Archive for 9月 5th, 2007

トップページ»

「後発医薬品選択に係る薬剤師の責任」

水曜日, 9月 5th, 2007

KW:法律・規則・後発医薬品・ジェネリック医薬品・先発医薬品・副作用・患者説明・インフォームドコンセント・informed consent

Q:後発医薬品への変更可とされる処方せんを受領し、後発医薬品を薬剤師が指定した際、その薬により副作用が発現した場合、薬剤師の責任は

A:厚生労働省が『後発医薬品』の使用促進のための環境整備を図る一環として、先発医薬品の銘柄を記載した処方せんを交付した医師が、『後発医薬品』に変更して差し支えない旨の意思表示を行い易くするため、2006年4月1日の診療報酬改定において、処方せん様式の変更を行った。

変更内容は、「備考」蘭中に新に『後発医薬品への変更可』のチェック欄を設ける。

*『処方』蘭に先発医薬品の銘柄名を記載した処方せんを交付した医師が、当該先発医薬品を後発医薬品に変更しても差し支えないと判断した場合は、その意思表示として『後発医薬品への変更可』のチェック欄に署名するか、又は姓名を記載し、押印することとする。

*ただし、処方医が、当該処方せんに係る先発医薬品の一部については後発医薬品に変更することに差し支えがあると判断した場合は、その意思表示として、『処方』蘭の当該先発医薬品の銘柄名の後に「(後発医薬品への変更不可)」と記載することとする。

『後発医薬品への変更可』のチェック欄に処方医の署名又は記名・押印のある処方せんを受け付けた保険薬局は、患者の選択に資するため、後発医薬品に関する情報等を提供し、患者が選択した後発医薬品又は先発医薬品を調剤する。

『後発医薬品への変更可』のチェック欄に処方医の署名又は記名・押印のある処方せんについては、診療報酬上、後発医薬品を含む処方を行った場合に該当するものとして取り扱うこととする。

次に『区分14.後発医薬品情報提供料』について、次の規定がされている。

(1)一般名処方による処方せん又は「後発医薬品への変更可」蘭に処方医の署名若しくは記名・押印のある処方せんを受け付けた場合において、次に掲げる事項その他の事項を、保険薬剤師が作成した文書(保険薬剤師が記載した手帳でも可とする。)又はこれに準ずるものにより交付し、患者の同意を得て、後発医薬品を調剤した場合にその種類にかかわらず10点を算定する。

ア.一般名

イ.剤形

ウ.規格

エ.内服薬にあっては、製剤の特性(普通製剤、腸溶性製剤、徐放性製剤等)

オ.備蓄医薬品の一覧とその品質(溶出性等)に関する情報

カ.先発医薬品との薬剤料の差に係る情報

キ.保険薬局の名称並びに保険薬局又は保険薬剤師の連絡先等

(2)後発医薬品を調剤した場合には、調剤した薬剤の銘柄等について、当該処方せんを発行した保険医療機関に情報提供することとする。

(3)後発医薬品情報提供料は、『区分15』の在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については算定できない。

先発医薬品と後発医薬品の相違点は、原則的には成分以外の製剤技術の問題と添加物の問題に集約されると考えられる。

また中医協資料等から『医師が、当該先発医薬品を後発医薬品に変更しても差し支えないと判断』した場合に、『後発医薬品への変更可』のチェック欄に署名、又は記名・押印するとされており、後発医薬品への変更選択の判断は、あくまでも医師の判断が出発点であり、その医師の判断に対して薬剤師は何等関与していない。

更に保険薬局は、患者の選択に資するため、後発医薬品に関する情報等を提供し、患者が選択した後発医薬品又は先発医薬品を調剤するとされており、薬剤師が情報の提供はするが、最終選択は患者の判断によるということである。

ただし、患者に説明する内容として『備蓄医薬品の一覧とその品質(溶出性等)に関する情報』とされており、薬剤師が一種類の特定の後発医薬品を選定し、その後発医薬品を患者が選択するという方式は期待されていないと考えられる。また、実際に調剤した後発医薬品の銘柄等について処方せん発行医療機関に情報提供することとされているが、これは処方医の責任を明確にするための現認であると考えられる。

勿論、備蓄医薬品の一覧に収載するに際しては、先発医薬品・後発医薬品の各種情報を比較検討する責任は薬剤師も負っており、薬の副作用等についての説明を十分に行っておかなかった場合、薬剤師としての責任を追及されることは考えられる

1)後発医薬品の使用促進のための環境整備;中医協資料,2006.2.15.

2)診療報酬点数表-改正点の解説-平成18年4月版 医科・調剤,2006.4.

[615.1.GEN:2006.7.4.古泉秀夫]


『リバビリンの催奇形性について』

水曜日, 9月 5th, 2007

KW:催奇形性・リバビリン・ribavirin・精巣形態変化・精子形態変化・避妊・避妊期間・精液中移行

Q:リバビリンの催奇形性について。なお、服用後の避妊期間の6カ月は安全を保証する適正な期間といえるのか

A:リバビリンの催奇形性について、添付文書等に次の通り報告されている。

[商]レベトールカプセル200mg(シェリング・プラウ株式会社)・一般名英名:ribavirin(JAN)。

*添付文書の『警告』欄に次の記載がされている。

1.本剤では催奇形性が報告されているので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。

2.本剤では催奇形性及び精巣・精子の形態変化等が報告されているので、妊娠する可能性のある女性患者及びパートナーが妊娠する可能性のある男性患者に投与する場合には、避妊をさせること。

3.本剤では精液中への移行が否定できないことから、パートナーが妊婦の男性患者に投与する場合には、【使用上の注意】を厳守すること。

*また、禁忌として、

1.妊婦、妊娠している可能性のある婦人又は授乳中の婦人[動物実験で催奇形性作用及び胚・胎児致死作用が報告されている。]の記載が見られる。

*更に重要な基本的注意として、

3.妊娠する可能性のある女性患者及びパートナーが妊娠する可能性のある男性患者は投与中及び投与終了後6ヵ月間は信頼できる避妊法を用いるなどして妊娠を避けること。また、投与直前の妊娠検査結果が陰性であることを確認後に投与を開始すること。なお、妊娠していないことを確認するために、妊娠検査を毎月1回実施すること。

4.精液中への本剤の移行が否定できないことから、パートナーが妊娠している男性患者には、その危険性を患者に十分理解させ、投与中及び投与終了後6ヵ月間は本剤が子宮内へ移行しないようにコンドームを使用するよう指導すること。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

1.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。[動物実験で催奇形性作用(ラット及びウサギ:1mg/kg/日)及び胚・胎児致死作用(ラット:10mg/kg/日)が認められている。]

2.授乳中の婦人には、投与を避けることが望ましい。やむを得ず投与する場合は、授乳を避けさせること。[動物実験(ラット)で乳汁中への移行が認められている。]

*その他の注意

1.マウス3及び6ヵ月間投与試験(1-150mg/kg/日)で精子異常(15mg/kg/日以上)がみられたとの報告がある(休薬により回復)。

?(4) 胎盤・胎児移行:(参考)妊娠ラットに14C-標識リバビリン溶液20mg/kgを単回経口投与したとき、胎児組織中への放射能の移行が認められた。

3) 乳汁中への移行:(参考)授乳中のラットに14C-標識リバビリン溶液20mg/kgを単回経口投与したとき,放射能濃度の母乳/血漿比は0.6-1.3であり,本薬又は代謝物の乳汁中への移行性が認められた。

尚、警告の解説として、次の報告が見られる。

本剤は、動物での生殖発生毒性試験において、ラット、ウサギで催奇形性作用、ラットで胚・胎仔致死作用及びマウスで精子数の減少、精巣・精子の形態異常が認められている。本剤の投与に際して、安全性を確保する上で遵守すべき注意事項を[警告]の項に記載した。

・動物での生殖発生毒性試験において、次のような影響が認められている。

・1.0mg/kg/日以上の投与で、ラット、ウサギに催奇形作用。

・10mg/kg/日の投与で、ラットに胚・胎仔致死作用。

・15mg/kg/日以上の投与で、マウスに精子数の減少及び形態の異常。

本剤のヒト胎児への影響に関する報告はないが、動物実験での胎仔毒性は、臨床投与量より低い用量で認められているため、妊婦には本剤を投与しないこととした。また、妊娠している可能性のある女性患者には、治療開始直前の妊娠結果が陰性であることを確認してから投与を開始する。

・本剤は前述のように生殖発生毒性を有すること、また精液中への移行が否定できないことから、精液が子宮内に到達した場合には、胚・胎仔が曝露される可能性がある。妊娠する可能性のある女性患者及びパートナーが妊娠する可能性のある男性患者に投与する場合は、本剤投与中及び投与完了後6カ月間は信頼できる避妊法を用いて妊娠を避けるよう十分指導する。また、パートナーが妊娠している男性患者に投与する場合は、子宮内に精液が移行しないようコンドームを使用するよう指導する。

・妊娠していないことを確認するため、妊娠検査を毎月1回実施する。

尚、投与中止後『6カ月間』の期間設定について『本剤とインターフェロンアルファー2b(遺伝子組換え)24週間併用投与後の血中薬物濃度推移をもとにしたシミュレーションで、6カ月後には本剤がほぼ体内から消失していることが推測されています。従って、投与終了後少なくとも6カ月間は避妊する要注意喚起しています。』の報告がされている。

また、他の文献で本剤の催奇形性について、Category[X]とする評価も見られる。

*Category[X]:胎児に永久的な障害を引き起こすリスクの高い薬であり、妊娠中あるいは妊娠の可能性がある場合は使用すべきではない。ヒトでの適切なデータはないが、これまでにテストしたほとんどすべての動物で、ribavirinには催奇形性や胎児致死性の作用があることが分かっている。動物実験で、頭蓋骨、口蓋、眼、顎、骨格、消化管の奇形が生じることが知られている。胎児や仔の生存率が減少する。

その他、2001年10月3日に実施された薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会の議事録によれば、

『毒性に関しましては、リバビリンのラット、ウサギを用いた生殖発生毒性試験において、器官形成期投与で臨床用量を下回る投与量で胎児発育抑制、着床後死亡率の増加又は催奇形性が見られました。このような結果を受けて、リバビリンの添付文書では警告欄等で催奇形性に関する注意事項を記載することといたしました。

臨床に関しましては、国内でのリバビリンの投与量設定に関して用量設定試験は実施されておりません。申請者は海外のリバビリンの投与量を基に、既存の国内外インターフェロンの臨床試験で組み込まれた患者の平均体重等を考慮いたしまして、国内臨床用量はリバビリン1日800mg、ただし60kg以下の患者においては1日600mgと設定して国内臨床試験を実施しています。一方、インターフェロンアルファ-2bについては、既存の単独療法での用法・用量と同一としています。』の記載が見られる。

何れにしろ上記報告はヒトによるデータによるものではなく、動物実験のデータによるものである。また、6カ月間の安全期間の設定も血中薬物濃度推移からの推測であり、一定期間、実績を積み上げない限り100%の安全性の保証は第三者には困難である。

1)レベトールカプセル200mg:添付文書,2005年12月改訂(第6版)

2)雨森良彦・監修:オーストラリア医薬品評価委員会先天異常部会による評価基準「妊娠中の投薬とそのリスク(第4次改定版);医薬品・治療研究会,2001

3)レベトールカプセル200mg:新医薬品の「使用上の注意」の解説;市販後調査(平成13年12月-平成14年6月);シエリング・プラウ社,2001.11.

4)山口 徹・他監修:今日の治療指針;医学書院,2007

? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? [065.RIB:2007.1.29.古泉秀夫]

このページは xfy Blog Editor?を利用して作成されました。