納豆菌について
KW:相互作用・納豆菌・OTC薬・ワーファリン・ワルファリン・warfarin potassium・糖化菌・納豆菌・消化酵素剤・整腸剤・Bacillus subtilis・Bacillus natto・Bacillus mesentericus ・メセンテリカス菌
Q:納豆菌を含むOTC薬が市販されているが、ワーファリンとの相互作用は問題にならないか
A:整腸剤として市販されているOTC薬中に納豆菌が配合されているものがあるが、その添付文書中に特にwarfarin potassium に対する相互作用の記載はみられない。ただし、「次の人は服用前に医師又は薬剤師にご相談下さい。」の記載がされており、(1)として「医師の治療を受けている人」の記載がされている。
有効成分 | 配合量(3錠中) |
ラクトミン(アシドフィルス菌) | 45mg |
ビフィズス菌 | 30mg |
ラクトミン(フェカリス菌) | 45mg |
糖化菌(納豆菌) | 180mg |
アミロリシン-5(澱粉消化酵素) | 72mg |
サンプローゼF(蛋白・繊維消化酵素) | 90mg |
セルロシンA.P.(繊維素消化酵素) | 30mg |
医療用医薬品として、納豆菌の配合されている製剤は、『納豆菌配合消化酵素剤 新ドライアーゼ(メルク)』及び『コンクチームN(共和薬品)』の2製品である。
組成 | 新ドライアーゼ(1g中) | コンクチームN(0.3g中) |
納豆菌末 |
60mg | 60mg |
アミロリクィファーゼX | 120mg | ? |
サンブローゼF(酸性プロテアーゼ) | 30mg | 30mg |
アミロリシン-5(アミラーゼ) | ? | 24mg |
セルロシンA.P. (セルラーゼ) |
? | 10mg |
なお、上記2製品の添付文書中に『相互作用-併用注意』として、次の注意事項が見られる。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
ワルファリン | 納豆で抗凝血作用を減弱するとの報告があるので、併用する場合には慎重に投与すること。 | 腸内で納豆菌により産生されるvitamin Kが血液凝固因子の生合成を促進するので、ワルファリンの抗凝血作用と拮抗する。 |
その他、添付文書中の組成欄に『糖化菌』の記載がされている『ビオスリー散・錠(東亜薬品-鳥居)』が医療用医薬品として市販されているが、本品の『糖化菌』は『Bacillus mesentericus(Bacillus mesentericus TO-A);メセンテリカス菌』とされており、納豆菌には該当しない。
納豆菌 |
英名:Hay bacillus(Glycine max (L.) MERR.
学名:Bacillus subtilis又はBacillus natto
納豆菌は整腸作用を示し、この作用は乳酸菌より強く、腸内の腐敗菌を抑制する時間も乳酸菌より長い。
更にある種の腸内有害細菌やウイルスに対し、相当の抵抗性ないし抑止効果を示す等の報告がされている。
納豆菌については国内ではBacillus nattoの名称が使用されているが、国際的には枯草菌(Bacillus subtilis)に分類されている。納豆菌は胞子を形成するが、適温環境と水分・栄養成分の存在する環境では発芽し増殖する。
環境が悪化すると、再度胞子を形成するが、胞子中にはnattokinaseもvitamin Kも含まれていない。納豆菌胞子は酸・アルカリに抵抗性で、pH:1.0-10.0の環境下では生存可能である。納豆菌胞子は120℃以下の高温下では生存可能で、?100℃の低温下でも生存可能であると報告されている。
納豆菌は腸内において1週間程度生存可能であり、腸内で他の善玉菌の活性を高めるため、腸内で活発な栄養補給活動をし、特に納豆菌はブドウ糖を費消するため、ダイエット効果があるとする理由に挙げられている。
腸内で活動する納豆菌は、腸内で大量のvitamin Kを生成するといわれており、次の報告がされている。
納豆菌醗酵中のvitamin Kとして主に植物由来であるフィロキノン(K1)あるいはメナキノン-4の濃度に変化はなかったが、納豆菌由来のメナキノン-7濃度が著しく高まること、特に我が国の市販納豆に最も使われている3種の納豆菌の中で、宮城野菌で醗酵したものが最も高濃度であり、その値は37℃-24時間で、1750μgMK -7/100g湿重量を示した。
納豆5-100g 摂取でヒト血中のメナキノン-7濃度の上昇はdose-dependentであり、最高値57.1μg/mL血漿)、またその効果は長く48時間後も摂取前の9倍以上のメナキノン-7濃度であった。一方、今回の摂取量で血中の凝固-線溶系に変化はみられなかった。
vitamin K2は、骨蛋白質の働きや骨形成を促進することからvitamin K2 を多く含む納豆が特定保健用食品として許可されている。
また豆鼓(トウチ:大豆の発酵物)の抽出物は、糖の吸収をおだやかにすることから、その抽出物を関与成分とした特定保健用食品が許可されている。
安全性については、納豆に含まれるビタミンK2が抗凝血薬(ワルファリン)の作用を弱めることから、併用摂取を避けるべきと報告されている。
ただし、これらの報告は大豆+納豆菌=納豆としての報告であり、納豆菌そのものの腸内における活性化で、どの程度のvitamin Kが生成されるかは不明であるが、warfarin potassium服用者では納豆菌配合の整腸薬の服用は避けることが無難であると考える。
[015.2.NAT:2006.5.16.古泉秀夫]
- 一般薬日本医薬品集:JAPIC,2004-5
- パンシロンN10整腸錠添付文書,400629701
- ビオスリー・錠添付文書(東亜薬品-鳥居薬品),2005.6.
- 新ドライアーゼ添付文書,2003.12.
- 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006
- 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典 2002-2003改訂新版;東洋医学舎,2002
- 納豆菌の話;http://finedays.org/natto/nattodiet.html,2006.5.15.
- JAFRA-食品の機能性・学術報告;http://www.jafra.gr.jp/natto4.html,2006.5.15.
- コンクチームN添付文書,2005.6.改訂