クロレラ摂取とARB・ACE阻害薬・K保持性利尿薬への影響

KW:相互作用・ARB・ACE阻害薬・K保持性利尿薬・クロレラ・青汁・高カリウム食品・薬理作用

 

Q:ARB・ACE阻害薬・K 保持性利尿薬等のカリウムを体内に止めようとする高血圧治療薬を服用中の患者では、カリウムを豊富に含むクロレラあるいは青汁を摂取する場合、医師に相談するとの記事が新聞に出たが、どの程度影響するのか

A:ARB[Angiotensin II Type 1 Receptor(AT1)Blocker]・ACE阻害薬[angiotensin converting enzyme]・K保持性利尿薬の薬理作用について、次の報告がされている。

区分 薬理作用
ARB

AT1-受容体遮断薬による降圧作用は、主に血管平滑筋のAT1-受容体において生理的昇圧物質である Angiotensin IIと特異的に拮抗し、その強力な血管収縮作用を抑制することによって生ずる末梢血管抵抗の低下による。更にAT1-受容体を介した副腎でのaldosterone遊離に対する抑制作用も、降圧作用に一部関与していると考えられる。

aldosterone 遊離抑制作用によるaldosterone減少の結果、K排泄は低下する。またブラジキニン分解酵素であるACE(キナーゼII)に対して直接影響を及ぼさない。

ACE阻害薬

Angiotensin II は強力な循環血管収縮物質で、高血圧患者での本物質の合成阻害は、末梢抵抗の低下と血圧低下を起こす。ACE阻害薬は心血管反射を損なわず、利尿薬、β- 遮断薬の有害反応の多くを示さない。本薬に共通の不具合はブラジキニン増加によって起こる空咳である(ACEはブラジキニンも代謝する)。ACE阻害薬の稀ではあるが重篤な有害反応には血管性水腫、蛋白尿、好中球減少がある。例えば利尿薬使用患者で(Naが枯渇しているので)、初回量で血圧の急激な低下を起こす。

ACE阻害薬は両側腎動脈狭窄患者に腎不全を起こす。

両側腎動脈狭窄患者ではAngiotensin II は明らかに糸球体後細動脈を収縮し、適当な糸球体濾過を維持するのに必要とされるからである。

Angiotensin II 生成阻害はアルドステロン分泌を減少するが、著しく障害せず、過度のK貯留はカリウム補給薬、カリウム保持性利尿薬服用患者にのみ起こる(aldosteroneはNa 再吸収とK排泄を増加する)。

K保持性利尿薬 本薬はK定常性維持(homeostasis)を調節する遠位ネフロンのaldosterone反応区域に作用する。aldosteroneはNa再吸収を刺激し、管腔に負電位を形成し、管腔へのK、H分泌(両者の排泄)を刺激する。本薬はaldosteroneに拮抗する(spironolactone)か、Naチャンネル遮断によって(triamterene)、Na再吸収を減少する。これが尿細管上皮の横断電位を低下させ、K分泌の駆動力を低下させる。K保持性利尿薬は、特に腎障害患者で高カリウム血症を起こす。また、K保持性利尿薬はaldosterone分泌(K排出)を減少するので、患者がACE阻害薬を併用しておれば、高カリウム血症が起こるようである。

次にクロレラ及び青汁中のカリウム含有量(可食部100g)について、次の報告が見られる。

クロレラ・ブルガリス種中から選別-筑後産クロレラ962mg、新百年青汁2,960mg。新百年青汁の原料として使用されているモロヘイヤ920mg、ケール450mg等である。

その他、比較的カリウム含有量の高い食品(可食部100g中含有量:mg)として、次の食品が報告されている。

小麦胚芽 1100 利尻昆布(素干し) 5300
米糠 1800 刻み昆布 8200
蒟蒻(精粉) 3000 削り昆布 4000
薩摩芋(芋粉) 1200 塩昆布 1800
乾燥マッシュポテト 1200 天草(素干し) 3100
ポテトチップス 1200 干しひじき 4400
黒砂糖 1100 干し松藻 3800
栃の実(蒸し) 1900 若布(素干し) 5200
蓮の実(成熟乾) 1300 玉露(茶葉) 2800
小豆全粒(乾) 1500 抹茶 2700
隠元豆全粒(乾) 1500 煎茶(茶葉) 2200
ささげ全粒(乾) 1400 紅茶(茶葉) 2000
空豆全粒(乾) 1100 ピュアココア 2800
大豆国産全粒(乾) 1500 インスタント珈琲 3600
大豆米国産全粒(乾) 1800 オールスパイス(粉) 1300
大豆中国産全粒(乾) 1800 オニオンパウダー 1300
きな粉(全粒大豆) 1900 カレー(粉) 1700
寺納豆 1000 クローブ 1400
雛豆全粒(乾) 1200 胡椒(黒) 1300
ライ豆全粒-乾 (1900) 粉山葵(芥子粉入り) 1200
緑豆全粒(乾) 1300 山椒(粉) 1700
片口鰯煮干し 1200 生姜(粉) 1400
片口鰯田作り 1300 セージ 1600
干し鱈 1600 唐辛子 2700
するめ 1100 パプリカ 2700
素干し桜海老 1200 チリパウダー 3000
鶏卵卵白(乾燥卵白) 1300 パン酵母(乾燥) 1600
全粉乳 1800 干瓢(乾) 1800
脱脂粉乳 1800 菊のり[乾燥食用菊] 2500
干しずいき(乾) 10000 干しゼンマイ(乾) 2200
切り干し大根 3200 唐辛子果実(乾) 2800
トマト果実缶詰(ペースト) 1100 パセリ葉(生) 1000
ふだんそう葉(生) 1200 紅花隠元全粒(乾) 1700
干し蕨(乾) 3200 杏子乾果 1300
バナナ乾果 1300 竜眼(乾果) 1000
白キクラゲ(乾) 1400 キクラゲ(乾) 1000
干し椎茸(乾) 2100 あおさ(素干し) 3200
甘海苔(干海苔) 3100 甘海苔(焼海苔) 2400
甘海苔(味付け海苔) 2700 あらめ(蒸し素干し) 3200
干岩海苔 4500 恵古海苔(素干し) 2300
がごめ昆布(素干し) 5700 長昆布(素干し) 5200
細目昆布(素干し) 4000 真昆布(素干し) 6100

 

但し、カリウムは水溶性であり多くの食品では煮る・茹でる等の調理により煮汁・茹で汁中に浸出する。更に香辛料等は1回摂取量が100gということはないため、カリウムとしての摂取量は極く少量である。

なお、腎機能正常者では、カリウムの排泄は正常に行われるため、上記薬剤の服用により高カリウム血症を来すことはないと考えられる。従って、これらの薬物療法を行っている患者では、患者の腎機能の管理が重要であるといえる。

[015.2.ARB:2005.10.18.古泉秀夫]


  1. 医療ルネッサンスNo.3709 -健康へのデザイン-サプリメント“検査や治療にも影響”;読売新聞,2005.10.7.
  2. 麻生芳郎・訳:一目で分かる薬理学-薬物療法の基礎知識-第3版;メディカルサイエンスインターナショナル,1997
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2005
  4. ミカルディス錠IF改訂第4版,2005.4.
  5. 古泉秀夫・編著:わかるサプリメント健康食品Q&A;じほう,2003
  6. 香川芳子・監修:5訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2005