ワーファリン錠と青汁の相互作用
KW:相互作用・ワーファリン錠・warfarin potassium・青汁・クロレラ・ビタミンK・新百年青汁・百年青汁・キューサイ青汁・葉緑素・モロヘイヤ・ケール・麦若葉末・大麦若葉
Q:栄養士から相談があったが、青汁とワーファリン錠の相互作用に関する資料はあるか
A:ワーファリン錠(エーザイ)[warfarin potassium]の添付文書中に健康補助食品である青汁の記載はされていないが、「クロレラ食品は本剤の抗凝血作用を減弱するのでひかえること」の記載がされている。
クロレラ食品記載の理由は「植物中のビタミンK(ビタミンK1)は、葉緑体中で光合成時のエネルギー変換反応の中心的役割を果たしている。健康食品として市販されているクロレラは、緑藻植物であり多量の葉緑素を含んでいることから、クロレラ中にビタミンKが多量に含まれていることが予測される。クロレラは医薬品ではなく、食品であるため含有量は一定していない。また製造する企業によっても含有量が異なることも考えられるが、
クロレラ1日摂取量(約10g)では葉緑素として約0.2g、ビタミンK1は約0.1mg含有しているの報告がある。
また、臨床報告もされており、トロンボテスト値(TT値)が5?15%で安定していたwarfarin療法中の63 歳の男性がクロレラを摂取するようになってTTちが55%と高値を示した。クロレラ摂取を中止するとTT値は10%前後に回復したが、再びクロレラを摂取したところ50%程度に再度上昇した。患者の摂取したクロレラ食品を分析したところ、クロレラ100g中にビタミンK1は3.6mg含有していた。
その他の報告によると75歳の男性がクロレラ摂取後10?20%に安定していたTT値が、58%と著明に上昇し、クロレラ中止により再度低下した。その後、再度クロレラを摂取したところ、同様の影響が認められた。
クロレラはその摂取量、摂取期間、個人差等を考慮すべきであるが、warfarin療法中の患者で、トロンボテスト値に変動がみられる例では、クロレラ摂取の有無を確認する必要がある。以上からwarfarin服用者に対しては、大量のビタミンKを含有するクロレラ摂取は禁止すべきである。」としている。
一方「青汁」については、自家製のものが摂取されているほか、販売各社によりその原料も異なるため、何を原料とした「青汁」かの確認が必要であるが、当室において新聞広告等から入手している製品の情報に基づき検討した結果を報告する。
商品名 | 取扱会社 | 原料名 |
新百年青汁 | ロイヤル食品株式会社:〒812福岡市博多区博多駅南2丁目4-24 ロイヤル福岡ビル | モロヘイヤ・ケール・麦若葉末・無臭ニンニク・ローヤルゼリー・コラーゲン・ビタミンC・蜂蜜等 |
百年青汁 | ロイヤル食品株式会社電話0120-8-11831 | モロヘイヤ・ケール・無臭ニンニク |
キューサイ青汁 | キューサイ青汁(株)福岡市中央区草香江1-7-16 | ケール |
大麦若葉青汁-ナイスグリーン | (株)宇治田原製茶場〒610-88 電話
0120-08-5000 |
大麦若葉 |
新百年青汁及び各原料植物の報告されている可食部100gあたりの成分分析結果は、次の通り。
新百年青汁 | モロヘイヤ | ケール | |
エネルギー | 229kcal | 73-83kcal | 33kcal |
水分 | 76.4-77.0g | 88.4g | |
蛋白質 | 3.6-5.0g | 3.4g | |
脂質 | 0.6-0.9g | 1.6g | |
炭水化物-糖質 | 11.6-15.5g | 1.4g(繊維) | |
炭水化物-繊維 | 1.0-3.4g | ||
灰分 | 2.3-2.7g | ||
蓚酸 | 870mg | ||
β-カロチン | 14.4mg | 14.3mg(10.826mg) | 31.45mg |
ビタミンA効力 | 8000 IU | 7940IU(937-940IU) | |
ビタミンB1 | 0.26mg | 0.72mg(0.72mg) | 0.08mg |
ビタミンB2 | 1.36mg | 4.95mg(4.95mg) | 0.09mg |
ビタミンB6 | 0.26mg | ||
総ビタミンC | 6200 mg | 62-168mg(62mg) | 110mg |
ビタミンE | 13.0mg | 14.1mg | |
ナイアシン | 1.2mg | 1.0mg | |
ビオチン | 0.5μg | ||
パントテン酸 | 0.09mg | ||
ビタミンk | 640μg | ||
鉄分 | 61.5mg | 3.8mg(2.7mg) | 1.7mg |
カルシウム | 1750 mg | 498mg(410mg) | 130mg |
カリウム | 2960 mg | 920mg(920mg) | 450mg |
マグネシウム | 400mg | 34mg | |
リン | (92.8mg) | 61mg | |
ナトリウム | 43mg | ||
亜鉛 | 590-1490μg | 0.4mg | |
銅 | 580-637μg | 0.03mg | |
マンガン | 0.8mg | ||
植物繊維 | 36.4g | 5.3g(11.8g) | |
スーパーオキシド消去活性(SOD) | 49000unit | ||
総クロロフイル (葉緑素) | 494mg | ||
残留農薬 BHC DDT アルドリン ディルドリン エンドリン |
検出せず |
なお、原料植物について、次の報告がされている。
モロヘイヤ |
シナの木科(Tiliaceae)のコルコルス属(Corchorus)に属する1年草の植物。コルコルス属は和名でツナソ属といい約40種以上が知られ、熱帯アジア・アフリカ(エジプトを中心)にかけて広く分布している。ツナソ(綱麻;英名ジュート)属は大別して麻の原料となるものと葉菜として食用となるものがあり、モロヘイヤは後者に属し、学名はCorchorus Olitriusである。
その葉は甘味があり、ねばねばして美味。古くから食用にされ、クレオパトラも食べたという。モロヘイヤの語源は宮廷野菜を意味するムルーキーヤがなまったものであるという通説から、宮廷野菜、王様の野菜ともいわれ、またミドリのととろ、アラブ野菜、ビタミンの固まりなどと呼ばれる。→タイワンツナソ (Corchorus Olitrius L.)、ナガミツナソ
(Tossa jute,Jews mallow(英))
ケール(緑葉甘藍・羽衣甘藍;var acephala DC Brassica Oleracea L.) |
ケールは不結球のキャベツで変種名のアセファラは無頭を意味し、紀元前にヨーロッパでキャベツの野生種から最小に栽培化されたものはケールの元始型のようなものだったと思われる。その原ケールは変異性に富み、結球性のキャベツや花茎の発達するブロッコリーなどを分化した。現在のケールは原ケールがさらに巨大化し、縮葉化したものと推定されが、現在のケールの中にも様々なタイプがある。例えば葉のちじれた縮葉型、茎の肥大するマローケール、直立性のツリーケール、暖地性のコラードなどがある。
コラード(collard) |
近年種苗カタログなどにでている。コラードと呼ばれる系統は暖地性のケールで、この名はColewort(キャベツ草)の誤りだといわれる。我が国で栽培されているコラードは丸葉系である。
以上の各報告に見られる通り、いずれもビタミンKの含有量については報告されていないが、原則として緑黄色野菜にはビタミンKが含有されていると考えるべきであり、百年青汁の例を見るまでもなく葉緑素が存在するとすれば、ビタミンKの存在も一定推定できる。
したがってワーファリン錠服用者では、青汁の摂取を医師に報告するとともに、TT値の変動に注意すべきである。
[3332.015.2WAR:1997.4.3.・1999.3.23.一部修正.古泉 秀夫]
- ワーファリン錠添付文書,1996.7.改訂
- 青崎 正彦・他監修:warfarin の適正使用情報;エーザイ株式会社,1996
- 新青汁百年パンフレット
- モロヘイヤ速報
- モロヘイヤ協会資料[〒166 東京都杉並区阿佐ヶ谷南2-13-7 電話03-5378-1540]
- 牧野 富太郎:改訂版 原色牧野植物大図鑑-合弁花・離弁花編-;北隆館,1996
- 熱帯植物研究会・編:熱帯植物要覧;養賢堂,1991
- 杉 靖三郎・監修:健康・栄養食品事典96-97改訂版,1996
- 奥崎 政美:モロヘイヤの成分;日本医事新報,NO.7345,1996.2.3.
- 根本 幸夫:健康食品はやわかり;曜曜出版,1991
- 青葉 高:日本の野菜-葉菜類・根菜類;八坂書房,1983