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herb (ハーブ)による有害作用

月曜日, 12月 24th, 2007

KW:副作用・健康食品・ハーブ化合物・植物性医薬品・副作用・有害作用・アルニカ花・arnica flos・西洋タンポポ・dandelion・茴香・ウイキョウ・fennel・ニンジン・人参・ginseng・緑茶・green tea・ガラナ・guarana・スペイン甘草・liquorice・パッションフローラ・passion flower・プロポリス・propolis・タイム・thyme

 

Q:ハーブの有害作用としてどの様なものが報告されているか

A:herb化合物(植物性医薬品)の単独又は従来医薬品との併用による有害事象について、次の報告がされている。

italyのUniv.Veronaに通院中の女性外来患者について5ヵ月間にわたり調査を行った。調査終了女性患者1044例のうち491例 (47%)が過去1年間に少なくとも1種類のherbを使用していたと回答した。そのうち272例(55.4%)は herbのみの使用であったが、219例(44.6%)は従来医薬品と併用していた。

使用されていたherbは73種類、併用群では32種類であった。herb使用491例のうち47例 (9.6%)が有害事象を経験しており、22例(8.1%)はherbのみの使用、25例(11.4%)は従来医薬品との併用例であった。有害反応に関連している可能性のある併用薬剤はNSAIDs、抗生物質、benzodiazepines、血圧降下剤及び経口避妊薬が含まれていた。

なお、47例中29例(61.7%)では、以下の有害反応について医師に報告されていなかった。

herbの名称 副作用 herbの性状等
dandelion 胃腸障害文献[2]:治療に用いる際の副作用については何も知られていない。本品の乳白色液に頻繁に触れた場合、接触性皮膚炎。

西洋タンポポ草・根。キク科。原植物:Taraxacum officinale Weber。英名:comm-on dandelion。薬用部分:葉・根。根には脂肪酸、糖質、生葉にはミネラル、ビタミンB1、ビタミンA、ビタミンCの他、葉緑素等を含有する。 その他、トリテルペン類等を含む。カリウム含有量多い。

fennel 胃腸障害文献[4]:茴香油はエストロゲン様作用が示唆-乳癌・子宮癌・卵巣癌・子宮内膜症・子宮筋腫患者は摂取回避。人参、セロリ、蓬、セリ科植物に過敏症の者は、茴香にも過敏症発現の可能性。 和名:茴香(ウイキョウ)。薬用部分:成熟果。セリ科。原植物:Foeniclum vulgare MILL。[局]Foeniculi fructus。[英名]fenn-el、fennel fruit。

2-6%の精油のうち50-70%迄は甘味のあるウイキョウ油で、更に20%までは苦くて、樟脳様の味がする(+)-fen-choneからなる。その他 methylchavicol、anisaldehyde及び二、三のテルペン系炭化水素(特にα-pinene、α-phellandrene、 limonene)が見られる。更にウイキョウは脂肪油、蛋白質、有機酸類及びフラボノイド類を含む。臭いはアネトールを主とした芳香である。臭いが強く、やや甘味があるものを良品とする。

ginseng 心血管障害文献[2]:比較的稀で、用量の多い場合又は非常に長期に連用した場合、不眠症、神経過敏、下痢(特に朝)、月経閉止期の出血、高血圧。 人参・根。ウコギ科のアメリカニンジン、朝鮮人参。原植物名:Panax ginseng C.A.Meyer。別名:Panax schinseng NEES (オタネニンジン)。[英]Ginseng root。2-3%のギンセノサイド(トリテルペンサポニン)。ginsenosid類のうちRg1、Rc、Rd、 Rb1、Rb2、Rb0が量的に圧倒的である。約0.05%の精油(limo-nene、terpineol、citral、 polyacetyl-ene類)。糖、澱粉などのように普遍的に存在する物質。
green tea 心血管障害虚血(避妊薬併用)文献[4]:適量経口摂取は安全。多量経口摂取はcaffeineの副作用発現が予測。妊娠中・授乳中適量であれば緑茶の経口摂取は安全性示唆、多量摂取危険性示唆。緑茶caffeineは胎盤通過し、早産や低体重児出生の危険性高める報告。過剰摂取は便秘、消化不良、眩暈、動悸、不整脈、興奮、不眠、頭痛、利尿、不安、胸焼け、食欲不振、下痢。慢性的-長期・多量摂取で耐性、習慣性、精神的依存性発現可能性。 茶、[英]Tea、 Black tea、 Green tea、 Chinese tea。[学名]Camellia sinensis (L..) Kuntze 、つばき科[チャ属]。茶は中国原産であり、その利用は何千年も昔にさかのぼる。製造工程により緑茶、ウーロン茶、紅茶などがある。緑茶は現在でも世界でもっともよく飲まれている茶飲料である。caffeine、少量の他のxanthine alkaloid(テオブロミン、テオフィリン、ディメチルキサンチン、xanthin、adenine等)も存在する。また、多量のtanninあるいはフェノール物質(5-27%)も含有、flavanol(catechin)ユニットおよび没食子酸ユニットを構成しており、緑茶の方が紅茶より多く含有している。茶の他の成分としては4-16.5%の脂質、フラボノイド、アミノ酸、ステロール、ビタミンCがあり、フレーバーおよび芳香化学物質だけでも300以上の化合物がある。蛋白質、トリテルペノイド等も含有。茶に存在する特定の成分、特にtannin物質の カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート等を含有する。エピガロカテキンガレートは抗酸化性を有しており、EGCGが最も強力である。
guarana 神経学的障害文献[4]:過剰摂取で排尿痛、腸管痙攣、嘔吐。

caffeine含有物は不眠症、いらつき、動揺、吐気、嘔吐、尿量増加、頻脈、不整脈、頻呼吸、痙攣、耳鳴、頭痛、妄想、ひきつけの原因の可能性。

ガラナ。[学名]Paull-inia cupana Kunth。英名:guarana。むくろじ科[ガラナ属]の常緑で攀縁性のつる植物。南米のアマゾン地域に自生する。栽培すると2mほどの潅木に成長。薬用部分は種子(ガラナ子)。砕いて炒った種子をキャッサバ澱粉とともに水で練って円筒形にし、燻煙乾燥し固めたものをガラナエキス(通称ガラナ)と呼ぶ。ガラナエキスに カフェイン、テオブロミン、d-カテキン、タンニンを含む。種にはグァラニン(guaranine) と呼ばれるcaffeine類似の成分7%含むが、習慣性はなく、代謝される時間もより長くかかるため、穏やかな持続性の興奮作用が得られる。
liquorice 心血管障害神経学的障害。高血圧クリーゼ(避妊薬併用)文献[2]: glycyrrhizinとglycyrrhetinのミネラルコルチコイド作用のため、長期にわたり多量(1日50g以上)摂取で低K血症、高Na血症、浮腫、高血圧及び心臓障害惹起。極端な場合、全ての病徴を伴う偽アルドステロン症の発症。 スペイン甘草。根・匍匐枝(走茎)。マメ科、多年生草本。原植物名:Glycyrrhizia glabra L.。[英]Liq-uorice root、Sweet root。含有成分:2-15%のトリテルペンサポニン類、中でも特に蔗糖より50-100倍も甘いグリチルリチン及び24-ハイドロキシグリチルリチン。グリチルリチン酸は加水分解によりdiglucuronic acidとアグリコンのglycyrrheti acidを与える。その他に、アグリコン部が一部判明している。その他多数のトリテルペンサポニン類を含む。
passion flower 皮膚障害アナフィラキシーショック(benzo-diazepines併用) 文献[2]:未知。 チャボトケイソウ。トケイソウ科。原植物名:Passiflora incarnata L。[英]Passion flower、Maypop。含有成分:2.5%までのフラボノイド、特にvitex-in、saponarin、orien-tin等のようなグルコシル化合物。約0.05%のmaltol。少量の青酸配糖体、特にgynocar-din。組成未知の微量精油。harmaneアルカロイドの存在。
propolis

胃腸障害皮膚障害(全身性アレルギー)文献[4]:安全性未確立。妊娠中・授乳中は使用回避。蜂や蜂生成物に過敏症の者、特に喘息患者は使用禁忌。外用で用いた場合(化粧品を含む)、接触性皮膚湿疹発現の可能性。

propolisはミツバチが樹木の特定部位(新芽、蕾、樹皮など)から採取した樹液や色素などに、ミツバチ自身の分泌液を混ぜてできた巣材である。ハチの巣から分離するため純物質を得ることは難しく、巣の副産物が含まれる。また、産地や抽出方法によってその構成成分が異なる。フラボノイド(ピノセンブリン、ガランギン、ピノバンクシン等)。ブラジル産プロポリスはp- cumaric acidをはじめ、artepillin C, drupanin等が主な成分であり、その他の各地域(国)産プロポリスはchrysin、pinocem-brin、galangin等が主成分。
thyme 皮膚障害文献[2]:未知。文献[4]:全草を用いれば安全であるが、抽出された精油はいかなる量でも有害、専門家の指示がなければ経口摂取禁忌。精油は皮膚、粘膜に炎症・過敏症惹起の可能性。精油経口摂取で、むかつき、嘔吐、胃痛、頭痛、眩暈、痙攣、昏睡、心停止、呼吸停止の可能性。

チムス草。薬用部分:葉部・花部。原植物名:Thymus vulgaris L.(タチジャコウソウ)。 Thymus zygis L.(スペインタチジャコウソウ)シソ科。[英]Common Thyme、Garden Thy-me、Rubbed Thyme、Herb of Thyme、成分:精油成分1.0-2.5%。精油には主としてモノテルペン異性体であるthymol(30-70%)とcarvacrolが含まれている。フェノールの一部は生薬中でグルコシッドあるいはガラクトシドとしても存在している。更に精油中にはp-cymene、camph-ene、 limoneneの様なその他のモノテルペンも存在している。精油の組成は生薬の産地や収穫の時期によって、著しく変動する。

[510.HER:2006.6.12.古泉秀夫]


  1. 植物性医薬品(ハーブ化合物)の使用に関する安全性への影響:外来女性患者による調査;医薬関連情報,3:1479(2006)[Cuzzolin L. et al;Eur.J.Clin.Pharmacol.,62(1):37-42(2006.1. [翻訳])
  2. 井上博之・監訳:カラーグラフィック西洋生薬;廣川書店, 1999
  3. 第14改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001
  4. 「健康食品」の安全性・有効性情報;
    http: //hfnet.nih.go.jp/contents/detail498.html,2006.6.12.
  5. 古泉秀夫・編著:わかるサプリメント-健康食品Q&A;じほう,2003

プラセンタエキスについて

月曜日, 12月 24th, 2007

KW:薬名検索・プラセンタエキス・placentaextract・プラセンタ・placenta・胎盤・新陳代謝促進

Q:プラセンタエキスについて

A:プラセンタ(placenta)は、胎盤のことであり、胎児の発育成長のためには必要不可欠な組織である。プラセンタエキス(placentaextract)は胎盤の持つ生理活性を失活させることなく有効成分を抽出したものである。プラセンタエキスは身体が本来保持している生理活性を高めることにより、新陳代謝の促進、自律神経・ホルモンのバランス調整、免疫力、抵抗力の強化等の作用を持つと報告されている。

また、シミ、シワ、肌荒れ等の皮膚の老化を解消し、メラニン色素の形成・定着を防止する等の作用も報告されている。プラセンタは中国でも古くから強壮・強精・不老長寿の薬として「紫河車」・「胞衣」の名称で利用されてきた等の報告が見られる。また、加賀の三大秘薬の一つである「昆元丹」中にも配合されているとする報告もされている。

なお、胎盤抽出物を原料とする薬物として、次の製剤が報告されている。

商品名(会社名)

ラエンネック

[(株)日本生物製剤]

メルスモン
[メルスモン製薬(株)]
日本標準商品分類番号 873259 873259

来歴

1933年Filatovらは、冷蔵ヒト胎盤を初めて臨床に使用した。我が国では1951年稗田らがヒト胎盤を肝硬変患者に埋没療法を施したのが最初であった。

ソ連の医学者フィラートフ(1933年)は、「生体組織(細胞)は、その生活を脅かすような外的因子が作用するとき、組織の中には、生物学的過程を刺激する物質-生物原刺激素?が産生される」という仮説を立て、これを「組織療法」として応用した。本剤はこの「組織療法」製剤の一つである。

組成 本剤は、ヒト胎盤の水解物で主として諸種のアミノ酸を含有し、1管2mL中に112mgの水溶性物質を含有する。

新生胎盤を冷蔵し、独特な方法で抽出したアミノ酸、核酸関連物質、無機物質を成分とする胎盤抽出物で、1管2mL中に100mgを含有する製剤である。無痛化剤としてベンジルアルコール0.03mLを含有。

効能・効果 慢性肝疾患における肝機能の改善 更年期障害、乳汁分泌不全
用法及び用量 通常、成人1日1回2mLを皮下又は筋肉内に注射する。症状により1日2?3回注射することができる。 通常、1日1回2mLを毎日又は隔日に皮下注射する。
薬効・薬理

*抗脂肝作用:本剤は抗脂肝作用を有し、脂肪沈着の減少、肝細胞の脂肪変性の改善が認められる(ラット)。

*組織呼吸賦活作用:本剤は肝のコハク酸脱水素酵素の活性を高め、組織呼吸を促進して、新陳代謝を活発にする(ラット)。*肝の部分欠損再生促進作用:本剤は、肝の部分的切除部を新生細胞で修復し、肝実質の再生を促進する(家兎・ラット)。

*間質結合織の呼吸促進作用:本剤はCCL4連続12週間投与によるラット肝障害の繊維増殖を抑制し、かつ一旦増殖した間質結合織をも吸収することが、組織学的に確認されている。

*組織呼吸促進作用:ラット肝臓の組織呼吸に及ぼす本剤の作用をワールブルグ法により測定した結果、本剤は生理食塩液の約5.7倍の呼吸促進作用を認めた。
*創傷治癒促進作用:ラットを用いた実験的火傷において、本剤は対照に比較し、創傷治癒促進作用を示した。*抗疲労作用:マウスによる水中遊泳疲労試験において、本剤は抗疲労性を認めた。
*硝子体及び結膜下出血の吸収促進作用:ウサギ眼球の硝子体及び球結膜下に対し実験的出血を起こし、その吸収促進作用を観察した結果、本剤は対照に比較して出血吸収促進作用を示した。

なお、胎盤製剤の各種成分について、現在までに確認されたものとして、次の報告がされている。

  • 核酸関連物質:ウラシル、アデニン、グアニン、チミン、シトシン。
  • アミノ酸:リジン、アラニン、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、グリシン、バリン、セリン、チロシン、フェニルアラニン、スレオニン、アルギニン、プロリン、シスチン、イソロイシン、メチオニン、ヒスチジン。
  • ミネラル:ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄等。
  • その他:キサンチン等。

なお、使用されている胎盤には、ヒト胎盤及び牛胎盤があるとされている。

[011.1.PLA:2000.3.14.古泉秀夫]


  1. http://www.tsm.gr.jp/million/placentainfo.htm,2000.3.14.
  2. http://www.nava21.ne.jp/,2000.3.14.
  3. ラエンネック添付文書,1993.3.改訂
  4. メルスモン添付文書,1993.3.改訂

マコモの薬効について

月曜日, 12月 24th, 2007

KW:健康食品・漢方薬・マコモ・ハナガツミ・真菰・黒穂病菌・マコモ墨・マコモ耐熱菌・作用機序・伝承効果

 

Q:岸辺に生える植物の"マコモ"を服用している患者がいる。身体によいといわれており、お風呂にも入れるとされているが、これは具体的にどの様な作用があるのか。

A:マコモ→ハナガツミ。ZizanialatifoliaTurez.。日本各地及び台湾、中国、インドシナ、東シベリアの熱帯から亜熱帯に分布、沼地に生えるイネ科の大型多年草。

マコモ(真菰)→沼や川などの水辺に群生する稲科の大型多年草である。大きいものは2mを越え、地方によりコモガセ、コモガヤ、マコ、チマキグサ、カツミ、ハナカツミ、ガッゴなどとも呼ばれている。わが国では田圃の水路など至る所の湿地帯に見られ、更に中国大陸や沖縄、北米インディアンの間では現在でも食用としているといわれる。

中国では黒穂病菌の寄生した若い茎を菰角(こもづの)といい食用とし、菌の成熟したものは油を加えてマコモ墨といい眉墨とした。

効用・効果:マコモを母体にして発生させる微小単細胞生物は「マコモ耐熱菌」と名付けられ、製品化された。

マコモ耐熱菌については、未だ科学的に解明されていないとされているが、マコモ耐熱菌は微生物ながら病疫微生物ではない。マコモ耐熱菌は無数の繊毛で被われ、体内で芽胞を形成する。芽胞中に自身が生きるための栄養を蓄え、1000℃の高熱にも死なないマコモ耐熱菌は、三つの形に変化し、体内から代謝物質を排出するが、この代謝物質が人体に有効ではないかとされている。

「マコモ」は、全て手作りで、野生の真菰を刈り取る。太陽光により乾燥。乾燥した真菰を砕断し、特許技術を駆使して「マコモ」を作り上げる。マコモ耐熱菌の酸化抑止力から還元性食品とする健康食品である。

「マコモ」風呂については、マコモを湯船に入れ入浴するとされているが、お湯を換えずに継続使用するとする紹介がされている。

なお、真菰の伝承されている効果は高血圧、肝炎、糖尿病、胃腸病などである。

水分(減圧乾燥法) 2.4% 灰分 29.0%
蛋白質 15.8% カルシウム 672mg/100g
脂質(ソックスレー抽出法) 0.4% リン 252mg/100g
繊維 13.0% 鉄分 61.2mg/100g
糖質 39.4% 100g中のカロリー 229Kcal

なお、上記以外の微量成分については報告されていない。また、本品は健康補助食品であり、薬効の標榜はされていないため、詳細な薬理作用等は不明である。

商品名:MAKOMOHARMONY100U・マコモ

製造元:株式会社マコモ
[〒988-02宮城県気仙沼市字岩月千岩田196-1]

発売元:光苔株式会社
[〒988宮城県気仙沼市田中前2-10-1TEL.0226-470-4571]

[510.FD38.015.4ZIZ][1996.7.2.・1999.3.23.一部修正.古泉秀夫]


  1. 牧野富太郎:原色牧野植物大図鑑;北隆館,1986
  2. マコモ販売株式会社・私信,1996.6.24.[東京都新宿区若葉1-20ハイネス四谷302号TEL.03(3559)7092FAX.03(3350)5857]
  3. 健康考古学研究会・編:マコモの不思議;株式会社日本通信教育連盟,1995
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI-News,No.1555,1997.6.10.より転載。

マンネンタケの薬理作用について

月曜日, 12月 24th, 2007

KW:漢方薬・マンネンタケ・霊芝草・霊芝・サルノコシカケ科・薬理作用・作用機序・抗がん作用・血栓性静脈炎

 

Q:マンネンタケには抗癌作用があるといわれているが、その作用機序と開発状況また血栓静脈炎に対する効果は報告されているか

 

A:マンネンタケ(Ganoderma japonicum Lloyd)は、サルノコシカケ科に属する植物で、霊芝草と呼称されるものである。

霊芝草のうち紫芝の成分としてエルゴステロール、有機酸(リシノレイン酸、フマル酸など)、グルコサミン、多糖類、樹脂、マンニトール等を含有し、またベタイン、γ-ブチロベタイン等のアミノ酸誘導体を含有する。

霊芝草のうち赤芝は、マンニトール、α-ミコース、ステアリン酸、安息香酸、エルゴステロール、15種のアミノ酸、4 種のペプチド及び4 種の塩基等を含有する。

霊芝草の作用として動物実験の結果として、中枢神経系の抑制作用・循環器系に対する血圧下降作用として先降後昇を示し、同時に尿量が顕著に増加する。赤芝は冠状動脈の血液流量を増加し、急性の実験性心筋虚血無酸素症に対する保護作用があることが実証されている。

また呼吸器系統に対し気管支平滑筋に対する痙攣解除作用を示し、肝臓保護作用・細網内皮系の食作用増強作用等が報告されており、白血球減少症の治療にも用いられる等の報告が見られる。

尚、霊芝草に由来する治療薬の開発についてはLZ-8(明治乳業)が見られる。

本品はサルノコシカケ科のキノコ、マンネンタケの菌体に含まれるアミノ酸110個でできた分子量12,420Da の蛋白質で、動物実験でアレルギー反応を抑制する強力な作用を確認。スギ花粉のアレルギー症や関節リウマチ等、過度の免疫反応が原因で起こる病気の治療に有望な新しい免疫調節剤であるとされている。

その他、LZ-8は糖尿病モデル動物-NODマウスに対して、発症抑制効果と治療効果を示し、実験的アレルギー反応ばかりでなく、自己免疫疾患にも有効であることが示唆された。

その他、霊芝草と癌治療の関係では、グルカンあるいは酸性蛋白多糖体で、この高分子多糖体が、サルノコシカケの胞子を培養して菌糸塊を作ることに成功して発見された抗腫瘍物質であるとする報告もみられる。

[510.FD18.038GAN][1991.11.5. ・1999.4.6.一部改訂.古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1985,p.2731
  2. NHS- DIC治験薬データベース,1991
  3. 帯津良一・編著:がんを治す大事典;二見書房,1991
  4. 紀光助・他:新しい免疫調節剤LZ8のNODマウスへの効果;第19回日本免疫学会総会・学術集会記録,19:456(1989)
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.199,1991.11.8.より転載

麻酔薬とアルコールの関係について

月曜日, 12月 24th, 2007

KW:臨床薬理・麻酔薬・アルコール・飲酒・効力低下・エタノール・ethanol・耐性・身体依存性・依存性・塩酸ケタミン・ketamine・ペントバルビタールナトリウム・pentobarbital・アルコール症患者・交差耐性・全身麻酔薬

 

Q:飲酒の習慣のある者は麻酔が効き難いという話を聞くが、実際はどうか

A:注射用全身麻酔剤であるケタラール10・50(三共)[塩酸ケタミン:ketamine hydrochloride]の添付文書中に次の記載が見られる。

使用上の注意-1.慎重投与(1)急性・慢性アルコール中毒の患者[一般にアルコール中毒患者は麻酔がかかりにくい。]

また、全身麻酔剤であるネンブタール注射液(大日本)[ペントバルビタールナトリウム:pentobarbital sodium]の添付文書では、重大な副作用-2)依存性の項に「連用により、薬物依存傾向を生じることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること。特にアルコール中毒、薬物依存の傾向又は既往歴のある患者、重篤な神経症患者に対しては注意すること。………」

とする記載がされている。

その他、ethanolの耐性・身体依存性について、次の報告がされている。

ethanolの慢性的な摂取は、ethanol代謝機能を亢進する。しかし、飲酒を中止すると代謝機能は数週間以内に次第に低下し、禁酒しているアルコール症患者ではethanol代謝速度は正常者と同じである。

ethanolを慢性的に摂取していると、薬力学的耐性が出現する。従って中毒症状を起こすためには、正常者の場合よりも高い血中濃度が必要となる。アルコール症患者の中には、血中ethanol濃度が200mg/dL以上であっても、難しい仕事を完全にやってのけるヒトもいる。200mg/dL といえば大部分の研究者が顕著な中毒であると規定している量の2倍に相当する。しかし、致死量が著しく増大するわけではなく、呼吸抑制を伴った重篤な急性中毒が、慢性アルコール中毒に附随して出現することもある。

ethanolとそれ以外の薬剤の交差耐性は、中枢神経系内の薬力学的耐性、又は代謝がより促進されたために起こるものとされている。 ethanolを摂取していると肝ミクロゾーム分画に存在する酵素の活性が上昇するからである。ethanolに対して耐性を起こしているヒトは、一般に全身麻酔薬と交差耐性を持っている。この交差耐性は、おそらく薬力学的耐性に由来したものであろう。更に交差耐性はそれほど飲酒量の多くないアルコール症患者にだけ見られる。血中アルコール濃度が高くなると、他の薬物はethanolの作用に対して相加的に作用する。更に同一酵素系を競合することによって、相互の代謝系を阻害しあうこともある等の報告が見られる。

以上の各報告から飲酒者の場合、麻酔薬に対する耐性が生ずる可能性があることが予測されるが、その飲酒量は日常一般的に摂取するethanol量を超えた量であると考えられる。

[015.4.ETH:2003.6.2.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
  2. ケタラール10添付文書,1999.1.改訂
  3. ネンブタール注射液添付文書,1999.2.改訂
  4. 藤原元始・他監訳:グッドマン・ギルマン薬理書;廣川書店,1992