薬品名(会社名) |
報告の概要 |
出典 |
[613]ceftriaxone
sodium
ロセフィン静注用(中外)
セフィローム静注用(マルコ)
ロセメルク静注用(メルク)
[適]セフトリアキソンに感性のブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌,淋菌,大腸菌,シトロバクター属,クレブシエラ属,エンテロバクター属,セラチア
属,プロテウス属,モルガネラ・モルガニー,プロビデンシア属,インフルエンザ菌,ペプトストレプトコッカス属,バクテロイデス属,プレボテラ属(プレボ
テラ・ビビアを除く) |
*感染症の治療に使う抗生物質「セフトリアキソンナトリウム」の副作用と見られる重い肝臓障害で死者が3人報告され、厚生労働省は21日、医療関係者に対し安
全性情報を出してこの薬の使用に注意を促した。本品は敗血症などの重い感染症の治療に、注射や点滴で使う薬。これまでも肝機能障害などが報告されていた
が、過去3年間で50代男性、80代男女の3人が、薬の使用後に劇症肝炎で死亡した。
*直近3年間(平成15年4月1日-平成18年6月
30日)の副作用報告(因果関係が否定できないもの)の件数・劇症肝炎等:3例(うち死亡3例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約104万
人(平成17年7月-平成18年6月)。販売開始:昭和61年 |
*読売新聞,第46949号,2006.11.22.*医薬品・医療機器等安全性情報,No.230,平成18年(2006年)11月厚生労働省医薬食品局 |
[395]alteplase(genetical
recombination)
アクチバシン注(協和醗酵)
グルトパ注(三菱ウェルファーマ)
[適]適応1)虚血性脳血管障害急性期。適応2)急性心筋梗塞。 |
*2005
年10月脳梗塞の治療薬として追加承認された「t-PA製剤」を使用した患者48人が脳出血などの副作用が疑われる症状で、死亡していることが2006年
10月27日分かった。製造・販売元の一つ三菱ウェルファーマは、「重い副作用のある薬なので、一層の注意喚起をはかりたい」としている。t-PA製剤
は、血管の塞栓を溶解する効果のある薬。従来、心筋梗塞の薬としてとして承認されていたが、脳梗塞にも劇的な効果があるとして、適応拡大がされた。同社に
よると医療機関などから488人の副作用が疑われる事例が報告され、うち48人
が頭蓋内出血、脳浮腫などで死亡していた。少なくとも5人については、高血圧などしようが禁止されている患者だった。これまで
に約3,200人の患者に使われたと見られる。効果があった場合には後遺症を残さない反面、脳出血を起こすリスクもあり、発症から3時間以内に限り使うな
ど、厳しい使用基準が定められている。厚生労働省は「極めて重篤な患者に使用する薬で、一定のリスクは想定されている。適正な使用を指導していきたい」と
している。 |
*読売新聞,第46924号,2006.10.28. |
[631]influenza
HA vaccine
ビケンHA(阪大微研)
[適]インフルエンザの予防 |
平成17年度の推定出荷本数は、約1,932万本であった。ま
た因果関係不明なものも含めて製造販売業者等からワクチン接種によるものとして報告された副作用は、102症例、139件であった。なおワクチン接種によ
る死亡例は5例であった。 |
*
医薬品・医療機器等安全性情報,No.228,平成18年(2006)9月 |
[218]atorvastatin
calcium hydrate
リピトール錠(アステラス)
[適]高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症 |
*直
近3年間(平成15年4月1日-平成18年4月26日)の副作用報告(因果関係不明例含)の件数:劇症肝炎、肝炎:12例(うち死亡例4例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:210万
人(平成17年度)、販売開始:平成12年5月 |
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.226,平成18年
(2006)7月 |
[422]gemcitabine
hydrochloride
ジェムザール注(イーライリリー)
[適]非小細胞肺癌、膵癌 |
*直
近3年間(平成15年4月1日-平成18年3月31日)の副作用報告(因果関係不明例含)の件数:肝機能障害、黄疸:6例(うち死亡例3例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約
57,000人(平成17年度)。販売開始:平成11年8月。 |
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.227,平成18年
(2006)8月 |
[339]aspirin
バイアスピリン腸溶錠(バイエル)
[適]血栓・塞栓形成の抑制 |
*直
近3年間(平成15年4月-平成17年12月)の副作用報告(因果関係不明例含):肝機能障害、黄疸:11例(うち死亡1例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約520万
人(平成17年度) |
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.224,平成18年(2006)5月 |
[430]norcholestenol
iodomethyl(131I)
アドステロール-I131
(第一ラジオアイソトープ研究所) |
*直
近3年間(平成15年4月-平成18年1月)の副作用報告(因果関係の否定できないもの):アナフィラキシー様症状:1例(うち死亡1例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:3000人
(平成17年度) |
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.224,平成18年(2006)5月 |
[212]amiodarone
アンカロン錠(大正富山)
[適]生命に危険のある以下の再発性不整脈で他の抗不整脈薬が無効か、又は使用できない場合:心室細動、心室性頻拍、肥大型心筋症に伴う心房細動 |
*本
剤の使用は、致死的不整脈治療の十分な経験のある医師が、他の抗不整脈薬が無効か、致死的不整脈患者にのみ使用することに限定されている。販売開始後(約
13年間)の関連副作用報告数(因果関係不明例含):劇症肝炎3例(うち死亡3
例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約25,000人(平成16年度)。 |
*
医薬品・医療機器等安全性情報,No.220,平成17年(2005年)12月 |
[429]carboplatin
パラプラスチン注(ブリストル)[適]頭頚部癌、肺小細胞癌、精巣腫瘍、卵巣癌、子宮頸癌、悪性リンパ腫、非小細胞肺癌 |
*1995
年7月以降の関連副作用報告数(因果関係が不明例含):肝不全、肝機能障害、黄疸:20例(うち死
亡5例)、急性呼吸窮迫症候群:2例(うち死亡2例)、
播種性血管内凝固症候群(DIC):9例(うち死亡5例)。
関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約10万人(平成16年度)。 |
*
医薬品・医療機器等安全性情報,No.220,平成17年(2005年)12月 |
[111]sevoflurane
セボフレン液(大日本住友)
[適]全身麻酔 |
*販
売開始後(約15年間)の関連副作用報告数(因果関係不明例含む):肝機能障害、黄疸:38例(うち死
亡4例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約82万人(平成16年度)。 |
*
医薬品・医療機器等安全性情報,No.220,平成17年(2005年)12月 |
[634]whole
human blood
人全血液(日赤)
照射人全血液(日赤)
合成血・照射合成血(日赤)
新鮮凍結血漿(日赤)
濃厚血小板(日赤)等
[適]輸血 |
*血
液製剤として販売開始後(約50年間)の関連副作用報告数(因果関係不明例含):呼吸障害等:12例(うち死亡例9例)、腎機能障害等:5例(うち死亡例3例)、肝機能障害等:7例(うち死亡例1例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約101
万人(平成15年)。 |
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.220,平成17年
(2005年)12月 |
[113]
phenytoin・phenobarbital
複合アレビアチン錠(大日本住友)
[113]phenytoin・phenobarbital・caffeine and sodium benzoate
ヒダントールD・E・F錠(藤永) |
*販
売開始後(約65年間)の関連副作用報告数(因果関係不明例含):劇症肝炎:4例(うち死
亡2例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約25万人(平成16年度)。 |
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.220,平成17年(2005年)12月 |
[721]barium sulfate
ウムブラゾル-A(伏見)
バリトップ液(カイゲン)
バリトゲンゾル(伏見)
[適]消化管(大腸)撮影 |
*高
齢者では消化管運動機能が低下していることが多いため、硫酸バリウムの停留により、消化管穿孔が起こりやすく、また、起こした場合にはより重篤な転機をた
どることがあるので、検査後の硫酸バリウムの排泄について十分留意する。販売開始以来(約51年間)の関連副作用報告数:消化管穿孔等:因果関係が不明なものを含んで27例(うち死亡例4例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約
1750万人(平成16年度) |
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.219,平成17年
(2005.11.厚生労働省食品局 |
[799]bone
cement
骨セメント |
*リ
ウマチ、骨折の治療等で、体内に埋め込んだ人工関節を固定する『骨セメント』注入後、患者がショック症状を惹起して死亡する例が2001年度から2005
年7月末までの約4年間で計36人発生しているとする発表が25日、厚生労働省からあった。同省によると41人が急激な血圧低下などのショック症状を起こ
し、うち36人が死亡。死亡した27人を含む32人
を解析したところ、特に注意するよう求めていた心疾患の既往歴がある患者に使用されている例が12例あった。また、副作用に素早く対応する麻酔医が不在の
まま使用している例も4例あった。骨セメントが原因と見られる死亡は、1990年度以降に報告され、1996年度から2000年には計30人が死亡してい
る。同省は医療機関に対し、過去3回にわたって『安全性情報』を出し、注意を喚起してきたが、医療現場では軽視されてきた可能性がある。事態を重く見た同
省は再度注意を呼び掛ける。ただし、使用実績から見て、死亡例は低頻度であり、代替物がないことから同省は販売中止措置は取らない。骨セメントは5社が輸
入販売しており、毎年5万人程度に使用されている。いずれも主原料はアクリル製樹脂で、血液中に漏出すると血圧が低下するなどの循環器系に障害を起こすと
考えられている。 |
*読売新聞,第46497号,2005.8.26. |
[119]donepezil
hydrochloride
アリセプト錠・D錠・細粒
(エーザイ)
[適]軽度及び中等度のアルツハイマー型痴呆における痴呆症状の進行抑制
[註]?軽度及び中等度のアルツハイマー型痴呆と診断された患者にのみ使用?本剤かアルツハイマー型痴呆の病態そのももの進行を抑制するという成績は得ら
れていない?アルツハイマー型痴呆以外の痴呆性疾患において本剤の有効性は確認されていない。 |
*ア
ルツハイマー型の認知症の進行を抑える国内唯一の医療用医薬品「塩酸ドネペジル」(商品名・アリセプト)で、1999年の発売以降、服用した8人が骨格筋の細胞が壊れる「横紋筋融解症」を発症し、うち1人が死亡す
る副作用が起きていることが23日厚生労働省の調べでわかった。厚労省は先月、製造販売元のエーザイに対し、横紋筋融解症が起きる可能性を医薬品の添付文
書に明記する要指示。エーザイは同月中に改訂し、医療機関に注意を呼び掛けている。8人は40-70代の男女。大半は適切な治療で回復したが、昨年に70代男性の死亡例が初めて確認された。 |
*
読売新聞,第46343号,2005.6.24. |
[424] paclitaxel
タキソール注(ブリストル)
[適]
卵巣癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌
|
*本剤を投与されたがん患者10人が消化管壊死や腸管閉塞に陥り、うち6人が死亡していたことが、25日厚生労働省の調べで分かった。同省では、重大な副
作用の可能性があることを使用上の注意に明記するよう、輸入元のブリストル製薬(東京)に指示した。同省によると死亡したのは60歳代の男性1人と50-70歳代の女性5人。直接の死因は多臓器不全などで因果関係は明確でないが、同省で全国の医療機関に
注意を呼び掛けている。同剤は1997年に販売が開始され、年間の推定使用患者数は約6万人。 |
*読売新聞,
第46225号,2004.11.26.
|
[799]
macrogol・sodium chloride
・potassium chloride・sodium bicarbonate・anhydrous sodium sulfate
ニフレック散
(味の素ファルマ)[適]大腸内視鏡検査及び大腸手術時の前処置における腸管内容物の排除 |
*1992
年6月の発売から2003年9月までの11年間(推定累計使用患者:約1,772万人)にニフレックとの関連性か否定できない腸管穿孔症例が11例(うち死亡5例)及び腸管閉塞症例が7例(うち死亡1例)報告されていま
す。腸管穿孔症例は2000年3月に「使用上の注意」の「重大な副作用」の項に記載し、注意を喚起してきた。また、その後高齢者の死亡例が報告されたこと
を踏まえ、2003年4月に自主的に適正情報の配布を行い注意を喚起してきた。しかし、2000年3月の添付文書改訂後、腸管穿孔症例については4例の死
亡例が報告されていること、腸閉塞症例については発売以降、死亡例1例を含む7例が報告されていることから、腸管穿孔、腸閉塞について一層の注意喚起を図
るため、「警告」、「禁忌」を追加記載するとともに「使用上の注意」を改訂した。 |
*
緊急安全性
情報,2003.9.No.03-01 |
[394]
allopurinolアロシトール錠(田辺)
ザイロリック錠(GSK)
[適]痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症における高尿酸血症の是正。 |
*腎機能障害のある患者では、本剤及びその代謝物の排泄が遅延し、高
い血中濃度が持続するので、投与量の減量、投与間隔の延長を考慮する。特に腎不全患者に副作用が発現した場合、重篤な転帰をたどることがあり、死亡例も報告されている。 |
*2003
年3月:医薬品・医療用具等安全性情報,No.187 |
[424]irinotecan
hydrochlorideカンプト注(ヤクルト本社)
トポテシン注 (第一製薬)
[適]小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、胃癌(手術不能又は再発)、有棘細胞癌、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)。 |
*発売後3年間(使用患者数:約5,400人)に本剤との関連性を否
定できない死亡例が42例(約0.8%)報告されて
いる。これらの症例の大多数は骨髄機能抑制が主たる原因となり死亡したものと推察される。本剤による骨髄機能抑制については既に「警告」「使用上の注意」
欄に記載し注意を喚起。今回更に記載内容改訂。 |
*2003年2月:医薬品・医療用具等安全性情報,
No.186*1997年7月:緊急安全性情報 |
[117]quetiapine
fumarateセロクエル錠
(アストラゼネカ-藤沢)
[平成12年12月22日承認、平成13年2月販売開始]
[適]統合失調症(旧・精神分裂病) |
*2001
年2月の発売以降、これまでに本剤との関連が否定できない高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡が13例(うち死亡例1例)報告されている[推定使用患者数:約13万人(2002
年9月現在)]。高血糖については2002年7月に「使用上の注意」に記載し注意を喚起しているが、その後重篤例が報告されたため、「禁忌」、「使用上の
注意」を改訂するとともに「警告」を追加することとした。 |
*2002年11月:緊急安全性情報 |
[119]edaravoneラジカット注
(三菱ウェルファーマ)
[適]脳梗塞急性期に伴う神経症候、日常生活動作障害、機能障害の改善 [脳保護薬] |
*2001
年6月1日の発売以降、本剤投与中又は投与後に重篤な腎機能障害が現れた症例が29例(うち本
剤との因果関係が否定できない死亡例10例、因果関係不明の死亡例が2例)報告されている[推定使用患者数:約146,000
人(平成14年9月末現在)]。急性腎不全については、2002年6月に「使用上の注意」の「重大な副作用」の項に記載し注意を喚起していたが、このたび
「禁忌」、「慎重投与」及び「重要な基本的事項」を追記、再度注意を喚起。 |
*2002
年10月:緊急安全性情報 |
[429]gefitinibイレッサ錠(アストラゼネカ)
[平成14年7月5日承認、同月16日販売開始]
[適]手術不能又は再発非小細胞肺癌 |
*2002
年7月16日の発売以降10月11日まで(推定使用患者数:約7,000人以上)に本剤との関連性を否定できない間質性肺炎を含む肺障害が22例[うち本剤との関連性を否定できない死亡例が12例]
報告されている。これらの症例には服薬開始後早期(7日未満:5例、7日-14日:7例]に症状が発現し、急速に進行する症例が見られた。間質性肺炎につ
いては、治験段階でも本剤との因果関係を否定できない症例が報告されていることから、既に「使用上の注意:重大な副作用の項」欄に記載し、本副作用につい
ての注意を喚起してきたが、今回改めて警告乱闘に記載し注意を喚起。 |
*2002
年10月:緊急安全性情報 |
[339]ticlopidine
hydrochloride
パナルジン錠・細粒(第一)
[適]1)血管手術及び血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療並びに血流障害の改善、2)慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感などの阻血性諸症状の改
善、3)虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作、脳梗塞)に伴う血栓・塞栓の治療、4)クモ膜下出血術後の脳血管痙攣に伴う血流障害の改善 |
*本剤による血栓性血小板減少性紫斑病
(TTP)、無顆粒球症及び重篤な肝障害の重大な副作用(死亡例含む)
は、主に投与開始2カ月以内に発現する。これら重大な副作用を防止するため、「警告」並びに「用法・用量に関連する使用上の注意」の項に「投与開始後2カ
月間は、原則として1回2週間分処方する」旨を追加記載し、2週に1回の血液検査を確実に実施することとした。 |
*2002年7月23日緊急安全
性情報
*1999年8月30日 医薬品等安全性情報No.156
*1999年6月30日緊急安全性情報 |
[117]olanzapineジプレキサ錠・細粒(イーライリリー)
[平成12年12月22日承認、平成13年6月販売開始]。細粒[平成13年11月29日承認、未販売]
[適]統合失調症(旧・精神分裂病) |
*2001
年6月の発売以降、本剤との関連が否定できない高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡の重篤な症例が9例(うち死亡2例)報告されている[推定使用患者数:約137,000人
(2001年12月末現在)]。高血糖については、既に「使用上の注意」欄に記載し注意を喚起してきたところであるが、これらの重篤例について検討の結
果、「使用上の注意」を改訂するとともに「警告」、「禁忌」を追記。 |
*2002
年4月
16日緊急安全性情報 |
[396]acarboseグルコバイ錠(バイエル薬品)
[適]糖尿病の食後過血糖の改善 |
*劇
症肝炎等の重篤な肝機能障害があらわれることがある。これらは投与開始後概ね6ヵ月以内に認められる場合が多いので、投与開始後6ヵ月までは月1回、その
後も定期的に肝機能検査を行うこと。
*糖尿病治療薬アカルボースの服用後、5人が副作用とみられる劇症肝炎で死亡していたことが分かり、厚生労
働省は医薬品・医療用具等安全性情報で医療機関などに注意を呼びかけた。 |
*2002
年2月医薬品・医療用具等安全性情報No.174
*2002年2月22日毎日新聞 |
[449]zafirlukast
アコレート錠(アストラゼネカ)
[適]気管支喘息 |
*ザ
フィルルカスト服用後、9人が副作用とみられる肝機能障害を起こし、うち1人が
劇症肝炎で死亡していた。 |
[249]leuprorelin acetateリュープリン注射用(武田)
[適]1)子宮内膜症、2)過多月経、下腹痛、腰痛及び貧血等を伴う子宮筋腫核の縮小及び症状の改善、3)閉経性乳癌、4)前立腺癌、5)中枢性思春期早
発症 |
*酢
酸リュープロレリンの投与を受けた患者に、肝機能障害や糖尿病が計60例報告され、うち1
人が死亡したとして、厚生労働省は31日までに、添付文書にある「重大な副作用」の項目に追加するよう指示。同日発表した医薬
品・医療用具等安全性情報で医療機関に注意を呼び掛けた。 |
*2001年10月31日医薬品・医療用具等安全性情報 No.171
*2001年11月1日 日本経済新聞 |
[232]famotidineガスター錠・注(山之内)
[適]胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群 |
*ファ
モチジンに、心臓の拍動に異常が出て血液が送り出せなくなる心室細動などの副作用があり、投与された患者が死亡したケースが3例あったとして、厚生労働省は、山之内製薬に対
し、「心疾患のある人らには注意して投与する」ことを医師らに知らせるよう指示したと発表した。 |
*2001
年9月28日 朝日新聞 |
[218]cerivastatin sodiumバイコール錠(バイエル)
セルタ錠(武田)
[薬価削除]
[適]高脂血症、家族性高コレステロール |
*高
脂血症薬「セリバスタチン」。国内でも回収開始。独バイエル社製の高脂血症治療薬「セリバスタチン」の副作用とみられる事故で全世界で52人の死亡例が報告された問題で、武田薬品工業とバイエル
薬品は、同治療薬の自主回収を日本でも始めたと発表した。独バイエルでは既に日本を除く全世界で販売中止を決めている。日本市場でも販売を中止して被害の
発生を防ぐ。 |
*2001年8月24日 日経産業新聞 |
[639]freeze-driedBCG
イムノブラダー膀注用
(日本ビーシージー製造)
[適]表在性膀胱癌、膀胱上皮内癌 |
*本
剤の投与中に、発熱、咳嗽、呼吸困難等の自覚症状とともに胸部X線異常と低酸素血症を伴う死
亡例を含む重篤な間質性肺炎があらわれることがある。このような場合には本剤の投与を中止し、速やかにステロイド剤の投与等適
切な処置を行う。 |
*2001年8月23日医薬品・医療用具等安全性情報 No.169 |
[114]mofezolac
ジソペイン錠
(三菱ウェルファーマ)
[1994年7月承認、同年11月発売]
[適]1)腰痛症、頸腕症候群、肩関節周囲炎の消炎・鎮痛、2)手術後、外傷後、抜歯後の消炎・鎮痛 |
*
非ステロイド系の消炎鎮痛剤の副作用の疑いで、患者25人に消化管出血や肝機能障害などが起き、うち1
人が死亡していたことが分かり、厚生労働省は「医薬品・医療用具等安全性情報」を出して、全国の医療関係者に注意を呼び掛け
た。 |
*2001年1月 医薬品・医療用具等安全性情報
*2001年2月1日 日本経済新聞 |
[114]diclofenac
sodium
ボルタレン錠・坐薬
(ノバルティス)
[適]1)関節リウマチ、変形性関節症、変形性脊椎症、腰痛症、腱鞘炎、頸肩腕症候群、神経痛、後陣痛、骨盤内炎症、月経困難症、膀胱炎、前眼部炎症の鎮
痛・消炎、2)手術、抜歯後の鎮痛・消炎、3)急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎含む)の解熱・鎮痛 |
*インフルエンザ脳炎・脳症の患者に対し、解熱を目的として本製剤
(錠又は坐薬)を投与した場合、生存率の予後が悪化する傾向を示す複数の疫学的研究が報告されている。また、インフルエンザ脳炎・脳症の特徴的な病理所見として、脳及び全身
の血管の障害が見出された。このことと本剤の薬理作用を考え合わせると、インフルエンザ脳炎・脳症の悪化に関与する可能性が考えられる。 |
*2000年11
月緊急安全性情報 |
[394]benzbromarone
ユリノーム錠(鳥居)ムイロジン細粒(寿)
[適]痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症における高尿酸血症の是正。 |
*本
剤投与により、因果関係の否定できない劇症肝炎の症例が8例(うち6例が死亡)
報告されている(推定使用患者数:約30万人)。従来の「禁忌」及び「使用上の注意」を改訂するとともに、新たに「警告」を追記。 |
*2000年2月緊急安全性情報
*2000年3月22日 医薬品・医療用具等安全性情報 No.159 |
[339]ticlopidine
hydrochlorideパナルジン錠・細粒(第一)
[適]1)血管手術及び血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療並び
に血流障害の改善、2)慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感などの阻血性諸症状の改善、3)虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作、脳梗塞)に伴う血
栓・塞栓の治療、4)クモ膜下出血術後の脳血管痙攣に伴う血流障害の改善 |
*1981年6月承認、1981年9月発売。推定使用患者数:
年間約100万人。血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、血小板減少、溶血性貧血、精神神経症状、発熱、腎機能障害の5主徴を呈し、早期に適切な診断・
治療が行われない場合には致死率の高い疾患である。塩酸チクロピジン投与に伴うTTPについては、海外文献を基に1995年(平成7年)6月に「海外での
重大な副作用」として注意喚起を行ったが、その後、国内においても同様の症例が報告されたため、1996年9月に「重大な副作用」の項に記載を行った。更
に、その後、塩酸チクロピジンによるTTP発症に関する論文や米国での添付文書改訂が行われたことから、1998年9月に使用上の注意をより詳細に記載す
る措置を講じてきた。しかし、平成1998年10月以降にTTPの症例が新たに11例(う
ち死亡2例)の報告があり(合計22例、うち死亡6
例)、副作用報告の増加が見られたことから、今般、添付文書に「警告」欄を新たに設けるとともに、緊急安全性情報の医療機関へ
の配布を行い、医療現場への情報提供の徹底を図ることとした。なお、従来より副作用情報に掲載するなど、度々注意喚起を行ってきた無顆粒球症および重篤な
肝障害についても併せて「警告」欄に記載することとした。 |
*1999年8月
30日 医薬品等安全性情報No.156*1999年6月30日緊急安全性情報 |
[429]flutamide
オダイン錠(日本化薬)
[平成6年10月承認]
[適]前立腺癌 |
*本
剤の投与により劇症肝炎等の重篤な肝障害が発症し、本剤との関連性が否定できない死
亡例が8例報告されている(推定使用患者数:約8万人)。このため、従来の禁忌及び使用上の注意に加えて、新たに「警告」を追
記 |
*1998年8月緊急安全性情報*1998年10月15日医薬品等安全性情報 No.150 |
[339]beraprost
sodium
ドルナー錠(山之内)
プロサイリン錠(科研)
[適]1)慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛・冷感改善、2)原発性肺高血圧症 |
*本剤を投与した患者において、間質性肺炎が3例(副作用名「胸部X
線異常影」1例を含む)発現し、1例が死亡している
ことから、「重大な副作用」に「間質性肺炎」の項を追記し注意喚起した。 |
*1998年8月27日 医薬品等安全性情報 No.149 |
[259]sildenafil
citrateバイアグラ錠(ファイザー)
[適]勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持が出来ない患者)
硝酸薬あるいは一酸化窒素(NO)供与剤:ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド等 |
*本剤は米国等において「バイアグラ」の商品名で販売されている勃起
障害治療薬であり、米国では硝酸薬との併用による死亡症例が多数報告されたため、両剤の相互作用に関する注意喚起を行っている。一方、国内において、個人
輸入等により持ち込まれているといわれており、硝酸薬を併用した患者の死亡が報
告されたことから、本剤と硝酸薬との併用による重篤な副作用に関して情報提供を行うこととした。 |
*1998
年8月27日 医薬品等安全性情報 No.149 |
[396]troglitazon
ノスカール錠(三共)
[薬価削除]
[適]インスリン非依存型糖尿病(ただし、食事療法、運動療法のみで十分な効果が得られずインスリン抵抗性が推定される場合さ
れる場合あるいはスルフォニルウレア剤が効果不十分な場合に限る) |
*1997年3月の発売以降(推定使用患者数:約15万人)に本剤との関連性を否定できない肝障害が13例(うち本剤と
の関連性を否定できない死亡例が3例)報告されている。 |
*1997年12
月緊急安全性情報 |
[722]meglumine gadopentetate
マグネビスト注(シエーリング)[適]磁気共鳴コンピュータ断層撮影における脳・脊髄造影、躯幹部・四肢造影 |
*本剤発売後約8年9カ月間(推定使用患者数:約311万人)に、
ショック、アナフィラキシー様症状をきたした症例が75例(10例が気管支喘息の患者)、うち3
例の死亡例(2例が気管支喘息の患者)が報告されている。 |
*1997
年6月緊急安全性情報 |
[323]高カロリー輸液用剤トリパレン1-2号(大塚)他[適]経口・経腸管栄養補給が不能又は不十分で、経中心静脈栄養に頼らざるを得ない場合の水分、電解質、カロリー補給 |
*高
カロリー輸液療法施行中に起こる重篤なアシドーシスについては、1991年10月に緊急安全性情報、1995年4月には適正使用情報を配布し高カロリー輸
液療法の適正の施行を期待してきた。しかし、適正使用情報配布後も重篤なアシドーシスが因果関係の不明な症例も含め15例(死亡7例)に認められている。そこで[警告]欄に『ビタミンB1の
併用を追記』。 |
*1997年6月
緊急安全性情報
*1991年10月緊急安全性情報 |
[225]fenoterol
hydrobromideベロテックエロゾル
(ベーリンガー)
[適]気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、塵肺症の気道閉塞障害に基づく呼吸困難等諸症状の寛解 |
*本
剤の定量噴霧式吸入剤の過度の使用により、不整脈、心停止等の重篤な副作用が発現する可能性があることについては、これまでに使用上の注意等により注意喚
起を行ってきたが、日本小児アレルギー学会喘息死委員会が行った調査では、1990年から1996年までに登録された喘息死亡例123例中に薬物過剰投与が指摘されたもの18例、うち
β2-刺激薬定量噴霧式吸入剤は11例、そのうち本剤によるもの7例で
あったの報告がされた。 |
*1997年5月緊急安全性情報 |
[441]terfenadineトリルダン錠(ヘキスト)
[薬価削除]
[適]1)気管支喘息、2)アレルギー性鼻炎、3)蕁麻疹、4)皮膚疾患に伴う掻痒(湿疹・皮膚炎、皮膚掻痒症) |
*発
売5年間で本剤による重篤なQT延長、心室性不整脈の副作用が7例認められ、1995年1月『警告』欄を設けるとともに使用上の注意を改訂した。その後2
年間で同様な死亡に至るおそれのある副作用として
QT延長、心室性不整脈が10例認められている。これらの副作用はいずれも禁忌及び慎重投与に該当するハイリスク患者で発現している。 |
*1997
年2月
緊急安全性情報 |
[634]輸血用血液[適]一般の輸血適応症 |
*輸
血後GVHDは、一度発症するとほぼ全例が致死的な経過をたどる重篤な副作用で
ある。日本赤十字社は1996年4月輸血後GVHDの危険性の周知と発症予防のための緊急安全性情報を配布した。しかし、その後の輸血でも引き続き7例が
報告されている。輸血後GVHDに対する有効な治療法は未だ確立されていないので、発症予防が唯一の対策である(放射線照射)。 |
*1996
年12
月緊急安全性情報
*1996年4月緊急安全性情報 |
[241]menopausal
gonadotrophin(HMG)
ヒュメゴン注(オルガノン)
[適]間脳性(視床下部性)無月経、下垂体性無月経の排卵誘発 |
*hMG-hCG療法において卵巣過剰刺激症候群が発現することがあ
り、更に血液濃縮・血液凝固能の亢進による血栓症や脳梗塞等の重篤な副作用が認められたことから1995年5月には使用上の注意に記載した。今回、過去3年間に遡り重篤な副作用について再度調査を行ったところ、5例の脳血栓症を含む20例の重篤な卵巣過剰刺激症候群が認められ
た。これら以外にも過去3年間に10例の血栓症・脳梗塞等の発現が認められた。 |
*1996年4月
緊急安全性情報 |
[241]human
chorionic gonadotrophin(HCG)
ゴナトロピン注(帝国臓器)[適]無排卵症(無月経、無排卵周期症、不妊症)、機能性子宮出血、黄体機能不全症、停留精巣、造精機能不全による男子不妊症、下垂体性男子性腺機能不全
(類宦官症)、思春期遅発症、精巣・卵巣の機能検査、妊娠初期の切迫流産、妊娠初期に繰り返される習慣性流産 |
[520]小柴胡湯(各社)
[適]1)体力中等度で上腹部が張って苦しく、舌苔を生じ口中不快、食欲不振、時により微熱、悪心などのあるものの次の諸症:諸種の急性熱性病、肺炎、気
管支炎、感冒、胸膜炎・肺結核などの結核性諸疾患の補助療法、リンパ節炎、慢性胃腸障害、産後回復不全、吐気、食欲不振、胃炎、胃腸虚弱、疲労感及び風邪
の後期の症状、2)慢性肝炎における肝機能障害の改善 |
*小
柴胡湯による重篤な副作用『間質
性肺炎』については、既に使用上の注意に記載し注意を喚起しているところであるが、1994年1月の改訂以降、間質性肺炎88例、うち10例の死亡例が報告されている。 |
*1996年3月緊急安全性情報 |
[625]sorivudine
ユースビル錠(日本商事)
[薬価削除]
一般名:sorivudine
商品名:ユースビル錠(日本新薬)
含有量:50mg/錠 1日3回適応症:帯状疱疹
作用機序:経口の抗ヘルペスウイルス薬で、ヘルペスウイルスに感染した細胞内に特異的に取り込まれ、ソリブジン三リン酸になる。ソリブジン三リン酸はチミ
ジン三リン酸と強く拮抗し、ウイルスDNAポリメラーゼに直接作用して、ウイルスのDNAを阻害する[高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,
1996] |
*抗
ウイルス剤ユースビル錠(ソリブジン)とフルオロウラシル系薬剤(テガ
フール、ドキシフルリジン、FU等)との併用により、白血球減少、血小板減少等の重篤な血液障害を発現した症例が7例報告されており、うち3例は死亡に
至っている。フルオロウラシル系薬剤とユースビル錠(ソリブジン)の併用は絶対にしない。最
終的に併用により16名死亡。 |
*1993年10
月緊急安全性情報 |
[114]sodium
salicylate・caffeine
ザルソカイン注(宇治)
[薬価削除]
[適]解熱・鎮痛剤 |
*本
剤の静脈内投与によるショックの発現が現在までに5例報告されており、このうち3
例は死亡。 |
*1993年8月緊急安全性情報 |
[323]高カロリー輸液
トリパレン1号・2号(大塚)
ハイカリック液1号・2号・3
号(テルモ)
ハイカリックNC-L・N・H(テルモ)
[適]経口・経腸管栄養補給が不能又は不十分で、経中心静脈栄養に頼らざるを得ない場合の水分、電解質、カロリー、アミノ酸補給 |
*高
カロリー輸液療法施行中に発現する重篤なアシドーシスについては、1991年10月に緊急安全性情報、1995年4月には適正使用情報を配布し高カロリー
輸液療法時の適正な使用を促すとともに、医薬品副作用情報No.111(1991年11月号)、No.123(1993年11月号)、No.128
(1994年10月号)において症例の紹介あるいは解説を行い注意を喚起してきた。しかし、その後重篤なアシドーシスの発現について因果関係の不明な症例
も含め15例(死亡7例)の報告が寄せられている。
*高カロリー輸液療法の適応患者は経口、経腸管栄養
補給が不能又は不十分で、経中心静脈栄養に頼らざるを得ない状態であり、全身状態は一般的に不良である場合が多い。報告された症例のうち、ビタミンB1を
投与していたにもかかわらず重篤なアシドーシスを発現した6例をみると、高齢者であったり、合併症として感染症、腎不全等の腎障害、重篤なアシドーシスを
発現しやすい病態の患者である。 |
*1991年10
月緊急安全性情報 |
[211]vesnarinone
アーキンZ錠(大塚)
[適]慢性心不全(軽度-中等症)の状態で他の薬剤を投与しても効果が不十分な場合 |
*アー
キン錠60(ベスナリノン)の発売後6カ月間(推定使用患者数:約17,000人)の投与期間中に、白血球減少、顆粒球減少をきたした症例が43例報告さ
れている。このうち無顆粒球症に至った症例は24例で、少なくとも4例は敗血症
等の重篤な感染症を続発して死亡。 |
*1991年3月緊急安全性情報 |
[212]propafenone
hydrochloride
プロノン錠(山之内)
[適]頻脈性不整脈で、他の抗不整脈薬が使用できないか又は無効の場合 |
*塩酸プロパフェノン(プロノン
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木曜日, 8月 16th, 2007
外用剤に分類される薬は、意外にその種類が多く、どの薬がどこに分類されるのか、甚だ分かりにくいというのが実体である。一般的に皮膚に塗布して使用される薬は、皮膚から薬を吸収させる目的の場合と、皮膚そのものの病変部に作用させる局所適用-炎症を起こした皮膚、湿疹を起こした皮膚等、皮膚病変部に直接塗布する場合とがあり、皮膚からの吸収を目的とするものを『経皮投与』、皮膚病変部に治療目的で直接塗布するものを『局所投与』と区分している。
しかし、実際には、使用されている基剤(主薬以外の成分)によって、主薬が皮膚病変部のみに効果を発揮する場合と、皮膚を経由して吸収されて、吸収部位に効果を発揮する場合とがある。更に最近では皮膚に貼る(貼付)ことにより、全身的な効果を期待する薬物も発売されるようになっている。
ただし、今回は主として『局所投与』の外用剤について、その特徴・使用目的・使用方法を紹介する。『局所投与』は、軟膏の主薬、基剤の相違によって、リント布に薄く伸ばしてから患部に貼る場合、患部にそのまま塗るか、擦り込む場合、又は密封療法として軟膏を塗布し、通気性のない布等で覆う(被覆)場合など、それぞれ使い分けることが必要なため、医師の指示を確認することが必要である。
一般の薬局等で購入できるOTC薬の場合、薬に添付されている説明文書中に、それぞれの使用上の注意が記載されているので、使う前に必ず読むことを習慣付けることが必要である。
剤型区分 |
使用方法 |
適応及び特性 |
油脂性軟膏
(oleaginous ointment)■油脂性軟膏は、種々の油脂が軟膏基剤として用いられ、古くから皮膚外用剤として最も安全・効果の高いものとして使用されている。■植物油としてオリーブ油・ヒマシ油・菜種油・落花生油・椿油等。
■動物性油脂として肝油・ラノリン・豚脂・蜜蝋等。
■鉱物性油として流動パラフィン・ワセリン等。 |
□油脂性軟膏は、元来、湿潤性(湿ってぐゅじぐしゅした)病変に貼付して使用するもので、糜爛(びらん;ただれ)、痂皮(カサブタ)、潰瘍面、小水疱・膿疱(膿を含んだ水疱)等にも軟膏をリントに厚目に伸ばしたものを3×4cm角に切り、更にハサミで切れ込みを入れて病変部に貼付する。
□丘疹(皮膚上に円錐状の隆起)や落屑(表皮角質層上部の薄片脱落)等の乾燥性病変にも使用することができ、この場合には手指を用いて薄く塗布する。
□塗布の場合1日2-3回、貼付の場合には1日1-2回、新しい軟膏と付け替えるが、軟膏を塗布し直すとき、水で洗い落とすことができないので、植物油を含ませた綿で拭き取る。 |
*皮膚の保護、乾燥防止、柔軟作用・冷却、消炎作用がある。その他、痂皮(カサブタ)面に貼付すると痂皮軟化除去作用、糜爛・潰瘍面に用いて肉芽形成促進、表皮形成促進作用がある。
*油性が強く、水を殆ど含んでいない。べとべとして洗い流すことが難しい。塗布面がてかって光ったり、外観がいかにも軟膏を塗布したという感じになる。軟膏は皮膚が乾燥し、潤滑又は湿気を必要としているとき最も適切。
*油脂性軟膏基剤は、紅斑・丘疹等の炎症性病変から小水疱・膿疱・糜爛等の浸潤面や痂皮・潰瘍に至るまで非常に広範囲の適応がある。
*油脂性基剤軟膏は乳剤性軟膏基剤との比較で、配合薬剤の経皮浸透力は弱いが、皮膚刺激作用が殆ど無く、安全な基剤として使用されている。 |
乳剤性軟膏(クリーム)(emulsion ointoment)
■水(水溶液)と油(油溶液)の混合物に乳化剤を加えて乳剤としたもので、乳化剤の種類により水相中に油滴の分散した水中油型乳剤性軟膏(O/W)と、油相中に水滴が分配した油中水型乳剤性軟膏(W/O)とに分類。 |
□通常、病変部に塗布して用い、ガーゼやリント布にのばして貼付することはしない。
□但し、副腎皮質ステロイドホルモン剤配合のクリームの使用法として密封法(ODT法)があり、クリームを塗った上からポリエチレン紙で覆い、周囲を絆創膏で密封する方法がある。 |
*各種薬剤との練合性がよく、配合薬剤の経皮浸透力が強い。塗布したとき擦り込むと消えて見えなくなり、外観が美しく清潔で、水で容易に洗い落とすことができる。顔、手掌等に使用する場合に便利。*経皮浸透力が強いため、分泌液の多い湿潤面に使用すると、分泌物を逆浸透させて症状を悪化させる危険があるので、湿潤面には使用しない。 |
水溶性軟膏
(water soluble ointment)
■完全に水に溶ける基剤主としてマクロゴール(ポリエチレングリコール)が使用される。
■各種薬剤を溶解するのに適しており、水によく溶解し、強い吸水、吸湿作用を有するので皮膚病変の分泌液を吸着する力が強い。また塗布したときの外観が美しく、清潔で、容易に水で洗い落とすことができる。 |
□分泌物の少ない病変には塗布してもよいが、普通はガーゼに厚めにのばしたものを病変面より少し大きめに切って貼付し、その上に必ず数枚のガーゼを重ねて絆創膏で固定する。リント布は軟膏の吸着した水性分泌物を吸収しないので使用しない。
□水溶性軟膏基剤の吸水性は極めて強いので、湿潤面が乾燥しすぎて病巣面にひび割れを生ずることがある。 |
*水疱・膿疱・糜爛・潰瘍などの湿潤病変を示す第二度熱傷・湿潤性の湿疹・水疱症・感染症等に使用する。 |
泥膏
(pasta)
■粉末剤を多量に含む油脂性の外用剤で、軟膏より硬いものをいう。現在では使用頻度は少ない。 |
□泥膏は手指を用いて塗擦し、泥膏を皮膚面によく付着させる。その上から叩いておくのが、原則的使用法である。貼付して用いることはない。 |
*皮膚保護作用・冷却・消炎作用があるが、粉末剤が多く含まれているので、分泌物吸収作用や乾燥作用が強い。しかし軟膏に比べ痂皮軟化・肉芽形成・表皮形成作用は弱い。
*急性湿疹の治癒期の鱗屑の除去や慢性湿疹の湿潤性病変に対して浸潤除去作用を有する。
*急性湿疹の落屑期・慢性湿疹・痒疹・苔癬・尋常性乾癬等の浸潤性炎症に対して使用される。 |
硬膏
(plaster)
■油脂・蝋等に樹脂・弾力ゴム等の粘着剤を加えた混合物で、常温では固体であるが、皮膚面に用いると体温で軟化し粘着性となり、皮膚に膠着する。主として皮膚保護・角質軟化等の作用がある。 |
□鶏眼に用いるときは、サリチル酸絆創膏を芯の大きさにできるだけ小さく切って貼付する。その上から普通の絆創膏で固定し、数日間(5日間位)そのままにして、白くふやけた部分をカミソリの刃等で、出血しないよう注意して削る。
□副腎皮質ホルモン配合剤のテープは、病巣面よりやや大きめに切って病巣面に貼付し、通常は夜間約12時間貼付し、昼間は剥がして副腎皮質ホルモン剤配合軟膏又はクリームを使用する。夏季に長時間貼付すると、汗疹、毛包炎等を起こすので注意。 |
*硬膏には紙や布にのばした絆創膏とポリエチレン紙にアクリル樹脂やゴム系粘着剤をのばしたテープ剤がある。
*皮膚に粘着して外的刺激から保護し、サリチル酸絆創膏は鶏眼(ウオノメ)、胼胝(タコ)等に角質軟化作用を、副腎皮質ホルモン剤配合テープは慢性湿疹・痒疹・尋常性乾癬・掌蹠膿疱症・ケロイド等に抗炎症作用を示す。 |
ローション剤(lotion) |
懸濁性ローション
(振盪合剤)(shake lotion)
■懸濁性ローションは水(液体)に粉末を配合してつくられるが、疎水性粉末を用いる場合には懸濁を助けるためにアラビアゴム・トラガカント・ベントナイト・メチルセルローズ等の懸濁化剤が用いられる。 |
□軟膏のようにべとつくことが無く、また容易に水で洗い流すことができる。その作用効果は配合した薬物の作用によるが、薬剤を経皮浸透する力は乳剤性ローションに劣り、作用は表面的である。 |
*水・アルコール等の液体中に不溶性の薬剤(粉末剤)が懸濁しているもので、静置すると時間とともに粉末剤は沈殿して液体と分離するが、振盪すると再び粉末剤が液体中によく分散する。 |
乳剤性ローション(emulsion lotion)
■水溶液と油溶液に乳化剤を加えて乳化し、水中油型乳剤(O/W)としたもの。
■クリームに類似しているが、より多くの水を含有。実際には水あるいは水と油を溶媒として、その中に微細な粉末を溶かしたもの。 |
□塗布することは容易で、特に皮膚を冷やしたり乾燥させるのに適している。
□被髪頭部によく用いられる。 |
*配合される薬剤を経皮浸透させる作用が強い。また外観が美しく、皮膚に塗布してもべとつくことが無く、容易に水で洗い落とすことができる。*糜爛面や浸潤面に用いると分泌物を再浸透させて症状を悪化させることが多く、また痂皮(カサブタ)除去作用も弱いので、主として乾燥性病変に塗布して用いられる。 |
液体外用剤 (Liquids)
■液体外用剤とは、溶剤(溶媒)に種々の薬剤を溶解したもの。溶剤の主なものに蒸留水・アルコール・グリセリン・油脂・プロピレングリコール・ポリエチレングリコール等。最も一般的に用いられている液体は、蒸留水。 |
液剤 (soluion)
■不揮発性薬物の水溶液を液剤という。 |
□塗布して用いる。 |
*水は皮膚を清潔にし、そのまま湿布や浴湯に用いられる他、種々の薬物を溶解して液剤として使用される。*溶液は皮膚に潤いを与えるより、むしろ乾燥させる傾向がある。 |
アルコール剤
(alcohlic solution)
■種々の薬品を溶解して、アルコール剤として使用する。そのうち揮発性薬品のアルコール溶液を酒精剤(spirits)、不揮発性薬品のアルコール溶液をチンキ剤(tinctures)という。 |
□アルコール剤は塗布して用いる。
□表皮に病変があると染みたり刺激症状が現れることがある。 |
*刺激を緩和し、揮発性薬品の揮発を抑える意味で、多くの場合グリセリンやヒマシ油が加えられる。 |
油脂剤(oils)
■植物油としてオリーブ油・ヒマシ油・菜種油・落花生油・椿油等。
■動物性油脂として肝油・ラノリン・豚脂・蜜蝋等。■鉱物性油として流動パラフィン・ワセリン等。 |
□軽度の潮紅を示す炎症面や第1度熱傷に塗布するが、最近では単独で使用することは少なく、粉末剤等と混和して油脂性軟膏として使用することが多い。
□植物油は綿に含ませて、油脂性軟膏や軟化した痂皮を拭き取るのに使用する。 |
*皮膚を外的刺激から保護し、鱗屑や痂皮を軟化するほか、水分蒸発抑制・皮膚乾燥防止などの作用がある。
*軽度の潮紅を示す炎症面や乾燥性皮膚面に塗布する。ただし、フケ(脂漏)に用いると、かえって鱗屑(皮膚の薄く剥がれたもの)や痂皮(カサブタ)が増加し、症状を悪化させるので注意を要する。このようなときには軟膏類の塗布又は貼付がよい。 |
グリセリン剤
(glycerites)
■外用剤の原料として使用。種々の薬品を溶解し、グリセリン剤として使用。 |
□単独で塗布して用いることもある。 |
*無色透明、やや粘性のある液体で、水分吸収、皮膚軟化作用がある。 |
粉末剤(powder)
■粉末剤には植物性(澱粉)、鉱物性(亜鉛華、タルク等)、動物性の3種類があるが、現在動物性のものは殆ど使用されていない。 |
□個人用にはパフを用いる。一般には粉末剤を綿に含ませるか、又は綿花をガーゼで包んだものを用いて軽く叩くようにして散布す
る。
□粉末剤を過剰に使用すると汗腺口や毛孔を塞いで、かえって汗や皮脂の鬱滞を来すので注意すること。また、糜爛・潰瘍等の湿潤面には使用しないのが原則。 |
*あせも(汗疹)等の軽い炎症面に散布する。皮膚と皮膚が擦れ合う部分を護るために使用される乾燥した製剤。足指、臀部の間、腋の下、股の付け根部分、あるいは乳房の下等に用いられる。
*粉末剤は柔らかくなった皮膚(湿潤部分)を乾燥し、湿気を吸収することによって摩擦を軽減する。
*粉末剤は保護剤としてクリーム、ローション、軟膏などと混合して使用することもある。その他、油脂性軟膏を塗布した上から、軟膏が皮膚面によく付着するように散布する使用法もある。
[特性]粉末剤を散布すると皮膚面を外的刺激や摩擦等から保護し、汗や皮脂その他の分泌物を吸着して皮膚面を乾燥させ、水分を蒸発して冷却、消炎的に作用。 |
ゲル(gel)
■コロイド粒子が固まってゼリー状になったもの |
□基剤中の溶剤による刺激があるため亀裂、糜爛面への使用は回避する。 |
*油類や脂肪を用いずに濃縮された水ベースの物質。皮膚は、油分や脂肪を含む薬剤を吸収する程には、ゲルを吸収しない。 |
[015.11.OIN.2004.1.10.]
- 大宮清司・監修:改訂 看護のための薬品管理学;薬業時報社,1987
- 福島雅典・監修:メルクマニュアル医学情報[家庭版];日経BP社,1999
- 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2000
- 野波英一郎:改訂第2版 皮膚外用剤療法の実際;中外医学社,1989
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木曜日, 8月 16th, 2007
[1]坐薬の使い方
薬の使い方による分類法として、内用薬・外用薬・注射薬という分け方があることについては、本章の『1.薬の形(剤形)』で既に述べた。内用薬はいわゆる『飲み薬』で、経口剤ともいわれている薬である。外用薬はもっぱら『塗ったり・貼ったり・挿入』したりする薬である。注射薬は、ご存じの通り、注射器を使って筋肉や静脈内等を経由して薬を直接体内に入れる仕組みということである。
『外用薬』は、一般に赤い文字で印字した薬袋に入れて渡されるが、飲む薬ではないということを強調するために、薬袋の色が換えられている。
ところで『坐薬』であるが、これは明らかに外用薬であるから、飲む薬でない。従って「この薬は坐って飲まないと何か事故が起こるのでしょうか?。」というお訊ねは、基本的に間違いだということになる。
『坐薬』には、痔の治療を目的とするものの他、全身作用(熱を下げる、痛みを抑える)を目的として使用されるものがある。もし、『坐薬』は痔の治療にのみ使用するものだと考えているとすれば、熱がある、あるいは痛みがあるというときに、坐薬が処方されると、薬は飲むものだという先入観から『坐薬』を飲んでみたいという誘惑に駆られるのかもしれないが、そのような誘惑には負けないでいただきたい。
『坐薬』の使用方法は『肛門に挿入する』のが正しい使い方である。
しかし、薬の説明をするとき、特に相手が若い女性の場合、肛門等という言葉は言い難いということがあり、「お尻に入れてください」等と説明するので、「お汁に入れて飲んだけれど、とても飲めるものではないので、薬を換えてください」等という笑えない話がでてくるのである。
- 『坐薬』が出された場合、自宅に戻ったら直ちに冷蔵庫に入れてください。温度により柔らかくなったり、変形したりします。薬の安定性に影響する場合もありますから、必ず冷蔵庫に入れておいて下さい。
- 『坐薬』を使用する場合、箱入りの場合には箱から出してください。次に銀紙に包まれていたらそれも外してください。プラスチックのコンテナに入っている場合もありますが、そのままでは使用できませんので、それも外してください。コンテナのまま挿入しようとして、肛門が切れて出血したという例があります。ロウソクみたいな感じの紡錘形のものが出てくるはずです。それが『坐薬』の本体です。
- 『坐薬』を使用する前に、出来れば排便しておいて下さい。『坐薬』を挿入し便意を催し、排便してしまっては、期待された効果が得られません。
- 『坐薬』を『肛門』に挿入するとき、素手で『坐薬』に触れないでください。ティッシュで『坐薬』の細い方をつかみ太い方から挿入します。直接、指でつままないと挿入できない場合は、石鹸を使って十分に手を洗い、挿入後も同様に石鹸を使って手洗いをしてください。
- 『坐薬』を女の赤ちゃんに挿入する場合、挿入場所をはっきり確認してから挿入してください。間違えて膣内に挿入した例が報告されています。
なお、坐薬の使用に際して注意することの一つとして、基剤の違いによって主薬の吸収に差が見られることである。熱性痙攣の治療薬であるdiazepam(ジアゼパム)の坐薬と解熱剤の acetoaminophen(アセトアミノフェン)の坐薬を併用した場合、直腸内腔液に溶解した使用性のdiazepamが、 acetoaminophen坐薬の油脂性基剤に一部取り込まれ、diazepamの吸収が遅延するのではないかとされている点である。
『熱性痙攣の指導ガイドライン』では
『diazepam坐薬を使用する場合、解熱薬を経口投与にするか、坐薬を併用する場合には、diazepam坐薬を投与後すくなくとも30分以上間隔を開けることが望ましい』とする記載がされている。
因みに『坐薬』を誤って服んでしまったとしても、特に重篤な障害がでることはないので、心配することはないが、当初の治療の目的は果たせないということにもなるので、薬は正しく使用することが必要である。
[2]頓用について
『とんよう』等というと、そそっかしい人は、『豚用』などという文字を思い浮かべて、動物用の薬ではないのかと思うかもしれないが、これは由緒正しい『薬の服み方』の一つである。
『頓』には「にわか」の意味があるということであり、横文字の『potion』には「一服」とする訳が付けられている。
従って『頓服』あるいは『頓用』とは、「にわかに服む」か、あるいは「にわかに用いる」という意味があることになる。つまり『頓服(potion)』あるいは『頓用』とは、薬を継続的に使用するのではなく、必要時に1回服用することを目的とした服み方ということになる。
それでは『必要な時とはどんな時?』ということになるが、おおよそ想定されている症状としては
『頭痛時』、『疼痛時』、『胸痛時』、『胃(腹)痛時』、『発作時』、『熱発時』、『肩こり時』、『吐気のある時』、『咳のでる時』、『不眠時』、『便秘時』
等があげられている。
つまりこれらの対象となる症状が発現した時に、その症状を改善する目的で投与される薬であり、頓用の目的は、あくまで対象とする症状に合わせて、その時限りの単発で服むことが目的の薬ということである。従って続けて服まなければならない継続的な治療を必要とする病気には、馴染まない投与方法ということになる。
頓用の1回投与量は、処方薬剤の1回量を基準として、投与間隔あるいは1日の服用回数限度は、処方薬剤の作用発現時間、作用持続時間、生物学的半減期、薬剤の排泄動態等を勘案して決定することとされている。
但し、保険診療上の『頓服薬』に関する考え方は、旧厚生省通知等で、次の通り規定されている。
- 頓服薬は、1日2回程度を限度として臨時的に投与するものをいい、1日の服用回数が2回以上で、かつ、服用に時間的、量的に一定の方針のある場合は、内服薬とする。頓服薬は、症状に応じて臨時的服用を目的として投与するものをいう。
(昭24.10.26.保険発第310号)
- 十二指腸虫駆除の際に使用される四塩化炭素、チモール等は、投与方法が1日2回以上にわたり、時間的、量的に一定方針ある場合は内服薬とし、1回の場合は頓用とする。
(昭24.10.26.保険発第310号)
(参考):頓服薬とは一般に「臨時的に投与するもの」とされているが、医師個人により考え方に差があるため、睡眠薬、緩下剤、降圧剤で内服薬とすべきだと思われるレセプトが散見される。
特に1日1回服用のものは、例え長期又は定期的なものであっても、頓服薬と考えていると思われるケースが多い。
内服・頓服の区分については『原則として内服薬とは、医師が「食前」等と服用時間を指示したもの』、『頓服薬とは「痛みのあるとき服用」というように症状がでたときに患者の判断で服用するもの』としており、例外的に駆虫剤等臨時的なものに限り、内服時間を医師が指示したものであっても頓服薬と考えることとしている。
上記の旧厚生省の文書は、昭和24年のものであるが、現在も取り消し等の通知が出されていないため、上記通知に基づく判断が『頓服』に関する旧厚生省の見解ということである。
なお、頓用薬の投与量については、『頓服薬は1回量を基準として5単位以内で、月3回(12単位)』とするの記載もみられる。
その他、平成12年4月21日付事務連絡(地方社会保険事務局・都道府県民生主管部(局)・国民健康保険主管課(部)宛、厚生省保険局医療課発)「疑義解釈資料の送付について」として
Q1.頓服薬の投与許容回数に目安はあるのか。例えば14日処方の中に、頓用28回分はかまわないのか。
(答)昭和24年保険発310号で「頓服薬は1日2回程度を限度として臨時的に投与するものをいい、1日2回以上にわたり時間的、量的に一定の方針のある場合は内服薬とする」とされている。例えば、ニトログリセリン錠のように、頓服で処方された薬剤の特性等からみて妥当であれば構わない。なお、院外処方せん受付時に必要があれば処方医に紹介すること。
とする疑義解釈が例示されている。
つまり『頓服薬』は、患者の都合で、何回分欲しいと申し出ても、申し出た回数分を出すことができないという決まりがあるということである。
[015.11.SUP.2004.1.9.]
- 安藤鶴太郎・他:優秀処方とその解説 第37版;南山堂,1996
- 診療点数早見表 11月4日増補;医学通信社,1998
- 坂上正道・監修:レセプトの基礎知識;株式会社ミクス,1999
- 古泉秀夫:市販坐薬の基剤の物性・併用投与について[I];クラヤ三星堂薬報,No.43:4-5(2001.7.6.)
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木曜日, 8月 16th, 2007
[1]はじめに
経口投与される薬剤の服用時間が、原則として“食事時間”に合わせてある のは、服用忘れを防止するためであり、薬効その他、特に支障のない場合は、食直後の服用指示で、特に問題はないと考えられる。また高齢者では、服み忘れを防止する意味で、『食直後』での服用が適している。また、高齢者では、薬の服用時間が複雑な組み合わせとならないよう、処方せんの記載に際して注意することが必要である。
薬の用法は、医師によって処方せんに記載されるべきものであって、記載さ れていない処方せんは“不備処方せん”ということである。院内処方せんの場合、院内の約束事に従って、薬剤師の判断により用法の決定をすることができるが、院外処方せんの場合は、処方医に確認することが求められる。
処方せんに関する薬剤師からの疑義照会を回避するためには、医師は処方せ んの記載に正確を期すことが第一である。また患者の安全確保の点からも処方せんの記載は常に吟味することが必要である。
[2]服む時間の基本的事項
(1)薬の作用を迅速・的確にするためには、空腹時(食前30分又は食後2 時間)に服用する。
理由:食物等に吸着されることがなく、吸収が良いと考えられている。
(2)薬の副作用を少なくするためには、満腹時(食直後)に服用する。
理由:胃粘膜に直接の刺激が少なく、吸収も緩慢となるため。
(3)薬の効力(血中濃度)を常に一定するためには数回(1日4-5-6 回・4時間おき又は6時間おき)に服用する。
理由:血管内に吸収された薬は普通4-5時間後に分解排泄し始める。ただ し、持効性製剤は別。
[3]通常使用薬剤の服用時間
服用時間 |
該当薬 |
毎食前30分 |
整腸剤、食欲増進剤、鎮吐剤、その他一般水剤、漢方薬 |
食直後又は毎食後30分 |
消化剤、解熱剤、その他一般散剤・錠剤・カプセル剤 |
毎食後2時間又は毎食前1時間 |
鎮静剤、鎮咳剤、強心剤、制酸剤、胃酸により効力を減ずる薬剤。 |
朝・昼・就寝前又は朝・就寝前 |
胃酸分泌抑制剤(ヒスタミンH2拮抗剤、抗コリン剤等)、気管支拡張剤(交感神経興奮剤)、抗ア レルギー剤。 |
1日1-2回(朝・昼) |
強力利尿剤、利尿性強心剤、利尿降圧剤、精神神経賦活剤(覚せい剤)。 |
毎食直後 |
胃粘膜を障害(強刺激性)する薬剤。 |
就寝前30分(午後9時-10時) |
催眠剤、緩下剤、筋弛緩剤、ヒスタミンH2拮抗剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー 剤、鉄剤。 |
就寝前空腹時又は早朝空腹時 |
駆虫剤 |
1日4-5-6回・毎4時間又は6時間(又は毎食後及び就寝前、毎食間及び就寝前) |
化学療法剤、抗生物質、プロスタグランジン剤[ornoprostil(胃潰瘍:アロカ・ロノッ ク)1日4回(食間・就寝前)] |
1日1回-毎24時間又は1日2回-毎12時間あるいは朝夕 |
持続性(持効性)薬剤 |
[4]常用される用法指示例
服用回数 |
用法指示例 |
1日1回 |
朝(食前・食直後)、早朝空腹時、起床時、夕食後、就寝前、毎24時間 |
1日2回 |
朝夕(食前・食後)、朝昼(食後)、朝晩、朝・就寝前、午前○時と午後○時、毎12時間 |
1日3回 |
食前30分、食前1時間、食後30分、食後1時間、食後2時間、食直前、食直後、毎8時間 |
1日4回 |
毎食後と就寝前、毎食後1(2)時間と就寝前、毎6時間 |
1日6回 |
毎食前と毎食後、哺乳時(哺乳前15分)、毎4時間 |
週2-3回(2-3日) |
週2回○曜と○曜(週3回○曜・○曜・○曜) |
隔日 |
1日おきに、隔日に |
頓服 |
頭痛時、疼痛時、胸痛時、胃(腹)痛時、発作時、発熱時、肩こり時、吐き気のある時、咳のでる 時、不眠時、便秘時、空腹時 |
その他 |
乗車・乗船前30分、手術前○時間、検査日前○日より |
[5]摂取食物の移動時間
薬物の服用時間を食事時間に合わせる以上、摂取食物の移動時間を確認して おくことも必要である。次に標準的な推移時間を紹介する。
移動時間 |
部位 |
食事後15分 |
胃から十二指腸に移行し始める。 |
食事後2-5時 |
胃内容は空になる。 |
食事後3.5時 |
回盲部に達する。 |
食事後4.5時 |
結腸に移行し始める。 |
食事後6 時 |
栄養物は殆ど吸収され、上行結腸局に達する。 |
食事後9 時 |
下行結腸局に達する。 |
食事後12時 |
S状結腸に達する。 |
食事後12-24時 |
排便する。 |
[015.11.REC: 2004.1.4.]
- 安藤鶴太郎・他:優秀処方とその解説 第37版;南山堂,1996
- 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
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木曜日, 8月 16th, 2007
[1]用法による分類
薬の形(剤形)の分類として、機能的な分類の他に、用途に基づく分類がある。つまり錠剤という一つの剤形に対して、それぞれの用途に基づく名称が付けられている。例えばバッカル錠(buccal:頬側の)、チュアブル錠(chewable:噛まれる物:咀嚼)等は、その使用部位をそのまま名称にしている。また、トローチ錠(troche tablet)については、口腔内に入れるにもかかわらず、『外用錠』に分類されているが、これは本剤の用途が全身作用を目的とするのではなく、局所作用を目的としているためと考えられる。その他、注射錠の名称が見られるが、現在では凍結乾燥による用時溶解の粉末製剤が主体であり、注射錠は製剤として見あたらない。
注射剤についても、それぞれ用途別に、皮内・皮下・筋肉内等の分類がされ ており、筋肉内注射を静注に使用すると、障害が起こる恐れのある薬物も存在する。従って薬物は用途別の分類に準拠して使用をすることが原則である。
[2]用途別分類
|
分類 |
剤形特性 |
内用錠 |
内服錠 |
内服する裸錠、糖衣錠、腸溶錠などを総称して内服錠。錠剤は通常水と一緒に服むが、水によって服 みやすいことの他に、消化管内での崩壊を助ける。 |
舌下錠 |
口腔錠の一種で、舌下に挿入して口腔粘膜から直接速やかに吸収させることを目的とした錠剤であ る。作用は全身作用で速効性がある。狭心症の発作時にニトログリセリン錠が使用されるが、揮散性があるため保管には注意する。 |
バッカル錠 |
口腔錠の一種で、頬側部に挿入して口腔粘膜から直接徐々に吸収させるようにした錠剤(バリターゼ バッカル)。 |
チュアブル錠(咀嚼錠) |
口腔錠の一種で、口中で噛んでも、しゃぶっても、そのまま服み込んでもよいが、ガムを噛むように することからの別名カムカム錠ともいわれる。口腔粘膜から吸収された薬物は、肝臓を 通らずに血行に入るので、錠剤の中では速効性。 |
外用錠 |
口中錠
(トローチ) |
口中で徐々に溶解させ、口腔や咽喉などの粘膜に殺菌、収斂などの局所作用をする錠剤である。製剤的には外用剤であるが、患者に与薬する際には、内用の薬袋を使用し、「噛 み砕いたり、そのまま服み込んだりしないで、口の中でしゃぶって溶かして下さい」と説明する(複合トローチ)。 |
溶解錠 |
溶液のまま保存すると分解・変質する薬物を錠剤にして保存し、用時溶解液に溶かして使用する方式 で点眼剤、消毒剤(携帯用)がある(タチオン点眼液、カタリン点眼液、含嗽用アズレン錠)。 |
膣錠 |
膣内に挿入して殺菌、防腐、消炎などの目的に使用する錠剤(エンペシド膣錠等) |
注射錠 |
使用時に注射用蒸留水に溶解して注射剤の調製に用いる無菌的に製した錠剤。最近では凍結乾燥や無 菌操作による粉末の容器への封入により安定な製剤化。 |
注射剤 |
皮内注射 |
皮膚は表皮、真皮、皮下組織の三層よりなり、皮内注射は表皮と真皮の間に注射する。通常は注射部 位は前腕内面、上腕外側が選ばれる。少量の薬液を緩徐に吸収させたい場合、また薬液と生体の反応を確認したい場合:ワクチンの接種・ツベルクリン反応・ア
レルギー反応確認のための皮内テスト等。 |
皮下注射 |
皮下結合組織内に注射する。この部分にはリンパ間隙が多いので割合大量の薬液が注入できる。通常 内服量の1/2-3/4程度の用量で同程度の効果。 |
筋肉内注射 |
大臀筋、三角筋の中に注射することをいう。注射針を深く筋肉に差し込むので神経を損傷することが ある。特に大臀筋肉注射の場合は、坐骨神経を傷つけないよう注意。皮下注射ほど大量の薬液を注入することは出来ない。筋肉は皮下より血管の分布が密なので
吸収は速やか。皮下注射し難い刺激性の薬液も注射が可能であるが、局部刺激の強いものは壊疽を起こすおそれがあり、避けなければならない。油性剤・懸濁剤
等は筋肉内から徐々に吸収されるので、作用の持続性を持たせる目的で筋肉注射が利用される。 |
静脈注射
[I.V.H含] |
静脈内に薬液を注入することをいい、肘関節内側の静脈(前腕正中皮静脈)が多く用いられる。[カ テーテルを鎖骨下静脈を経て、先端を上大静脈に留置(末梢静脈では高浸透圧のため、静脈炎、血栓等を起こす)、栄養液を無菌的に連続注入する]。 |
動脈注射 |
直接動脈に薬液を注射する方法で、注射した部位の動脈によって支配されている器官、あるいは組織 に高濃度に作用する。 |
腹腔内注射 |
腹腔内には種々の臓器が存在し、表面には毛細血管の分布が密で、薬物の吸収がよいことから、腹腔 内に直接薬液を注入することが行われていたが、現在では殆ど行われない。 |
関節腔内注射 |
関節腔内に穿刺し、浸出液を除去し、炎症を抑えるために副腎皮質ホルモン剤を注入する等の方法が 行われる。 |
脊髄腔内注射 |
(くも膜下腔内注射・腰椎注射)脊髄穿刺を行い、くも膜下腔内に注射する方法である。腰椎麻酔 (脊髄麻酔)を行うため、第?-第?腰椎のくも膜下腔内に注射を行う。 |
[015.11.USA: 2004.1.9.]
- 大宮清司・監修:改訂 看護のための薬品管理学;薬業時報社,1984
- 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1993
- 今堀和友・他監修:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998
- 板谷幸一・編:第3版 医薬品情報学入門;南山堂,1999
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水曜日, 8月 15th, 2007
我が国の薬害と行政対応の歴史的経過
[1]はじめに
仕事で『薬』を扱う人間は、『薬害』について学ばなければならない。薬学を学ぶ薬学生は、その教育の一環で、『薬害』につい学ぶべきだとする意見がある。『薬害』の被害者からすれば、至極当然の意見である。
『薬害』について調査してみると、重要な問題として『情報管理』の問題を指摘することができる。そこで『医薬品情報管理学』のための資料として、本稿を纏めることにした。
[2]『薬害』の実際的経験
多くの薬害事件の中で、業務の関係で、実際に遭遇する可能性があったのは『ソリブジン』事件である。国立国際医療センターにおける『薬剤委員会』の事務局は、副薬剤部長が窓口を担当している。
『ソリブジン』が発売されたとき、製薬企業のMRは、御多分に漏れず、購入してくれという窓口攻勢をかけてきた。医薬品としては、確かに重要な役割を担う薬で有り、当然、皮膚科の医師は、絶対に必要であるから購入申請をしたいということになる。
通常であれば、いわゆるゾロ新といわれる薬ではなく、一定評価に堪え得る薬であるため、院内ルールからすれば、申請書類を医師に渡すべきであるが、資料として製薬企業が提出した添付文書を読んでいるとき、使用上の注意の中の1行に、この薬の取扱を困難にする一文があることに気付いたのである。それは相互作用の中の『フルオロウラシル系の薬剤との併用投与を避けること』とする記載である。
一見すると優しげな表記ではあるが、これは明らかに『併用禁忌』であり、この部分の解決策が見つからない限り、簡単に申請書類を渡すわけには行かないと判断した。
フルオロウラシル系に属する薬剤は、抗がん剤であり、100%の癌告知がされていない我が国の現状において、この併用禁忌を完全に遵守することは困難である。そこで「この併用禁忌を完全に実行することが可能な方策を提出しいてただきたい」という依頼を企業側に提案した。また医師との論議の中で、この問題を間違いなく実行するためにはどうすればいいのかの検討をお願いしたい旨申しあげた。
製薬企業側からは、何等回答は得られなかったが、医師からは
- 当面、皮膚科の専門医のみが処方する。
- 当面、他科・他院受診患者には処方しない。
- 他科受診患者で処方の必要がある場合には、主治医に服用薬剤の確認をした上で処方する。
等の考えを提案された。
それでは薬剤委員会での承認事項として、以上の3点を確認するということで、申請書類を医師に手渡したが、医師が書類を記載している間に『ソルブジン』による患者の死亡例が報道され、医師から「残念ながら死亡例がでた以上、最早使用は難しい」ということで書類の提出はされないことになった。
この間、既に発売から数カ月が経過し、幸いにも当院では『薬害』に荷担することなきを得たが、根気のいる医師との調整を嫌がって、無抵抗に書類の作成に取りかかっていれば、あるいは『薬害』の加担者として、寝覚めの悪いことになっていたのかもしれない。
[3]薬害発生の要因
情報を評価する眼があれば、広告からも必要な情報を手に入れることは可能である。しかし、情報は広告にはならない。何故なら情報は薬を売るために役立つものだけではなく、薬の使用量を減少させるあるいは使用が止まるという負の要因に働く場合があり、時には市場価値が0になることも有り得るわけである。
薬害の多くは、既に警告に値する情報がありながら、企業側はその情報の公開を避けていたとしか考えられない対応がされている。
製薬企業は、生命関連物質を取り扱うということから、常に『社会的責任』を認識していなければならないはずであるが、収益性にのみ眼を向け、投下した資本を直ちに回収したいという企業理念を最優先させることが、薬害という社会的現象を生み出したということである。
医薬品は本来単なる化学物質である。疾病に対する治療薬としての効果という人にとっての正の作用と同時に、人の生命に損傷を与えるという負の作用を持っている。この負の作用を制御し、『正の作用』を有利に働かせるために情報が存在する。つまり適正に使用する情報の範囲内で使用している限り、医薬品としての安全性は確保できるということである。
従って、医薬品に関連する情報は、例え『負の作用』に関する情報であれ、公表しなければならないという社会的責任を、製薬企業は持っているということを常に考えておかなければならない。生命関連物質である医薬品の場合、『疑わしきは使用せず』が基本原則である。
[4]Product Liability(製造物責任)法制定以降
1995年7月にPL法が施行され、それ以後、製薬企業は、添付文書の改訂に狂奔している。
PL法施行以前、『光線過敏症』に関する副作用が、添付文書に記載されていなかった事例で、文献による報告例を入手したため、他の文献等を含めて臨床現場からの生情報の収集状況を企業側に確認したところ、『現在までに9例報告されている』とする回答が得られた。
そこで何故添付文書に反映しないのかの確認をしたところ『少数例を公開すると医療現場に混乱を招くため、当社としては10例を超えた段階で添付文書に反映することになっている』の見解を示された。
しかし、この見解はPL法施行後脆くも崩れ去り、とりあえず何でも添付文書に記載しておけば、責任は逃れられるという対応に変わってしまった。些細な情報あるいは因果関係が明確ではない副作用であれ、兎に角、添付文書に収載しておけば責任が逃れられるという考え方は、ある意味で全ての責任は医療機関側にありとする対応であり、真の意味での情報公開にはなり得ていないといわなければならない。
従来、医師は添付文書記載情報を信頼しない傾向が見られるが、これは添付文書情報の曖昧性に起因する不信感によるものである。それにも係わらずPL法施行以降の添付文書改訂が、更に『とりあえず掲載しておけば責任だけは逃れられるという内容の改訂』であれば、添付文書全体の情報としての評価は明らかに低下する。添付文書に記載された内容は、その薬を使用する医師が確実に遵守すべき内容でなければならないはずであり、予備的情報の伝達方法は、他の手段を考えるべきである。
年次推移 |
薬 害 |
行政対応・関連対応等 |
昭和26年
(1951年) |
*グアノフラシン(消毒剤)点眼薬による睫毛・眼瞼皮膚の軽微な白変報告。第二次世界大戦後本邦初の薬害。 |
*製品の製造中止・回収指示*7月:抗生物質使用基準設定 |
昭和30年
(1955年) |
*SMON:日本各地で多発、特定地域に集中する新たな症状報告-ウイルス感染の疑いと報道。
*1955年(レゾヒン;吉富製薬-武田薬品)クロロキンの発売開始。適応症として『マラリア、慢性関節リウマチ様関節炎、亜急性・慢性エリテマトーデス、腎炎』。大量販売の道筋。 |
*3月:第2改正国民医薬品集公布 |
昭和31年
(1956年) |
*1956年5月15日東大法学部教授が、歯科治療における抜歯後の化膿止の目的でペニシリンを注射。その直後に胸苦しさを訴え、そのまま意識不明。救急手当を受けたが、死亡する事故が発生した。ペニシリンショック死事件。被害者の社会的地位によるマスコミの大々的報道。薬害の社会的認知。1953年?1957年に1,276名がショック発現、124名が死亡。 |
*医務・薬務局長通知『皮内反応の実施』通達。
(1)過去の副作用・アレルギー疾患の既往歴の有無の問診。
(2)当該薬剤の使用回避・他の治療法の選択。 |
昭和32年
(1957年) |
*クロロキンによる眼障害は1948年から報告されはじめ、1957年に角膜症の報告。 |
|
昭和33年(1958年) |
|
*12月:国民健康保険法公布 |
昭和34年
(1959年) |
*1959年Hobbsらクロロキンによる網膜症の発現例報告。 |
*5月:抗生物質などの予防内服禁止を指示。 |
昭和36年
(1961年) |
*サリドマイド剤は1957年10月1日ヨーロッパ諸国で『Contergan8』として発売。1961年11月27日発売停止。日本では1958年1月『イソミン8』として発売。
*更に最初睡眠薬として市販。後に神経性胃炎の薬『プロバンM8』として発売。特に『妊婦にも安全』との宣伝がされたため妊娠悪阻(つわり)に使われ胎児障害が増加。*西独・幼児用睡眠薬『シネマ・ジュース』として発売、妊婦の服用が増え、被害の増大が見られた。
*サリドマイド剤による奇形児発現の事実を最初に公表・警告(1961年11月8日)したのは西独・小児科医のレンツ博士で、その警告後世界の大部分の国では販売が中止された。但し、日本では警告発表後9カ月間販売継続。
*米国では未発売(臨床治験段階で10人発生の報告)。
*クロロキン製剤であるキドラ(小野薬品)が『腎炎』を有効として販売開始。 |
*米国FDAはキノホルムの適応症の範囲について大幅に規制。
*4月:国民皆保険制度発足
*医薬品適正広告基準制定*睡眠薬販売規制措置通達
*4月:医薬品適正広告基準制定 |
昭和37年
(1962年) |
*日本ではサリドマイドにハンセン病患者の『神経癩』に鎮痛効果があるため、販売禁止措置がとられなかったとされる。
*サリドマイドの服用による直接作用として『多発性神経炎、中枢神経刺激症状等神経系障害及び重症の四肢欠損症(無肢症、海豹肢症、奇肢症、母指三指節症)や耳障害(難聴、無耳症、小耳症)等を生じ『サリドマイド胎芽病』と呼ばれた。患者数は西独3049名・日本309名・英国201名・カナダ115名・スウェーデン107名・ブラジル99名・伊太利亜86名。全世界で3,900例と報告。30%の死産があったとされるため総数5,800名と推定されている。*サリドマイドは新生の毛細血管の形成を抑制するので、発育中の胎児の四肢の血管造成を抑制、手足が形成されない。
*中野彊らクロロキンによる網膜症発現報告。視力障害に関する外国論文の数27編。 |
*2月:制限診療の撤廃。
*5月:サリドマイド剤製造・販売中止の勧告。
*9月18日:『イソミン8』販売停止(全面回収)。
*12月:アンプルかぜ薬乱売規制。*「WHO総会で国際モニター制度設置の決議」 |
昭和38年
(1963年) |
*3月:鳥居薬品によりコラルジルの製
造・販売開始。
*1963年4月に『腎炎治療目的で市内の病院に入院。クロロキン製剤キドラ(小野薬品)1日3錠・分3を5年間にわたって服用』(K氏の実例)→ |
*3月:中央薬事審議会下部機構として『医薬品安全特別対策部会』設置。
*4月:「医薬品の胎児に及ぼす影響に関する動物試験法」制定→1975年改定。
*5月:サリドマイド研究班発足。
*国際モニター制度実施。 |
昭和39年
(1964年) |
*新潟大学教授・椿忠雄氏が病名を「スモン」と命名[subacute myelo-optico-neuropathy;SMON;亜急性脊髄・視神経障害]。
*米国の売血等で集められた血液を原料とする血液製剤『フィブリノゲン(ミドリ十字)』を製造承認取得(出産時の異常出血-止血剤) |
*4月:WHOより医薬品副作用報告について通知。
*6月:催眠剤劇薬指定。
*6月ヘルシンキにおける第18回世界医師会総会で『ヘルシンキ宣言』採択。
*8月:医薬品等の適正広告基準全面改正。 |
昭和40年
(1965年) |
*1959年以降1965年までの間に合計38人が死亡。[アンプル入りかぜ薬によるショック死事件(大衆薬)]。
*2月16日千葉県下でアンプル入り風邪薬服用の老人と15歳の少女が死亡報道(朝日新聞)。
*2月17日静岡県の伊東で39歳の女性死亡。*2月18日静岡県の伊東で28歳の女性死亡。
*2月20日千葉県八千代市で22歳の女性死亡。新聞報道されただけでも、3月4日迄に11名の死亡報道。
*3月1日杏林製薬の同種製剤服用による死亡。
*3月2日田辺製薬の同種製剤服用による死亡。
*3月4日大正製薬の製品服用者が死亡。製品回収の不備による死亡事故。
*アンプル剤という剤形の問題?他の剤形に比較して吸収が速く、毒性の発現が著しく強いことが国立衛生試験所での動物試験の結果から判明したとする事故原因を中央薬事審議会答申に記載。主成分であるアミノピリン・スルピリンの含有量が、1回の常用量を超える製品が市販されていた。
*1965年3月興和株式会社の社員が同社で実施した抗ウイルス剤キセナラミンの臨床試験は人権侵害であるとして東京法務局人権擁護部に申し立て。1963年10月社員を対象に104名に実薬、103名にプラセボを服用させた。その結果2週間の服用期間の前半から頭重感・頭痛・食欲不振・全身倦怠感・肩こり等を訴え、後半には3名が発熱のため欠勤、2名が胃痛等のため入院。キセナラミン服用患者のうち76名(73%)が服用終了直後までに、前記の他便秘・腹痛・下痢・嘔気・眩暈・発疹・黄疸・咽頭痛・生理異常の症状を訴え、服用終了後の約2週間後までに17名が入院、うち1名が死亡。本薬は既に先行開発会社で「毒性が強い」等の理由で開発断念した薬。
*1965年3月リウマチ治療のためクロロキンを服用していた厚生省薬務局製薬課長は「重篤な眼障害の副作用がある」ことを伝えられ、個人的に服用中止。*血液学者の間で「泡沫細胞症候群」とする珍しい病気が話題→コラルジル。 |
*『新医薬品についての催奇形性試験実施』
*2月19日厚生省はアンプル風邪薬製造元の大正製薬に「広告の自粛、製品の再試験指示」。
*2月20日:厚生省は大正・エスエス製薬に自主的措置要請。両社販売停止を決定。
*3月1日:厚生省は製品回収等について業界に要請。
*3月9日:日本製薬団体連合会「回収等に伴う経済的損失の救済や税制上の配慮等を求める要望書提出」。
*4月20日:中央薬事審議会医薬品安全対策特別部会アンプル入りかぜ薬調査会『アンプル入りかぜ薬の製造使用については否定的結論に達している』旨の予告。*5月11日:中央薬事審議会の答申に基づき、アンプルかぜ薬については廃止届(6月末まで)若しくは製造取り消しの告示。
*5月:かぜ薬の製造承認等について通知。
*アンプル剤以外のかぜ薬に対する『新配伍基準』の提示。
*11月8日:『アンプル入り解熱鎮痛剤』について廃止通知(1966年3月末まで注意書きを附して販売継続)。
*11月:医薬品の使用上の注意記載要領具体化。
*[配合薬調査会設立] |
昭和41年
(1966年) |
甲状腺ホルモン剤含有やせ薬で精神異常(OTC薬)
→*クロロキン服用患者K氏『夜盲症・視野狭窄・暗点(視野が暗くなって見えなくなる)』発現→。 |
*甲状腺ホルモン剤以後配合禁止。
*8月:国民生活審議会答申に基づき医薬品の毒性・副作用に対する行政措置。*『安全対策特別部会』下部機構として『副作用調査会発足』 |
昭和42年
(1967年) |
*クロロキンによる視力障害。 |
*クロロキン劇薬・要指示薬指定。*3月:『副作用モニター制度発足』
*10月『医薬品の製造承認等に関する基本指針について』通知(医療用医薬品・一般用医薬品に区分して規制する方針) |
昭和43年
(1968年) |
→*1968年1月九州大学眼科入院-K氏クロロキン網膜症の診断→。*クロロキン網膜症は、メラニン色素に高い親和性を持つクロロキンが、メラニン色素を持つ網膜上皮細胞に蓄積した結果発現。視力低下、視野狭窄、暗点等。*ビー・ブラウン社がヒト乾燥硬膜「ライオデュラ」の販売開始。 |
*各薬効群毎に使用上の注意事項の整備 |
昭和44年
(1969年) |
*キノホルム(適応:アメーバ赤痢)によるスモン(SMON)報告。昭和38年頃(1963年)から昭和45年頃までの間に多発。下痢、腹痛等の不定の腹部症状に対しキノホルムを大量長期使用により亜急性脊髄視神経障害が発現。疑いも含め11,127名の報告。
*経口投与されたキノホルムはかなりの量が腸管から吸収(動物実験:20-30%)され、末梢神経・中枢神経系に取り込まれる。界面活性剤CMCの配合で吸収は促進される。*1900年瑞西・バーゼル社により『創傷防腐剤』として発売。1935年アルゼンチンの医師バロスはキノホルムの投与後『重篤な神経障害』が生じたことを報告。1907年以降スイスで劇薬指定。我が国でも1936年(昭和11年)劇薬指定、1939年普通薬に指定変更。1939年チバ社が国内で実施した”ヴィオフォルム”の臨床治験で『知覚・運動障害等の神経障害』の発現例が服用患者のカルテに記載。
*肝臓病の分野で「リン脂質脂肪肝」とする新たな病名が報告→コラルジル。 |
*3月:中央薬事審議会-医薬品製造承認審査事務の改善についての諸処置実施。
*9月スモン調査研究協議会(会長・甲野禮作国立予防衛生研究所ウイルス検査部長)発足。
*9月:中央薬事審議会-医薬特別部会設置-かぜ薬の承認基準を審議。
*12月:厚生省は『本剤の連用により角膜障害、網膜障害等の眼障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常があらわれた場合には投与を中止すること』とするクロロキン添付文書の使用上の注意改
訂指示。 |
昭和45年
(1970年) |
*3月:スモンの神経症状が再現又は再燃する際、しばしば見られる緑色毛状の舌苔、緑色便の原因物質の検討開始。
*6月30日:看護婦が患者尿として提出した緑色尿から整腸剤キノホルムの鉄キレートを証明、緑色の発色実験結果とともにスモン調査研究協議会に報告。
*8月6日:新潟大学椿忠雄教授が『キノホルムはスモンの発症あるいは病状の悪化に関係』の警告。*キノホルムの血中濃度は投与量の相違に係わらず同一レベルを示し、中毒発現には投与量より血中濃度レベルが重要であることを証明。1971年『販売停止』以降殆ど発生せず。
*11月:『リン脂質細胞肝』の原因はコラルジル中毒に疑いが強いという事実を日本消化器学会関東甲信越地方会に報告。動物実験の結果、コラルジルによる副作用に起因する同一疾患であると確認。導入時安全性試験未実施。臨床医肝障害の指摘→1965年動物実験を実施。副作用を確認。隠蔽しその後5年間販売継続。
*コラルジル(4,4′-diethylamino-ethoxyhexesterol)。合成女性ホルモンの一種スチルベステロールの誘導体。 |
*2月:厚生省医療用医薬品等適正化推進本部設置。
*4月:『薬効問題懇談会再評価特別部会発足』。
*4月:医療用医薬品の添付文書記載要領行政指導?記載上の留意事項[薬務局監視指導課長通知]。
*6月医薬品広告の自粛要請。*7月30日:厚生省予防接種による副作用に対する臨時救済措置の大綱提出。予防接種により18年間に201名の死亡事故があったことを公表。
*8月:かぜ薬承認基準制定。
*9月7日中央薬事審議会(会長・石館守三)はキノホルム及び類似薬(186種類)の販売中止と使用中止を答申。9月8日厚生省による行政措置。
*11月:コラルジル販売中止。
*11月:予防接種事故審査委員会発足。 |
昭和46年(1971年) |
*冠拡張剤『コラルジル』による肝障害→長期にわたり服用することにより肝臓・血液等の全身細胞に異常なリン脂質やコラルジルそのものが蓄積し細胞を破壊する。本薬の場合、動物実験の結果とヒトでの結果が異なることが証明された。
→*1971年10月14日「腎炎等の特効薬クロロキン剤で中毒-救済を訴える直訴状を厚生大臣」にの新聞報道(朝日新聞)。 |
*6月:新医薬品の副作用報告義務期間を2年から3年間に延長。
『副作用情報配布』
*10月:中央薬事審議会下部機構として『医薬品再評価特別部会』発足。*12月:『医薬品再評価』実施につき通知。1967年9月以前承認薬剤の全て?第1次再評価。 |
昭和47年
(1972年) |
*1972年3月『スモンと診断された患者の大多数はキノホルム剤の服用によって神経障害を惹起したもの』とするスモン調査研究協議会結論。 |
*1月:医薬品の使用上の注意を厳重実施方注意。
*4月:WHO国際副作用モニター制に加盟。*4月:副作用モニター制強化(243施設)。
*10月:GMP設定のための研究班編成。
*10月:日本学術会議-医薬品の臨床試験評価システムの充実を勧告。 |
昭和48年3月
(1973年) |
*幼児集団奇病・山梨で23人が歩行困難-原因-カゼの注射?(1973年10月5日・朝日新聞夕刊)。*7月:厚生省「ライオデュラ」の輸入承認 |
*6月:厚生省-医薬品副作用の被害者救済制度研究会発足。 |
昭和49年
(1974年) |
*大腿四頭筋短縮症が社会問題化。
*経口血糖降下剤スルファニルウレア剤で低血糖になり約350名が死亡、100名が人格喪失。*米・UGDP心臓血管死多発(プラセボの2.6倍)を確認。FDA限定使用を勧告。UGDP(University Group Diabetes Program) |
*1974年クロロキン製剤製造中止。
*7月:医療情報システム開発センター設置。
*7月:大腿四頭筋拘縮症に関する研究班発足。
*7月:日薬連注射剤のpH、浸透圧を添付文書に自主的記載決定。
*9月:GMP(医薬品の製造及び品質に関する基準)を通達。 |
昭和50年
(1975年) |
*クロラムフェニコールによる再生不良貧血訴訟 |
*1月:三種混合ワクチン一時接種中止。
*4月:『厚生省医薬品情報』伝達。
*8月:日本糖尿病学会員191名の連署による要望書や中国糖尿病談話会の提起等により厚生省は血糖降下剤を劇薬指定、使用上の注意を大幅に改訂。*10月第29回世界医師会東京大会においてヘルシンキ宣言修正。
*1975年日本小児科学会に筋拘縮症委員会(巷野悟郎委員長)設置。
*注射薬再検討
*『医薬品の生殖に及ぼす影響に関する動物実験法』改定。 |
昭和51年
(1976年) |
*小児科学会で、鰍沢・増穂等富士川流域の大腿四頭筋短縮症児の検診の結果、患者総数は290人(うち大腿四頭筋短縮症は238人)
(1)少なくとも270人はA病院で筋肉注射を受けたため発症したと考えられる。
(2) 筋注時の診断のの半数以上が『かぜ症候群』であり、殆どが筋注を必要としない疾病であった。
(3)注射液の大部分は解熱剤のメチロンと抗生物質のクロマイゾルで、注射液の使用は本症が社会問題化した1974年から激減している。
*大腿四頭筋に限らず、肩三角筋、澱筋等にも障害の及んでいる症例があり、更に単に筋肉が伸縮性を失い短くなった状態を示す『筋短縮症』より、筋が短くなった結果、関節が稼働性を失い機能障害を生じた状態を示す『筋拘縮症』の病名が用いられるようになった。 |
*2月19日:日本小児科学会筋拘縮症委員会注射に関する提言発表。(1)注射は親の要求で行うものではないこと(注射は医師の医学的判断により実施)。
(2)経口投与で十分ならば注射すべきでないこと(注射が優れているという誤謬)
(3)いわゆる”かぜ症候群”に対して注射は極力避ける(かぜ症候群の多くはウイルス感染症であり本質的治療法はない)。
(4)抗生剤と他剤の混注は行わないこと(抗生剤の筋注、殊に他剤との混注は筋拘縮症発生の危険大)。
(5)大量皮下注は避けること(大量の皮下注射が輸液療法として安易に行われる)。
*4月:厚生省ヤコブ病を含む遅発性ウイルス感染の難病研究班設置。
*4月:GMP実施。
*6月:医薬品の副作用による被害者の救済制度による研究会報告。*6月:予防接種法改正-種痘の強制接種廃止。
*7月1日:日本小児科学会筋拘縮症委員会『注射薬に関する提言II』発表。
*10月:新医薬品の製造(輸入)承認申請に際し動物試験に関する取扱について通知(海外資料の利用)。
*『医療用医薬品の使用上の注意記載要領について』[薬務局長通知]
*上記を受け『医療用医薬品添付文書の記載方式(自主設定)』[日本製薬団体連合会]
*クロロキンの日本薬局方収載削除。 |
昭和52年9月(1977年) |
*非加熱血液製剤の販売開始(ミドリ十字)
*12月米国のガイジュセク博士が「ヤコブ病患者の組織などを移植してはならない」と発表。
*米・FDAは12月に『フィブリノゲンの投与によって肝炎に感染する危険性がある』として製造承認取り消し。 |
*かぜ薬配伍基準改訂。
*2月:予防接種事故救済制度。*5月:ピリン系薬剤をかぜ薬・解熱鎮痛剤から「副作用の点から一般用(大衆薬)として好ましくない」として1年の経過措置の上、非ピリン系に変更するよう指導。
*10月:「発ガン性がある」として全ての内服薬からピリン系薬剤を除くことを決定。 |
昭和53年
(1978年) |
*ヤコブ病の病原体が輸入承認条件のガンマ線照射で滅菌されないことが判明。 |
*5月:WHO必須医薬品選定。 |
昭和54年(1979年) |
*9月国立予防衛生研究所血液製剤部長はその著書で「FDAによる製造承認取り消しの事実を報告、フィブリノゲンの危険性指摘」 |
*薬事法改正:『再審査制度』導入。
*医薬関係者に対して医薬品の有効性・安全性等に関する情報提供に努めるべきことが企業に義務付けられた。
*9月:薬事法一部改正-医薬品副作用被害救済基金法成立。
*10月:WHO「天然痘根絶宣言」。 |
昭和55年
(1980年) |
|
*3月:抗生物質認可基準全面改訂。
*医薬品副作用被害救済基金法(1987年改正現在は『医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法』)制定・発足。 |
昭和56年(1981年) |
|
*1981年6月米国立防疫センターが初のAIDS症例報告。 |
昭和57年
(1982年) |
*1982年7月米国で非加熱製剤による血友病患者へのAIDS(acguired immune deficiency syndrome)感染の可能性報告*1982年12月ミドリ十字米国子会社の元役員が米国のAIDS情報を報告 |
*1982年12月2日日本小児科学会筋拘縮症委員会
『筋拘縮症に関する報告書』提出。 |
昭和58年
(1983年) |
*5月須山忠和被告(ミドリ十字副社長)が感染経路に血液製剤の可能性を示唆する報告書を作成。
*6月2日:トラベノール社は厚生省に対し「供血者の一人がエイズの兆候を示したので、製剤の回収をしたい」旨の報告。厚生省は何等対応せず。*7月日本の血友病患者ではじめてエイズによる死亡(認定は1985年5月)。
*7月ミドリ十字が業務連絡文書で、非加熱製剤による感染の可能性示唆
*7月5日安部英・前副学長が主治医を努めた帝京大の男性患者が死亡(帝京大症例)
*8月:カッター社は社内に「エイズシナリオ」のプロジェクトを作り、エイズの将来の発生予測。最悪の場合1988年までにエイズ患者が8万人発生、内約2,000人が血友病患者。
*8月:カッター社は広報誌エコー日本語版で「エイズが非加熱製剤によって感染されるということを示す証拠はどこにもない。出血者に対しては従来通り血液製剤を輸注」の記載。 |
*5月:『医療用医薬品添付文書の記載要領の改訂について』[薬務局長通知]→昭和61年4月迄に改定:薬効薬理・体内動態・臨床適用・非臨床試験
*薬事法の一部改正-第54条(記載禁止事項)の改正
*厚生省『新薬の臨床試験の実施に関する専門家会議(熊谷洋座長)』設置。臨床試験の公的規制の検討開始。*1983年6月13日厚生省『エイズ研究班』発足(班長:安部英被告・帝京大学教授・副学長)初会合開催。
*7月18日第2回エイズ研究班会合。帝京大症例のエイズ認定見送り。血液製剤についても『格別の措置(輸入禁止等)を取る必要なし』の結論。
*7月21日厚生省生物製剤課が日本赤十字社との打合せで『血液製剤の原料として新鮮凍結血漿(FFP)を提供して欲しい』と提案。
*1983年10月ベニスにおける第35回世界医師会においてヘルシンキ宣言修正。 |
昭和59年
(1984年) |
*9月国内の血友病患者の血液48検体中23体のエイズ感染感染が判明。 |
*3月エイズ研究班が『非加熱製剤の輸入継続』を決定。
*「長期投与医薬品に関する情報」追加。 添付文書の記載項目21項目となる(業界申し合わせ事項) |
昭和60年
(1985年) |
*3月ミドリ十字が『エイズ検討会』開催。*6月ミドリ十字が非加熱製剤は安全な国内原料のみとPRするよう、社員に虚偽宣伝を指示。
*ヒト由来の成長ホルモン剤でのヤコブ病感染が報告。 |
*『新薬の臨床試験の実施に関する専門家会議(熊谷洋座長)』報告提出。
*5月厚生省3人の血友病患者をエイズ認定。
*12月厚生省が加熱製剤(第IX因子)を承認。 |
昭和61年
(1986年) |
*1月ミドリ十字が加熱製剤の販売開始。非加熱製剤を継続出荷。
*4月関西の総合病院で、肝臓病の男性患者が非加熱製剤3本を投与される。 |
|
昭和62年
(1987年) |
*2月:米国疾病対策予防センター(CDC)が硬膜移植後にヤコブ病発症の世界初の症例発表。*5月:カナダ政府は国内医療機関に対し特定ロット番号の硬膜製品の使用回避を警告。独逸ビー・ブラウン社に硬膜の危険性を調べるため資料提出要請。
*青森県の産科医院でフィブリノゲンを投与された8人の患者の肝炎感染が発覚し、厚生省から実態調査の指示を受けたミドリ十字は自主回収に乗り出すまで製品の販売を継続。 |
*医薬品副作用被害者救済基金法→『医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法』に改正。
*4月:米国食品医薬品局(FDA)が同年製造された硬膜の廃棄を医療機関に勧告。
*6月:ライオデュラの輸入警告。 |
昭和63年(1988年) |
*2月:厚生省研究班「ヤコブ病の感染ルートとしてヒト成長ホルモンや角膜移植と共に、脳保存硬膜の使用」を新たに付け加えて報告。 |
*1979年5月:薬事法一部改正に伴う再審査制度と連動。定期的(5年毎)審査委評価を実施+随時再評価(臨時再評価)。
*「医療用医薬品添付文書の記載要領」改正→医療用医薬品添加物の記載 |
平成元年
(1989年) |
*5月大阪HIV(エイズウイルス)訴訟
第一次提訴。 |
*「医療用医薬品の承認番号等の記載」(薬務局長通知)→添付文書の記載項目22項目となる。
*1989年『医薬品の臨床試験の実施に関する基準(Good Clinical Practice;GCP)』制定。
*1989年9月香港・九龍の第41回世界医師会においてヘルシンキ宣言修正。 |
平成 2年
(1990年) |
*3月発行の『臨床医薬』で臨床治験段階でソリブジン服用中患者の死亡1例報告。
|
*「医療用医薬品添付文書の記載要領」改正→「向精神薬」の追加。
*『医薬品の臨床試験の実施に関する基準(Good Clinical Practice;GCP)』実施。 |
平成3年
(1991年) |
*英国・ノルウェーでライオデュラの認可取り消し。 |
|
平成4年
(1992年) |
|
*血友病に用いる製剤については、原則国内献血血液を原料として製剤することが決定。*『高齢者への投与に関する医療用医薬品の使用上の注意について』*[厚生省薬務局審査課長・新医薬品課長・安全課長]( 平成4年4月1日) |
平成5年
(1993年) |
*9月28日:ソリブジンによる死亡1例、厚生省から「使用上の注意」の改訂指示。しかし、日本商事が実際に文書を配布したのは10月12日から。当初添付文書の相互作用の記載は「併用投与を避けること」の記載。
*10月12日:日本商事「抗ウイルス剤ユースビル(ソリブジン)とフルオロウラシル系薬剤との併用による重篤な血液障害について」と題する『緊急安全性情報』配布。併用により『白血球減少、血小板減少等の重篤な血液障害等を発現した症例が7例報告されており、うち3例は死亡に至っている』。
(1)併用は絶対にしないこと。(2)患者への問診を厳重に行うこと。(4)併用薬の確認のできない患者には投与をしないこと。添付文書の使用上の注意に『警告』追記。*11月24日:厚生省中央薬事審議会副作用調査会「21人が副作用被害を受け、うち14人が死亡」を報告。
*12月4日:因果関係不明の死亡例がソリブジンによる死亡と確認、計16名の死亡。
*ユースビルの出荷停止と回収。
*動物実験で抗がん剤との相互作用確認、治験担当医に連絡せず。治験段階で3名死亡。
*薬害エイズ訴訟原告弁護団が、東京地裁に提出した準備書面で、1977年にFDAは『C型肝炎ウイルスに感染した薬害肝炎問題で、血液製剤「フィブリノゲン」の製造承認を取り消していたことを国側に伝達』 |
*4月:新医薬品等の再審査の申請のための市販後調査の実施に関する基準(GPMSP)の実施。
*11月24日:『医療用医薬品の使用上の注意記載要領の改正等について』[薬務局長通知]*『相互作用』→『副作用』の項の直前に記載。
*相互作用→致死的・極めて重篤な非可逆的副作用が発現→『相互作用』に記載すると同時に『警告』・『一般的注意』・『禁忌』の項に記載。
*医療用医薬品パンフレットの表紙に明記 。*薬事法の一部改正→第54条(記載禁止事項)の改正 |
平成6年
(1994年) |
*9月1日:厚生省は薬事法違反で日本商事を105日の製造業務停止処分。共同開発・販売したエーザイ・ヤマサ醤油に「厳重注意」処分。 |
*『医薬品の副作用症例報告期限の改正について』
[薬務局安全課長](平成6年1月12日発出-平成6年4月1日実施)。
*15日以内に厚生大臣に報告[副作用であると疑われる死亡例-既存の情報から予測できない場合]*30日以内に厚生大臣に報告[副作用であると疑われる死亡以外-担当医師が重篤と認めたものの場合]
*11月『医療用医薬品の使用上の注意記載要領の運用自主基準』( 業界申し合わせ事項)[日本製薬団体連合会・日本製薬工業協会](平成6年11月21日)→
より見やすく、分かりやすく、且つ、より具体的に記載。使用上の注意の一斉改訂
*PL(Product Liability;製造物責任)法成立。 |
平成7年
(1995年) |
*12月:男性患者がエイズで死亡。
*5月:厚生省エイズ研究班の班会議においてC型肝炎ウイルスの感染の危険性指摘。非加熱血液製剤は血友病以外の新生児出血症や重症肝障害で使用されており、エイズのみならず血液由来のB型肝炎・C型肝炎ウイルスの感染は当然予測される。[読売新聞,第44742号,2000.10.31.] |
*7月:PL(Product Liability;製造物責任)法施行(客観的な事実である「欠陥」を責任要件としており、従来の価値的な「過失」の有無を問わない] |
平成8年
(1996年) |
*3月男性患者の遺族が松下廉蔵被告(ミドリ十字社長)を殺人容疑で告訴。大阪、東京HIV訴訟がそれぞれ和解。
*8月大阪地検がミドリ十字を業務上過失致死容疑で強制捜査。東京地検が安部被告を業務上過失致死容疑で逮捕。
*9月大阪地検が松下被告ら歴代3社長を業務上過失容疑で逮捕。*10月東京地検が松村明仁被告(厚生省生物製剤課長)を業務上過失容疑で逮捕。
5月:ライオデュラのドナー特定困難を理由としてビー・ブラウン社自主回収開始。
6月:ビー・ブラウン社ライオデュラの製造中止。
*11月硬膜移植によるヤコブ病発症を理由として谷夫妻が大津地裁に全国初の提訴。 |
*1月厚生省『薬害エイズ調査班』設置。
*4月:調剤報酬点数改正-薬剤情報提供加算点数化[患者に対し医薬品名・薬効・用法・用量・等]
*5月:厚生省ヤコブ病の緊急全国調査研究班設置。
*6月:ヤコブ病緊急全国調査研究班が硬膜移植後にヤコブ病が多発していると中間報告。
*6月18日:薬事法改正案の提出・成立。新薬審査に医薬品機構の活用。*1996年10月南アフリカ共和国・サマーセツトウエストの第48回世界医師会総会でヘルシンキ宣言修正。 |
平成9年
(1997年) |
*3月:大阪地裁で、松下被告らの初公判。起訴事実を認める。
*3月:WHOがヒト乾燥硬膜の使用禁止を勧告。 |
*3月27日:厚生省令第28号『医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令』制定。『医薬品の市販後調査の基準に関する省令』改正。
*3月:厚生省がライオデュラ回収の緊急命令。ヤコブ病緊急全国調査研究班が硬膜移植後の発症43例確認の最終報告。*4月:薬局開設者等が医薬品購入者等に医薬品情報(主に大衆薬)を提供するよう努めること[薬事法第77条3]。
*4月『医療用医薬品添付文書の記載要領について』[薬務局長通知](平成9年4月25日)→『医療用医薬品の使用上の注意記載要領について』[薬務局長通知]。『医療用医薬品添付文書の記載要領について』[薬務局安全課長通知]
*関係者が理解し易く・使い易いように・医師が処方する際の思考順序に基づき配列。
*ソリブジン事件・エイズ事件等の薬害及び21世紀の医療問題懇談会答申。
*全面改定。医師の処方計画の流れに沿った、見落としてはならない臨床上の重要事項から順に配列。
*5月:医薬品モニター制度の拡大について→『医薬品等安全性情報報告制度』に改編(平成9年5月15日)。
* 医薬品(大衆薬含む)・医療用具→副作用・感染症・不具合情報[化粧品・医薬部外品追加](1)医薬品副作用モニター制度
(2)医療用具副作用モニター制度
(3)薬局モニター制度
3制度統一化
■ グレード1(副作用の重篤度分類基準):に該当すると考えられる副作用症例であって使用上の注意として記載のない副作用であると疑われるものは報告 |
平成10年
(1998年) |
*4月ミドリ十字が吉富製薬と合併。
*血友病や肝機能障害の止血治療に使われる非加熱製剤がHIVに汚染され、投与された患者が感染。厚生省の報告によると1998年5月末時点で、投与を受けた1432人が感染し、うち642人が発症、502人が死亡した[読売新聞,第44800号,2000.12.28.] |
|
平成12年
(2000年) |
*2月24日ミドリ十字歴代三社長大阪地裁実刑判決が出された(禁固2年-1年4カ月)。薬害エイズは『産・官・医』の過失が複合した結果、多数の被害者を生んだ。
今回の判決は、非加熱製剤がエイズウイルスに汚染されているとの危険を認識することは、加熱製剤が販売された1986年1月時点で可能だったとしている。歴代三社長は「厚生省はエイズについて先行して知見を入手し評価し得た。厚生省の指示なく製剤の回収や販売中止は困難」と主張した。これに対し判決は「厚生省の情報を待つまでもなく、ミドリ十字側が危険性を認識できた。安全性確保の最終的責任は製薬会社にある」と厳しく指摘、実刑を選択した。更に厚生省の係官に過失があったとすれば、それはミドリ十字の過失と『競合する』と判決の中で説明している。一方の責任が重いからといって、もう一方の責任が軽減されるわけではない。過失を犯したそれぞれが責任を負うべきだ[読売新聞,第44492号,2000.2.24.]
*8月脳外科手術などの際「ヒト乾燥硬膜」の移植を受けた患者に難病のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の発症が多発した問題で、厚生省は2000年8月11日、同省の対応に問題がなかったかどうかを調べる「予備的調査」に応える報告書を衆院に提出した。報告書では同省研究班が1988年2月の段階で、硬膜からの感染の可能性を指摘した資料が省内から発見されたとして、その内容等を公表した。しかし、同省は「当時は、硬膜の使用禁止措置などを行う状況になかった。」とする見解も表明。硬膜移植後のCJD発症患者は72人が確認されている。日本では患者の多さが目立つため同省の対応を検証する予備的調査を野党議員が要請。同省が2000年4月から内部調査を進めていた。1988年2月の報告書にはCJDの感染経路の一つとして「保存脳硬膜の使用、脳外科手術後などに発病した症例が報告されている」との記述があった。ヒト乾燥硬膜を移植された患者がCJDに感染したケースは米国で1987年2月に報告されており、翌年に日本でも硬膜の危険性が指摘されていたことになる。しかし、厚生省は「当時の情報収集体制は十分でなかった。当時は硬膜が大量に使用されているのを知らなかった」等と対応のまずさを認めたものの「感染メカニズムが不明で、1例だけの症例報告では使用禁止等の措置を講ずる状況ではなかった。各国もそう言う対応はとらなかった」と当時の対応を弁護した。しかし、米国ではCJDの1例目が解った段階
で廃棄勧告。[読売新聞,2000.8.12.]
*1980年代前半に新生児治療で投与された輸入非加熱製剤により、静岡県内の総合病院で8人がC型肝炎ウイルスに感染していたことが2000年10月29日明らかになった。当時の輸入非加熱製剤の殆どに肝炎ウイルスが混入していたと見られ、病院側は同時期に製剤を投与した患者約40人に肝炎検査を呼びかける文書を送付した。本来、血友病の治療薬である血液製剤は、新生児治療や交通事故の治療などで止血剤としても幅広く使われ、厚生省の調べでは少なくとも2,600人余りの血友病以外の患者に投与されたことが判明。専門医は「早急に全国調査を実施すべき」と国の対応を強く求めている。8人の感染が確認されたのは、この病院で新生児の時に腹部手術を受け、非加熱製剤を投与された男子大学生(20)が今春、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明したことがきっかけだった。非加熱製剤が原因と判断した同病院は、80年代前半に血友病以外の治療で非加熱製剤を投与した患者のカルテなどを調べ、約50人をリストアップ。このうち7人が既に肝炎の治療を受けていることが分かった。いずれも新生児の時に同じ製剤が使われていた。
当時の輸入非加熱製剤は、1000人以上の血液をプールして作っていたため、ウイルス混入の危険が高く、血友病患者の4割がエイズウイルスに、9割がC型肝炎ウイルスに感染した。
非加熱製剤が血友病以外の治療に使われ、エイズウイルスに感染したケースは「第4ルート」問題として注目され、96年に厚生省が全国の病院を通じて投与患者約2,600人を割り出し、連絡の取れた約400人にエイズ検査を実施した。しかし、より感染の危険性の高かった肝炎については、厚生省は追跡調査をしていない[読売新聞,第44741号,2000.10.30.] |
*4月:衆院調査局がヒト乾燥硬膜移植後のヤコブ病発症に関連して厚生省の予備的調査決定。
*8月:予備的調査を受け、厚生省報告書を提出。
*2000年12月27日厚生省令第151号『医薬品の市販後調査の基準に関する省令の一部を改正する省令』を公布。新医薬品の特性に応じ、注意深い使用を促し、重篤な副作用、感染症が発生した場合の情報収集体制を強化するために医薬品のGPMSPを改正し『市販直後調査』を新設した。2001年10月1日施行。
(1)新医薬品を対象とし
(2)販売開始直後の6カ月間において
(3)製造業者等のMRが医師等を定期的に訪問するなどにより、注意深い使用を促すと共に、新薬に関する重篤な副作用、感染症情報を迅速かつ可能な限り網羅的に把握、必要な安全対策を講じる。
今回の改正に伴い再審査も見直す。治験等では十分な情報を収集することが困難な患者群(小児、高齢者、妊産婦、腎機能障害者又は肝機能障害を有する患者等)に関する適正使用情報の充実を図るため、特別調査及び市販後臨床試験に重点をおいた仕組みへと変更し、これまで3,000例について調査することを原則として運用してきた使用成績調査にについては、一律に症例数を限定せず、医薬品の特性に応じて実施。また、特に情報収集の困難な小児集団について使用成績の情報の集積を図るため、承認申請中又は承認後引き続き、小児の用量設定等のための臨床試験(治験又は市販後臨床試験)を計画する場合にあっては、再審査期間中に行う調査等を勘案し、再審査期間を10年を超えない範囲で一定期間延長されることになった。
併せて『医療用医薬品の市販直後調査等の実施方法に関するガイドラインについて』(医薬安第166号・医薬審査1810号)を通知。ガイドラインは現段階での市販直後調査、使用成績調査、特別調査及び市販後臨床試験の標準的な方法を定めている。平成9年3月27日薬安第34号厚生省薬務局安全課長通知の別添『医療用医薬品の使用成績調査等の実施方法に関するガイドライン』は廃止される[薬事新報,No.2146:23(2001)]。
*11月30日:非加熱血液製剤によるC型肝炎問題を受けて設置された厚生省の有識者会議(座長・杉村隆国立がんセンター名誉総長)の初会合[読売新聞,第44773号,2000.12.1.] |
平成13年
(2001) |
*厚生労働省は2001年2月8日、血友病以外の治療でC型肝炎ウイルスに感染するおそれがある非加熱血液製剤を投与したことのある病院名を3月までに公表し、投与の可能性のある人へ検査を促すことを決めた。対象は1980年代前半に輸入非加熱血液製剤と国内非加熱血液製剤を使った約700病院になる見込み。病院から製剤を使った可能性のある人に肝炎検査を呼びかけてもらう方針で、検査料は同省が研究費として負担し、無料にする予定。
本来、血友病患者の治療用だった血液製剤は、止血効果が高いことから、新生児の出血症では普通に使われたほか、婦人科、交通事故、胃癌の手術などに幅広く使われ、同省の調査によると、輸入血液製剤だけでも、少なくとも約3000人に投与されたことが分かっている。2100人余りが既に死亡しており、調査対象者は国内血液製剤を含めて約1000人になると見られている。しかし、製薬会社などから入手した病院リストは不完全で、同省は調査とは別に、血液製剤を使われた可能性のある人達への自主的な肝炎検査を勧める[読売新聞,第44839号,2001.2.6.]
*血友病以外の治療で使われた非加熱血液製剤でC型肝炎ウイルス感染者が相次いで確認されている問題で厚生労働省は2001年2月8日、専門医をメンバーとした研究班を発足させることを決めた。非加熱血液製剤は輸入が圧倒的に多く、輸入の場合、1000人以上の血液を集めて作ることから、高率で肝炎ウイルスが混入。この血液製剤を使った血友病患者は9割以上がC型肝炎ウイルスに感染しているという[読売新聞,第44842号,2001.2.9.] |
*2001年2月6日:肝炎対策有識者会議(座長・杉村隆国立がんセンター名誉総長)の提言を受け厚生労働省「非加熱血液製剤に関する病院名公表」を決定。
*2001年2月8日:「非加熱製剤による感染実態調査のための研究班(仮称)」を緊急に発足させることを厚生労働省が決定。検査対象はC型肝炎・B型肝炎とし費用は国が負担[読売新聞,第44842号,2001.2.9.] |
平成14年(2002年) |
*ヤコブ病訴訟和解確認書要旨
[誓約]1.厚生労働大臣及び被告企業らは、ヒト乾燥硬膜ライオデュラの移植によるヤコブ病感染という悲惨な被害が発生したことについて指摘された重大な責任を深く自覚、反省し、被害者が物心両面にわたり甚大な被害を被り、極めて深刻な状況に至ったことにつき、深く衷心よりおわびする。
2.厚生労働大臣は、サリドマイド、キノホルムの医薬品副作用被害の訴訟の和解で、薬害の再発を防止するため最善の努力をすることを確約したにもかかわらず、本件のような悲惨な被害が発生するに至ったことを深く反省し、医薬品等の副作用から国民の生命を守るべき重大な責務があることを改めて自覚し、情報公開の推進と収集した情報の積極的な活用に努める。悲惨な被害を再び繰り返すことがないよう最善の努力を重ねることを固く確約する。
3.厚生労働大臣は、生物由来の医薬品等によるHIVやヤコブ病の感染被害が多発したことにかんがみ、安全性を確保するため必要な規制を強化し、被害の救済制度を早期に創設できるよう努める。
[その他の対策](1)厚生労働大臣は患者家族に対する精神的ケアを含む相談活動などの援助を行う支援機構が設立された場合は、その活動への支援を検討する。
(2)脳外科手術を受けた者について、当事者の求めに応じ、ヒト乾燥硬膜の移植を受けたか否かの確認が可能となる措置を検討する。 |
*2002年3月25日薬害ヤコブ病訴訟で、原告の患者・遺族らと被告の国、企業は25日正午過ぎ、東京・霞ヶ関の厚生労働省で、国と企業の「おわび」を盛り込んだ和解確認書に調印した[読売新聞,第45
250号,2002.3.25.]。 |
[1998.4.14.作成・2000.8.16.改訂・2000.10.15.改訂・2001.2.11.改訂・2002.3.21.改訂・2003.10.11.日改訂]
- 古泉秀夫:医薬品情報管理学[3];東京都病院薬剤師会会誌,45(1):15-23(1996)
- 曽田長宗・編:薬害;講談社サイエンティフィク,1981.p.467
- 木田盈四朗:サリドマイド投薬と被害の現状;日本医事新報,No.3789,1997.12.7.
- 田村善蔵:スモン研究備忘録;薬事新報、No.2141:1377(2000)
- 田村善蔵:スモン研究余話;薬事新報、No.2142:77(2001)
- 読売新聞,第44798号,2000.12.26.]
- 高野哲夫:戦後薬害問題の研究;文理閣,1984
- 片平洌彦:ノーモア薬害;桐書房,1997
- 米で禁止後も10年販売-旧ミドリ十字の血液製剤;読売新聞,第45246号,2002.3.21.
- 旧ミドリ十字の血液製剤-薬害エイズ原告団93年に国側へ指摘;読売新聞,第45247号,2002.3.22
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水曜日, 8月 15th, 2007
電網情報の信頼性の担保
[1]電網情報と特許法改正
特許法第29条第1項が改正された。
その内容は、「3.特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」は特許を受けることができないとするものである。
また、インターネット等で開示されている技術情報は、「雑誌や図書等の形で刊行された技術情報と同等の情報を有し、その伝達の迅速性などの利便性を備えており、研究者が自己の研究成果を早期に公表することを目的としてインターネット等を論文発表の場として利用する事例も増えてきていることから、刊行物と同様、技術の進歩、発展に寄与するものであり、既に産業界の技術水準を構成している。従って、例え刊行物に記載されていなくてもインターネット等で開示されてる発明に対しては特許権が付与されるべきものではない」としている。
つまりインターネット等で開示された情報は、頒布された刊行物の記載と同様、『新規性喪失事由』となることを明示したわけであるが、逆にいえば、電網情報を公式に認めたということであろう。
[2]用語の統一性
法律規則を定める場合、そこで使用される用語の解釈について、統一的な対応が必要である。特許法の改正に伴って発出された、『インターネット等の情報の先行技術としての取扱運用指針』において、次の用語の定義付けが示されている。
- 回線:一般に往復の通信路で構成された、双方向に通信可能な伝送路を意味する。一方向にしか情報を送信できない放送(双方向からの通信を電送するケーブルテレビは除く)は、回線に含まれない。
- 公衆:社会一般の不特定者を示す。
- 公衆に利用可能:不特定の者が見得るような状態におかれることを指し、現実に誰かがアクセスしたという事実は必要としない。具体的には、インターネットにおいて、リンクが張られ、検索サーチエンジンに登録され、又はアドレス(URL)が公衆への情報伝達手段(例えば一般に広く知られている新聞、雑誌等)にのっており、かつ公衆からのアクセス制限がなされていない場合には、公衆に利用可能である。
*ホームページ等へのアクセスにパスワードが必要であったり、アクセスが有料である場合でも、その情報がインターネット等にのせられており、その情報の存在及び存在場所を公衆が知ることができ、かつ、不特定の者がアクセス可能であれば、公衆に利用可能な情報であるといえる。
また、この運用指針の中ではと限定しているが
- インターネット等:電気通信回線を通じて技術情報を提供するインターネット、商用データベース、メーリングリスト等全てを示す。
- ホームページ等:インターネット等において情報をのせるものを示す。
- 電子的技術情報:電気通信回線を通じて得られる技術情報。
[3]電網情報を引用する際の条件
- 電子的技術情報に掲載日時の表示がない場合、原則的に引用しない。掲載日時については、インターネット等の情報がそのホームページ等にのせられた国又は地域の時間を、日本時間に換算して判断する。
- 次のようなホームページに掲載されている情報は、通常、問い合わせ先が明らかであり、当該疑義もきわめて低いと考えられる。
*刊行物等を長年出版している出版社等のホームページ(新聞、雑誌等の電子情報を載せているホームページ:学術雑誌の電子出版物をのせている)。
*学術機関のホームページ(学会、大学等のホームページ:学会、大学等の電子情報(研究論文等をのせている。)
*国際機関のホームページ(標準化機関等の団体のホームページ:標準規格等の情報をのせている。)
*公的機関のホームページ(省庁のホームページ:特に研究所のホームページにおいて、研究活動の内容や研究成果の概要等をのせている)
このようなホームページ等であっても掲載日時の表示がない場合は原則的に引用しないが、掲載された情報に関してその掲載、保全等に権限及び責任を有する者によって、ホームページ等への掲載日時及び内容についての証明が得られれば引用することができる。
[4]電子的技術情報が公衆に利用可能なものの事例
- 検索サーチエンジンに登録され検索可能であるもの。情報の存在、存在場所を公衆が知ることが出来る状態のもの。
- パスワードを入手することのみで不特定者がアクセス可能なもの。
- 有料ホームページ等においては、料金を支払うことのみで不特定者のアクセス可能であるもの。
電子的技術情報が公衆に利用可能とはいえない情報として、アドレスが公開されていないため偶然を除いてはアクセスできないもの、アクセス可能者が特定の団体・企業の構成員等に制限されており、部外秘の扱いとなっているもの。情報の内容が通常解読できない暗号化されているもの及び公衆が情報を見るのに十分なだけの間、公開されていないもの等が上げられている。
[5]引用の手引き
- 電子的技術情報と同一内容の刊行物が存在し、該電子的技術情報と該刊行物がどちらも引用可能な場合、刊行物を優先して引用する。
- 引用したホームページ等の情報をプリントアウトする。
- プリントアウトに、アクセスした日時、アクセスした審査官名、その情報を引用した出願の出願番号及びその情報を取得したアドレス等を記入する。
- 電子的技術情報を引用する際の引用文献等として記載要領
1)著者の氏名
2)表題
3)関連個所
4)媒体のタイプ(on-line)
5)掲載年月日(発行年月日)、掲載者(発行者)、掲載場所(発行場所)及び関連する個所が開示されている頁
6)検索日:電子的技術情報が電子媒体から検索された日を括弧内に記載する。
日本語での記載例
○○○○、外3名、新技術の動向[online]、平成10年4月1日、特許学会、[平成11年7月30日検索]、インターネット<URL:http://iij.sinsakijun.com/information/newtech.html>
[6]医薬品情報業務における電脳情報
医薬品情報業務における電脳情報の利用は、特許情報とは異なり、厳密な再現性が必要というわけではない。また、健康食品等の情報を検索した際、再現性を期待したとしても、再検索した場合、検索不能という事例が頻繁に起こり得る。
更に医薬品情報業務における電脳での検索は、初期情報を得る目的での検索が多く、検索結果がそのまま回答として使用できるとは限らない。
[7]情報は自己責任において使用すべきもの
『?情報とは自己の行動決定の規範となるものである?』
情報とは、自己の行動決定のための判断基準となるものであり、本来他人任せにするものではなく、自己責任において評価し、その採否を決定すべきものでる。その意味からすれば電網上で手に入れた情報を信頼するかしないかは、それこそ『貴方の勝手でしょう』ということであり、『信頼する』と判断して、最終的にその判断に裏切られたとしても、それはそれで当人の責任ということである。
[8]情報提供単位の選択基準
世界的規模で見た場合、どの位の情報提供単位(ホームページ)があるのか知りようもないが、ホームページ上に見られる情報は、玉石混淆であり、引用文献としてURLを記載したとしても、参照のため再アクセスしようとした時点で、既に機能を停止しているということも起こり得る。
健康食品等の販売を主体としているサイトの場合であれば、商品が売れなければホームページを運営する意味がないということであり、簡単に『サイト』を閉鎖するということは起こり得る。このような事態を考えると『商品販売のみの目的で開設されているサイト』の情報は、信頼性に欠けるということである。
一方、『個人名とメールアドレスが明記』されており、不足情報や不明な点を質問すると直ちに回答が戻ってくるサイトもある。このようなサイトでは、十分な情報の入手が可能であり、信頼性の高い情報の入手が可能である。しかも、このようなサイトの中には、必要資料を郵送してくれるという徹底したサービスを実施しているサイトもある。
更に専門的な情報を公開しているサイトもあるが、『著者名が記載されており、引用文献が明記』されているサイトに収載された情報は、信頼性が高いといえる。電網の世界だからということで、ホームページを主催する側が、情報を粗雑に扱うということは問題である。インターネットジャーナルとして、信頼される情報提供媒体にするためには、文書媒体と同様に一定のルールに基づいて情報を公開すべきである。
その意味では、学術雑誌等に収載されている原著論文同様、引用文献の明記はサイト管理者の責任であるといえる。
電網上に『有料で情報公開しているサイト』もある。有料である以上、会員登録し、使用料を支払うことが必要であるが、有料であるということは、提供する情報に責任を持つということも、その契約の中に含まれていると考えるのが当然である。つまり情報の正確性を保証するための対価も含まれていると考えていいはずである。一方、有料ではないが『会員制のサイト』もある。会員としての登録を求める以上、登録会員に責任ある情報を提供するのは当然であり、無料だから適当な情報というのでは、わざわざ閉鎖的な会員制を取り入れてまで電網上にサイトを運営する意味はない。
更に現在、多くの『官』が電網上で情報の公開を行っている。もし、『官』の提供する情報が信用できないとすれば、それはある意味で、国民が不幸だということにも繋がることになるので、『官』における都合の悪さがない限り提供される情報は、信頼のおける情報であると考えていいはずである。
従って電網上の情報の信頼性は
- 官庁等の公的機関が運営するサイトに公開されている情報
- 有料で運営されているサイトに公開されている情報
- 無料であるが登録会員制を導入しているサイトに公開されている情報
- 一般に公開されているサイトであるが、発表されている情報に、文書情報同様、著者、引用文献等が明記されている情報
- 情報提供者のメールアドレス、連絡方法が明記されているサイトに発表されている情報
- サイトの管理が徹底していて、収載されている情報のメンテナンスが確実に行われていること
等を総合して判断することが必要である。
[9]個人と専門家の信頼性の相違
文書情報であれ電網情報であれ、入手した情報を評価し、利用するか否かの判断を下すのは、あくまでも最終的には情報使用者である。
しかし、これは個人が個人のための情報を入手し、その情報を参照するか否かを決める場合であって、専門家である薬剤師が、患者に情報を提供する際に、『情報を参照するか否かは患者の判断』等ということはあり得ない。
専門家が特定の個人に提供する情報は、専門家がその患者にとって最も必要にして適切であると判断した情報であり、また十分に信頼性のある情報でなければならない。
その為には常に最新の情報を入手する努力と共に、信頼性の高い情報を手に入れる努力を忘れてはならない。入手した情報の正当性を評価する物差しは、あくまで個人の努力によってしか手に入れることはできない。
努力をし、技術を研くからこそ専門家なのであり、その努力の結果が他人に見えるから評価されるのである。同じ服薬指導をするのでも、懐の深い薬剤師と浅い薬剤師とでは、受け手の側の信頼感は異なってくる。同じ白衣を着ていても、話をしているうちに明らかに差が付くことを忘れてはならない。
提供した情報に基づいて、医師が患者に処置を行った場合、その結果が患者にどう反映したのか。もし誤った情報を提供し、患者に悪い結果を招いた場合、どの様な責任の取り方があるのか等の緊張感のなかで、情報を取り扱う経験を積み重ねることが、情報評価の眼を養うための最大の早道である。臨床現場での切った張ったの経験なしに、情報をどう取り扱ったところで、机上の空論でしかない。
薬剤師が白衣を着るのは患者の前である。病院であれ調剤薬局であれ、患者と向き合うことによって教育され鍛えられていく。医薬品情報は、そのような薬剤師が作り上げ確立すべきものである。専門職能として育てられていく過程で、何度も恥をかく場面に遭遇する。その環境の中から臨床現場で役に立つ薬剤師が育ち、患者が薬剤師の提供する医薬品情報等のサービスに評価を与えるのである。
[2000.10.22.]
- インターネット等の情報の先行技術としての取扱運用指針、[online]、2000.12.10、特許庁、[2000.9.25.検索]、インターネット<URL:htpp://www.jpo-miti.go.jp/info/unnyousisinhtm.htm>
- 古泉 秀夫:論壇-電網情報の信頼性;薬事新報,No.2131:1117-1118(2000)
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