「成人インフルエンザ患者への解熱剤投与」
KW:薬物療法・インフルエンザ・解熱剤・バイアスピリン錠・バファリン81mg錠・アスピリン・成人投与・小児投与
Q:小児のインフルエンザ患者に対する解熱剤の投与について、投与禁忌等の注意事項が見られるが、バイアスピリン、バファリン81mg服用中の成人患者の場合はどうか
A:バイアスピリン錠100mg(バイエル薬品)及びバファリン81mg錠(ライオン)の添付文書中に記載されている禁忌・使用上の注意等は下記の通りである。
商品名 | バイアスピリン錠100mg | バファリン81mg錠 |
成分 | aspirin | aspirin |
禁忌 |
1.本剤成分又はサリチル酸系製剤に対し過敏症の既往歴者。 |
重要な基本的注意 | 1.サリチル酸系製剤の使用実態は我が国と異なるものの、米国においてサリチル酸系製剤とライ症候群との関連性を示す疫学調査報告があるので、本剤を15歳未満の水痘、インフルエンザの患者に投与しないことを原則とするが、やむを得ず投与する場合には、慎重に投与し、投与後の患者の状態を十分に観察すること[ライ症候群:小児において極めて稀に水痘、インフルエンザ等のウイルス性疾患の先行後、激しい嘔吐、意識障害、痙攣(急性浮腫)と肝臓ほか諸臓器の脂肪沈着、ミトコンドリア変形、AST(GOT)・ALT(GPT)・LDH・CK(CPK)の急激な上昇、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖等の症状が短期間に発現する高死亡率の病態である]。 |
使用上の注意-小児等への投与 |
.低出生体重児、新生児又は乳児-錠剤の嚥下不能。 |
バイアスピリン錠100mg及びバファリン81mg錠は、いずれもaspirinの製剤であり、添付文書の記載事項は同様である。なお、成人に関するinfluenza virus感染症とaspirin投与の関係は添付文書中に何等記載されていない。
「ライ症候群とサリチル酸系製剤の使用について」は、医薬品等安全性情報 151号(平成10年12月24日)において、次の通り報告されている。
*ライ症候群は、昭和38年にオーストラリアの病理学者Reyeにより最初に報告された症候群であり、主として小児においてインフルエンザ、水痘等のウイルス疾患に罹患した後激しい嘔吐、意識障害、痙攣(急性浮腫)と肝臓ほか諸臓器の脂肪沈着、ミトコンドリア変形、AST(GOT)・ALT(GPT)・LDH・CK(CPK)の急激な上昇、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖等の症状が1週間程度発現する病態で、その発生は稀であるが、予後は不良である。
昭和57年米国においてサリチル酸系製剤、特にaspirinの使用とライ症候群の関連性を疑わせる疫学調査結果が報告された。
ライ症候群の発症とその使用における関連性については、aspirin以外のサリチル酸系製剤では必ずしも明らかでないが、他のサリチル酸系製剤がaspirinと類似の構造を有していることなどから、これらaspirin以外のサリチル酸系製剤についても、念のためサリチル酸系製剤とライ症候群の関連性について、使用上の注意改訂により改めて一層の注意喚起を行い、所要の措置を講じることが適当と考えられる。
*上記注意喚起以後も、解熱鎮痛剤を投与された患者で意識障害、痙攣等の脳症状(ライ症候群と確定されないものも含む)が発生した症例が報告されているため、サリチル酸系製剤を含む解熱鎮痛剤全般について確認したところ、平成11年1月以降にaspirin等を含有するサリチル酸系製剤が投与された小児でライ症候群症例が3例あった。またそれらのうち2例は、サリチルアミドを含有する総合感冒薬が投与されたものであった。
*日本小児科学会では、平成12年11月に、小児のインフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればacetaminophenが適切であり、非ステロイド系消炎剤の使用は慎重にすべきであるとする見解を公表した。
*その他、diclofenac sodium、mefenamic acidについては、小児における「インフルエンザの臨床経過中の脳炎・脳症」患者に対する投与は禁忌とされている。なお、成人についてはインフルエンザ脳症を発症する頻度は低いと報告されているが、脳症発症時には同様に注意が必要であると考えられる。
但し、成人のインフルエンザに対する解熱剤投与に関して、特に勧告が出されたとする報告は見られないため、使用の可否判断はあくまで医師の裁量による。
1)バイアスピリン錠100mg添付文書,2006.4.改訂
2)バファリン81mg錠添付文書,2006.4.改訂
3)医薬品等安全性情報 151号,1998.12.24.
4)医薬品・医療用具等安全性情報 167号,2001.6.27.
5)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006
6)山口 徹・総編集:今日の治療指針;医学書院,2006
[035.1. REY:古泉秀夫,2006.9.5.]