「ヂアミトール液の毒性」
金曜日, 10月 5th, 2007
対象物 |
ヂアミトール液(ベンザルコニウム塩化物 10W/V%) |
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調査者 |
古泉秀夫 分類:63.099.BEN 記入日:2007.10.3. |
成分 |
ベンザルコニウム塩化物(benzalkonium chloride)。別名:逆性石ケン。 |
一般的性状 |
*殺菌消毒薬である。白色-黄色の粉末又は無色-淡黄色のゼラチン状小片。ゼリー状の流動体で、水に溶ける。水溶液は無色-黄色の澄明の液で、特異なにおいがある。本品は振ると強く泡立つ。陽イオン界面活性剤で、水溶液として外用、器具の消毒に使用される。▼*通常、第4級アンモニウム塩として重視されるのは、逆性石ケンあるいは陽性石ケン等といわれる第4級アンモニウム塩である。カチオン界面活性剤は、逆性石ケンの名称のごとく、通常の石鹸や合成洗剤とは逆の荷電を持つ活性体を有することが特徴であり、臭気がなく、水溶液の味は苦いが、皮膚に付着しても刺激性がなく、毒性も低い。▼*本剤は使用濃度において、栄養型細菌(グラム陽性菌、グラム陰性菌)、真菌等には有効であるが、細菌芽胞、結核菌及び大部分のウイルスに対する殺菌効果は期待できない。▼*手指・皮膚の消毒:通常石けんで十分に洗浄し、水で石けん分を十分に洗い落とした後、本品100-200倍希釈溶液(0.05-0.1%)に浸して洗い、滅菌ガーゼあるいは布片で清拭する。術前の手洗の場合には、5-10分間ブラッシングする。 ▼*手術部位(手術野)の皮膚の消毒:手術前局所皮膚面を本品100倍希釈溶液(0.1%)で約5分間洗い、その後本品50倍希釈溶液(0.2%)を塗布する。 ▼*手術部位(手術野)の粘膜の消毒、皮膚・粘膜の創傷部位の消毒:本品400-1000倍希釈溶液(0.01-0.025%)を用いる。 ▼*感染皮膚面の消毒:本品1000倍希釈溶液(0.01%)を用いる。 ▼*医療機器の消毒:本品100倍希釈溶液(0.1%)に10分間浸漬するか、または厳密に消毒する際は、器具を予め2%炭酸ナトリウム水溶液で洗い、その後本品100倍希釈溶液(0.1%)中で15分間煮沸する。 ▼*手術室・病室・家具・器具・物品などの消毒:本品50-200倍希釈溶液(0.05-0.2%)を布片で塗布・清拭するか、または噴霧する。 ▼*腟洗浄:本品200-500倍希釈溶液(0.02-0.05%)を用いる。 ▼*結膜嚢の洗浄・消毒:本品200-1000倍希釈溶液(0.01-0.05%)を用いる。 ▼*本剤は必ず希釈し、濃度に注意して使用すること。深い創傷又は眼に使用する希釈水溶液は、調製後滅菌処理すること。▼*投与経路:経口投与しないこと。浣腸には使用しないこと。 ▼*使用時:ア.粘膜、創傷面又は炎症部位に長期間又は広範囲に使用しないこと(全身吸収による筋脱力を起こすおそれがある)。イ.密封包帯、ギプス包帯、パックに使用すると刺激症状があらわれることがあるので、使用しないことが望ましい。▼*調製方法:ア.希釈液として塩類含量の多い水又は硬水を用いないこと。イ.繊維、布(綿、ガーゼ、ウール、レーヨン等)は本剤を吸着するので、これらを溶液に浸漬して用いる場合には、有効濃度以下とならないように注意すること。▼*使用時:ア.血清、膿汁等の有機性物質は殺菌作用を減弱させるので、これらが付着している医療器具等に用いる場合は、十分に洗い落としてから使用すること。イ.石けん類は本剤の殺菌作用を減弱させるので、石けん分を洗い落としてから使用すること。ウ.皮膚消毒に使用する綿球、ガーゼ等は滅菌保存し、使用時に溶液に浸すこと。エ.合成ゴム製品、合成樹脂製品、光学器具、鏡器具、塗装カテーテル等への使用は避けることが望ましい。オ.金属器具を長時間浸漬する場合は、腐触を防止するために塩化ベンザルコニウム0.1%溶液に0.5-1.0%の亜硝酸ナトリウムを添加すること。カ.皮革製品の消毒に使用すると、変質させることがあるので使用しないこと。 |
毒性 |
*原液又は濃厚液は刺激症状があらわれることがあるので、皮膚・粘膜に付着しないよう注意すること。また、眼に入らないように注意すること。原液又は濃厚液に接触した場合には直ちに水でよく洗い流し、適切な処置を行うこと。 *炎症又は易刺激性の部位(粘膜、陰股部等)に使用する場合には、濃度に注意して、正常の部位に使用するよりも低濃度とすることが望ましい。また、使用後は滅菌精製水で水洗すること。 *ラットの経口致死量(LD50)は、200mg/kgの他、第4級アンモニウム塩として10%溶液は家兎経口致死量(LD50)は0.12mL/kg、ラット経口致死量(LD50)は0.5g/kg等の報告がされている。 *その他、陽イオン界面活性剤を飲用することはないが、血液に入ると溶血作用があり、クラーレ様症状を発現するため危険であるとする報告も見られる。 *ヒトの経口推定致死量として50-500mg/kgとする報告も見られるが、成人が誤飲しても少量であれば問題はない。 |
症状 |
*発疹、そう痒感等の過敏症状(頻度不明)があらわれることがあるので、このような場合には使用を中止すること。▼*本品を大量に摂取した場合、胃腸障害、痙攣、虚脱、昏睡を起こす。昭和47年(1972)に生後3カ月から2歳の幼児23名にオスバン液(塩化ベンザルコニウム10%)1mLを誤飲させた事例では、服用直後に嘔吐、口腔・咽頭の発赤、流涎、第2病日に発熱、好中球増多、口腔・咽頭のベラーグ(belag:膿苔)、第4病日より下痢が4-7日続いたと報告されている。またヂアミトール液(benzalkonium chloride 10%)20mLを誤飲した2歳小児が、意識混濁、チアノーゼ、呼吸困難を起こし、15分後に死亡したとする報告も見られる。▼*本品を飲用した人に口腔内の糜爛・出血、咽喉頭の浮腫、食道から十二指腸にかけての出血・糜爛・潰瘍、体液喪失に伴う血液濃縮が見られた。▼*消毒用オスバン |