烏龍茶の脂肪代謝促進作用
水曜日, 12月 19th, 2007
KW:健康食品・烏龍茶・脂肪代謝促進作用・茶・緑茶・青茶・Camellia sinensis L.・ツバキ科・カテキン・エピガロカテキンガレート・アッサム種
Q:烏龍茶でいわれている脂肪代謝促進作用について
A:茶(学名:Camellia sinensis L.)はツバキ科の植物で、原産地は揚子江、メコン川、イラワジ川、プラマプトラ川などの大河上流が集まる中国西南部の雲南省からビルマ北部、アッサム地方にわたると考えられている。
我が国で栽培されている茶の種類は大きく二つに分けられ、寒さに強い中国種(Camellia sinensis L.var.sinensis)と寒さに弱いアッサム種(Camellia sinensis L.var.assamica)に分類される。
一般に飲用される茶類は緑茶、紅茶、烏龍茶等があるが、これらは全て同じ茶樹の葉から作られており、加工の仕方により緑茶、紅茶、烏龍茶等に分けられる。
茶青:半発酵茶。烏龍茶。成熟した新梢を用い、通常17工程を経て完成するといわれているが、上品質のものほど手数をかけている。
途中で加熱により酵素活性を止め、乾燥するので半発酵茶といわれる。醗酵は最初に葉を日光に当てて行い、その後、室内で萎凋(葉を萎らせる)が行われる。做青(青色だし)の工程があるのが特徴である。
これらの一連の過程で、烏龍茶に特有の香気成分が生じるものと考えられている。
また一般的にテアフラビン(紅茶色素)が紅茶の 10%程度含まれているとされる。
烏龍茶の効用としていわれているのは、
- 食欲増進
- 消化促進
- 脂肪分解
- 代謝亢進
等である。
最もよく知られているのは、脂肪分解作用である。烏龍茶を食中・食後に飲めば、脂肪代謝を促進して、肥満の予防に役立つ。この烏龍茶の作用は、食欲増進、消化促進に加えて、脂肪分を円滑に分解し、過剰な脂肪分が体内に残らないように働きかけるもので、肥満の予防作用はその結果の一つにしかすぎない。烏龍茶の効用で大事なのは、食欲を増進する中で、体の栄養バランスを正常に保つよう働くことである。
また烏龍茶は花粉症などアレルギーに効果のあることが、最近の研究で明らかにされた。これは烏龍茶に含まれるカテキン類がアレルギーの原因となるヒスタミンの放出を抑制するためと見られている。緑茶や紅茶より烏龍茶の方が改善効果が強く、特に烏龍茶の茎に含まれているカテキン類から高い効果が得られたとされている。
現在、我が国で市販されている烏龍茶の中で良質とされているのは、福建省・武夷山に産する武夷岩茶(鉄羅漢等)と、同じく安渓に産する鉄観音である。
烏龍茶の醗酵度は半醗酵で、その製法には微妙な感覚が要求され、永年の経験が生きている。醗酵は生葉を粉砕せずに日光に当て、更にその後、室内で葉を萎ませながら葉内の酵素活性を高める。
この過程で、生葉中にない香気成分(ネロリドール、インドール、ジャスミンラクトンなど)が発現するといわれている。その他、烏龍茶にはカフェインが少ない、また烏龍茶では緑茶と異なり解毒・殺菌作用が変質しない等の報告がされている。
緑茶には渋味成分としてポリフェノールの一種であるカテキンが含まれている。ラットの餌にラードやコレステロールを加え、カテキンを添加すると、糞中に排泄される脂肪やコレステロールの量が増え、血中脂質を改善することが明らかになった。
カテキンが血中脂質を正常化する理由の一つとして、胆汁酸の排泄を増やすことが挙げられている。胆汁酸は肝臓でコレステロールを原料に作られ胆汁に含まれて脂肪を乳化して消化を助けた後、腸から吸収されて肝臓に戻り、再利用される。
ところがカテキンを与えると胆汁は再利用されず排泄されるため、コレステロールが血液中で増加しない。血中脂質が減少すると肝臓に蓄積される脂肪が減少するため、脂肪肝を改善し、肝臓の機能も高まるとされている。
烏龍茶の脂肪分解の作用が、カテキンにあるとすれば、緑茶と烏龍茶の間に差はないはずであるが、緑茶と烏龍茶のカテキンについて、次の報告がされている。
緑茶は新鮮葉を蒸すことにより酸化酵素の働きを止め、緑色を保持させたものであり、この製造工程では、エピガロカテキンガレート(緑茶タンニン)を含む他のカテキン類はほとんど変化していない。
烏龍茶や紅茶は加熱処理せずに、自然に葉を萎びさせ、醗酵させるもので、その過程でカテキン類は酸化重合してプロアントシアニジンポリマー、theasinensins、theaflavinsやthearubigin(色素)などに変化する。
以上の各報告から、茶葉中に脂肪分解に作用する成分が含まれていることは確かであるが、緑茶と烏龍茶では製造過程の差により、烏龍茶の含有成分がより強力に働くようになっており、更に総合的な効果として、脂肪分解作用を示すものと考えられる。
[015.9.CAM:2004.12.14.古泉秀夫]
- 健康産業新聞社/「ハーブ」プロジェクトチーム・編:薬用ハーブの機能研究;健康産業新聞社,1999
- 奥田 拓道・監修:健康・栄養食品事典,2004
- 中村丁次・監修:最新版からだに効く 栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001
- 田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002