KW:副作用・安全性・添加物・食品添加物・医薬品添加物・パラベン類・paraben・パラオキシ安息香酸エステル類
Q:医薬品等の添加物として使用されているパラベン類の安全性について
A:医薬品の添加物として使用されているパラベン類(paraben)で局方に収載されているのは次の4品目である。
一般名 |
パラオキシ安息香酸 エチル (ethyl parahydroxyben-zoate)
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パラオキシ安息香酸 ブチル (butyl prahydrxyben-zoate ) |
化学名 |
ethyl 4-hydroxyben-zoate |
butyl 4-hydroxybenzoate |
純度 |
本品を乾燥したものは定量す るとき、パラオキシ安息香酸エチル(C9H10O3)99.0%以上を含む。 |
本品を乾燥したものを定量す るとき、パラオキシ安息香酸ブチル(C11H14O3)99.0%以上を含む。 |
性状 |
本品は無色の結晶又は結晶性 の粉末で、臭い及び味はなく。舌を麻痺する。本品はエタノール(95)、アセトン又はジエチルエーテルに溶け易く、熱湯にやや溶け難く、水に極めて溶け難い。
本品の飽和水溶液は僅かに酸性である。
融点:116-118℃。
貯法:密閉容器。
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本品は無色の結晶又は白色の 結晶性の粉末で、臭い及び味はなく、舌を麻痺する。本品はエタノール(95)、アセトン又はジエチルエーテルに溶け易く、熱湯に溶け難く、水に殆ど溶けない。
融点:69-72℃。
貯法:密閉容器。
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本質 |
製剤原料、保存剤。 |
製剤原料、保存剤。 |
名称 |
ethylparaben[NF]ethyl hydroxybenzoate[BP]
eyhl parahydroxybenzoate[EP]
ethyl-4-hydroxybenzoat[DAB]
パラオキシ安息香酸エチル[食添]:benzoic acid,4-hydroxy-,ethyl ester。
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butylparaben[NF]butyl hydroxybenzoate[BP]
butyl parahydroxybenzoate[EP]
パラオキシ安息香酸ブチル[食添]:bebzoic acid
4-hydroxy-n-buthysrter
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来歴 |
Graeve により1866年に合成されているが、サリチル酸や安息香酸に比べて抗菌作用が弱いので、このエステルも始め使用されなかった。1924年 Sabalitschkaが飲食物の防腐、防黴に力のあることを発表してから次第に用いられるようになった。
これらのエステル類はアルキル基が長いほど抗菌性は大であるとされている。外国ではエチル、プロピルが繁用される。
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体内動態 |
家 兎に0.4g/kg経口投与すると、生体内で容易に加水分解され大部分はパラオキシ安息香酸及びその抱合体として排泄される。未変化体は24時間尿中に投与量の0.2-0.9%が検出されるのみである。
抱合体としてはエステル型及びエーテル型のグルクロナイド、グリシン抱合体、硫酸抱合体が認められる。投与したパラオキシ安息香酸エステルはいずれも投与量の約1/3が遊離のパラオキシ安息香酸として、残りはグルクロナドその他の抱合体として排泄される。
グルクロナイドはいずれの場合もエーテル型がエステル型より多い。
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薬効薬理 |
粘 膜(消化管、直腸、腟)から吸収されると、安息香酸同様の代謝を受ける。そのエステルは、酸に比べて静菌作用が強く、アルキル基が大となるほど抗菌作用も強力となる。
通常、2種又はそれ以上のエステル剤を併用するときは、抗菌作用に相乗効果と抗菌スペクトルの拡がりがあらわれる。
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安全性 |
毒 性もアルキル基が大になるほど小となる傾向を示し、安息香酸やパラクロル安息香酸に比べて弱い。 |
適応 |
防腐作用を利用し、医薬品(注射剤、シロップ、点眼剤、軟膏、ゼリー等)化粧品並びに食品などの保存剤として利用される。他のエステルとの併用が多い。
通常 0.1-02%くらいの濃度で添加される。
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急性毒性 |
パラオキシ安息香酸イソプロピル参照。 |
亜急性毒性 |
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慢性毒性 |
パ ラオキシ安息香酸エチル(40%)とパラオキシ安息香酸プロピル(60%)の混合物を15mg/kg及び1,500mg/kgのレベルで飼料に添加しラットに18ヵ月間与えたところ、15及び1,500レベルでは成長の促進が見られる。1,500mg/kgのレベルでは初期に成長の遅延が見られたが、その後対照と同じになった。死亡率や組織学的検査では異常は認められなかった。別の実験でパラオキシ安息香酸エチルを飼料に2%添加し、ラットの全生涯にわたり与えたところ、最初の2ヵ月間に成長の遅延が見られたが、以後正常に復し、死亡率、血液、主要組織には異常は認められず、腫瘍の発生もなかった。 |
発癌性 |
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変異原性 |
微生物突然変異試験–(?)染色体異常誘発試験—-(+)
(ハムスターSCEs )
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一般名 |
パラオキシ安息香酸 プロピル (propyl parahydroxybenzoate)
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パラオキシ安息香酸 メチル (methyl parahydroxybenzoate)
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化学名 |
propyl 4-hydroxybenz-oate |
methyl 4-hydroxybenz-oate |
純度 |
本品を乾燥したものは定量す るとき、パラオキシ安息香酸プロピル(C10H12O3)99.0%以上を含む。
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本品を乾燥したものは定量す るとき、パラオキシ安息香酸メチル(C8H8O3)99.0%以上を含む。 |
性状 |
本品は無色の結晶又は白色の 結晶性の粉末で、臭い及び味はなく、舌を麻痺する。本品はエタノール(95)、エタノール(99.5)、アセトン又はジエチルエーテルに溶け易く、熱湯に溶け難く、水に極めて溶け難い。融点:96-99℃。貯法:密閉容器。
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本品は無色の結晶又は白色の 結晶性の粉末で、臭い及び味はなく、舌を麻痺する。本品はエタノール(95)、アセトン又はジエチルエーテルに溶け易く、熱湯にやや溶け易く、水に溶け難い。融点:125-128℃。貯法:密閉容器。
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本質 |
製剤原料、保存剤。 |
製剤原料、保存剤。 |
来歴 |
1947 年CavillとVincentにより合成された。パラオキシ安息香酸のエステル類は水に難溶であり、使用に際して不便を生じるので、更に水に溶け易くし、その簡便化を図るため、側鎖状アルキルエステルが考案され、その結果イソブチル及びイソプロピルが開発された。昭和38年食添として指定、昭和57年使用基準の一部が変更された。
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用途 |
保存料、防カビ剤として用いられる。単独で用いられることは少なく、通常、イソプロピルエステル、ブチルエステルなどの他のエステル類と混合して、水中油型の乳剤として用いる。このようにして用いると醤油などへの溶解方法が簡易になり、またブチルエステル単独より2-3倍溶け易くなる。なお、微生物に対する最小発育阻止濃度は、 Asp.niger:160μg/mL、Mucor circinelloides: 96μg/mL, Asp.orizae:160μg/mL である。酸型保存料と異なり、pHの影響は殆ど受けない。 |
パラオキシ安息香酸ブチル参 照 |
代謝 |
パラオキシ安息香酸ブチル参照 |
パラオキシ安息香酸ブチル参照 |
急性毒性 |
ラット(経口)LD50: >10,000mg/kg マウス(皮下)LD50 :2,600mg/kg |
マウス(経口)LD50:2,500mg/kg マウス(腹腔)LD50:520mg/kg ウサギ(経口)LD50:5,000mg/kg イヌ(経口)LD50:5,000mg/kg |
亜急性毒性 |
ラットに0.01- 1.0g/kgの割合で6ヵ月間経口投与を反復しても、成長や臓器の肉眼、組織学的検査による異常を認めなかったという。 |
雌雄ラットに5、2.5、 1.25、0.25%のパラオキシ安息香酸イソプロピルを混餌で13週間与えた。死亡動物はなかったが、雄の2.5%以上で体重の増加抑制が見られた。血清生化学検査で、γ-GTPが雄の2.5%、雌の1.25%以上で増加、総コレステロールが雄の2.5%以上で増加、アルカリフォスファターゼ・尿素窒素が雌の1.25%以上で増加した。病理組織学的に小葉中心性の肝細胞肥大が雄の2.5%、雌の5%以上で見られた。雄の5%では腎臓の近位尿細管上皮細胞質に好酸性滴状物が認められた。 |
発癌性 |
雌雄ICRマウスに0.6、 0.3、0.15%検体混餌飼料を102週間投与した実験では、有意の腫瘍発生はなく、発癌性は認められなかった |
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変異原性 |
微生物突然変異試験 (?) 染色体異常誘発試験 ラット骨髄(±) |
微生物突然変異試験 (?) 染色体異常誘発試験 (?) |
パラオキシ安息香酸エステル類を経口投与すると、速やかに吸収、代謝、排泄されるが、代謝はエステル鎖の長さ、動物種、投与経路によって異なる。
メチル、エチル、プロピル及びブチルエステルは主として肝、腎で、一部は筋肉で速やかに加水分解される。しかし、イヌに2.0mg/kgを静注した場合、脳には4種のエステルの未変化体、脾臓にはエチルとブチルエステルが検出された。
parabenとは、パラオキシ安息香酸エステル類の総称である。化粧品や医薬品の保存料として広く使用されている。paraben類の抗菌作用は、その酸に比べて静菌作用が強く、非常に広範囲の微生物に有効である。
アルキル基が大きくなるほど抗菌活性は強くなり、毒性は小さくなる。pHの上昇で抗菌活性は低下する。サリチル酸や安息香酸に比べてはるかに毒性が低く、皮膚刺激や過敏症なども少ないといわれている。
ただし、サリチル酸と構造が似ているためにアスピリン喘息の起因物質になる可能性がある。パラベン類の場合、単独でなく併用することによって相乗効果が現われ、より少量で防腐力を高めることができる。
防腐剤は全ての化粧品に対して、配合制限(100g中の最大配合量の範囲内)が定められている。paraben類を防腐剤として化粧品に配合する場合、合計量として1%までの使用が認められている(紫外線吸収剤としては合計量として 4%まで配合できる)。
化粧品による皮膚障害(化粧品皮膚炎)は、1970年代後半以降、日本の化粧品メーカーが安全性を重視するようになり、わが国における化粧品は低アレルギー性・低刺激性になっており、化粧品による接触皮膚炎の頻度は減少していているはずであるが、海外で購入した化粧品によるトラブルや、「自然派化粧品」と称して配合されている正体不明の天然成分(植物エキス)によって起こるアレルギー性接触皮膚炎は、依然として報告されている。
化粧品皮膚炎の原因として報告されているのは、基礎化粧品に使用されている殺菌防腐剤や乳化剤、美容液等に配合されている保湿剤、増粘剤による刺激反応が多い。
化粧品の全成分表示については、平成13年4月1日から成分の承認制度を廃止する等の規制緩和が行われた。この規制緩和は企業責任を前提としており、成分の安全性の確認と全成分表示等消費者への情報提供を求めている。つまり、現在、化粧品については原則として配合されている成分を全て表示しなければならないこととなっている。
また、新たな化粧品基準として、配合禁止リストであるネガティブリスト(防腐剤、紫外線吸収剤及びタール色素以外の成分)と配合制限リストであるポジティブリストが定められている。化粧品原料は、配合禁止・配合制限リスト収載成分及び特殊成分(防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素)リスト以外の成分は、原則として企業の責任で自由選択ができることになっている。
paraben類は内分泌かく乱作用を持つ可能性があることが指摘されている。 paraben類は保存料として一般の環境で広範囲に使用されている。
これらの物質にはヒト体内で代謝する経路があることが知られているが、環境中での大量消費に伴いヒト体内に常時供給がある場合、体内中(血液等)で検出される可能性が高く、代謝物を含めての内分泌かく乱作用の可能性についての検討が必要である。そのため、ヒトがこれらの物質を摂取する経路の解明、摂取してからの体内中での挙動
、代謝、排泄等について調査を行うための迅速で高感度な分析方法の開発を行い、併せて実試料の分析によるヒト健康への影響について研究を行った。
- paraben類を模擬飲料として摂取した生体内での挙動を確認したところ摂取直後20分以内に血液中にparaben類が検出されるとともに代謝物であるパラヒドロキシ安息香酸(PHBA)濃度の増加が確認された。PHBAの血中濃度はその後急速に低下し8時間後ではほぼ初期濃度まで回復した。同時に行った尿試料の結果、尿からもparabenが検出された。また、PHBA濃度は、試飲後20時間近く影響が残った。
- paraben類の摂取経路として食品に分類されない栄養ドリンク剤について調査をした結果、paraben類を含むドリンク剤の場合、平均で50ppm程度添加されており、比較的大きなparabenの摂取源であることが確認された。
化学的な物質の安全性の検討については、通常、動物実験によって行われるが、その結果が直ちにヒトに外挿できるわけではない。従って、使用範囲・使用期間等を勘案した疫学調査が行われるが、調査対象数によっては必ずしも説得力のある資料が得られるわけではない。
また、化学物質の安全性は、99.99%が安全であるとされても、残りの0.01%に過敏症等の発現する可能性は残されており、paraben類の安全性についても『ほぼ安全に使用できる範囲』と理解しておくことが必要である。
[065.PAR:2005.3.7.古泉秀夫]
- 第十四改正日本薬局方解説書;広川書店,2001
- 鈴木郁生・他監修:第7版 食品添加物公定書解説書;廣川書店,1999
- http://www.kumayaku.or.jp/y_faq9.htm,2005.3.7. 織田 肇 (大阪府立公衆衛生研究所)・他:クロロベンゼン類及びパラベン類の分析法開発と実試料の分析;平成11年度厚生科学研究費補助(生活安全総合事業), http://www.nihs.go.jp/edc/houkoku11/11-11/11-11- oda5.html,2005.3.7.