.5倍に増大した。10人中3人の被験者はCmaxが2倍以上に増大した。また、ciclosporinの絶対バイオアベイラビリティーはグレープフルーツジュースによって0.22から0.36へ約62%上昇した。しかし、消失半減期(t1/2)は変化しなかった。

体内動態 経口投与 静脈内投与
  GF-j GF-j
Cmax(ng/mL) 936 1,340* 2,569 2,643
Tmax(hr) 3.2 4.2* ? ?
t1/2(hr) 6.3 8.1 6.1 5.7
AUC(ng・hr/mL) 6,722 10,730* 10,242 10,975

 

また、平常時にciclosporinの代謝能力が高いヒト(Cmaxが小さい人)ほど、グレープフルーツジュースの効果が増大するとする報告や ciclosporinの静脈内投与時には、影響せず、経口投与の際にバイオアベイラビリティの上昇が報告されている。グレープフルーツジュースと ciclosporinの相互作用はグレープフルーツジュース中に含まれる何等かの物質が小腸のP4503A4の活性を阻害したものと考えられている。

グレープフルーツジュース中には、主に配糖体として数種のフラボノイドが存在している。ナリンジンやクエルセチン、ケンフェロールは専らグレープフルーツジュース中に含有されており、相互作用の見られないオレンジジュース中には含まれていない。

ナリンジンはグレープフルーツの苦みの原因とされており、最も多量に存在するフラボノイドである。グレープフルーツジュース中に 300?800mg/L存在し、腸内で加水分解されアグリコンのナリンゲニンに変換される。ナリンジンやナリンゲニンがciclosporinとの相互作用に影響するのではないかとする報告も見られる。

一方、ciclosporinとグレープフルーツジュースの相互作用については、臨床的重要性は不明であるとする報告もされており、両者の相互作用について、必ずしも確定した情報とはなっていないようである。

なお、上記の実験はグレープフルーツジュース250mLの飲用の結果であり、果実としてのグレープフルーツを喫食した際の報告例ではない。

病院給食で付けられるグレープフルーツはおおよそ1/3カットあるいは1/4カットの果実であり、この程度の果肉の喫食が直ちに上記の試験結果を反映するとは考え難い面もある。但し、今回の事例は、医師が食事箋に「禁」の記載をしているのであって、文献情報から一方的に無視することはできないと考えるので、給食に付けられる果実の量を示し相談することが必要である。

なお、本剤経口投与時の吸収は一定しておらず、患者により個人差があるので、血中濃度の高い場合の副作用並びに血中濃度が低い場合の拒否反応の発現等を防ぐため、患者の状況に応じて血中濃度を測定し、トラフレベル(troughlevel)の血中濃度を参考にして投与量を調節すること。特に移植直後は頻回に血中濃度測定を行うことが望ましいとする重要な基本的事項が添付文書に記載されており、厳密な管理下に投与されているとすれば、QOLの観点からも「禁食」扱いにするのは実際の体内動態の変化を見てからでもよいのではないかと考える。

[015.2.CIC:2000.3.13.古泉秀夫]


  1. サンディミュンカプセル添付文書,2000.1.改訂
  2. 澤田尚之・他:阻害剤としてのグレープフルーツジュース;月刊薬事,38(3):579-592(1996)(2月臨時増刊号)
  3. DTSS;ファーストデータバンク,2000

腎障害時のamlodipine投与について

金曜日, 12月 28th, 2007

KW:臨床薬理・腎障害時・腎障害患者・amlodipine・ベシル酸アムロジピン・amlodipine besilate・体内動態・Ca拮抗薬・ACE阻害薬

Q:現在amlodipine投与中の患者のCr値が2mg/dLを示している。本剤の継続投与は可能か

A:amlodipine besilate(ベシル酸アムロジピン)[ノルバスク錠(ファイザー)]の体内動態は、次の通り報告されている。

投与量 Tmax Cmax t1/2 ACU0-∞ 蛋白結合率 尿中排泄率
2.5mg 7.3hr 1.64ng/mL 33.3hr

68.1ng・hr/mL

97.1%(ヒト血漿) 約8%(投与後6日間累積)
5.0mg 7.7hr 3.39ng/mL 39.4hr 178.2ng・hr/mL    

なお、本剤2.5mgを1日1回14日間連続投与した場合の尿中排泄率は、投与開始6日目まででほぼ定常状態に達し、6日目以降の1日当たりの未変化体の尿中排泄率は6.3-7.4%であったと報告されている。

また本剤は主として肝臓で代謝されるため、重篤な肝機能障害患者では、血中濃度半減期の延長及び血中濃度時間曲線下面積が増大することがあるとされているが、『重篤な腎機能障害のある患者では、降圧に伴い腎機能が低下する』ことがあるの報告がされているのみである。

以上の報告から腎機能の状態によって、本剤の投与量を調整する必要はないと考えられるので、本剤使用に特に問題はないといえる。

ただし、『重篤な腎機能障害のある患者では、降圧に伴い腎機能が低下する』とする報告には注意が必要である。

腎障害を伴う高血圧治療において、JNC-VIの指針では、降圧目標は130/85mmHg以下、更に蛋白尿が1g/日以上を示す場合には125/75mmHgとすることが推奨されている。しかし実際上は、治療抵抗性を示し、降圧が難しい場合も少なくない。

腎障害を伴う高血圧症例では、他の降圧薬に比較してCa拮抗薬とアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が降圧効果に優れ、腎障害の進展を抑制することが臨床的に報告されており、Ca拮抗薬とACE阻害薬が治療の中心となるが、体液貯留傾向のある場合には少量の利尿薬も併用を検討することになる。

腎障害を伴う高血圧においては、全身性の降圧自体が腎障害進展抑制という点から重要であるが、腎の微小循環に及ぼす影響も重要と考えられている。 Ca拮抗薬は強力な降圧作用により腎保護作用を示すと考えられ、ACE阻害薬は全身性の降圧効果に加え、降圧とは独立した腎微小循環への作用により腎保護作用を示すと報告されている。

以上の調査結果を参照するとともに、具体的な処方内容については、文献を参照されたい。

[015.4.CAR:2004.4.13.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  2. ノルバスク錠添付文書,2003.11.改訂
  3. 松岡博昭:腎障害を伴う高血圧患者における降圧薬治療;日本医事新報,No.3929:107-108(1999.8.14.)
  4. 伊藤貞嘉:リスクファクターを有する高血圧の治療-4.リスクファクターとしての腎障害と降圧治療;医薬ジャーナル,37(6):1840-1844(2001)
  5. 尾辺利英・他:腎機能障害時の薬物使用;治療,83(3):1421-1426(2001)

脊髄小脳変性症に有効な漢方薬

金曜日, 12月 28th, 2007

KW:薬名検索・漢方薬・脊髄小脳変性症・薬物療法・真武湯・烏薬順気散加羚羊角・苓桂朮甘湯・効能・効果

 

Q:週刊誌で読んだと言う事で脊髄小脳変性症に有効な漢方薬についての質問があったが、どの様な薬剤か

A:脊髄小脳変性症(SpinocerebellarDegeneration)に対する漢方薬投与の1例報告として、動揺感と下肢の脱力、平衡感覚不良、夜間排尿回数7-8回等を主訴とする症例に真武湯5.0gを投与。投与7日目頃より手足が暖かくなったということで、一時サフラン3.0gを追加投与したが、上気すると言うことで真武湯のみにした。

昭和58年6月から昭和59年4月まで連続服用中であり、昭和59年 6月より量を増やして真武湯7.5gに増量した。経過は良好で気分的な落ち込みも治まって復学の望みを持つようになったとする報告がされている。

真武湯(津村順天堂)の処方内容は、次の通りである

  • 本品7.5g中下記の割合の混合生薬の乾燥エキス2.0gを含有する。
  • 茯苓4.0g・芍薬3.0g・蒼朮3.0g・生姜1.5g・修治ブシ末0.5g
  • 本剤の適応症は消化器疾患のほか脊髄疾患による運動並びに知覚麻痺、神経衰弱、半身不随等である。

その他、脊髄小脳変性症に伴う小脳性失調と起立性低血圧に対し、烏薬順気散加羚羊角と苓桂朮甘湯の併用が有効であったと考えられる一例が報告されている。

烏薬順気散加羚羊角を服用することにより、歩行時ふらつき、下肢の脱力感が軽減し、重心動揺検査においても動揺が少なくなっていることが確認された。当初、真武湯を併用していたが、起立性低血圧に対する効果が乏しいため苓桂朮甘湯に変更したところ、立ち眩みも著名に軽減した。

烏薬順気散の処方例は、次の通りである。

  • 麻黄・烏薬・陳皮各2.5、川キュウ・白疆蚕・白シ・桔梗各2.0、乾姜・甘草・大棗・乾生姜各1.0

本剤の適応は頭痛、発熱、悪寒を伴う四肢麻痺、半身不随、顔面神経麻痺などに用いる。但し、本剤は医療用医薬品としての薬価収載はされておらず、原料薬品購入の上、処方箋に基づく調剤が必要である。羚羊角も原薬の購入が必要である。

苓桂朮甘湯(津村順天堂)の処方は、下記の通りである。

  • 本品7.5g中に下記の割合の混合生薬の乾燥エキス1.5gを含有する。
  • 茯苓6.0g・桂皮4.0g・蒼朮3.0g・甘草2.0g
  • 本剤の適応として動悸、息切れ、眩暈、頭痛等が見られる。

[510.FD15.011.1SPI][1991.4.25.・1999.3.29.一部修正.古泉秀夫]


  1. 日野原重明・他監修:今日の治療指針;医学書院,1989
  2. 古寺秀喜(博多区):脊髄小脳変性症の漢方治療の一例;鐘紡薬品株式会社学術課・私信,1991
  3. 山田光胤:漢方処方の応用と実際;南山堂,1973
  4. 萬谷直樹・他:脊髄小脳変性症に対する和漢薬治療の試み;株式会社津村順天堂学術課・私信,1991
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.71,1991.4.30.より転載

アトピーに有効とされるお茶について

木曜日, 12月 27th, 2007

KW:健康食品・機能性食品・生薬・アトピー・お茶・茶・黄杞茶・コウキチャ・フラボノイド・明日葉パーセント・あしたば・栄養補助食品・アトピー性皮膚炎・カルコン誘導体・入浴用シジュウム・シジュウム茶・甘茶

 

Q:お茶がアトピーに有効であるとする報道がされたと聞くが、その作用等について

 

A:現在までに収集した情報として、次のような製品がある。

■「黄杞茶(コウキ)」
[マンナンフーズ株式会社 東京都中央区日本橋人形町2-17-10](30g×30袋)
黄杞は、中国の広東、広西、福建省等に分布するクルミ科の常緑高木植物である。この葉は、加熱乾燥すると甘くなることから、中国では「甘茶」と称し、夏負けしないとか、解熱、解毒、鎮痛、健胃、減肥満(ダイエット)などに効果のある健康茶として、飲み次がれてきた。黄杞の葉の甘味には、天然の特殊成分フラボノイドの一種「ジヒドロフラボノール配糖体」が、他の植物に比較して豊富に含まれている。この成分は万病の原因とも言われる不要な活性酸素や過酸化脂質の生成を抑制する働きがあることが、動物実験により判明している。また、日本人に不足がちなカルシウムを始め、亜鉛、鉄分などの必須ミネラルが豊富で、栄養補助食品としても活用できる。黄杞茶は美容、癌、アレルギーに効果があるとしている。尚、本品の原植物について調査したが、検索できなかった。
 
■「明日葉パーセント(あしたば)」
[株式会社ダイケン 明日葉パーセント 〒100-15 東京都八丈島八丈町三根567 八丈島指定あしたば加工工場](粒(150g)・粉末(150g)
八丈島に自生する明日葉は、古くは天然痘の予防薬として用いられ、現在でも民間薬として重宝がられている。ほうれん草よりも栄養学的に優れていることでも注目されているが、それ以上に世界でも2?3の植物にしか含まれていない「カルコン誘導体」が豊富に含まれていることで、注目されている。癌の予防、アトピー性皮膚炎に効果を発揮するほか、抗HIV活性があるという結果も報告されている。これを大阪薬科大学の馬場教授の指導のもと、多彩な成分を損なわないように粉末と粒状にしたものが「明日葉パーセント」である。八丈島で栽培された原葉の新芽を使用し、独自の特許製法により純度100%の無添加・無着色の製品化に成功。粉末は水や牛乳に溶かしたり料理に使うなど手軽に食べられる。

明日葉100g中(含有%)

ビタミンA効力 人参約4本分
ビタミンB2 にんにく約28個分
ビタミンC レモン約4個分
蛋白質 牛乳180g 7本分
鉄分 ほうれん草約3束分
植物繊維 セロリ約56本分
■「入浴用シジュウム・シジュウム茶」
[OS工業株式会社 東京都荒川区東尾久5-22-2]
(入浴剤:15g×30包・茶:0.5g×100包)
シジュウム:ブラジルなどの熱帯アメリカ原産の植物で、繁殖力が強い。かつてインカ人(南米ベール高原を中心に繁栄したインデオの一種族)によって広く栽培され、果実(ゴルフボール大)が常食されていた。葉は人間の手のひら大。
 
–シジュウム葉の構成–
 
シジュウム葉は、大きく分けて次の8成分より構成されている。クエン酸・蓚酸・乳酸・リンゴ酸・ギ酸・ビタミンA・ビタミンC・タンニンこれらの成分はシジュウム葉の主要成分であるが、これ以外に次の18種以上の成分が含有されている。caryopyylene,α-pinine,aromadendren,limonene,β-bisobolene, caryophyllene,oxide,
arcurcumene,1,8-cineole,y-muurolene,calamenene,camphne,β-pinene,myrcene,
α-terpineol,hex-3-en-l-ylacetate,cis-β-ocimene,N-hexyl,α-copanen,α-humulene, α-cadinener
これらは全て芳香族化合物と呼ばれる成分で、それぞれ種々の特質を持っている。例えばα-humulene(抗バクテリア物質)、1,8- cineole(肺感染症の治療、去痰)、α-terpineol(去痰、利尿)。これ以外にもシジュウムの葉には、人間に不可欠な各種ミネラル成分が多量に含まれている。日本食品分析センターにおけるシジュウム葉の分析結果は次の通りである。

分析試験項目

結果

分析試験項目

結果
水分 10.7% リン 147mg/100g
蛋白質 9.8% 31.3mg/100g
脂質 4.6% カルシウム 1.3%
繊維 15.2% ナトリウム 9.48mg/100g
灰分 6.9% カリウム 973mg/100g
糖質 42.7% マグネシウム 350mg/100g
タンニン 10.1% 総アスコルビン酸 19mg/100g

シジュウム葉は、アトピー性皮膚炎に対する治療効果が著しい。その効果は、エキスについて、肥満細胞を用いたヒスタミン遊離抑制試験によって、抗ヒスタミン活性が確認されたことから、抗ヒスタミン作用に基づいて発揮されるものと考えられる。従って、アトピー性皮膚炎に限らず、ヒスタミンの関与する気管支喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎等のアレルギー性疾患にも適用されると考えられているの報告がされている。

[015.9.SIZ:2007.12.27.古泉秀夫]


  1. 黄杞茶(マンナンフーズ):薬局新聞,1995.12.6.
  2. マンナンフーズ株式会社・私信,1996.2.16.
  3. Medical Science Report「がん・アトピー・花粉症・エイズに効く」「4代新薬」は人類を救うか:週刊現代,1996.1.27.
  4. アトピー性皮膚炎抑制性分発見-野生植物「シジュウム」の葉:東京新聞,1995.12.24.
  5. OS工業株式会社・私信,1996.2.12.
  6. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.1237,1996.2.22.

アガリクスについて

木曜日, 12月 27th, 2007

KW:健康食品・機能性食品・茸類・アガリクス・アガリクスブラゼイムリル・Agaricus blazei Marrill・カワリハラタケ・ヒメマツタケ・姫マツタケ

 

Q:アガリクスについて

A:学名アガリクス・ブラゼイ・ムリル(Agaricus blazei Marrill)と呼称される茸(キノコ)は、南米ブラジルを原産とするハラタケ属の茸である。

本品は担子菌類、同担子菌亜網-ハラタケ目-ハラタケ科- ハラタケ族-ハラタケ属に分類される茸で、分類学上の和名:カワリハラタケ、実用名:ヒメマツタケとして日本菌学会誌に掲載されているとされる。

『姫マツタケ(岩出101株)』には、免疫力を高めることで癌を抑制し、副作用を軽減する効果のあることが証明されている。

茸の抗癌作用は、茸の多糖体構 造にあることが解っている。多糖体とは、糖の集合した複合体であり、糖は炭水化物の最も単純化した形態である単糖である。

1980年に行われた第39回日本癌学会で三重大学医学部の研究グループが、『姫マツタケ(岩出101株)』の多糖体が、他の茸のよりも抗癌作用が優れていることを発表している。また姫マツタケの免疫力については、FDAにおいても認められ、1999年「免疫力の向上という性質を持った栄養補助食品」のカテゴリーに登録されているとされる。

アガリクス・ブラゼイ・ムリル(ヒメマツタケ)の抗癌作用は、その多糖体の構造にあるとされる。多糖体は茸の種類によっても異なり、採集地によっても多糖体の構造が異なるとされている。従って高い抗癌作用を持つのは『姫マツタケ(岩出101株)』であるとの報告もされている。

アガリクス・ブラゼイ・ムリルの抗癌作用は多糖体のβ-グルカン蛋白複合体などの成分が、マクロファージ等の免疫細胞を活性化して免疫力を高め、癌細胞を抑制する。姫マツタケの多糖体は1種類ではなく、抗癌作用を示す多糖体が複数あるとされる。

中性多糖 β-(1-6)Dグルカン、キシログルカン
酸性ヘテロ多糖 ガラクトグルカンのウロナイド
蛋白多糖 ペプチドグルカン
核酸成分 リボヌクレオチド・蛋白

姫マツタケから抽出したこれらの多糖体を、ザルコーマ180固形癌を移植したマウスに投与した比較試験の結果、癌抑制率が99%と最も高かったのはβ- (1-6)Dグルカンで、次いでβ-ガラクトグルカンが97%、核酸(RNA)が95%、β-グルカンFA-1-a-α が93%と4種類の多糖体が90%以上と高率であった。

対象 投与量 腫瘍完全消失 腫瘍阻止率
姫マツタケ(岩出101株) 10mg/kg/日×10日 28匹/32匹 93.6%
ツガサルノコシカケ(培養) 10mg/kg/日×10日 5匹/10匹 73.4%
クロサルノコシカケ 10mg/kg/日×10日

0匹/9匹

64.8%
ラッコタケ 10mg/kg/日×10日 3匹/10匹 76.9%
カワラタケ(培養) 10mg/kg/日×10日 6匹/8匹 88.7%

[伊藤均・他:抗腫瘍多糖;感染症,75(1984)より一部引用]

 

姫マツタケの多糖体中で最も優れた抗癌作用を示したβ-(1-6)Dグルカンの特徴として

  1. 分子量が小さい。現在抗癌剤として使用されている茸の多糖体として椎茸のレンチナン、スエヒロタケのシゾフィラン等は、いずれもβ-(1-3)D グルカンであるが、平均分子量が10万?50万と大きいため、消化管からの吸収が困難であり、注射剤としての投与が必要である。しかし、β-(1-6)D グルカンは平均分子量が5万以下と比較的小さい分子量である。
  2. 蛋白質と結合している蛋白質複合体であり、消化管からの吸収がしやすい。

以上の特徴からβ-(1-6)Dグルカンは、経口投与が可能であり、喫食あるいは浸煎剤としても抗癌作用を発揮する。その他、アガリクス・ブラゼイ・ムリル(ヒメマツタケ)の成分を栄養成分面から見ると、

  • ミネラル類:カリウム・マグネシウムが豊富
  • ビタミン類:ビタミンB2、エルゴステロール。
  • 不飽和脂肪酸:リノール酸を主体とする不飽和脂肪酸の含有量が高い

等の特徴を有しているとされ、不飽和脂肪酸はコレステロールを減らし、血栓防止効果があると報告されている。なお現在、『姫マツタケ(岩出101株)』は、各種癌に対する効果の他、高血圧、糖尿病、肝臓病、アレルギー疾患、エイズ等に対する効果に対する検討がされている。ただし、『アガリクス』は医薬品として取り扱われているわけではなく、あくまで健康食品としての取扱いである。従って、『アガリクス』の摂取は補助的なものとして考えるべきである。また、植物中の成分は、栽培地等により含有量が異なることが考えられるため、単に『アガリクス』というだけで全てに同一の食効が期待できるとは限らないため注意が必要である。更に現に治療中の者では、『アガリクス』摂取の可否について主治医に前もって相談することが必要である。

[015.9.AGA:2007.12.27.一部修正.古泉秀夫]


  1. 古泉秀夫・他編:改訂3版飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用;薬業時報社,1998
  2. 伊藤 均・監修:だからガンは治る-最強のアガリクスは「姫マツタケ(岩出101株)」だった;現代書林,2001

イクラ中のEPAについて

木曜日, 12月 27th, 2007

KW:健康食品・機能性食品・魚介類・飲食物・食物成分・イクラ・エイコサペンタエン酸・EPA・DHA・魚油・魚類

 

Q:イクラ中にエイコサペンタエン酸は含有しているのか

A:エイコサペンタエン酸(EPA)は、魚油中では大部分が脂肪(トリグリセライド)の形で、しかもC 2位のみにエステル結合して存在することから、どの様に精製を進めても、脂肪酸としての純度はたかだか33%、重量比にして30%止まりにしかならない。これに対して医薬品としてトリグリセリドを加水分解し、遊離型のEPAやエステル型のEPAにした場合、理論上は100%のものが得られるはずであるとされている。

質問のイクラについて、EPAを測定した資料はないとされるが、他の魚類中に含まれるEPA量について、次の報告がされている。

可食部100g当たり 脂質量(g) EPA(g) DHA(g)

可食部100g当たり EPA含有率(%)

真鰯(春) 13.8 1.12 0.37 1.12
16.5 0.99 0.70 0.99
秋刀魚 16.2 0.97 0.70 0.97
鰺(春) 6.9 0.31 0.29 0.31
鱸(スズキ) 2.5 0.23 0.00 0.23
2.0 0.10 0.36 0.10
2.2 0.05 0.02 0.05
0.4 0.05 0.05 0.05
黒鯛 1.7 0.04 0.17 0.04

以上の測定値を基に固体100g中に含有するEPAの比率を算定すると、1.12-0.04%の比率となる。この数値からイクラ中のEPAを推定することは困難であるが、イクラ中のEPA含有量が0ではないと考えた場合、可食部100g中のEPA含有量についても、1.12-0.04%の範囲を越えることはないものと推定される。

 

[015.9:EPA:2007.12.27.一部改訂.古泉秀夫]


  1. 熊谷 朗:エイコサペンタエン酸(EPA)とイクラ・すじこ;質疑応答 第12集;日本医事新報社,1985
  2. 室田 誠逸・他:エイコサペンタエン酸;医学のあゆみ,130(12):787-798(1984)
  3. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.555,1993.4.30.

納豆菌について

木曜日, 12月 27th, 2007

KW:相互作用・納豆菌・OTC薬・ワーファリン・ワルファリン・warfarin potassium・糖化菌・納豆菌・消化酵素剤・整腸剤・Bacillus subtilis・Bacillus natto・Bacillus mesentericus ・メセンテリカス菌

 

Q:納豆菌を含むOTC薬が市販されているが、ワーファリンとの相互作用は問題にならないか

A:整腸剤として市販されているOTC薬中に納豆菌が配合されているものがあるが、その添付文書中に特にwarfarin potassium に対する相互作用の記載はみられない。ただし、「次の人は服用前に医師又は薬剤師にご相談下さい。」の記載がされており、(1)として「医師の治療を受けている人」の記載がされている。

有効成分 配合量(3錠中)
ラクトミン(アシドフィルス菌) 45mg
ビフィズス菌 30mg
ラクトミン(フェカリス菌) 45mg
糖化菌(納豆菌) 180mg
アミロリシン-5(澱粉消化酵素) 72mg
サンプローゼF(蛋白・繊維消化酵素) 90mg
セルロシンA.P.(繊維素消化酵素) 30mg

医療用医薬品として、納豆菌の配合されている製剤は、『納豆菌配合消化酵素剤 新ドライアーゼ(メルク)』及び『コンクチームN(共和薬品)』の2製品である。

組成 新ドライアーゼ(1g中) コンクチームN(0.3g中)

納豆菌末
(Bacillus natto powde)

60mg 60mg
アミロリクィファーゼX 120mg ?
サンブローゼF(酸性プロテアーゼ) 30mg 30mg
アミロリシン-5(アミラーゼ) ? 24mg

セルロシンA.P. (セルラーゼ)

? 10mg

なお、上記2製品の添付文書中に『相互作用-併用注意』として、次の注意事項が見られる。

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
ワルファリン 納豆で抗凝血作用を減弱するとの報告があるので、併用する場合には慎重に投与すること。 腸内で納豆菌により産生されるvitamin Kが血液凝固因子の生合成を促進するので、ワルファリンの抗凝血作用と拮抗する。

その他、添付文書中の組成欄に『糖化菌』の記載がされている『ビオスリー散・錠(東亜薬品-鳥居)』が医療用医薬品として市販されているが、本品の『糖化菌』は『Bacillus mesentericus(Bacillus mesentericus TO-A);メセンテリカス菌』とされており、納豆菌には該当しない。

納豆菌

英名:Hay bacillus(Glycine max (L.) MERR.

学名:Bacillus subtilis又はBacillus natto

納豆菌は整腸作用を示し、この作用は乳酸菌より強く、腸内の腐敗菌を抑制する時間も乳酸菌より長い。

更にある種の腸内有害細菌やウイルスに対し、相当の抵抗性ないし抑止効果を示す等の報告がされている。

納豆菌については国内ではBacillus nattoの名称が使用されているが、国際的には枯草菌(Bacillus subtilis)に分類されている。納豆菌は胞子を形成するが、適温環境と水分・栄養成分の存在する環境では発芽し増殖する。

環境が悪化すると、再度胞子を形成するが、胞子中にはnattokinaseもvitamin Kも含まれていない。納豆菌胞子は酸・アルカリに抵抗性で、pH:1.0-10.0の環境下では生存可能である。納豆菌胞子は120℃以下の高温下では生存可能で、?100℃の低温下でも生存可能であると報告されている。

納豆菌は腸内において1週間程度生存可能であり、腸内で他の善玉菌の活性を高めるため、腸内で活発な栄養補給活動をし、特に納豆菌はブドウ糖を費消するため、ダイエット効果があるとする理由に挙げられている。

腸内で活動する納豆菌は、腸内で大量のvitamin Kを生成するといわれており、次の報告がされている。

納豆菌醗酵中のvitamin Kとして主に植物由来であるフィロキノン(K1)あるいはメナキノン-4の濃度に変化はなかったが、納豆菌由来のメナキノン-7濃度が著しく高まること、特に我が国の市販納豆に最も使われている3種の納豆菌の中で、宮城野菌で醗酵したものが最も高濃度であり、その値は37℃-24時間で、1750μgMK -7/100g湿重量を示した。

納豆5-100g 摂取でヒト血中のメナキノン-7濃度の上昇はdose-dependentであり、最高値57.1μg/mL血漿)、またその効果は長く48時間後も摂取前の9倍以上のメナキノン-7濃度であった。一方、今回の摂取量で血中の凝固-線溶系に変化はみられなかった。

vitamin K2は、骨蛋白質の働きや骨形成を促進することからvitamin K2 を多く含む納豆が特定保健用食品として許可されている。

また豆鼓(トウチ:大豆の発酵物)の抽出物は、糖の吸収をおだやかにすることから、その抽出物を関与成分とした特定保健用食品が許可されている。

安全性については、納豆に含まれるビタミンK2が抗凝血薬(ワルファリン)の作用を弱めることから、併用摂取を避けるべきと報告されている。

ただし、これらの報告は大豆+納豆菌=納豆としての報告であり、納豆菌そのものの腸内における活性化で、どの程度のvitamin Kが生成されるかは不明であるが、warfarin potassium服用者では納豆菌配合の整腸薬の服用は避けることが無難であると考える。

[015.2.NAT:2006.5.16.古泉秀夫]


  1. 一般薬日本医薬品集:JAPIC,2004-5
  2. パンシロンN10整腸錠添付文書,400629701
  3. ビオスリー・錠添付文書(東亜薬品-鳥居薬品),2005.6.
  4. 新ドライアーゼ添付文書,2003.12.
  5. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006
  6. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典 2002-2003改訂新版;東洋医学舎,2002
  7. 納豆菌の話;http://finedays.org/natto/nattodiet.html,2006.5.15.
  8. JAFRA-食品の機能性・学術報告;http://www.jafra.gr.jp/natto4.html,2006.5.15.
  9. コンクチームN添付文書,2005.6.改訂

ネオ・マキスについて

木曜日, 12月 27th, 2007

KW:薬名検索・ネオマキス・有機ヨード剤・無機質ヨウ素・有機質ヨウ素

 

Q:医薬品の無許可販売による薬事法違反で逮捕された事件で無許可販売されていた有機ヨード剤『ネオマキス』とは、どの様な内容のものか

A:警視庁生活環境課は22日、アラブイスラーム文化協会のジャミーラ高橋代表らが無許可薬品の販売-厚生労働大臣の許可がないのに、有機ヨード剤「ネオマキス」を、「がんや白血病に効く」などとして知人らに販売した疑いで逮捕状を用意、同日中にも逮捕する方針 [読売新聞,第46190号,2004.10.22.]

とする報道がされていた。

ここでいう有機ヨード剤が、具体的にどの様な化合物を示すか不明であるが、関連する情報として

『大正7-8年頃、薬学の大家、牧野民蔵、千代蔵兄弟(医師)がヨウ素(ヨード)が人体構造上、絶対必要なる成分である事に着眼し、「ヨード」の薬効の解明と製造に成功したのが、この有機「ヨード」剤の始まりである』。

『当初、大量のワカメ・コンブを焼却し、その灰から「ヨード」を分離抽出していたが、少量の「ヨード」しか生産されず、採算ペースにならなかった。然し、当時としては、この方法以外「ヨード」を採取することは不可能であった。その後、ヨウ素が、日本の沿岸地域の地下に含有されていることが分かったが無機質ヨウ素である。そこで無機質ヨウ素を飲める有機質ヨウ素に、変換する研究に取組、完成したのが、この有機「ヨード」剤と「注射」液である。』

『大正12年、肺結核症・腸結核症・脳神経衰弱症・貧血症等の効能薬品として、内務省(厚生省の前身)から製造許可され発売した。

  • 許可日:昭和 44年6月15日。
  • 製造者:マキス本舗(代表取締役:巨海六一)。
  • 現在の 状況:工場閉鎖中につき、医学博士飯島登教授の処方により製造し、飯島教授の指示により使用する、いわゆる試薬である。
  • 厚生省認可効能:高血圧 動脈硬化 強壮(薬事法に基ずく認可)。

ネオ・マキスの原料ヨード:天然ガスが地下よりパイプを通して地上に出る時にパイプに付着する滓(おり、スケールとも云う)から生成抽出したもの。滓は他の様々な金属なども含む。』

以上が、インターネットのホームページから検索した内容であるが、ネオ・マキスの原料である有機ヨード剤に該当する物質は不明である。なお、従前、医薬品としての承認を得ていたとしても、現在は未承認の物であり、適応症を標榜して販売していたとすれば、未承認医薬品の販売で逮捕されてもやむを得ない。また、標榜している適応症についても、ヨウ素剤の適応症とする根拠は確認できない。

■ ヨウ素(iodine):ヨードともいう

元素記号:I

原子番号:53

原子量:126.9045。

周期表、典型元素VII族に属する非金属。ハロゲン元素の一つ。天然には遊離して存在せず、海草、海産物中に主に有機化合物として存在する。また脊椎動物では甲状腺ホルモン中に含まれ、不可欠な元素である。無機のヨウ素は血漿中にもあるが、量は少なく甲状腺の1/700である。

海草灰やチリ硝石中に NaIO(ヨウ素酸塩)として含まれ、還元して製する。油田、ガス田の鹹水中にも存在。灰紫色、揮発性、刺激臭の固体。多数の放射性同位体のうち医学分野で重要な核種もあり、多くの放射性医薬品が用いられる。

また医薬品としても化合物とともに重要なものが多い。[局]収載。水に難溶であるので、そのままでは製剤化が難しいが、ヨウ化カリウムを加えると KI3となって溶ける。消毒、殺菌剤であるヨードチンキ、ルゴール液、複方ヨード・グリセリン等の製剤にヨウ化カリウム(KI)とともに用いる。

[分類]一般名・商品名(会 社名)

[322]iodolecithine
ヨーレチン錠・末(第一薬品)錠:50・100μg・末:200μg/g

[322]potassium iodideヨウ化カリウム(各社)
適応症 1)ヨウ素不足による甲状腺 腫、甲状腺機能低下症。2)中心性網膜炎、網膜出血、硝子体出血・混濁、網膜中心静脈閉塞症。3)小児気管支喘息、喘息様気管支炎 1)甲状腺腫(ヨウ素欠乏に よるもの及び甲状腺機能亢進症を伴うもの)。2)以下の疾患に伴う喀痰喀出困難:慢性気管支炎、喘息。3)第3期梅毒

 

放射線学的予防投与:放射線汚染の一つである放射性ヨードに対する予防投与は可能である。核爆発の副産物である放射性ヨードは、食物の中に入って甲状腺に蓄積する。この蓄積と放射性物質の崩壊により甲状腺組織が傷害を受け、癌発生の可能性が高くなる。非放射性ヨードの投与は、甲状腺器官を飽和し、放射線の蓄積を減少させ、甲状腺癌の可能性を減少させる。放射性ヨードの危険は数週間続くので、継続して投与する。しかし、ヨードの投与は他の多くの放射線障害の防護には効果がない。

[011.1.IOD:2004.10.23.古泉秀夫]


  1. 「人間の盾」代表を逮捕へ 医薬品の無許可販売容疑 警視庁;読売新聞,第46190号,2004.10.22.
  2. http://www.irukaweb.com/masaki/the_i_003.html,2004.10.22.
  3. http://mypage.naver.co.jp/dna/the_i_007.html
  4. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  5. 今堀和友・他監修:生化学辞典第3版;東京化学同人,2002
  6. 志田正二・代表編:化学辞典;森北出版,1999
  7. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  8. 徳野慎一・他翻訳:大量破壊兵器事案における救急処置;じほう,2004

ばなば茶について

木曜日, 12月 27th, 2007

KW:健康食品・ばなば茶・banaba・糖尿病 ・天人花・オオバナサルスベリ

 

Q:糖尿病治療中の患者が「ばなば茶」を飲んでいるという。どのような成分のものか

A:ばなば(Banaba)とは、フィリピン語の愛称であり、学名を「LagerstroemiaSpeciosaPers」という。和名は「オオバナサルスベリ」といい、東南アジアに広く分布するミソハギ科の植物である。また、「天人花」とも呼ばれる。

フィリピンでは、この「ばなば樹」の葉を煎じて飲む民間伝承の健康茶として、古くから一般家庭で愛飲されてきた。

また「ばなば」には、利尿作用があることが判明し、フィリピン政府植物産業局では、医薬用植物に指定した。その他、本品には「血糖値の高い人の糖低減作用」、「脂肪分の降脂作用」、「循環器系の活性化」、「胃腸活性化・老化防止」等の効果があることも明らかになったとしている。

「ばなば茶」は、紅茶や緑茶のように口当たりが良く、飲料しやすいとのことであり、日本でも、成人病の予防、糖尿病、肥満、高血圧、便秘、胃腸病等に効くお茶として、愛飲者が増加しているとのことである。

ばなば」の葉の成分としては、日本食品分析センターでの分析結果として、以下の報告がある。

成分 含有量
水分 6.6%
蛋白質 8.9%
脂質 4.9%
繊維 25.7%
灰分 8.6%
糖質 45.3%
リン 114mg/100g
7.22mg/100g
ナトリウム 4.52mg/100g
マグネシウム 603mg/100g
カルシウム 1.01%
カリウム 1.27%
全ペクチン 0.8%
可溶性ペクチン 0.2%
不溶性ペクチン 0.6%
無水カフェイン 検出せず
タンニン 8.89%
亜鉛 53.3ppm

 

[015.04TH:1997.9.3.・1999.3.19.一部改訂.古泉秀夫]


  1. 橋本梧郎;ブラジル産薬用植物辞典,1996
  2. ばなば健康特報(1992);日本ばなば推進協会本部
  3. ばなば茶パンフレット
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI-News,No.1643.1997.10.15.より転載

ハナビラタケの効用について

水曜日, 12月 26th, 2007

KW:健康食品・ハナビラタケ・花弁茸・ Sparassis crispa・ Cauliflower Mushroom

 

Q:健康食品として市販されている『山珊瑚』の成分とされるハナビラタケについて

A:ハナビラタケについて、次の報告がされている。

 

和名:ハナビラタケ(花弁茸)。

ハナビラタケ科に属する食用茸で、世界中で1科1属2種が見いだされているとの報告がされている。そのうち我が国では1種のみが見いだされ、夏から秋口にかけて亜高山帯に自生しており、主に北海道から関東地方にかけて分布しているとされる。ツガ・モミ・マツ等の針葉樹の切り株や枯れた樹木等の根元によく見られるが、稀にブナやシイといった広葉樹にも見られるとされている。

学名:Sparassis crispa。

英名:Cauliflower Mushroom。

ハナビラタケは全体的に淡黄色又は白色で、柄の厚さ1mm程度で平たく幾つにも枝分かれしており、枝の先が花弁のように波打っているのが特徴であるとされている。1株の直径は20?40cm程度の半球状の塊で、高さ10?30cmに達するが、絶対数が少なく、天然物を手に入れるのは困難だとされている。

1996年埼玉県立熊谷農業高等学校福島隆一教諭らのグループが人工栽培に成功し、以後種々の検討が加えられてきた。

分析試験項目 含有量
水分 8.8g
蛋白質 6.9g
脂質 0.8g
繊維 6.3g
灰分 3.1g
糖質 74.1g
2.28mg
サイアミン(ビタミンB1) 1.04mg
リボフラビン(ビタミンB1) 1.63mg
ビタミンD 3,200IU
β-グルカン 43.6g

 

ハナビラタケ中に含まれるβ-グルカンは、β(1-3)D-glucanであるとされている。ハナビラタケの熱水抽出では461mg/25gのβ(1-3)D-glucanが抽出されたとされている。

glucanとは、D-glucoseを構成成分とする多糖で、グルコピラノース環生成によって生じる1位の炭素の不斉化により、αとβの結合様式のglucanが存在する。澱粉、グリコーゲンの主鎖はα1-4結合であり、これにα1-6結合で枝分かれ鎖がついている。セルロースはβ-1-4結合であり、褐藻中に含まれるラミナランは、β-1-3結合が主である。細菌のデキストランはα-1-6結合が主鎖となっている。

これらのglucanのうち抗癌作用があるのはβ(1-3)D-glucan で、各種茸中に含まれている。代表的な茸中のβ-glucanの含有量は、以下の通り報告されている。

  ハナビラタケ アガリスク マイタケ
β-glucan 43.6g 11.6g 18.1g

 

但し、β(1-3)D-glucanの作用は、直接癌細胞の増殖を抑制するわけではなく、マクロファージやキラーT細胞、実の細胞等を活性化させ、低下したヒトの免疫力を回復させ癌の増殖を抑制することが主体である。

従って、癌の化学療法を受けている患者が、ハナビラタケを喫食しようとする際には、主治医に相談することが必要であり、癌化学療法の補助的支援を期待するものとして考えることが必要である。

[015.4GLU:2000.7.5.古泉秀夫]


  1. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
  2. 株式会社ミナヘルス配付資料
  3. 医学大辞典;南山堂,1992
  4. ハナビラタケパンフレット;ハナビラタケ・インフォメーション・サービス
    (0120-835-015)[株式会社アド・ステップ 〒150-0011 渋谷区東1-26-30 K.T.ビル4F ]