薬局苦情拾遺[2]
水曜日, 8月 22nd, 2007? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 医薬品情報21
古泉秀夫
(3)後発医薬品への対応
H.18.5.1.「後発医薬品可の処方せんに対応していない」(患者・電話)
4月から処方せん様式が変更になり、後発品への変更可と記載されているのに、市内の薬局はみんな対応していない。大手のチェーン薬局だけが対応してくれた。市内の薬局は申し合わせて、対応していないのではないか。
[事務局対応]御意見を伺うのみ[薬事新報,No.2466:331(2007)]。
TV-CMの悪影響で、全ての薬に後発医薬品が存在していると思っているわけではないだろうが、後発医薬品が服用中の薬の全てに存在している訳ではないということを認識しておくべきである。
例えば『先発医薬品』に5mg・10mg・20mg/錠の3種類の剤型が市販されている場合、後発医薬品の販売会社は、最も売れ筋の10mg/錠一種のみを販売するというのが通常の在り方である。つまり売れる剤型のものしか造らないということであるから、処方せんに記載されている薬の全てに対応出来るわけではない。このような状況を改善するため、厚生労働省は全含有量の製品を製造するよう指示を出した。
更に個人経営の調剤薬局が、後発品に手を出せない理由として、同一組成品の数の問題がある。売れ筋の先発医薬品のコピーは、当然売れ筋の医薬品を狙い撃ちするわけで、何社もが参入する。従って単純に後発医薬品といっても十数社の商品の中から選ばなければならないとすれば、多種類の製品を在庫しなければならないということで、薬局の経営を圧迫する。また、包装単位の問題も、個人経営の調剤薬局にとって重要な阻害要因となる。例えば包装単位が1000錠/箱だとすれば、そのうちの何錠が使用され、何錠が残るのか、未使用の数が多くデッドストックになるとすれば、個人経営の調剤薬局ではもたない。
TV-CMは、後発医薬品の使用は、医薬品費の自己負担分を軽減するという宣伝を専らにしているが、全ての後発医薬品が安い価格設定になっているわけではなく、さほど変わらないものも存在する。更に何よりも情報量が少なく、確信を持って説明するには抵抗感がある後発医薬品も存在する。薬は服んで効かなければ病気は治らない。重要な疾患の治療を受けている人の場合、中身は同じだという理屈だけで、銘柄の変更は勧められない。
魚の通り道に大坊網を仕掛けて、丸ごと魚を捕ってしまうような、大型の門前薬局は、本来の医薬分業からいえば、邪道である。更に大型の門前薬局は、各地の病院の門前に群がり、処方せん拡散の阻害要因になっている。本来の医薬分業は、開業医の処方せんを施設外に出して調剤するというのが本旨であり、既に技術分業の完成した病院から処方を出す事ではなかったはずである。しかし、国内の分業機運は厚生労働省の期待を裏切り遅々として進まないため、取り敢えず国立病院の処方せんを強引に外に出す事にしたわけである。その結果、門前薬局の育成強化に努めるという皮肉な結果になってしまった。
その意味では“市内の薬局が申し合わせて対応しない”という御意見はとんでもない間違いで、現状の仕組みでは、経済的な面でとてものこと対応できないということである。
(4)副作用の説明について
H18.7.24.「副作用の説明について」(患者・電話)
以前、ある薬局で調剤を受けた際に、「牛乳アレルギー」があることを問診票に書いたところ、薬局から病院に問い合わせ、処方薬が変更になったことがあった。今回、別の薬局で調剤を受けた際にも「牛乳アレルギー」であることを問診票に書いたが、以前中止になった薬と同じ薬が、今度は問い合わせなく調剤され、何の説明も無く、渡された薬の説明書にも特に注意書きがなかった。薬局によって差があるのはおかしいのではないか。
[事務局対応]御意見を伺うのみ[薬事新報,No.2474:555(2007)]。
『薬局により差があるのはおかしいのではないか』といわれれば、それはその通りである。しかし、この苦情は、基本的なところで間違っているといわなければならない。
あくまで薬の処方せんを書くのは医師であり、診察を受ける医師にこそ『牛乳アレルギー』があることを伝えておくべきで、薬局に伝達するのは、万一、医師が『牛乳アレルギー』であることを失念して処方せんを書いた場合に、その処方せんの修正を医師に伝達するためのもので、言ってみれば二重鑑査によって患者の安全を確保するための仕組みである。
先ず医師に伝えておけば、医師は診療録にその旨の記載をする。同時に投与する薬の名称、用法・用量等を記載する。つまり処方せんを書くときに注意して書いてもらえば、後で薬剤師が医師に問い合わせて処方せんの変更を求めるなどと言う、余分なことをしないですむ訳である。
ところで『牛乳アレルギー』の患者に投与禁忌とされている薬はさほど多くない。特に外来で処方せんが出される薬に限定すると、更に薬の種類は少なくなる。
1.止瀉剤として使用されるタンニン酸アルブミンは、タンニン酸と蛋白質の化合物で、その蛋白質は乳性のカゼインを使用しているために禁忌である。
2.ラクトミン・酪酸菌・糖化菌の製剤は『牛乳アレルギー』の患者が服用した場合、アナフィラキシーショックを起こすことがあるから禁忌である。
3.耐性乳酸菌の製剤については、その一部が、製剤化する際に菌安定化のために脱脂粉乳を使用しているため禁忌である。
4.酸化マグネシウムの錠剤は、添加物としてカゼインを使用しているために禁忌。
5.ニフェジピンの長時間作用型の製剤のうちカプセル剤の一つは、添加物としてカゼインを含んでいるために禁忌。
6.ミデカマイシンのカプセル剤は添加物としてカゼインを含んでいるため禁忌。
等が上げられる。その他経腸成分栄養の製剤の一部で、牛乳由来のカゼインが含まれているため禁忌。肝不全用栄養成分の一部も添加物としてカゼインが含まれているため禁忌とされている。その他は『牛乳アレルギー』の患者に禁忌とされるものは、特殊なミルクに見られる程度である。
? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? (2007.8.22.)
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