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ワーファリン錠と青汁の相互作用

金曜日, 12月 21st, 2007

KW:相互作用・ワーファリン錠・warfarin potassium・青汁・クロレラ・ビタミンK・新百年青汁・百年青汁・キューサイ青汁・葉緑素・モロヘイヤ・ケール・麦若葉末・大麦若葉

 

Q:栄養士から相談があったが、青汁とワーファリン錠の相互作用に関する資料はあるか

A:ワーファリン錠(エーザイ)[warfarin potassium]の添付文書中に健康補助食品である青汁の記載はされていないが、「クロレラ食品は本剤の抗凝血作用を減弱するのでひかえること」の記載がされている。

クロレラ食品記載の理由は「植物中のビタミンK(ビタミンK1)は、葉緑体中で光合成時のエネルギー変換反応の中心的役割を果たしている。健康食品として市販されているクロレラは、緑藻植物であり多量の葉緑素を含んでいることから、クロレラ中にビタミンKが多量に含まれていることが予測される。クロレラは医薬品ではなく、食品であるため含有量は一定していない。また製造する企業によっても含有量が異なることも考えられるが、

クロレラ1日摂取量(約10g)では葉緑素として約0.2g、ビタミンK1は約0.1mg含有しているの報告がある。

また、臨床報告もされており、トロンボテスト値(TT値)が5?15%で安定していたwarfarin療法中の63 歳の男性がクロレラを摂取するようになってTTちが55%と高値を示した。クロレラ摂取を中止するとTT値は10%前後に回復したが、再びクロレラを摂取したところ50%程度に再度上昇した。患者の摂取したクロレラ食品を分析したところ、クロレラ100g中にビタミンK1は3.6mg含有していた。

その他の報告によると75歳の男性がクロレラ摂取後10?20%に安定していたTT値が、58%と著明に上昇し、クロレラ中止により再度低下した。その後、再度クロレラを摂取したところ、同様の影響が認められた。

クロレラはその摂取量、摂取期間、個人差等を考慮すべきであるが、warfarin療法中の患者で、トロンボテスト値に変動がみられる例では、クロレラ摂取の有無を確認する必要がある。以上からwarfarin服用者に対しては、大量のビタミンKを含有するクロレラ摂取は禁止すべきである。」としている。

一方「青汁」については、自家製のものが摂取されているほか、販売各社によりその原料も異なるため、何を原料とした「青汁」かの確認が必要であるが、当室において新聞広告等から入手している製品の情報に基づき検討した結果を報告する。

商品名 取扱会社 原料名
新百年青汁 ロイヤル食品株式会社:〒812福岡市博多区博多駅南2丁目4-24 ロイヤル福岡ビル モロヘイヤ・ケール・麦若葉末・無臭ニンニク・ローヤルゼリー・コラーゲン・ビタミンC・蜂蜜等
百年青汁 ロイヤル食品株式会社電話0120-8-11831 モロヘイヤ・ケール・無臭ニンニク
キューサイ青汁 キューサイ青汁(株)福岡市中央区草香江1-7-16 ケール
大麦若葉青汁-ナイスグリーン (株)宇治田原製茶場〒610-88 電話

0120-08-5000

大麦若葉

新百年青汁及び各原料植物の報告されている可食部100gあたりの成分分析結果は、次の通り。

  新百年青汁 モロヘイヤ ケール
エネルギー 229kcal 73-83kcal 33kcal
水分   76.4-77.0g 88.4g
蛋白質   3.6-5.0g 3.4g
脂質   0.6-0.9g 1.6g
炭水化物-糖質   11.6-15.5g 1.4g(繊維)
炭水化物-繊維   1.0-3.4g  
灰分   2.3-2.7g  
蓚酸   870mg  
β-カロチン 14.4mg 14.3mg(10.826mg) 31.45mg
ビタミンA効力 8000 IU 7940IU(937-940IU)  
ビタミンB1 0.26mg 0.72mg(0.72mg) 0.08mg
ビタミンB2 1.36mg 4.95mg(4.95mg) 0.09mg
ビタミンB6     0.26mg
総ビタミンC 6200 mg 62-168mg(62mg) 110mg
ビタミンE 13.0mg 14.1mg  
ナイアシン   1.2mg 1.0mg
ビオチン     0.5μg
パントテン酸     0.09mg
ビタミンk   640μg  
鉄分 61.5mg 3.8mg(2.7mg) 1.7mg
カルシウム 1750 mg 498mg(410mg) 130mg
カリウム 2960 mg 920mg(920mg) 450mg
マグネシウム 400mg   34mg
リン            (92.8mg) 61mg
ナトリウム     43mg
亜鉛   590-1490μg 0.4mg
  580-637μg 0.03mg
マンガン     0.8mg
植物繊維 36.4g 5.3g(11.8g)  
スーパーオキシド消去活性(SOD) 49000unit    
総クロロフイル (葉緑素) 494mg    
残留農薬
BHC
DDT
アルドリン
ディルドリン
エンドリン
検出せず    

なお、原料植物について、次の報告がされている。

モロヘイヤ

シナの木科(Tiliaceae)のコルコルス属(Corchorus)に属する1年草の植物。コルコルス属は和名でツナソ属といい約40種以上が知られ、熱帯アジア・アフリカ(エジプトを中心)にかけて広く分布している。ツナソ(綱麻;英名ジュート)属は大別して麻の原料となるものと葉菜として食用となるものがあり、モロヘイヤは後者に属し、学名はCorchorus Olitriusである。

その葉は甘味があり、ねばねばして美味。古くから食用にされ、クレオパトラも食べたという。モロヘイヤの語源は宮廷野菜を意味するムルーキーヤがなまったものであるという通説から、宮廷野菜、王様の野菜ともいわれ、またミドリのととろ、アラブ野菜、ビタミンの固まりなどと呼ばれる。→タイワンツナソ (Corchorus Olitrius L.)、ナガミツナソ

(Tossa jute,Jews mallow(英))

ケール(緑葉甘藍・羽衣甘藍;var acephala DC Brassica Oleracea L.)

ケールは不結球のキャベツで変種名のアセファラは無頭を意味し、紀元前にヨーロッパでキャベツの野生種から最小に栽培化されたものはケールの元始型のようなものだったと思われる。その原ケールは変異性に富み、結球性のキャベツや花茎の発達するブロッコリーなどを分化した。現在のケールは原ケールがさらに巨大化し、縮葉化したものと推定されが、現在のケールの中にも様々なタイプがある。例えば葉のちじれた縮葉型、茎の肥大するマローケール、直立性のツリーケール、暖地性のコラードなどがある。

コラード(collard)

近年種苗カタログなどにでている。コラードと呼ばれる系統は暖地性のケールで、この名はColewort(キャベツ草)の誤りだといわれる。我が国で栽培されているコラードは丸葉系である。

以上の各報告に見られる通り、いずれもビタミンKの含有量については報告されていないが、原則として緑黄色野菜にはビタミンKが含有されていると考えるべきであり、百年青汁の例を見るまでもなく葉緑素が存在するとすれば、ビタミンKの存在も一定推定できる。

したがってワーファリン錠服用者では、青汁の摂取を医師に報告するとともに、TT値の変動に注意すべきである。

[3332.015.2WAR:1997.4.3.・1999.3.23.一部修正.古泉 秀夫]


  1. ワーファリン錠添付文書,1996.7.改訂
  2. 青崎 正彦・他監修:warfarin の適正使用情報;エーザイ株式会社,1996
  3. 新青汁百年パンフレット
  4. モロヘイヤ速報
  5. モロヘイヤ協会資料[〒166 東京都杉並区阿佐ヶ谷南2-13-7 電話03-5378-1540]
  6. 牧野 富太郎:改訂版 原色牧野植物大図鑑-合弁花・離弁花編-;北隆館,1996
  7. 熱帯植物研究会・編:熱帯植物要覧;養賢堂,1991
  8. 杉 靖三郎・監修:健康・栄養食品事典96-97改訂版,1996
  9. 奥崎 政美:モロヘイヤの成分;日本医事新報,NO.7345,1996.2.3.
  10. 根本 幸夫:健康食品はやわかり;曜曜出版,1991
  11. 青葉 高:日本の野菜-葉菜類・根菜類;八坂書房,1983

GLP-1について

金曜日, 12月 21st, 2007

KW:薬名検索・GLP-1・glucagon-like peptide 1・glucagon・insulin secretagogue・インスリン分泌促進物質・点鼻薬

Q:開発中のGLP-1関連薬剤について

A: GLP-1はglucagon-like peptide 1の略称である。膵glucagon及びenteroglucagonの共通の前駆物質であるpreproglucagon構造の中に、更に二つの glucagon様配列が含まれていることがわかり、GLP-1及びGLP-2と名付けられた。膵からは両者が結合した不活性な形で分泌され、消化管からは活性型であるGLP-1(7-36)の形で分泌され、インスリン分泌増強物質(インクレチン)として作用している。

現在、GLP-1に基づく医薬品として、次の薬物が治験段階として報告されている。

治験記号 一般名(企業名) 概要
  insulinotropin(米・Scios)

薬理:insulin secretagogue(インスリン分泌促進物質)。糖尿病用剤。剤形:静注・点滴静注。本品はインスリン放出ホルモンであり、血糖値を過度に低下せずに糖尿病患者の血糖値を調節する。インスリン非依存性糖尿病治療薬として開発中(第II相臨床試験)である。抗肥満薬としての効果も期待されている。現在中断の可能性。

SUN-E7001 ?     (日・Suntory)

insulin secretagogue(インスリン分泌促進物質)。糖尿病用剤。その他のホルモン剤。 インスリン非依存性糖尿病を適応として、orphan drug指定。

剤形:点鼻薬。前臨床段階。

本品はグルカゴン様ペプチド(GLP-1)のアミノ酸残基7番目から36番目までのペプチドで、大腸菌を用いた遺伝子組換えによって製造される。

血糖値上昇時に膵臓のβ細胞に作用してインスリン分泌を促進するとともに、gluca-gonの分泌を抑制する。

[011.1.GLP:2004.4.13.古泉秀夫]


  1. 医学大辞典;南山堂,1992
  2. 最新医学大辞典 第2版;医歯薬出版株式会社,1996
  3. 明日の新薬CD-ROM版,2002.6.21

LG21について

金曜日, 12月 21st, 2007

KW:薬名検索・LG21・乳酸菌・ラクトバシルスガッセリー・lactobacillus gasseri ・プロビオヨーグルトLG21・ピロリ菌

 

Q:ピロリ菌関係で出てくるLG21とは何か

A:LG21は乳酸菌『lactobacillus gasseri OLL 2716株(ラクトバシルスガッセリーOLL 2716株)』の略号である。

明治乳業では、胃潰瘍などの危険因子の一つとされるヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)に対し、強い抗菌作用を持つ乳酸菌をヨーグルトに加えた製品を2000年3月から発売した。同社が保有する乳酸菌を混合するもので、乳酸菌の抗菌作用でピロリ菌を減少・消失させる。

明治乳業・わかもと製薬・東海大学医学部の共同研究では、胃中にピロリ菌のいる30人にLG21を配合したヨーグルト90gを1日2回、8週間摂食させた。その結果、26人でピロリ菌が減少、このうち3人は菌が消失した。又、胃粘膜の荒れも改善されていた。更に6人について内視鏡検査したところ、菌は 1/10?1/100に激減していたとしている。研究グループでは、乳酸菌は安全性も高く、耐性菌も生じないと思われるが、完全に除菌できるとは言い切れないため、『治療』ではなく、『予防』として期待できるとしている。

LG21配合ヨーグルトの商品は『プロビオヨーグルトLG21』である。

東海大学医学部消化器内科におけるピロリ菌除菌方法の検討過程の中で、乳酸菌がピロリ菌に有効ではないかと考えられ、わかもと製薬が持っている L.salivarius WB1004株を用いピロリ菌感染マウスで実験した結果、効果があることが実証された。更にピロリ菌に対する効果を出すためには乳酸菌とピロリ菌の接触時間を長くする必要があることから食品形態とすることが望ましいということが解り、「WB1004」乳酸菌をヨーグルトの形態で摂取すると胃内滞留時間が長くなることが判明した。

しかし、「WB1004」はヨーグルトにした際、菌数維持が困難なことが判明、胃酸に強く、ヨーグルトに適正のある菌種の選択をすべく約200株の乳酸菌株から選定を行い、「乳酸菌LG21株」を発見した経緯がある。

[011.1LG:2000.4.13.古泉秀夫]


  1. 明治乳業-乳酸菌、ピロリ菌退治;日刊工業,2000.1.28.
  2. ピロリ菌減らす乳酸菌-LG21:読売新聞,2000.1.28.
  3. 明治乳業 ピロリ菌抑える乳酸菌-ヨーグルトに配合;日経産業新聞,2000.2.15.
  4. 明治乳業株式会社広報室・私信,2000.4.13.

L-カルボシステインの催奇形性

金曜日, 12月 21st, 2007

KW:催奇形性・L-カルボシステイン・L-carbocisteine・胎児毒性・ムコダイン錠・システイン誘導体・cysteine derivatives

 

Q:現在、妊娠中であるが、ムコダイン錠の処方が出た。服用することで奇形発生あるいは胎児への影響はないか

A:ムコダイン錠(杏林製薬)はL-carbocisteineを含有する気道粘液調整・粘膜正常化剤である。添加物としてクロスカルメロースナトリウム、ポリビニルアルコール(部分鹸化物)、ショ糖、脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、タルク(500mg錠のみ)を含む。

システイン誘導体(cysteine derivatives)の一つであるcarbocisteineは、喀痰中のmucoproteinに作用し、mucoproteinのS-S結合を開裂することによって低分子化し、喀痰の粘稠度を下げるとされている。本剤の作用機序として特に細胞増殖に影響する毒性は報告されていない。

本剤の添付文書中に記載されている『妊婦・授乳婦等への投与上の注意』は、以下の通りである。

『妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい [妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]』

過去に催奇形作用の症例が報告されている薬物のうち、ヒトでの催奇性がほぼ確実と考えられている危険評価点5に属する薬物として、抗てんかん薬: phenytoin、trimethadione、抗凝血薬:warfarin、抗悪性腫瘍剤:busulfan、その他の皮膚外用薬: etretinate等が報告されており、その他危険度評価1-3に属する薬物139種が報告されているが、その中にcarbocisteineは含まれていない。また、妊娠中期・後期に服用を注意すべき薬物例中にも含まれていない。

また、本剤は1965年にフランスで、1968年スイス・1970年ベルギー・1972年英国・1975年西ドイツ・1980年日本でそれぞれ発売されている。我が国で発売されてから既に24年が経過しており、本剤の適応から過去に妊娠初期等に妊娠に気付かず服用した事例が全くないとは考えられない。

しかし、現在までに本剤による催奇形性の報告はされておらず、短期間の本剤の服用により胎児に重大な影響を及ぼすとは考えられないため、妊娠中の一定期間、本剤を服用したとしても特に問題はないと考えられる。

[065.CAR:2004.10.26.古泉秀夫]


  1. ムコダイン錠添付文書,2001.7.改訂
  2. 藤原元始・他編:医科薬理学;南山堂,1986
  3. 高柳一成・編:薬の安全性-その基礎知識;南山堂,2000
  4. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  5. ムコダイン錠・シロップインタビューフォーム, 1994

amezinium metilsulfateとdextromethorphan hydrobromideの相互作用

金曜日, 12月 21st, 2007

 

KW:相互作用・amezinium metilsulfate・dextromethorphan hydrobromide・リズミック錠・メジコン散・併用禁忌

 

Q:メジコンとリズミックがレセプトコンピュータでは相互作用対象薬として検索されるが、その理由は

A:両剤の添付文書中に記載されている作用機序及び相互作用は下記の通りである。

  amezinium metilsulfate
リズミック錠(大日本住友)
dextromethorphan hydrobromideメ
ジコン散・錠(塩野義)
作用機序

本剤はノルエピネフリン (norepinephrine)と競合して末梢の神経終末に取込まれ、norepinephrineの神経終末への再取込を抑制するとともに、神経終末においてnorepinephrineの不活性化を抑制し、交感神経機能を亢進させる[添付文書,2003.6] 。本剤は交感神経刺激剤に属する低血圧症治療剤である。本剤はα刺激作用により、散瞳を惹起し、前立腺を収縮させる。

臭化水素酸デキストロメトル ファンは、延髄にある咳中枢に直接作用し、咳反射を抑制することにより鎮咳作用を示す。臭化水素酸デキストロメトルファンの肝代謝に関する酵素の分子種はo-脱メチル化ではCYP2D6、N-脱メチル化ではCYP3A4である。
相互作用

-併用注意-ドロキシドパ[血圧の異常上昇]:ドロキシドパから変換したノルエピネフリンの末梢神経終末における再取込と不活性化が本剤により抑制。 norepinephrine[血圧異常上昇]:本剤によりnorepinephrineの末梢神経終末における再取込と不活性化が抑制[添付文書, 2003.6]。

*ドロキシドパ(norepi-nephrineの前駆物質)。

-併用禁忌-MAO阻害剤(phenelzine)[臨床症状:痙攣、反射亢進、異常高熱、昏睡等]:デキストロメトルファンは中枢のセロトニン濃度を上昇させる。MAO阻害剤はセロトニンの代謝を阻害し、セロトニンの濃度を上昇させる。併用によりセロトニンの濃度が更に高くなるおそれがある[添付文書, 2003.6]。

[禁忌]MAO阻害剤投与中の患者。

添付文書を見る限り両剤間に相互作用があるとする記載はされていない。従ってレセプトコンピュータに導入されている相互作用データを作成した当事者でなければ、何故に検索されるのかの理由は不明であるが、資料によっては、amezinium metilsulfateの特徴として、間接的な交感神経刺激薬、交感神経内MAO阻害作用、交感神経内より放出されたノルアドレナリン再取込抑制作用を持つ等の報告がされており、相互作用データ中にamezinium metilsulfateの薬理作用として“交感神経内MAO阻害作用”が記載されていれば、dextromethorphan hydrobromideの添付文書中のMAO阻害剤(phenelzine)に反応した可能性が考えられる。

[015.2.AME:2004.12.13.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  2. リズミック錠IF,1995.8.(改訂3版)
  3. 水島 裕・編集:今日の治療薬-解説と便覧-;南江堂,2004

「ラウレス硫酸ナトリウムについて」

金曜日, 12月 21st, 2007

KW:薬名検索・ラウレス硫酸ナトリウム・sodium laureth sulfate・SLES・ラウリルエーテル硫酸ナトリウム・sodium laurylether sulfate・ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム・sodium polyxyethylene laurylether sulfate

 

Q:ラウレス硫酸ナトリウムについて

 

A:ラウレス硫酸ナトリウム(sodium laureth sulfate:SLES)は、別名としてラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium laurylether sulfate)。化学名としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium polyxyethylene laurylether sulfate:SPLES)等が報告されているが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムのINCI名が『sodium laureth sulfate(ラウレス硫酸ナトリウム)』である。

本品は定量するとき、表示量の90-110%に対応するポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム[C12H25NaO4・(C2H4O)n]を含む。本品は無色-淡黄色の液又はワセリン様の物質で、僅かに特異な臭いがある。

1933年にUlrich、Saurweinによる報告が最初である。ポリオキシエチレン基を持つ非イオン界面活性剤の末端水酸基を硫酸化して得られ、疎水基の種類、オキシエチレン鎖長、対イオンの種類により数多くの化学構造が考えられるが、この型のものが液体シャンプー用原料を中心に洗浄剤、起泡剤として1950年代中頃から市販品が登場し広く普及するに至っている。

ラウリルアルコールに酸化エチレンを付加重合して得られるポリオキシエチレンラウリルエーテルをクロルスルホン酸、又は無水硫酸で硫酸化し、水酸化ナトリウム液で中和して製造する。硫酸化はラウリル硫酸ナトリウムの製法に準じる。

性状:市販品は主として23 -30%水溶液、若しくは60-70%ワセリン様で無色-淡黄色である。pH:7.5(1%水溶液)。水に溶解する。エタノールに溶ける。キシレンには不溶。一般性状は酸化エチレンの付加モル数により異なり、モル数が増大すれば水溶性が上昇し、溶液粘度は減少する。未反応のラウリルエーテルや無機塩の存在は粘度を上昇させる。酸化エチレンの付加モル数が2-4の硫酸塩が刺激性、溶解性、粘度、泡立ちの点から適当とされ、広く用いられている。本品は硫酸エステル塩であるため、酸性では分解する。

付加モル数 SPLES分子量
1 332.44
2 376.49
3 420.54

 

作用:本品はラウリル硫酸Naよりも皮膚に対する作用が温和で刺激が少なく、シャンプーとして使用した場合、比較的しなやかな感触を髪に残す。

応用:本品の高濃度水溶液は、粘稠なゲルとなり、また曇り点が低いために透明な高粘度のシャンプーの配合に適している。

有害性:皮膚を刺激する。眼に重大な障害を及ぼす危険性がある。

環境影響:調査した範囲では、環境への悪影響を示す情報はない。

廃棄:産業廃棄物取扱業者に委託する。

物理的・化学的危険性:通常の取扱いでは危険性は低い。

応急措置

1]吸入した場合:被災者を新鮮な空気の場所に移動させ、必要に応じて医師の受診を受ける。

2]皮膚に付着した場合:多量の水及び石鹸を用いて洗い流し、症状が出た場合等、必要に応じて医師の診断を受ける。

眼に入った場合:即座に目蓋を開いて流水で15分間以上洗浄し、直ちに医師の処置を受ける。

3]飲み込んだ場合:水で口の中を洗浄し、コップ1-2杯の水又は牛乳又は生卵を飲ませ、医師の処置受ける。被災者の意識がない場合は、上記の経口摂取は禁忌である。

ラウレス硫酸Naの毒性

急性毒性:ラット経口(LD50):>2000mg/kg

眼刺激性:強い刺激性が認められた(ウサギ,OECD405法)

皮膚腐蝕性:non data

皮膚刺激性:non data

変異原性:陰性(Ames試験(サルモネラ菌 TA98、TA100)

癌原性:non data

水棲生物毒性:コイ稚魚LC50範囲:107-143mg/L(48時間)

 

 

1)湯浅正治・他編著:化粧品成分ガイド第3版;フレグランスジャーナル社,2005

2)日本化粧品工業連合会・編:日本汎用化粧品原料集夢第4版;株式会社薬事日報社,1997

3)化粧品原料基準 新訂版;株式会社薬事日報社,1999

4)日本公定書協会・編:化粧品原料基準 第二版註解[I];株式会社薬事日報社,1984

5)花王株式会社-製品安全データシート;http://chemical.kao.co.jp,2007.1.29.

[011.1.SLE:2007.1.29.古泉秀夫]