半減期と過量投与時観察時間について
土曜日, 12月 15th, 2007KW:臨床薬理・半減期・T1/2・ t1/2・過量投与時観察時間・薬物動態理論・一次速度過程
Q:sumatriptan製剤であるイミグラン注(GSK)の添付文書中、過量投与の項に『本剤のT1/2は約2時間であり、過量投与時には少なくとも10時間、あるいは症状・徴候が持続する限りは患者をモニターすること』の記載があるが、10時間の根拠について
A:添付文書の過量投与の項に『半減期の5倍』の時間を観察期間とする記載がされているのは、sumatriptan製剤のみではない。
薬物動態理論によれば、『一次速度過程が適応になる場合、体内の薬物が体内から消失するには、T1/2の5倍あればいい』といわれている。薬物の血中濃度が定常状態に達した状態で投与が中止された場合、体内から殆どの薬物が消失するには、T1/2(β)の5倍の時間がかかると報告されている。
例えば、最高血中濃度40μg/mL・半減期2時間の薬物の場合、下表の推移を経て体内薬物濃度は減衰すると考えられる。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
半減期 | 2時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 |
血中濃度 | 20μg/mL | 10μg/mL | 5μg/mL | 2.5μg/mL | 1.25μg/mL | 0.625μg/mL |
その他、催吐・胃洗浄・活性炭投与等、体内薬物の強制排泄を目的とした種々の処置を実施することにより、体内薬物の排泄を強化する処置が取られており、体内薬物の消失時間とされている半減期の5倍の時間あるいは症状・徴候が持続する期間、患者のモニターを継続することにより、患者回復の目安とすることが可能であるとの判断によるものと考えられる。
ただし、腎機能・肝機能の障害がある場合には、排泄速度は低下すると考えられるので、注意が必要である。
[015.4.EXE:2005.5.5.古泉秀夫]
1.高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2005
2.菅野 彊:これからのDrug Information-新しい医薬品情報活動の技術;医薬ジャーナル社,1998
3.平田純生:症例から処方を考える-効くはずの抗菌薬が効かない?-薬剤師だからできるPK/PDに基づいた投与設計;薬局,56(5):2011-2021(2005)