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米糠について

日曜日, 12月 30th, 2007

KW:健康食品・コメヌカ・米糠・栄養成分・食効・トリアシルグリセロール

 

Q:健康食品として米糠は商品化されているのか

A:米糠可食部100g中の栄養成分について、次の数値が報告されている。

米糠中の栄養成分(可食部100g当たり)

エネルギー 水分 蛋白質 脂質 炭水化物-糖質 炭水化物-繊維 灰分 Ca P Na
296kal 13.5g 3.2g 18.3g 38.3g 7.8g 8.9g 46mg 1.5g 6.0mg 5mg

 

K ビタミンB2 Mg 亜鉛 カロテン A効力 E効力 ビタミンD
1,800mg 0.50mg 1,000mg 6,200μg 620μg 6μg 0IU ?mg ?IU

 

ビタミンB1 ビタミンB2 ナイアシン ビタミンC
2.50mg 0.50mg 25.0mg 0mg

玄米の組成は外側から果皮、種皮、糊粉層、胚乳及び粒基部にある胚芽からなっている。精白によって生じる米糠には、果皮、種皮、糊粉層及び胚芽部分が含まれ、通常、精白米を作る場合、玄米重量のほぼ8?10%が糠として分離される。

米糠は現在、食用油の原料、糠漬け、飼料、茸の培養基等として利用されている。新鮮な米糠を煎って摂食すると香ばしく、甘みがあるが、脂質の含量が多く、多量に摂食することはできない。甘みは糖質として蔗糖が含まれているためであるが、脂質の分解が起こるため、精白後の糠の品質劣化は速やかであるとする報告が見られる。

米糠を貯蔵すると脂質の主成分であるトリアシルグリセロールが酵素リパーゼによって分解され、遊離脂肪酸が生成する。

米糠中のトリアシルグリセロールの構成脂肪酸

構成脂肪酸 含有比 (%)
ミリスチン酸 14:0 0.3
パルミチン酸 16:0 15.4
パルミトオレイン酸 16:1 0.3
ステアリン酸 18:0 1.2
オレイン酸 18:1 41.4
リノール酸 18:2 38.2
リノレン酸 18:3 2.1
ベヘン酸 22:0 0.5
リグノセリン酸 24:0 0.6

 

米糠はオレイン酸やリノール酸など不飽和脂肪酸に富んでいるため、栄養学的には優れているが、一方、不飽和脂肪酸は酸化され、過酸化物を生成しやすい。過酸化物の摂取は動物にとって有害であり、また、これは不快臭を持つアルデヒドやケトンなどの揮発性カルボニル化合物や種々の有毒物質に変化する。

米糠を煎ると殆どの酵素は失活するが、空気中の酵素による脂質の自動酸化は進行し、連鎖反応的に過酸化物が生成するおそれがある。自動酸化は光、熱、金属(特に鉄イオン)などによって促進されるので冷暗所貯蔵が必要である。

また、米糠はリンの含有量が非常に高いがこのリンの9割近くがフィチン態(フィチン酸又はフィチン酸のカルシウム、マグネシウム塩)である。このような有機態リンを動物は利用できない。そればかりでなく食品中の種々のミネラル-カルシウム、鉄、亜鉛等人の健康にとって必要な金属と結合し、難溶性の塩を作って吸収を妨げ、生体利用率を低下させる。フィチンを多く含む食品は殆どの場合かなりの量の繊維を含み、繊維も又ミネラルの生物学的利用能を低下させるといわれる。いずれにしろ糠の多量摂取はミネラルの吸収にとっては悪影響を及ぼすようである。

米糠療法は、米糠中に含まれるフィチンのカルシウム結合作用によって腸管でのカルシウム吸収を抑制し、これによって高カルシウム尿を改善させようとするものである。米糠療法の実施根拠は、尿路結石の発生には多くの因子が関与しているが、中でも高カルシウム尿は特発性の尿路結石症例で高頻度に認められる最も重要な危険因子であるということである。

しかし、最近になって、高カルシウム尿は、軽度の高蓚酸尿に比較して、尿中蓚酸カルシウムの過剰飽和状態に対して遙かに小さい影響しか与えていないことが解ってきた。尿中の蓚酸量が正常範囲より僅かに上昇するだけで(例えば45mg/L)、尿中の蓚酸カルシウムの結晶量が急激に増加する。

米糠療法の副作用として、蓚酸排泄量の増加が知られている。これは米糠に含まれるフィチンが腸管内でカルシウムと結合するために、蓚酸と結合するカルシウムが減少し、吸収可能な遊離の蓚酸が増加するためと説明される。蓚酸の少量の増加は、結石形成に対して大きな影響を与えるので、米糠がかえって結石形成促進的に働く可能性がある。シスチン結石、尿酸結石等、結石形成のメカニズムが異なるため、米糠療法の適応はカルシウム含有結石のみであり、高カルシウム尿を示す症例のみに適応すべきである。その他、米糠アラビノキシラン[arabinoxylene;ヘミセルロース(MGN-3)]について、強力な免疫賦活作用があるとする報告がされている。

米糠ヘミセルロースBは、高度に分枝した複雑な糖組成を有し、その主な構成糖はアラビノースとキシロースであるが、その他ラムノース、ガラクトース、マンノース、ウロン酸等が含まれている。アラビノース、キシロース以外の構成糖を酵素を用いて加水分解することにより、より純粋なアラビノキシランが得られる。

アラビノキシランは自然界に広く分布し、イネ、小麦、玉蜀黍等のイネ科植物に多く含まれる成分である。生理活性物質といわれるアラビノキシランは、植物の「骨」の働きをしている。植物の細胞壁を作る材料の一つにヘミセルロースという高分子糖質が存在するが、栄養学的には食物繊維と呼ばれるものの一つで、イネ科植物のヘミセルロースの主成分がアラビノキシランである。

現在、アラビノキシランについては、その免疫活性の強さに注目し、抗癌剤としての検討がされている。

なお、健康食品として加工された米糠が市販されている。

[015.9ARA:2000.4.5.古泉秀夫]


  1. 香川芳子・監修:四訂食品成分表;女子栄養大学出版部,1999
  2. 山上雅子:米糠の食べ方;日本医事新報,No.3433,1990.2.10.
  3. 伊藤晴夫:尿路結石に対する米糠療法;日本医事新報,No.3732,1995.11.4.
  4. plaza16.mbn.or.jp/,2000.4.5.