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β-プロピオラクトンについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:薬名検索・β-プロピオラクトン・β-propiolactone・プロピオラクトン・propiolactone・繊維改質剤・殺菌消毒剤・添加物・毒性

Q:血液製剤中に添加されていたとされるβ-プロピオラクトンとはどの様なものか

A:propiolactone、β-propiolactone。一次発癌剤として知られる。このようなβ-ラクトン類は環張力を有するため、容易にO-H2Cの間で開裂、生体高分子の求核官能基を攻撃してアルキル化剤となるとする報告が見られる。

β-propiolactoneの用途は、医薬品、有機合成(アクリル酸及びアクリレート)、繊維改質剤、殺菌消毒剤などである。代謝不詳。皮膚一次刺激性は強い。眼、鼻、咽頭、気道粘膜刺激あり、0.1mg/L以上では耐えられない。動物実験で発癌性あり、人に対する発癌性についての疫学的証拠はない。許容濃度1.5mg/m3、A2(ACGIH)等の報告も見られる。

その他、β-propiolactoneについて、次の報告がされている。

  • 用途:医薬、合成樹脂、殺菌消毒、繊維改質。
  • 物理・化学的性質:液体。火災危険(中等度)-熱、火炎に近づけないこと。融点:?33.4℃、引火点:70℃。
  • 溶解性:水に37%(v/v)可溶、アルコール(反応する)、アセトン、クロロホルムに混和。
  • 毒性:経口-ラット LDL0:50mg/kg、経口-ラット TDL0:3500mg/kg・70週 間歇投与(発癌性)、皮下-ラット TDL0:20mg/kg・34週(発癌性)、気管-ラット TDL0:180mg/kg・30週(発癌性)、皮膚-マウス TDL0:2700mg/kg・27週(発癌性)、腹腔-マウス LDL0:3mg/kg、皮下-マウス TDL0:69mg/kg・43週(発癌性)、静脈-マウス LD50:345mg/kg。
  • 代謝:明らかでない。
  • 症状:希釈されない形では強力な一次刺激作用がある。動物実験で静脈内投与すると、肝臓壊死と腎尿細管障害を惹起するが、投与前に蛋白質と反応させておくと、その毒性はかなり低下するといわれている。またマウス、その他の動物実験で皮膚に対する発癌物質又はカルチノーゲンであることが認められている。

等の報告がされている。

なお、本品は『医薬品添加物』としての承認はされていない。

[011.1.PRO:2003.7.28.古泉秀夫]


  1. 薬科学大辞典 第3版;廣川書店,2001
  2. 最新医学大辞典 第2版;医歯薬出版株式会社,1996
  3. 後藤 稠・他編:産業中毒便覧;医歯薬出版株式会社,1992

ワーファリンとパラミジンの相互作用

火曜日, 8月 14th, 2007

Q:ワーファリン錠の副作用を防止する目的として、パラミジンカプセルの併用処方が出された。両剤の添付文書によれば「併用注意」となっているが、調剤可能か。

A:両剤の添付文書中に記載されている相互作用に関連する事項は、下記の通りである。

商品名(会社名) ワーファリン錠(エーザイ) パラミジンCap.(グレラン製薬)
warfarin potassiumの併用が必要な場合、本剤の投与量を減らすこと。 抗凝血剤の作用を増強することがある。






1.過敏症[蕁麻疹、皮膚炎、発熱等]。

2.肝臓[黄疸、血清トランスアミナーゼの上昇等]。
3.消化器[悪心・嘔吐、下痢等]。
4.皮膚[脱毛等]。
5.その他[抗甲状腺作用]

1.血液[白血球減少、出血傾向、血小板減少]
2.過敏症[発疹]
3.消化器[食欲不振、悪心、胃痛、腹痛、下痢、胃部不快感、口内炎、嘔吐、軟便、腹部不快感、口渇]

4.精神神経系[眠気、頭痛、ふらつき感]

5.その他[発熱、胸部灼熱感]

剤の添付文書によれば、warfarin potassiumとbucolomeは「併用注意」となっているが、併用注意は処方医がその薬剤を使用する際に漫然と使用しないよう注意を喚起する目的の注意事項であり、注意事項に基づいて両剤を併用することに問題はない。

しかし、両剤の添付文書に記載されている『承認適応症』を見る限りwarfarin potassiumの副作用防止あるいは作用増強目的でのbucolomeの使用は認められていない。

なお、warfarin potassiumとbucolomeの併用例について、次の報告がされている。

warfarin potassiumとbucolomeの併用療法について、bucolomeのwarfarinに及ぼす効果は、両者の蛋白結合における相互作用にあり、in vitroの実験で

1)bucolomeが蛋白と結合している状態にwarfarinを添加すると、warfarinの蛋白結合が著しく阻害される。

2)蛋白と結合しているwarfarinは、bucolomeの添加によって遊離し、蛋白結合の置換(displacement)が行われる。

ことが示されている

臨床上投与法として注意すべきことは、warfarin potassium数mgで予め維持されている場合でも、まずwarfarin potassium 1mg、bucolome 300mgから開始することで、warfarin potassiumの減量なく、bucolomeの添加は出血傾向ををほぼ必発する。

bucolomeの副作用は殆ど経験していない。また、本併用療法のT.T.O値の安定には2?3カ月を要することが多く、以後の安定性は非常によいと考える。

更にwarfarin potassiumとbucolomeの併用療法について、抗凝固療法として人工弁置換後の症例に最初から使用するのではなく、まずwarfarin potassiumのみを単独投与し、1日量で5?6mgまで増量してもその治療域で維持できないと判断された場合やwarfarin potassiumで術後コントロールされながらその遠隔期でwarfarin potassium単独では治療域に維持できなくなった場合に初めて実施される。

この際、外来受診の症例では、必ずwarfarin potassiumは1mgに減量し、bucolomeは300mgを併用する。warfarin potassiumを減量しないでbucolomeを加えると必ず3?4日後に出血症状をきたす。

入院中の場合は、warfarin potassiumは3mg程度まで減量し、bucolome 300mgを併用しながらT.T.Oを確実測定すれば、その抗凝固能は速やかに得られる。引き続きwarfarin potassiumを適切に微調整して維持量を決定する。

以上の調査結果からwarfarin potassium・bucolomeの併用療法は、承認適応外使用であり、この療法に使用された薬剤の保険請求は承認されない。

また、経口投与されるwarfarin potassiumは、腸内細菌叢によるビタミンKの生成、飲食物中のビタミンK等の外部要因により効果の安定確保が難しい薬剤であること。血漿アルブミンとの結合率が高く、血漿アルブミンが減少している患者では、遊離の薬物血中濃度が高くなる可能性があること、あるいは他の蛋白結合率の高い薬剤が併用された場合の影響、適応外使用によるbucolomeによる副作用の発現等を考えた場合、特殊な用例の処方せんは、院内対応とすべきであると判断する。

従って、処方発行医療機関の薬剤部あるいは薬局と協議し、院内対応とするよう申し入れることが必要であると考える。

[035.4WAR:2000.5.16.古泉秀夫]


  1. ワルファリン錠添付文書,1999.4.改訂
  2. パラミジンカプセル添付文書,1999.3.改訂
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2000
  4. グレラン製薬株式会社学術課・私信,2000.5.15.
  5. 坂下 勲・他:Starr-Edwardsボール弁 第3編の1 僧帽弁置換症例と抗凝固療法;日本胸部外科学雑誌,25(11):1395-1402(1977)
  6. 坂下 勲:抗凝固療法としてのwarfarin・paramidinの併用-人工弁置換症例を中心として-;グレラン製薬,No.1615:7-8

ローヤルゼリーの副作用について

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:健康食品・副作用・ローヤルゼリー・Royal jelly・蜂皇漿・王乳・血圧上昇・コレステロール上昇・甲状腺

Q:ローヤルゼリーが直接的に血圧を上げる作用はないとのことですが、コレステロールが上がってしまうことはありますか?。甲状腺への作用もあるみたいですが、どうでしょうか?

A:ローヤルゼリーは雌の働きバチが花粉を摂食し、体内で給餌用の蛋白質に合成し、喉頭腺から分泌するミルク状物質で、ハチの幼虫の生後3日間の食糧とされるが、女王バチになる幼虫に対しては、その後も成長のための食糧として使われる。

ローヤルゼリーは細かい不純物を除去する濾過工程を経て凍結乾燥等により調製されるが、その成分は蜜・花粉等を採取する花の種類・土地・気候によっても異なる。

  • 同意語:[英]Royal jelly、 [中国]蜂皇漿、王乳、 [学名]Royal jelly。
  • 区分:非医薬品。

ローヤルゼリーは古来「不老長寿の薬」として珍重されており、「若返り作用で更年期障害に有効」、「体質を改善する」、「免疫機能を向上させる」等の惹句が掲げられている。

しかし、ヒトでの有効性について、信頼できるデータは見当たらないとする報告も見られる。また安全性については、アミノ酸類が豊富に含まれ、良質な蛋白質を構成し、脂肪酸など各種の微量成分を含んでいるとされており、各種のアレルギー反応が起こる可能性が否定できないため、喘息やアトピーの患者では摂取を避けるべきだとする報告が見られる。

また安全性に関する信頼できる資料が十分でないことから、妊娠中・授乳中の摂食は回避すべきであるとされる。

  • 成分:水分:60-70%、粗蛋白質:12-15%、糖分:10-16%、脂質:3-6%、その他vitamin B1・B2・B6、ナイアシン、パントテン酸、vitamin A、C、E、塩類、アミノ酸等の低分子から構成されているが、主な成分は未詳である。一般に活性成分として認められているのは、ヒドロキシデセン酸 (10-ヒドロキシデセン酸、10-Hydroxy-2-decenoic Acid)で、熱に非常に安定で、ローヤルゼリーの他の成分が劣化するのに、化学的にそのまま残っている。10-Hydroxy-2-decenoic Acidの含有量は生のローヤルゼリー中で1.7-2.1%程度であり、乾燥品では6.27%程度であると報告されている。
  • 有効性:循環器・呼吸器、消化器系・肝臓、糖尿病・内分泌、生殖・泌尿器、脳・神経・感覚器、免疫・がん・炎症、骨・筋肉、発育・成長、肥満等に対するヒトでの有効性を示す評価はされていないとする報告が見られる。

試験管内・動物他での評価

  1. イヌの大腿部動脈に対して一過性の血管拡張作用-アセチルコリンの存在による。
  2. マウスに移植した腫瘍・白血病に対する強力な成長阻害作用があり、これは腹膜のマクロファージの食作用を強めることによるものである
  3. 数種のバクテリアに対し、試験管内及び動物実験で弱-強度の抗菌作用を示すが、この作用は10-Hydroxy-2-decenoic acidによるものと考えられる。
  4. ローヤルゼリーの有効性について信頼のおける情報は不足しており、その評価のためにはより多くのデータの蓄積が必要である。高脂血症患者においてはコレステロール値を低下させる可能性があるという予備的な結果はある。

安全性

  1. 安全に関する信頼できる資料は十分でない。妊娠中・授乳中の使用は避ける。
  2. 経口摂取による副作用は、アレルギー体質でない人ではほとんど発現しない。しかしアトピー・喘息の既往者においては、各種アレルギー反応(掻痒、蕁麻疹、湿疹、まぶたや顔の浮腫、関節炎、鼻漏、呼吸困難、喘息)が高頻度で起きる。重篤な場合には、喘息発作に陥る、アナフィラキシー反応を引き起こし、死に至ることもある。
  3. ローヤルゼリー摂取後に出血性の大腸炎を惹起した1例報告。腹痛、出血をともなう下痢、結腸粘膜の浮腫と出血症状がみられたが、ローヤルゼリー摂取を中止し対症療法を行ったところ、中止後2週間で症状は改善した。
  4. 外用では、皮膚のかゆみや炎症の憎悪、接触性皮膚炎があらわれることがある。
  5. 摂取量が多すぎると中毒を招くことがある。

ローヤルゼリーは食品であり、その意味では副作用という概念は該当しない。

但し食品といえども、過剰摂取によって不具合が発現することが考えられる。

更に製品によっては不純物等の混入も考えられるため、ローヤルゼリーとして一括して論じることはできないのではないかと考えられる。

[015.9.ROY:2006.2.25.古泉秀夫]


  1. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健用食品-;東洋医学舎,2004・2005
  2. 古泉秀夫・編著:わかるサプリメント-健康食品Q&A;JHO,2003
  3. http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail52lite.html,2006.2.25.

労災保険の給付について

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:法律・規則・労災保険・給付・労働者災害補償保険・国家公務員災害補償法・地方公務員災害補償法

Q:労災で使用できる医薬品と使用できない医薬品があるとされるが、労災適応薬品一覧等の資料は存在するのか

A:通常、労災保険といわれるものは、『労働者災害補償保険』呼ばれるもので、一般の労働者がその対象とされている。国家公務員の場合は、『国家公務員災害補償法』が、地方公務員では『地方公務員災害補償法』が適用対象とされる。

保健の種別 給付の手続き
労働者災害補償保険 [1]『労災保険指定薬局』の指定申請・受領。

(労災保険指定医療機関では、療養に関する補償は医療保険と同様に現物給付であるが、非指定医療機関では現金給付となる。)

[2]薬剤費の請求等にかかる事務については、労災保険指定薬局の所在地を管轄する都道府県労働基準局にらて行われる。→労災保険に係る薬剤費の算定は、健康保険法における調剤報酬点数表により行う(『労災保険指定薬局療養担当契約事項』H7.3.31.最終改正参照)。

[3]労災保険指定以外の薬局→調剤は可能。患者から費用の全額を徴収し、患者に領収証を発行。患者はこの領収証により保険者に対して費用を請求する。

国家公務員災害補償法 処方せんによる調剤の費用は、患者から全額徴収して領収証を発行するか、薬局が被災者である患者の所属する当該官庁の人事課・厚生課等の福利厚生担当課に直接請求する。
地方公務員災害補償法 処方せんによる調剤の費用は、患者から全額徴収して領収証を発行するか、薬局が地方公務員災害補償基金あてに直接請求する。

公表されている資料の内容を要約すると上記の通りであるが、薬剤費の請求等に係る事務については、各都道府県の労働基準局に確認されたい。

また、国家公務員災害補償法については各省庁の担当部署に、地方公務員災害補償法では地方公務員災害補償基金あてに確認されたい。なお、この問題については、各県薬剤師会に確認することの方が詳細の理解が得られるものと思われる。

[615.1.LAB:2005.2.22.古泉秀夫]


  1. 労災保険の取扱いについてQ&A;調剤と情報,(2),1999
  2. 桜井秀也:医療保険の種類と特徴;臨床医,30(4):458-461(2004)

ローズ水について

火曜日, 8月 14th, 2007

Q:ローズ水の入手法について。黒いローズ水といわれたが。

A:ローズ水(ヨシダ製薬)として市販されている。 本品は矯味芳香剤[分類番号:877149]に分類されており、院内製剤する際の『クンメルフェルド液』の原料として使用されている。

  • [組成]:本品100mL中にローズ油約4滴を含む。
  • [効能・効果]:医薬品の矯臭・芳香に用いる。 [用法・用量]:適宜適当量を用いる。
  • [性状]:本品は無色澄明又は殆ど澄明な液でバラの臭いがする。
  • [貯法]:気密容器。

[011.1ROS:2000.5.31.]


  1. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:約束処方集 第14版;国立国際医療センター,1994
  2. ローズ水添付文書,1985.8改訂

ローヤルゼリー摂取による血圧上昇

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:健康食品・ローヤルゼリー・ロイヤルゼリー・royljelly・副作用・血圧上昇・王乳・オウニュウ・蜂乳・ホウニュウ・王奬・オウショウ・乳奬・ニュウショウ・デセン酸・ビオプテリン・アピラック・Apilacum・インスリン作用物質

Q:ローヤルゼリー喫食中の患者の血圧が上昇したが、ローヤルゼリー中にそのような成分は含まれているか。

A:royljellyについて、次の報告がされている。

royljellyは、日本では王乳(オウニュウ)、中国では蜂乳(ホウニュウ)とも呼ばれ、蛋白質、炭水化物、脂肪酸(デセン酸等)、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル等を含んでおり、躰に活力を与える。

  • 蜂乳(ホウニュウ)
  • 異名:王奬(オウショウ)、乳奬(ニュウショウ)
  • 基原:ミツバチ科の昆虫、中華蜜蜂(チュウカミツホウ)等の働き蜂の唾液腺が分泌する乳白色の膠状物質と蜂蜜で製造した液体。
  • 成分:女王蜂の幼虫の特殊な食物であるroyljellyは平均して
水分 66%  
無機質 0.82% カリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、鉄、リン
蛋白質 12.34% アルブミン、β-グロブリン、γ-グロブリン、不溶性蛋白質
脂肪 5.46% 特殊な脂肪酸のω-ヒドロキシ-Δ2-デセン酸があり、含有量はかなり高い。

油脂類:ステアリン酸グリセリンエステル、リン脂。

還元性物質総量 12.49%  
未知物質 2.84%  

を含み、この組成は幼虫の成長によって異なる。

royljellyは5種類の糖を含むがそのうち4種類は果糖、ブドウ糖、ショ糖及びリボースである。royljellyには豊富なビタミンが含まれているが、このうちB1の含有量が安定しており、その他のビタミンB群は日によって変動がかなり大きい。一説ではB1、B2は貯蔵時に次第に減少し、その他のビタミンB群含有量は一定であるとされている。

幼虫が発育して72時間すると微量のビタミンAが含まれる。royljellyは遊離及び結合したビオチン、豊富なパントテン酸、葉酸、イノシトールをも含む。又、アセチルコリン類似物質である

[1]2-アミノ-4-ヒドロキシ-6(L-エリトロ-1,2-ジヒドロキシプロピル)-プテリジン=ビオプテリン

[2]アデニンヌクレオチド類似物質

の2種類を見いだしたものもある。

イタリア蜂のroyljellyは、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、プロリン、β-アラニン等14種のアミノ酸を含み、リジン、プロリン、β-アラニンの3種の含有量が最も多い。また、royljellyはFAD(フラビン-アデニン-ジヌクレオチド)、FMN(フラビン-モノヌクレオチド)、ビタミンB2及びキヌレニンを含み、キヌレニンの含有量は172.21mg/g迄に達する。又、アセチルコリンも含む。

  • biopterin:自然界に広く存在するプテリジン誘導体。ある種の昆虫の成長因子であるほか、ヒト尿からも単離される。ピラゾール環部位が還元されたテトラヒドロビオプテリンは、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン等の芳香環の水酸化反応において、電子供与体になる。この反応において生成するp-キノイドジヒドロビオプテリンは、N-ADPH存在下、ジヒドロビオプテリンレダクターゼの作用により、テトラヒドロビオプテリンに再生される。
  • kynurenine:無色板状晶、トリプトファンの中間代謝産物。3-ヒドロキシキヌレニンは昆虫の眼の色素オンモクロームの前駆体であるほか、その抱合体は哺乳動物の尿中に見られる。

薬理

  1. 生体の抵抗力を強化し、成長を促進する作用。本品には細胞の再生作用があるが、主に新生細胞が老衰細胞変換し、組織呼吸、酸素消費量を増加させ、代謝を促進させる。しかし、少量投与では成長を促進させるが、大量投与では成長を抑制するとする報告。
  2. .内分泌への影響:中国国外の報告によると胸腺を萎縮させ、副腎皮質刺激ホルモン様作用があるとされる。中国の研究では、この作用を否定するが、副腎中のビタミン含有量は増加する(特に還元性ビタミン)ため、組織酸化現象が強まる。又、幼若ラットの甲状腺重量が増し、結晶及び甲状腺中の蛋白結合ヨードも著しく増加し、かつメチルチオウラシルが抑制する甲状腺のヨード吸収能力も高まる。性腺刺激ホルモン様物質が含まれ、21日でマウスの卵胞を早熟化させるの報告。
  3. 循環器系に対する影響:本品には2種のアセチルコリン様物質が含まれており、ネコ・イヌに静脈注射すると血圧の急激な下降を惹起し、降圧曲線はアセチルコリンと類似し、1mgの本品の降圧作用は1μgのアセチルコリンに相当する。この作用はアトロピンで拮抗されるが、フィゾスチグミンによって強まり、血清コリンエステラーゼはこれを破壊し、アドレナリン及びエフェドリンの昇圧作用に対しては影響がない。1日5mg/kgの本品を連続2週間皮下注射しても腎臓型高血圧のイヌには降圧作用がない。本品の製剤(アピラック: Apilacum)は、慢性冠脈機能不全の患者に使用されるとする報告が見られる。
  4. 造血器官への影響:本品はマウスの6-メルカプトプリンによる死亡率を低下させ、延命効果があり、かつ骨髄抑制作用を軽減する。血中鉄分含有量を著しく増加させる。これは鉄の運搬を刺激することによって起こる。
  5. 血糖に対する影響:本品は正常ラット・マウス及びアロキサン糖尿病のラットの血糖を低下させる他、アドレナリンの正常なマウスに対する血糖上昇作用に部分的に拮抗する。
  6. 抗癌作用:本品のエーテル可溶部分のω-ヒドロキシ-Δ2-デセン酸は、AKR白血病、6C3HEDリンパ癌、TA3乳腺癌及び多種のエールリッヒ腹水癌等の癌細胞成長を強烈に抑制する作用がある。
  7. 抗菌作用:ω-ヒドロキシ-Δ2-デセン酸には抗菌作用があるの報告。
  8. その他の作用:鎮痛作用、摘出腸の収縮作用(アトロピンが拮抗)、摘出子宮収縮作用。
  • 毒性:本品はマウス、ウサギ、イヌ、ネコに対し毒性を持たない。しかし大量のビタミンとホルモンを含むので、過量では中毒を招くことがある。マウス、モルモットにアレルギー反応が起こることがあるが、100℃で15分間、3回加熱すると、そのアレルギー作用は消失する。
  • 薬効:病後の衰弱、小児の栄養不良、老人の衰弱、伝染性肝炎、高血圧病、リウマチ性関節炎、十二指腸潰瘍。
  • 副作用:好酸球増多、洞性不整脈、皮疹、下痢。一過性の口渇、頭痛、大便乾燥等が報告されている。

その他の報告として、royljellyは、間脳の老化を防止し、自律神経中枢の調整作用もあることから、更年期障害をはじめとする不定愁訴に有用ではないかとする報告も見られる。

又、royljellyにインスリン作用物質を見いだし、10-ハイドロキシデセン酸が相当することが明らかにされている。更に生体内昇圧物質であるアンギオテンシンII生成抑制作用のあることが見いだされている。

以上の報告からroyljelly の喫食が、血圧上昇に直接影響するとは考えられないが、他に該当する理由がないとすれば、1日の喫食量等の問題を検討するとともに、患者の状態によっては、一時喫食を中断し血圧の変動を見る等の対応が必要となる可能性も考えられる。

[065.ROY:2000.5.15.古泉秀夫・2005.5.27.改訂]


  1. ローゼリーゴールド内服液添付文書:中外製薬,ABG207
  2. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典 第4巻;小学館,1985
  3. 薬科学大辞典 第2版:廣川書店,1990
  4. 最新医学大辞典 第2版:医歯薬出版株式会社,1996
  5. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001

冷房病による眩暈

火曜日, 8月 14th, 2007

KW: 語彙解釈・冷房病・cooling disorder・眩暈・不適応症候群・自律神経失調症

Q:冷房病の症状として『めまい』は見られるか

A:冷房病(cooling disorder)は、環境温低下により、熱順化が乱されて生ずる不適応症候群である。

主に女性に見られ、これは生理的な差異と衣服によるとされる。症状は非特異的で、体、特に足の倦怠感、冷感、頭痛、咽頭痛、腹痛、神経痛、リウマチの悪化、生理障害、皮膚の荒れ、風邪をひきやすい、下痢などである。一般に25℃以下で発生が増加し、部屋の中で温度差があること、冷風が直接当たることも原因となる。

腰に毛布を掛けたり、膝掛けをするとよい。室温は25-27℃とし、外気温との差を5℃以内にするの報告がある。

その他、日本に『冷房病』が登場したのは1960年頃で、当初OL達が倦怠感や疲労を訴えたが、『サボリ』、『不満』としか受け取られなかった。

1970年代になって家庭用冷房機器が急激に普及したが、冷房病の研究は進まなかった。1980年代になって初めて自律神経との関連が解ってきた。

冷房の使いすぎによって自律神経が麻痺、急激な温度差の変化によって混乱することが原因で冷房病が発現する。

手足の冷え ・ほてり ・肩こり ・しびれ ・慢性疲労
めまい ・のぼせ ・だるさ ・頭痛 ・下痢
便秘 ・不眠 ・肌荒れ ・月経不順 ・太る
アレルギー 風邪をひきやすい ・トイレが近い ・イライラしがち

つまり『冷房病(クーラ病)』とは、エアコンにより過度に体を冷やされ、室温が外気温に比較して低くなり過ぎることによる体の変調をいう。

高温多湿の日本に多い文明病である。『冷房病』は、男性より女性、体力のある人より無い人、病人、高齢者の訴えが多い。更に生理異常や生理痛などで、生来『疲労倦怠感、頭痛、食欲不振、腹痛、下痢、めまい、手、足、腰、背すじの冷え、手足のだるさ、神経痛、腱鞘炎』等を有している者では、自律神経失調症によるこれらの症状が発現しやすいといわれている。

[615.8.COO:2003.12.29.古泉秀夫]


  1. 医学大辞典;南山堂,1992
  2. http://www.ktv.co.jp/ARUARU/search/arureibo/rei_1.html, 2003.12.29.
  3. http://www.ikebukuro.ne.jp/123/topic2.html,2003.12.29.
  4. http://www.kirishima.ne.jp/new_contents/kenko/008.html, 2003.12.29.

レプチンについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:薬名検索・レプチン・leptin・leptin受容体・ホルモン・成熟脂肪組織・食欲調節・抗肥満薬・代謝調節因子

Q:レプチンとは何か 

A:1994年Friedmanらによりob/ob*マウスの病因遺伝子であるobese geneのcDNAが単離同定された。

この遺伝子産物はギリシャ語の痩せを意味する“leptos”にちなみ、『leptin(レプチン)』と命名された。

leptinは主として成熟脂肪組織から分泌されるホルモンであり、末梢の脂肪貯蔵量を視床下部に伝達し、視床下部の摂食・代謝調節因子をコントロールし、体重を一定に保つ働きを有していると考えられている。

1995年にはdb/db*マウスの病因遺伝子であるdiabetes geneも同定単離され、diabetes geneは、leptin受容体をコードしていることが明らかとなった。

[*ob=obesity(肥満)、db=diabetes(糖尿病)]

このleptin・leptin受容体の発見を契機に、食欲調節の分子メカニズムに関する研究が急速に進展し、肥満の成因から治療に至る展望が開け てきた。leptinによって制御される摂食・代謝調節因子は、抗肥満薬とし重要である。

ob/ob*マウスにleptinを投与すると体重が減少する。その機序には、視床下部を介した食欲抑制と交感神経を介したエネルギー消費亢進の両作用、更には脂肪組織への直接脂肪分解作用によることが知られている。

既にleptin値が高い肥満動物へ、更に高濃度のleptinを投与すると、食事量はコントロール群と同じであるにもかかわらず、体脂肪組織含量が減少する。この結果はleptinの髄液移行が低下している肥満患者でも、leptinが脂肪組織に直接作用することで、脂肪分解を誘発し、体重を減少させたと解釈できるとされている。

その他、最近の報告としてleptinは成熟脂肪組織から分泌されるホルモンで、視床下部に存在するleptin受容体に作用することによって強力な飽食シグナルを伝達する。

このシグナルと同時に、leptinは交感神経活性化を介するエネルギー消費を促し、体重調節機構において重要な役割を果たしている。

更にleptinは栄養状態を感知し、摂食促進分子(神経ペプチドY、アグチ関連ペプチド、melanin-concentrating hormone、オレキシン等)と摂食抑制分子(α-メラニン細胞刺激ホルモン、cocaine and amphetamine-regulated transcript等)に作用することによって、体重を調節している。

これらのことから『leptinは摂食量やエネルギー収支を調節する脳部位である視床下部、特に弓状核において栄養状態を探知する伝達物質として考えられている』とする報告が見られる。

また、レプチン(leptin)とは、ヒト体内の脂肪組織、胃、胎盤で合成される146アミノ酸よりなるホルモン/サイトカインである。強力な摂食抑制とエネルギー消費増加作用(体温上昇、運動量や酸素消費量の増加、交感神経活動の亢進など)を有することからギリシャ語で「痩せる」を意味する leptosに由来して命名された。

脂肪滴を豊富に有する成熟脂肪組織より分泌されたレプチンは、視床下部に存在する受容体に結合し、その作用を発現する。種々の遺伝性や後天的肥満モデル動物及びヒト肥満者でレプチン遺伝子発現は亢進している。血中レプチン濃度も上昇しており、体格指数(BMI)や体脂肪率と正の相関を示すの報告がされている。

また、肥満の原因の一つに食欲コントロールの異常があげられる。レプチン遺伝子(ob遺伝子)は、遺伝性肥満マウス(obマウス)の病因遺伝子として発見された脂肪組織に、特異的に発現する遺伝子である。

この遺伝子産物レプチンが、主に視床下部に存在するレプチン受容体を介して食欲制御を行っていると考えられるが、obマウスでは正常に機能するレプチンが作られないため「もう食べなくて良い」という指令が中枢に伝達されず、その結果 過食と肥満が持続する。ヒトでも稀であるがレプチンやレプチン受容体遺伝子異常に起因する肥満が報告されている。

更に、従来は単なるエネルギー貯蔵庫として代謝的に不活発と考えられてきた脂肪組織で、生合成・分泌され、飽食因子として主に視床下部のレプチン受容体に作用することにより、強力に摂食を抑制し、エネルギー消費量を増大させることが明らかにされた。

レプチンは末梢の栄養状態のセンサーとしてその情報を中枢に直接伝達し、体脂肪量を一定に保つフィードバックグループを形成している大変ユニークな分子である等の報告がされている。

[011.1.LEP:2003.11.4.古泉秀夫・2004.5.18.・2005.9.30.修正]


  1. 櫻井 武:脂肪の働きと食欲コントロール;調剤と情報,8(6):809-817(2002.6.)
  2. 加隈 哲也・他:レプチンによる脂質代謝と脂肪蓄積の制御;日薬理誌,118:334-339(2001)
  3. 日高 周次・他:レプチンの発見によりもたらされた抗肥満薬の標的分子;日薬理誌,118:309-314(2001)
  4. 山口 拓:摂食制御におけるレプチンと内因性大麻様物質との関連性;ファルマシア,38(2):167-168(2002)
  5. 伊藤正男・他総編集:医学書院医学大辞典:医学書院,2003
  6. 冨山佳昭:http://www.jsth.org/03indices/,2003.10.23.
  7. 飯田薫子・他:肥満症とその治療;医薬ジャーナル,38(6):1737-1740(2002)
  8. 齋藤寿一:内分泌学;日本医事新報,No.4062:1-10(2002)

ルンブロキナーゼとは何か

火曜日, 8月 14th, 2007

Q:『龍心』中に配合されているルンブロキナーゼとは何かの質問を受けたが、これはどの様な物質か

A:『龍心』[自然の館 福岡市博多区奈良屋町9-5 TEL.092-262-7138/FAX.092-262-7139]はルンブロキナーゼ・田七人参・ローヤルゼリー・馬鈴薯澱粉・乳糖・ゼラチンを原材料とする食品とされている。

ルンブロキナーゼ(lumbrokinase)については、血栓予防のため線溶酵素の研究を行ってきた宮崎医科大学第二生理学教室の美原 亘らが、古来中国で『地竜』の名称で漢方薬として使用されていたミミズの内臓部分から血栓を溶解する特殊な酵素を発見、1983年にストックホルムで開かれた国際血栓止血学会で、動物性蛋白質『ルンブリクス・ルベルスに含まれるルンブロキナーゼ』として発表したとしている。

『龍心』は健康食品であるため、薬効は標榜できないため、食効として「糖尿病・高血圧症・低血圧症・心筋梗塞・脳血栓・狭心症・肝臓障害・白内障・緑内障・静脈瘤・神経瘤・リューマチ・壊疽・更年期障害・生理痛・生理不順・前立腺肥大・関節痛・筋肉痛・肩こり・脳血管性痴呆症・床ずれ・白蝋病・スポーツ疲労回復」等を挙げているが、厳密な臨床治験の結果、確定した適応ではないため、標榜する適応の全てに蓋然性があるかは疑問である。

漢方薬の異名として『地竜・土竜・地竜子』等と呼称されるのは漢方名『キュウイン(蚯蚓)』と呼ばれるものである。

基原

フトミミズ科の動物、参環毛蚓[ジンカンモウイン:Pheretima aspergillum(E.Perrier)]あるいはツリミミズ科の動物、背暗異唇蚓[ハイアンイシンイン(和名:カショクツリミミズ):Allolobophora caliginosatrapezoides(Ant.Duges)]等の全体。

成分

各種の蚯蚓には、ルンブリフェブリン、ルンブリチン、テレストロ-ルンブリリジンが含まれている。広地竜はヒポキサンチン等を含む。

蚯蚓には含窒素化合物としてアラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、リジン等のアミノ酸及びキサンチン、アデニン、グアニン、コリン、グアニジン等が含まれる。

蚯蚓(Lumbricus spencer)の脂肪類中にはステアリン酸、パルミチン酸、高度不飽和脂肪酸、奇数個の炭素原子よりなる直鎖脂肪酸及び分鎖脂肪酸、リン脂質、コレステロール等を含む。

蚯蚓(Lumbricus terrestris)の黄細胞組織には炭水化物、脂肪類、蛋白質及び色素を含み、塩基性アミノ酸としてヒスチジン、アルギニン、リジンを含有する。この黄色素はおそらくリボフラビンかそれに類似した物質である。蚯蚓はある種の酵素を含み、pH:8.0?8.2で蚯蚓を溶解させる。

薬理

  1. 降圧作用:広地竜チンキ剤、乾粉懸濁液、熱浸液、煎剤などは、各種動物に対し緩慢だが持続的な降圧作用を示す。地竜を静注した後の降圧作用は、急速な耐性現象を示すが、経口服用及び臨床応用では見られていない。降圧作用の原理は、脊髄から上の中枢神経系に直接作用するか、またはある種の内受容器を通し反射的に中枢に影響を与え、部分的に内臓血管を拡張させ血圧を下降すると考えられている。ヒポキサンチン除去地竜B は腎性高血圧の動物実験で顕著な降圧作用があるとされている。
  2. 平滑筋に対する作用:広地竜から抽出した含窒素性有効成分は、動物において顕著な気管支拡張作用を示す。ヒスタミン噴霧による喘息発作似たいし、保護作用が見られた。広地竜から抽出した吸湿性で淡黄色の針状結晶は摘出及び在位の子宮の緊張を増大させ、痙攣性収縮を起こす。また子宮瘻管の収縮波が明らかに増大する。更に動物の在位腸管に強烈な興奮を起こす。国内における検討では、地竜浸出液の直接作用は血管収縮であり、中枢作用は血管拡張であるとされている。
  3. 解熱作用:蚯蚓水浸剤及び蚯蚓解熱性塩基は、大腸菌毒素や熱穿刺によって起こした人工発熱に対し、共に良好な解熱作用がある。蚯蚓の解熱原理は体温中枢に作用し、続いて散熱を増大させる。これと同時に体内発熱も増加するが、散熱が体内発熱を凌駕するため体温は下降すると報告されている。
  4. 鎮静・抗痙攣作用:熱浸液、アルコール抽出溶液は、動物に対し鎮静作用がある。広地竜、皖地竜(カンヂリュウ)、地竜の内臓と表皮の抗痙攣作用の強度に差はない。地竜浸出液を注射すると血清中のカルシウム量は低下するが、血清カリウムとコリンエステラーゼの含有量には顕著な変化はない等の報告がされている。

以上の報告は蚯蚓全体を用いた場合の報告であり、lumbrokinaseに関する報告ではないが、参照として紹介する。

『龍心』の喫食に際しては、現に受診治療中の患者の場合、主治医と相談することが必要である。

なお、本品の喫食に際し、次の点に注意することが必要である。

  1. 本品源材料中にゼラチンが含まれているため、ゼラチンに過敏症の既往のある者では喫食してはならない。
  2. 抗血栓剤(alteplase、batroxobin、monteplase、nasaruplase、nateplase、thrombolyse、tisokinase、urokinase)、血小板凝集抑制剤(cilostazol、dalteparin sodium、heparin calcium、heparin sodium、limaprost alfadex、

    parnaparin sodium、sarpogrelate hydrochloride、sodium ozagrel、ticlopidine

    hydrochloride)、aspirin等の服用患者では、服用薬剤の作用増強の可能性があるため、本品の喫食は回避すべきである。

[011.1LUM:2000.7.6.古泉秀夫]


  1. 自然の館資料,www.sizen.co.jp/ryusinq & a.html,2000.7.5.現在
  2. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2000

リタリンの副作用-ヘモグロビンの破壊

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:副作用・リタリン・塩酸メチルフェニデート・methylphenidate hydrochloride・ヘモグロビン破壊・赤血球減少

Q:リタリンの副作用としてヘモグロビンの破壊は報告されているか

A:リタリン錠・散(ノバルティス)は塩酸メチルフェニデート(methylphenidate hydrochloride)の製剤で、添付文書(2002.11.改訂)に記載されている血液関係の副作用は『血小板減少性紫斑、白血球減少、血小板減少、貧血』のみである。また、第一次再評価時の文献調査、承認時までの調査、承認時以降の調査(昭和53年10月3日-昭和56年10月2日まで実施)においても『貧血』以外の報告は見られていない。

多剤併用中に副作用が発現したとすれば、各併用薬剤について個別に副作用の調査をするとともに、被疑薬の投与を中止する等の処置を行わない限 り、本剤と副作用の因果関係を推論することは難しい。

また、本剤によるどの様な症状を『ヘモグロビン破壊』としたのかが不明であり、詳細な調査は困難である。

薬剤の副作用としての貧血症について『血液の酸素運搬機能が減少した状態である。これによって末梢の組織は低酸素状態になる。これはヘモグロビン濃度の低下及び赤血球数減少に起因すると考えられる。

医原病としての貧血症には、溶血性貧血と巨赤芽球性貧血の二つの型がある。』とされている。本剤添付文書中の標記は単に『貧血』であり、どちらとも判断しかねるが、貧血との関連でヘモグロビンの減少等が見られる可能性は否定できない。

なお、ヘモグロビン血症(血色素血症)について、次の報告がされている。

『血漿中にヘモグロビン量が増加した状態で、主に血管内溶血を生じたときに出現する。正常では血漿ヘモグロビンは5mg/dL以下(0.3mg/dL程度)であるが、発作性夜間ヘモグロビン(血色素)尿症、発作性寒冷ヘモグロビン(血色素)尿症、行軍血色素尿症、異型輸血、赤血球破砕症候群などで増加する。血漿中の遊離ヘモグロビンは、まずハプトグロビンと複合体を形成し網内系で処理させ、飽和後はヘモグロビン血症として循環し、腎からヘモグロビン尿として排泄される』。

[065.MET:2004.7.6.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  2. リタリン錠・散添付文書,2002.11.改訂
  3. リタリン錠・散インタビューフォーム,1996.12.
  4. 医学大辞典;南山堂,1992
  5. 森 昭胤・監訳:薬物による予期せぬ作用-生化学・薬理学テキスト-;じほう,2003

リポスタビルについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:薬名検索・リポスタビル・lipostabil・動脈硬化症・過コレ ステリン血症・高コレステロール血症

Q:リポスタビルとはどのような薬剤か

A:リポスタビル[Lipostabil](日本商事)又は (Nattermann-日本商事)。

  • 分類:動脈硬化治療・予防剤。
  • 組成:1カプセル中ポリエンホスファジルコリン175mg、ポリオキシアル ケンヘキシット・モノオレエート100mg、テオフィリン・ロダン分子化合物50mg。
  • 作用:[1]血中の異常脂肪蛋白分画を改善し、β-リポ蛋白を減少させ、β/αリポ蛋 白比正常化させる。

    [2]脂肪清澄作用を有し、低比重リポ蛋白分子に作用して混濁した血清を清澄に する。

    [3]血液凝固促進因子の活性を抑制し、血栓形成を阻止する。

    [4]リポ蛋白の構成成分であるコレステロールとホスフォリピッド比を正常化す る。

  • 適応:過コレステリン血症及び動脈硬化症、肝障害及び脂肪肝。
  • 用法:最初の3日間は朝・昼・夕各1カプセル宛。次の3日間は朝1カプセ ル・昼2カプセル・夕1カプセル宛。以後症状軽快するまで、朝1カプセル・昼・夕各2カプセル宛継続経口投与。症状消褪後1日2-3カプセル宛維持量として暫時継続経口投与。

[注意]

[1]投与中はパラフィン油を含む薬剤の投与は禁忌である。

[2]噛まずに 服用する。

[011.1.LIP:2004.6.21. 古泉秀夫]


  1. 薬名検索辞典;薬業時報社,1984
  2. 木村徳三・監修:新旧薬剤ハンドブック;株式会社薬事新報, 1992
  3. JAPIC ・編:日本医薬品集;薬業時報社,1975

緑茶の効用について

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:臨床薬理・緑茶・茶葉・チャヨウ・タンニン・tannin・緑茶タン ニン・栄養成分・機能性成分・カテキン・catechin・消毒・タンニン酸・tannic acid

Q:最近富にお茶、特に緑茶の効用が叫ば れ、カテキンがもてはやされています。昔からお茶は、薬効があるものとされていましたが、お茶の効用及びその成分等について教えてください。

A:通常、日本人が飲用するお茶は、生薬名「茶葉(チャヨウ)」と呼ばれる ものである。

ツバキ科(Theaceae)のチャ(Camellia sinensis L.)の葉を摘み、セイロで蒸し、酸化酵素の作用を停止したものである。

日常的に飲用するお茶は煎茶と考えられるので、煎茶の栄養成分を以下に紹介する。

茶葉 浸出液
エネルギー 331kcal 2kcal
水分 2.8g 99.4g
蛋白質 24.5g 0.2g
脂質 4.7g (0)
炭水化物 47.7g 0.2g
灰分 5.0g 0.1g
無機質 Na 3mg 3mg
K 2200mg 27mg
Ca 450mg 3mg
Mg 200mg 2mg
P 290mg 2mg
Fe 20.0mg 0.2mg
Zn 3.2mg Tr
Cu 1.30mg 0.01mg
Mn 55.00mg 0.31mg
ビタミン A retinol (0) (0)
carotene 13000μg (0)
レチノール当量 2200μg (0)
D (0) (0)
E 68.1mg ?
K 1400μg Tr
B1 0.36mg 0
B2 1.43mg 0.05mg
niacin 4.1mg 0.2mg
B12 (0) (0)
葉酸 1300μg 16μg
pantothenic acid 3.10mg 0.04mg
C 260mg 6mg
脂肪酸 飽和 0.62g ?
一価不飽和 0.25g ?
多価不飽和 1.95g ?
コレステロール (0) (0)
食物繊維 水溶性 3.0g ?
不溶性 43.5g ?
総量 46.5g ?
食塩相当量 0 0
廃棄率 0 0
カフェイン 2.3g 0.02g
タンニン 13.0g 0.07g

表1.中の浸出液は茶葉10gを90℃の湯430mLに1分間浸出したものである。茶葉中の栄養成分と比較して浸出成分は極く僅かな量である。

緑茶タンニンでは70mg/100mLに過ぎない。

次に茶葉に含まれる機能性成分について紹介する。

メチルキサンチン類(caffeine 4%、theobromine、adenine、xanthine)

一般に知られているものでmethylxanthine類の一部はタンニンと結合している。

(?)-epigallocatechin gallate(エピガロカテキンガレート)

茶葉の主成分で緑茶の渋味の本体である。

(?)-epicatechin gallate(エピカテキンガレート)

渋味がある。

これらは低分子であるが、蛋白質と結合しやすいなどタンニン(tannin)としての諸性質を備えているため、 tanninの一種(緑茶タンニン)として取り扱われている。

緑茶中の カテキン[(+)-catechin、(?)-epicatechin、(?)-epigallocatechinを含む。]の量は10%前後で、そのうち半分以上が(?)-epigallocatechin gallate(EGCG)である。

EGCGの抗酸化作用や抗発癌プロモーター作用が種々の動物実験で確かめられており、発癌予防の観点から注目されて いる。

tannin

蛋白質、塩基性物質、金属などに強い親和性を示し、難溶性沈殿を生成する植物性ポリフェノール群の総称である。tanninの名称(tan=皮を鞣す)からも明らかなように、従来皮なめし効果を持つものとして取り扱われてきた。

化学構造の特徴から加水分解性タンニン(hydrolyzable tannin)と縮合型タンニン(condensed tannin)とに大別される。縮合型タンニンはcatechine類の縮合物である。

縮合型タンニンはプロアントシアニジン (proanthocyanidin)と呼ぶのが一般化しつつある。

緑茶中に含まれる機能性成分の効能について、次の報告がされている。

栄養成分 ビタミンC 抗酸化、抗ストレス、風邪予防
葉酸 茶葉には葉酸が高含量に含まれており、その半分程度が茶葉浸出液に溶出され、玉露、茎茶、芽茶で は30-45μg/100mLと報告。

葉酸は体内でメチレーションの補酵素として機能し、巨赤芽球性貧血症予防効果や新生児の神経管欠損予防効果がある。

カフェイン 眠気を覚ます興奮作用、胃液の分泌を促し消化を高める作用、脂肪蓄積予防作用を持つ。
機能性成分 カテキン

EGCG

(epigallocatechin-gallate)

EGC

(epicatechin-gallate)

EGCG3Me

(epigallocatechin-3-o(3-o-methyl)-gallate

活性酸素を除去する酸素ラジカル吸収能。1杯の緑茶にはカテキンが70mg程度含まれ、野菜等の 10倍程度の抗酸化能を持つ。

*細胞膜の脂質二重層と高い親和力を持つ。

*幾つかの反応でレセプターの役目をするガレート部位を持つ等の理由から 特に抗酸化性が高いとされている。

[1]経口投与で血漿の活性酸素消去活性が上昇し、総コレステロール、LDL コレステロール、中性脂肪値を減少させる。

[2]血漿中のLDLの酸化を抑制し、動脈硬化を防止する。

[3]小腸粘膜スクラーゼの酵素活性を非拮抗的に阻害し、血 中グルコース濃度を低下させ(ラット)、糖尿病を予防する。

[4]血圧上昇物質であるアンジオテンシンIIへ変換する酵素(ACE)の活性部位にガレート部が 結合し酵素作用を阻害し、血圧を抑制する。

[5]抗酸化能により遺伝子の突然変異を抑制して発がんのイニシエーションを抑制する。

[6]発がんプロモータのレセプ ターに拮抗的に結合し、プロモーションを抑制する。

[7]抗菌、抗ウイルス作用により、食中毒や風邪を予防する。

メチル化カテキン:強い抗アレルギー作用が報告。

テアニン

(グルタミン酸エチルアミド)

玉露のような高級なお茶に多く含まれる旨味成分。

テアニンはL系の輸送系を介し、血液脳関門を通 過して脳内に送り込まれる。

また経口摂取によりラットで血圧降下作用、脳内ドパミン放出量の増加作用があることが確認されている。

ヒトでの試験では脂肪蓄 積抑制作用や、200mgというかなり高濃度のテアニン摂取下ではリラックス時にみられる脳内α波の増大が報告されている。

サポニン 肥満や脂肪肝を抑制することがマウスで確認されている。

サポニンは膵リパーゼ作用を阻害し、脂肪 の腸管吸収を低下させる。

なお、病棟において茶浸出液を、含嗽・陰部洗浄等に使用しているとされる が、その目的は、茶浸出液の抗菌作用に期待したものであると考えられるので、茶浸出液の抗菌作用に関する報告を以下に紹介する。

[1]

近年、鶏卵・鶏肉及びその加工品によるSalmonella Enteritidis汚染に起因するサルモネラ食中毒が増加していることから、養鶏場におけるSalmonella Enteritidis汚染防止対策目的で鶏存在下に噴霧できる消毒薬の検討目的で実験した。

その結果としてSalmonella Enteritidisに対するcatechiの試験管内殺菌効果について、次の報告が見られる。

有機物
消毒資材 濃度
カテキン 250ppm

500ppm

1000ppm

効果なし

効果なし

効果なし

効果なし

効果なし

効果なし

註]効果なし:作用時間5分間で殺菌できないもの。

ただし、本実験はcatechiを使用したもので、お茶の浸出液を使用した ものではない。

[2]

緑茶のMRSA菌に対する効果について実験した例では、おーいお茶L缶 (伊藤園)245gを連日飲用。試料中の(?)-epigallocatechin-gallate濃度は120μg/mL。健常男子5人には2缶、 MRSA保菌者3人には1缶を飲用させた後、血中の(?)-epigallocatechin-gallateの

濃度を測定。また(?)-epigallocatechin- gallateのMRSAに対する最小発育阻止濃度は15μg/mLあるいは32-64μg/mLと報告されている。

最高血中濃度到達時間 最高血漿中濃度
健常者5人 約1-2時間 0.01082-0.034μg/mL
MRSA保菌者3人 0.00741-0.00927μg/mL
14日以内 29日以内 46日以内 87日以内
2人 2人 3人 1人

以上の結果からMRSAの陰性化における作用機序は、緑茶飲用後吸収された (?)-epigallocatechin-gallateが除菌効果を示しているとは考えにくい。

緑茶中の(?)-epigallocatechin- gallateの濃度は120μg/mLであることから、緑茶飲用によって咽頭に付着している菌に対して、直接作用により除菌効果を示していると思われ る。また、緑茶を飲用することによる咽頭附着菌の洗浄効果を示していることが示唆されたとしている。

ただし、本実験では、市販の缶入りのお茶を使用しており、茶葉から直接浸出 した浸出液でないという点で含有成分量が異なることが考えられる。

[3]

茶葉10gに沸騰した蒸留水500mLを加え、2分間抽出後濾紙で濾過した液を用いてMRSA、MSSA、E.coli、Enterobacter cloacae、P.aeruginosaに対する抗菌力を検討した実験で、

緑茶濃度 100% 75% 50%
MRSA 発育無し 発育無し 発育無し
MSSA 発育無し 発育無し 発育無し
E.coli 発育無し 発育無し 発育無し
Enterobacter cloacae 発育無し 発育無し 発育無し
P.aeruginosa 発育無し 発育無し 3コロニー

また、MRSAに対する緑茶の作用時間によるコロニー数の推移を見ると、 100%あるいは50%濃度で48時間後に0とする報告がされている。緑茶による発育抑制は緩やかなものであり、消毒液のように短時間で効果は見られず、 一夜以上を要した。菌液濃度がデータに大きく関係し、接種菌量が多いと緑茶の効果は見られなかったとする報告がされている。

[4]

Streptococcus pneumoniaeに対する緑茶抽出エキス及び茶から抽出、精製したカテキン[(?)epigallocatechin gallate:EGCg]の抗菌・殺菌作用について検討した。標準菌株9株と臨床分離株49株に対するepigallocatechin gallateのMICは250μg/mL(MIC90)で、通常飲用濃度(2.5%)で十分な殺菌作用を示した。

Penicillin-resistant-Streptococcus pneumoniae(PRSP)11株に対するepigallocatechin gallateとペニシリンとの併用効果を検討したところ、1/4MICのepigallocatechin gallateを併用することによって、高度耐性株が感受性株と同じ濃度のペニシリンで殺菌されることが分かった。

PCR法を用いたこれら耐性株の耐性遺 伝子の検出結果から、これらPenicillin-resistant-Streptococcus pneumoniaeに対するペニシリンとepigallocatechin gallateの併用効果は、Penicillin-resistant-Streptococcus pneumoniaeの耐性獲得機序に関係なく得られることが判明した[伊藤 勇・他:日化療会誌,50(2):118-125(2002.2.)]。

なお、局方タンニン酸(tannic acid)は、五倍子又は没食子酸から得たタンニンであるとされている。本品は局所収斂薬、含嗽薬として使用される。酸性並びに中性溶液で蛋白を凝固し 収斂作用を呈する。これにより局所の保護及び抗炎症作用を示す。

  • 副作用:長期連用・大量の外用により経皮吸収による肝障害を起こす可 能性がある。また皮膚の乾燥・変色が現れることがある。濃厚液の含嗽により粘膜の粗荒・乾燥、舌・口腔・咽頭粘膜の知覚鈍麻が現れることがある。
  • 適用:口腔・咽頭粘膜の炎症性疾患、極めて小範囲の熱傷及び創傷、肛門及 びその周囲の糜爛・炎症における収斂を目的として、含そう剤として2%水溶液を、外用剤として2-5%の軟膏を用いる。

天然に産出する植物の成分は、地味・気候等の外部環境に影響される。また、煎茶の場合、一番摘み とそれ以後の茶ではタンニンの含有量が異なるとする報告も見られるため、安定した効果を期待することは出来ないと考えるべきである。従って、通常飲用する お茶を利用して、医療機関内で発生する感染を防止することは不適当であるといわざるを得ない。

[015.4.CAT:2003.9.14. 古泉秀夫]


  1. 古泉秀夫・編著:健康食品Q&A;じほう,2003
  2. 香川芳子・監修:五訂 食品成分表;女子栄養大学出版部,2003
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    http: //www.mate.pref.mie.jp/marc/kennkyuuseika/seikajouhou/H12/14seikaH12.PDF,2003.9.12.
  7. 中村 護・他:緑茶のMRSA菌に対する効果;医薬ジャーナル,35 (2):695-699(1999)
  8. 石川恵子・他:新生児病棟(NICU)における緑茶を用いた院内感染対策;http: //www.chiringi.or.jp/k_library/kaishi/kaishi2002_3/,2003.9.12.
  9. Streptococcus pneumoniaeに対するepigallocatechin gallateの殺菌作用;医薬の窓-近着誌から-;薬事新報,No.2215:586(2002)

らふま茶について

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:健康食品・らふま茶・羅布麻・ラフマ・紅麻・コウマ・野麻・ヤマ・茶葉花・チャヨウカ

Q:らふま茶が健康にいいという問い合わせを受けたが、これはどの様なものか

A:羅布麻[陜西中草薬]は、キョウチクトウ科の宿根草で、羅布麻(ラフマ)の全草である。

羅布麻(Apocynum venetum L.)は多年生草本で高さ1-2m、全株が乳汁を含む。

茎は直立して無毛、葉は対生し、楕円形か楕円状披針形。川岸、谷川、山地の斜面の砂地に生える。

繊維質に富んで麻のように用いられたところから紅麻(コウマ)、野麻(ヤマ)、沢漆麻(タクシツマ)等の異名がある。

また古くからその葉が代用茶として愛飲されていたため、茶葉花(チャヨウカ)、野茶とも呼ばれる。

羅布麻葉を用いたお茶は、烏龍茶に似た薄甘い味わいで口当たりが良く、我が国では羅布麻茶・ヤンロン茶(燕龍茶)とも呼ばれている。

  • 異名:吉吉麻(キツキツマ)、紅花草(コウカソウ)、羅布歓的爾<ウイグル名>
  • 分布:遼寧、吉林、内モンゴル、甘粛、新羅、陜西、山西、山東、河南、河北、江蘇、安徽(アンキ)北部等。
  • 成分:根にはシマリン及びストロファンチジン、K-ストロファンチジン-βを含む。葉にはルチン、d-カテキン、アントラキノン、グルタミン酸、アラニン、バリン、塩化カリウムなどを含み、更にクエルセチン及びイソクエルシトリンを含む。また全草にはネオイソルチンを含む。
  • その他、近年における中国の研究でルチン、カテキン、アントラキノン、グルタミン酸、アラニン、バリン、塩化カリウムの他、多様なフラボノイド、フェノール物質、多糖体が確認されているの報告が見られる。

なお、(財)日本食品分析センター(赤数字)における成分試験の結果及びその他の資料による成分含有量の数値が、次の通り報告されている。

水分 2.8g
蛋白質 18.0g
脂質 4.0g
糖質 49.8g
繊維 7.5g
灰分 12.3g
Ca 1500-1540mg
P 129-260mg
Na 93-138mg
K 1140-2430mg
Fe 128mg
Mg 465mg
Cu 6.57mg
Zn 7.33mg
tannin 5500mg
quercetin 190mg
rutin 2.5mg
caffeine 未検出

羅布麻葉中の含有成分について、報告されている数値に大きな差が見られるが、植物中の含有成分は採集地・採集時期・天候等の外的要因によって必ずしも同一ではないとされているために見られる差である可能性も考えられる。

薬理

  1. 降圧作用:羅布麻の葉の煎剤を腎性高血圧のイヌの胃に注入して2時間後、血圧は降下し、そのまま安定して比較的低い水準を保ち3日後に上昇した。
  2. 強心作用:羅布麻の根に含まれるcymarinはin vitro及びin situのネコの心臓に対し、収縮幅度を増大させ、心拍数を減少させ、その後不整脈を生じ、ついには収縮期の心臓停止を来す。その作用の性質と速度はストロファンチジンと類似している。羅布麻根の抽出物もin situのネコの心臓に対する実験で強心配糖体用の作用を示す。
  3. その他の作用:cymarinは一般に昇圧作用を示し、in vitroでウサギ耳血管を収縮収縮させる。ラットに対する利尿作用はstrophanthidin、エリシミン、ネリオリン(オレアンドリン)の作用よりも強い。cymarin抽出物は少量で利尿作用を示し(ラット)、多量では逆に尿量を減少させる。
  4. 毒性:ラットの亜急性毒性試験で、羅布麻の葉は無毒であることが証明されている。
  5. 生物活性:山東羅布麻の抽出物のキャット・ユニットは3.19mg/kgで、cymarinの0.16mg/kgよりも低い。cymarinの強心作用及び生物活性はK- strophanthidinよりも弱い。
  6. 副作用:比較的多いのは腸鳴、悪心、下痢で、時に胃痛、食欲不振、口乾・口苦、一部に呼吸困難又は肝痛。心臓への副作用は主として拍動過緩及び期前収縮で、投与中止で消失する。その他カリウム欠乏症に注意の記載が見られる。

[015.9.APO:2005.10.18.古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版・編:中薬大辞典;小学館,1998
  2. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典 改訂新版;東洋医学舎,2002-2003
  3. http://www.myujp.com/rahuma/,2005.10.17.
  4. http://www1.ocn.ne.jp/~nezunezu/homepage/newpage2.html,2005.10.17.

リン酸コデインと麻黄湯の相互作用

月曜日, 8月 13th, 2007

Q:リン酸コデインと麻黄湯の併用は可能か

A:麻黄湯は、麻黄4-5g・桂皮3-4g・杏仁4-5g・甘草1.5-2gが配合された発汗解熱剤である。

本剤の使用上の注意を見る限り、リン酸コデイン等他剤との併用については、何等記載されていない。

また、リン酸コデイン[codeinephosphate](田辺製薬)の添付文書中に、併用又は飲酒により作用が増強されるとして挙げられている薬剤は「フェノチアジン誘導体・バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤、吸入麻酔剤、モノアミン酸化酵素阻害剤、三環系抗欝剤、β-遮断剤、クマリン系抗凝血剤」である。

尚、麻黄湯中に配合されている各生薬に含まれる成分について、調査した結果は次の通りである。

麻黄(EphedrasinicaStapf)

地上茎にアルカロイドのL-エフェドリン、d-プソイドエフェドリン、L-メチルエフェドリン、L-ノルエフェドリンの他、エフェドラキサン、オキサゾリジン誘導体を含む。根にはエフェドリン型アルカロイドは存在せず、ベタイン、アフェランドリン、チロシン等が単離されている。

  • 薬効・薬理:エフェドリンはアドレナリンに似た交感神経興奮作用があり、エピレナミンより作用は弱いが毒性も弱い。眼交感神経末梢刺激による散瞳作用があり、比較的短時間で消失する。また、痙攣毒の有無にかかわらず気管支筋を弛緩させ、その作用は緩和で持続性がある。

その他発汗、血圧上昇作用が認められ、発汗、鎮咳、去痰薬として喘息、肺炎、皮膚の排泄機能障害による呼吸困難等に用いられる。

桂皮(CinnamomumcassiaBlume)

樹皮にケイアルデヒド、ケイヒ酸、オイゲノールを含む。

  • 薬効・薬理:桂皮の精油は、腸の蠕動運動を亢進し、グラム陽性菌、皮膚真菌に対して殺菌作用が認められている。精油の主成分であるケイアルデヒドは、dd系雄性マウスの腹腔内投与で睡眠延長、体温下降、緩和な中枢神経抑制による鎮静作用等が認められ、作用発現量は LD50の1/4以下だった。

桂皮、肉桂子は健胃、駆風矯味、解熱、鎮痛薬として頭痛、熱感、身体疼痛等に用いられる。

杏仁(PrunusaremeniacaL.)

杏仁は、アミグダリン約3%、脂肪油35-50%を含む。アミグダリンは酵素エムルシンで加水分解されベンズアルデヒド、青酸、ブドウ糖を生ずる。また、最近はバンガミン酸が発見されている。

  • 薬効・薬理:鎮咳・去痰薬として喘息、咳、呼吸困難、身体の浮腫等に用いられる。

甘草(GlycyrrhizaglabraL.)

トリテルペン系サポニンであるグリチルリチン(甘味物質)を4 -12%含む。その他、フラボノイド(リクイリチゲニン等)やその配糖体(リクイチリン等)を含有。フラボノイド関連化合物は、近縁植物の間で分布を異にしている。

  • 薬効・薬理:エキスには抗潰瘍作用、副腎皮質ホルモン様作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用があり、慢性肝炎に対しても有効である。これらの薬理作用は主成分のグリチルリチンに関連している。一方、グリチルリチンを含まない甘草エキスにも抗潰瘍作用、胃液分泌抑制作用があり、フラボノイド成分がこれに関連している。甘草が持つ筋肉弛緩作用もフラボノイドに基づく作用である。

以上、各生薬成分中に含まれる各成分の薬理作用と、リン酸コデインで報告されている相互作用該当薬とを比較検討する限り、リン酸コデインと麻黄湯の併用について特に問題とする点はないといえる。

[59.FD19.015.21MA][1992.1.24.・1999.4.13.一部修正.古泉秀夫]


  1. 日本製薬団体連合会安全性懇談会・編:一般用漢方製剤使用上の注意-解説-;薬業時報社,1989,p.298
  2. リン酸コデイン添付文書,1989
  3. 三橋博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.272,1992.3.5.より転載

ラタニアについて

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:薬名検索・ラタニアチンキ・ラタニア・クラメリア・Rathania・クラメリア科・Krameriaceae・ラタニア赤・Krameria red

Q:OTC薬のうがい薬に配合されている「ラタニアチンキ」とは何か

A:ラタニア根(Ratanhiae radix)を原料としたチンキ剤である。

ラタニア根は、暗褐色、太さ1-3cmの根。薄い根皮は、老根では鱗片状、幼根では平滑で、容易に材部から剥がれる。木部には小孔と、多数の狭い放射組織がある。味は収れん性で、わずかに苦い。

  • 原植物:Krameria triandra Ruiz et Pavon.、クラメリア科(Krameriaceae)。
  • 同意語:[英]Rhatany root、[独]Ratanhiawurzel、Rote Ratanhia、Payta-Ratanhia、[ラ]ratanhiae radix、Radix Krameriae。
  • 和名:ラタニア、クラメリア
  • 産地:ボリビアとペルーのアンデス山地に原産する小低木。赤い花の咲く軟毛で覆われた単葉の低木。
  • 含有成分:15%までのカテコールタンニン(特に皮に局在)、長期貯蔵するとタンニンの縮合(不溶性フロバフエン:phlobaphene、いわゆるラタニア赤:Krameria redに変化)が進むため、含量が低下する。その他の成分:親油性ベンゾフラン誘導体、澱粉、糖、N-methyltyrosin等。
  • 適応:タンニン含有量が高いので、主としてチンキ剤の剤型で収斂薬として使用する。特に歯肉炎、舌の裂傷、口内炎、咽頭炎、稀にはアンギナーにもうがい薬や塗布剤として用いる。時にミルラチンキと配合して用いる。

本品の他の使用法(止瀉薬として経口・潰瘍部外用)は、現在殆ど行われていない。

[011.1.RAT:2006.1.31.古泉秀夫]


  1. 井上博之・監訳:カラーグラフィック西洋生薬;廣川書店, 1999
  2. 薬科学大辞典 第3版;広川書店,2001