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「慢性膀胱炎の治療」

水曜日, 12月 26th, 2007

KW:薬物療法・慢性膀胱炎・急性膀胱炎・膀胱腫瘍・膀胱結石・留置カテーテル・間質性膀胱炎・放射線性膀胱炎・膀胱結核

 

Q:特に原因もなく、細菌の検出はないそうですが、疲れたり、冷房に当たっていると慢性膀胱炎の症状がでるという女性の患者。慢性膀胱炎の原因及び治療法について

 

A:慢性膀胱炎は、急性膀胱炎から移行する場合と、徐々に膀胱炎症状が出現して継続する場合があるが、いずれの場合も感染を遷延させる基礎疾患を有するか、あるいは特殊な膀胱炎の場合であるとされている。
基礎疾患としては膀胱腫瘍、膀胱結石、留置カテーテルを含めた異物の存在、前立腺肥大症や神経因性膀胱など残尿の原因となる疾患、糖尿病や悪性腫瘍又は免疫抑制剤や抗癌剤投与などの、全身的な感染防護機構の低下などをもたらす疾患などが挙げられる。また、特殊な膀胱炎としては、間質性膀胱炎、放射線性膀胱炎、膀胱結核などがある。

慢性膀胱炎の自覚症状は、急性症に比べて軽度で、頻尿、排尿痛、残尿感、下腹部不快感等を訴えるが、膿尿のみで自覚症状が殆どないこともあり、基礎疾患の症状が全面にでることが多い。

膀胱神経症は、器質的な原因がなく、尿所見に異常は認めないにもかかわらず、頻尿、尿失禁、排尿痛、下腹部不快感、残尿感などの膀胱症状を訴えるものであり、精神的情緒不安定状態から惹起される心身症の一つである。主な症状から神経性頻尿、心因性頻尿、刺激膀胱、過敏膀胱などとも呼ばれており、多少ニュアンスは異なるが、膀胱神経症よりも神経性頻尿の名称の方が一般的である。

神経性頻尿は主として青壮年期の神経質な女性に多く、仕事上の心配や夫婦間をはじめとする家庭内の問題など、精神的刺激になる要因は多彩で、中でも不満足な性交、あるいは性交に対する罪悪感などの性的葛藤が原因となっていることが多く、幼小児期に夜尿症の既往がある者に多いともいわれている。

神経性頻尿の特徴は、睡眠中や他のことに注意が向いているときには症状があまり顕著ではなくなることであり、夜間の尿意による覚醒は殆どない。神経性頻尿と神経因性膀胱とは全く別個な疾患であり、膀胱性神経症は下部尿路支配神経は全く正常であるのに対し、神経因性膀胱は大脳、脳幹部、脊髄及び末梢神経、すなわち下腹、骨盤、陰部神経など、膀胱と尿道を支配する神経系の何れかが障害されることにより生ずる病態である。

膀胱壁は内側から粘膜・筋肉・漿膜という層になっている。間質性膀胱炎は間質(粘膜と筋肉の間)に炎症が慢性的に続く病気で、普通の膀胱炎とは異なり、細菌以外の原因によって発症すると考えられているが、現在のところ発症原因は不明である。症状としては昼夜を問わず何回もトイレに行く頻尿、膀胱にあまり尿がたまっていないのに、急に排尿がしたくなる尿意切迫感が殆どの例で見られる。特徴的な症状は膀胱の痛みで、この痛みは尿がたまって膀胱が広くなるときに強くなり、排尿すると軽くなる。間質性膀胱炎の場合、これらの症状が良くなったり悪くなったりの繰り返しで、時には自然軽快も見られる。また刺激物(アルコール、コーヒー、紅茶、唐辛子、ワサビ等)を摂取した後に症状が悪化することも少なくない。

以上の報告から慢性膀胱炎の発症原因は、種々の要因が考えられるため、専門医の診察を受け、慢性膀胱炎の原因を明確にすることが必要である。

ただし、間質性膀胱炎の場合は、現在、完治させるべき治療法はなく、症状を和らげることが治療の目的になるとされている。その方法としては抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛剤、抗アレルギー薬の経口投与等が挙げられているが、いずれにしろ専門医の診断結果を得なければ、治療の方策は立てられない。

 

1)土田正義:慢性膀胱炎と膀胱神経症の鑑別診断・治療;日本医事新報,No.3224(1976.2.8.)
2)門脇和臣:「間質性膀胱炎」とはどの様な病気なのでしょうか;きょうの健康,6:141(2004)
3)上田朋宏:排尿障害-見逃される間質性膀胱炎-抗アレルギー薬や抗うつ薬でも改善;Nikkei Medical,10:127-131(2003)

                                                [035.1.URI:2004.10.12.古泉秀夫]