ミルラチンキについて
KW:薬名検索・myrrh・ミルラ・ミルラチンキ・ミルラDAB9・没薬・モツヤク・ゴム樹脂・薫香料・殺菌・脱臭
Q:OTC薬のうがい薬に配合されているミルラチンキとは何か
A:ミルラはCommiphora属の諸植物の皮層からから分泌され、空気中で乾燥したゴム樹脂である。
- [英]myrrh(ミルラ)、Arabian myrrh。[独]Myrrhe、[ラ]myrrha。
- 和名:没薬(モツヤク)。
- 原植物:ゴム樹脂の化学組成がミルラDAB9に該当する全てのCommiphora属植物。特にCommiphora molmol Engler、カンラン科(Burseraceae)。その他、北東アフリカ、アラビア等に産するCommiphora abyssinica Engl.(カンラン科)等から得たゴム樹脂を含む固形樹脂とする報告も見られる。
本品は不規則な円形をした粒子又は多孔性の塊で、大きさは不揃い。褐色ないし黒褐色、淡橙褐色ないし暗橙褐色を呈し、黄色、無色ないし淡黄色の部分もある。表面は普通灰色ないし黄褐色の粉をふいたようである。臭いは酸っぱく、芳香性、味は苦く、芳香性、渋みがあり、噛むと歯に粘り着く。
- 含有成分:組成は非常に複雑で、一部しか知られていない。40-60%のエタノール可溶部の精油は専らセスキテルペン類から成っており、主成分はゲルマクラン、エレマン、ユーデスマン及びグアヤン型のフラノセスキテルペン炭水化物である。その他精油中にセスキテルペン炭化水素類(例えばβ及びδ -elemene、β-bourbonene、β-caryophyllene、humulene)やセスキテルペンアルコール類(例えばelemol) が存在する。おそらくフラノセスキテルペン類のいくつかは、局方ミルラに特徴的なものである。50-60%-のエタノール不溶部(粗ゴム質、又は粗粘液質)は約20%の蛋白質と約65%の炭水化物(galactose、4-O-methylglucuronic acid、arabinoseから成る)を含んでいる。
- 適応:多くはミラルチンキDAB9として殺菌、脱臭及び顆粒化促進作用があるため、風邪による口腔や咽頭部の炎症の際に塗布剤、含嗽剤や洗浄剤として用いられる。但し、本品に収斂作用はない。
その他、古来、薫香料として珍重され、チンキ剤を刺激、防腐薬とする。古代エジプトでは、死体を保存するのに、摘出した内臓の空洞に防腐の目的で本品を詰め込んでミイラを作った。ミイラの語源は本生薬を原義とする等の報告も見られる。
[011.1.MYR:2006.1.31.古泉秀夫]
- 薬科学大辞典 第3版;広川書店,2001
- 井上博之・監訳:カラーグラフィック西洋生薬;廣川書店, 1999