腎障害時のamlodipine投与について

KW:臨床薬理・腎障害時・腎障害患者・amlodipine・ベシル酸アムロジピン・amlodipine besilate・体内動態・Ca拮抗薬・ACE阻害薬

Q:現在amlodipine投与中の患者のCr値が2mg/dLを示している。本剤の継続投与は可能か

A:amlodipine besilate(ベシル酸アムロジピン)[ノルバスク錠(ファイザー)]の体内動態は、次の通り報告されている。

投与量 Tmax Cmax t1/2 ACU0-∞ 蛋白結合率 尿中排泄率
2.5mg 7.3hr 1.64ng/mL 33.3hr

68.1ng・hr/mL

97.1%(ヒト血漿) 約8%(投与後6日間累積)
5.0mg 7.7hr 3.39ng/mL 39.4hr 178.2ng・hr/mL    

なお、本剤2.5mgを1日1回14日間連続投与した場合の尿中排泄率は、投与開始6日目まででほぼ定常状態に達し、6日目以降の1日当たりの未変化体の尿中排泄率は6.3-7.4%であったと報告されている。

また本剤は主として肝臓で代謝されるため、重篤な肝機能障害患者では、血中濃度半減期の延長及び血中濃度時間曲線下面積が増大することがあるとされているが、『重篤な腎機能障害のある患者では、降圧に伴い腎機能が低下する』ことがあるの報告がされているのみである。

以上の報告から腎機能の状態によって、本剤の投与量を調整する必要はないと考えられるので、本剤使用に特に問題はないといえる。

ただし、『重篤な腎機能障害のある患者では、降圧に伴い腎機能が低下する』とする報告には注意が必要である。

腎障害を伴う高血圧治療において、JNC-VIの指針では、降圧目標は130/85mmHg以下、更に蛋白尿が1g/日以上を示す場合には125/75mmHgとすることが推奨されている。しかし実際上は、治療抵抗性を示し、降圧が難しい場合も少なくない。

腎障害を伴う高血圧症例では、他の降圧薬に比較してCa拮抗薬とアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が降圧効果に優れ、腎障害の進展を抑制することが臨床的に報告されており、Ca拮抗薬とACE阻害薬が治療の中心となるが、体液貯留傾向のある場合には少量の利尿薬も併用を検討することになる。

腎障害を伴う高血圧においては、全身性の降圧自体が腎障害進展抑制という点から重要であるが、腎の微小循環に及ぼす影響も重要と考えられている。 Ca拮抗薬は強力な降圧作用により腎保護作用を示すと考えられ、ACE阻害薬は全身性の降圧効果に加え、降圧とは独立した腎微小循環への作用により腎保護作用を示すと報告されている。

以上の調査結果を参照するとともに、具体的な処方内容については、文献を参照されたい。

[015.4.CAR:2004.4.13.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  2. ノルバスク錠添付文書,2003.11.改訂
  3. 松岡博昭:腎障害を伴う高血圧患者における降圧薬治療;日本医事新報,No.3929:107-108(1999.8.14.)
  4. 伊藤貞嘉:リスクファクターを有する高血圧の治療-4.リスクファクターとしての腎障害と降圧治療;医薬ジャーナル,37(6):1840-1844(2001)
  5. 尾辺利英・他:腎機能障害時の薬物使用;治療,83(3):1421-1426(2001)