St.John’s wort含有食品と医薬品との相互作用
金曜日, 8月 17th, 2007■セント・ジョーンズ・ワート(St.John’sWort.)=[学名: Hypericum perforatum L.和名:セイヨウオトギリソウ;西洋弟切草]は、オトギリソウ科の植物で、主にヨーロッパから中央アジアにかけて広く分布している多年生植物である。
■含有成分として0.1-0.3%のhypericin、特に pseudohypericin、isohypericin、protohypericin等のようなhypericin類似物質。DACによると少なくとも0.05%のhypericin、フラボノイド類、特にhyperoside(=hyperin)とrutin及びビフラボン類、特に13,II8- biapigenin、抗菌作用を有する成分中では、ホップの苦味質に構造的に似ているphloroglucin誘導体であるhyperforinを3% まで。0.05-0.3%の精油(n-アルカン、特にC29H60、その他α-pineneやその他のモノテルペン類)。10%強までのタンニン、少量のプロシアニジン類が報告されている。なお、hypericinはモノアミンオキシダーゼを阻害する。また、hypericin には光増感作用があるとする報告も見られる。
■St.John’sWort.含有製品は、米国や欧州で広く頒布されているが、 St.John’sWort.含有製品を摂取することにより薬物代謝酵素であるチトクロームP450、特にサブタイプであるCYP3A4及びCYP1A2 が誘導(活性化)されることが知られており、医薬品との相互作用が報告されている。
■発現機序としてSt.John’sWort.に含まれるヒペルフォリン (hyperforin)などが、主に消化管上皮細胞に存在するCYP3A4やP-糖蛋白質の誘導(活性増加・含量増加)を惹起し、薬物の代謝・排泄が促進されたものと考えられている。St.John’sWort.によるこれらの機能、蛋白質の誘導発現や誘導消失は、時間を要すると考えられるので、 St.John’sWort.の摂取中、摂取中止後において、投与量調節等に十分注意することが必要な事例も考えられる。また、多くの薬剤が、肝の薬物代謝酵素CYP3A4により代謝されるとする報告もされている。
■一方、St.John’sWort.はCYP3A4を誘導すると報告されているため、薬物治療中の者では、生命維持に必要とされる食品ではないSt.John’sWort.の摂取を、原則的には回避すべきである。また、医薬品を服用中の患者でSt.John’sWort.含有食品を既に摂取している患者は、St.John’sWort.含有食品の摂取を中止する必要があるが、 St.John’sWort.含有食品の急な摂取中止により好ましくない症状が現れるおそれがあるので、十分な注意を払いつつ St.John’sWort.含有食品の摂取を中止する必要がある。
■下表以外の医薬品についても、St.John’sWort.含有食品の薬物代謝 酵素誘導により影響を受ける可能性があることから、医薬品を服用する際にはSt.John’sWort.含 有食品を摂取しないことが望ましい。また、St.John’sWort.含有食品の表示や説 明書において、St.John’sWort.を含む旨を明示するとともに、医薬品を服用する場合には、本品の摂取を控える等の注意を表示するよ う各都道府県、各検疫所、関係団体を通じ、関係営業所等に周知、指導した [厚生省医薬安全局安全対策課・生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室.2000.5.10.]。
[112・113.抗てんかん薬]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
carbamazepine テグレトール錠・細粒 (ノバルティス) |
St.John’sWort. は、肝の薬物代謝酵素CYP3A4を誘導(活性化)し、本剤の代謝を促進する→本剤効果の減弱。 | 抗 てんかん薬の血中濃度を測定し、St.John’sWort.の摂取中止。摂取中止により抗てんかん薬の血中濃度上昇の可能性。 |
phenobarbital フェノバール錠・散(藤永-三共) |
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phenobarbital sodium ルピアール坐薬(エスエス) ワコビタール坐薬(和光堂) |
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phenytoin アレビアチン錠・散・細粒・末(大日本) |
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phenytoin sodium アレビアチン注(大日本) |
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phenytoin ・phenobarbital 複合アレビアチン錠(大日本) |
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phenytoin ・phenobarbital・caffeine and sodium benzoate ヒダントールD・E・F (藤永-三共) |
[211.強心薬]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
aminophylline ネオフィリン錠・末(エーザイ)アルビナ坐薬(エスエス) アプニション注(エーザイ) |
*いずれも海外における研究であるが、主にCYP3A4及びCYP1A2で代謝される warfarin、主にCYP3A4で代謝される経口避妊薬、主にCYP1A2で代謝されるtheophyllineについて、 St.John’sWort.製品との併用により血中濃度の低下又は作用の減弱が見られた症例が報告されている。 |
薬 剤の血中濃度を測定し、St.John’sWort.の摂取中止。St.John’sWort.摂取により服用薬の血中濃度上昇の可能性。 |
choline theophylline テオコリン錠・散(サンノーバ) |
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deslanoside ジギラノゲンC注(アステラス) |
*digitoxinは主にCYP3A4で代謝を受ける薬物であり、St.John’sWort 含有製品との併用により血中濃度が低下することが、独での研究によって報告されている。本報告によると、健常者25人をプラセボ群(12人)と St.John’sWort 含有製品摂取群(13人)に分け、digoxinを5日間投与してdigoxinの血中濃度が定常状態になったところで、プラセボ又は市販の St.John’sWort 含有製品(抽出物300mg含有)を1日3回摂取した結果、St.John’sWort 含有製品摂取開始10日後のdigoxinの血中濃度が、プラセボ群に比べSt.John’sWort 含有製品摂取群ではAUC(0?24)は 平均25%低下し、Cmaxは平均26%低下していた。 |
gigoxin の血中濃度を測定し、St.John’sWort.の摂取中止。St.John’sWort.摂取によりdigoxin濃度上昇の可能性。 |
digitoxin ジギトキシン錠(塩野義) |
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digoxin ジゴキシン錠(ノバルティス) ジゴシン錠・散・エリキシル・注(中外) |
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lanatoside C ジギラノゲンC錠(アステラス) |
digoxin で血中濃度低下の報告。 | St.John’sWort. の摂取回避。 |
metildigoxin ラニラピッド錠(ロシュ) |
[212.抗不整脈薬]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
amiodarone アンカロン錠(大正富山) |
St.John’sWort. は、肝の薬物代謝酵素CYP3A4を誘導(活性化)し、本剤の代謝を促進する→本剤効果の減弱。 | St.John’sWort. の摂取回避。 |
disopyramide リスモダンカプセル(アベンティス) |
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disopyramide phosphate リスモダンR錠・P注(アベンティス) |
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lidocaine hydrochloride キシロカイン注(アステラス) |
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propafenon hydrochloride プロノン錠(アステラス) |
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[212]qunidine sulfate 硫酸キニジン錠・末(日研) |
[216.片頭痛治療薬]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
eletriptan hydrobromide レルパックス錠(ファイザー) |
St.John’sWort. は、肝の薬物代謝酵素CYP3A4を誘導(活性化)し、本剤の代謝を促進する→本剤効果の減弱。 | St.John’sWort. の摂取回避 [添付文書,2004.3.] |
[219.エンドセリン受容体拮抗薬]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
bosentan hydrate トラクリア錠(アクテリオン) |
St.John’sWort. に含まれる成分のCYP3A4誘導作用により、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。 | 本剤の血中濃度が低下するお それがあるので、本剤投与時はSt.John’sWort.含有食品の摂取回避。 |
[225.気管支拡張薬]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
[225]theophyllineテオドール錠・G顆粒・DS・Syl. (日研) テオロング錠・顆粒(エーザイ) |
St.John’sWort. は、肝の薬物代謝酵素CYP3A4を誘導(活性化)し、本剤の代謝を促進する→本剤効果の減弱。 *その他の医薬品:いずれも海外における研究であるが、主にCYP3A4及び CYP1A2で代謝されるwarfarin、主にCYP3A4で代謝される経口避妊薬、主にCYP1A2で代謝されるtheophyllineについて、 St.John’sWort製品との併用により血中濃度の低下又は作用の減弱が見られた症例が報告されている。 |
St.John’sWort.含有食品の摂取回避。 |
[247.卵胞ホルモン製剤]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
estradil エストラダームM(キッセイ) |
St.John’sWort. は、肝の薬物代謝酵素CYP3A4を誘導(活性化)し、本剤の代謝を促進する→本剤効果の減弱。 | St.John’sWort.の摂取回避[エストラダームM添付文書,2004.7.] |
[254.経口避妊薬]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
ethinylestradiol・ desogestrel マーベロン28(日本オルガノン) -薬価未収載- |
*その他の医薬品:いずれも海外における研究であるが、主にCYP3A4及びCYP1A2で代謝される warfarin、主にCYP3A4で代謝される経口避妊薬、主にCYP1A2で代謝されるtheophyllineについて、 St.John’sWort.製品との併用により血中濃度の低下又は作用の減弱が見られた症例が報告されている。 *St.John’sWort.は、肝の薬物代謝酵素CYP3A4を誘導(活性 化)し、本剤の代謝を促進する→本剤効果減弱化及び不正性器出血の発現率増大のおそれ。 |
St.John’sWort. の摂取回避[トライディオール21添付文書,2003.12.] |
[254]ethinylestradiol・ levonorgestrel トリキューラ21(日本シエーリング) リビアン28(アステラス) トライディオール21(ワイス) アンジュ28(帝国臓器) -薬価未収載- |
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[254]ethinylestradiol・ norethisterone エリオット21(明治製菓) シンフェーズT28(モンサント) ノリニールT28(第一) オーソM-21(ヤンセン協和) オーソ777-28(ヤンセン協和) -薬価未収載- |
[333.経口抗凝血薬]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
[333]warfarin potassiumワーファリン錠(エーザイ) | warfarinは主に CYP3A4及びCYP1A2で代謝される-抗凝血作用減弱[添付文書,2004.7.] | INRを調べ、安定が得られ ない場合St.St.John’sWort. の摂取を中止する。 |
*INR(international normalized ration):プロトロンビン時間測定値の表現方法の一つ。
[399.免疫抑制剤]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
ciclosporin サンディミュンカプセル・内服液・注(ノバルティス) |
*ciclosporinはCYP3A4で代謝を受ける薬物であり、St.John’sWort含有製 品との併用により血中濃度が低下した臨床例が、スイスで2例報告されている。1例は末期虚血性心疾患のため11カ月前に心移植した61歳の男性で、もう1 例は末期虚血性心疾患のため20カ月前に心移植した63歳の男性の例である。いずれの症例においても移植後ciclosporin、 azathioprine等の免疫抑制剤の投与でコントロールされ、ciclosporin濃度は安定していたが、市販のSt.John’sWort含有 製品(抽出物300mg)を1日3回摂取したところ、摂取開始3週間後にciclosporinの血中濃度の低下が見られ、生検の結果、急性拒絶反応が観 察された。両症例とも拒絶反応を疑われる他の要因は見あたらず、St.John’sWort含有製品の摂取を中止したところ、ciclosporinの血 中濃度は回復した。 |
薬 物の血中濃度を測定し、影響が見られる場合St.John’sWort.の摂取を中止する。摂取中止により薬物濃度上昇の可能性。 |
[399]tacrolimus hydrate プログラフCap・注(アステラス) |
[424・429.抗癌剤]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
gefitinib イレッサ錠(アストラ) |
本 剤の代謝はCYP3A4が関与しているため、CYP3A4誘導性のあるSt.St.John’sWort.の摂取で本剤の代謝亢進-血中濃度低下の可能性 | St.John’sWort.の摂取回避[イレッサ錠添付文書,2003.12.] |
imatinib mesilate グリベックCap.(ノバルティス) |
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irinotecan hydrochloride カンプト注(ヤクルト) |
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tamibarotene アムノレイク錠(日本新薬) |
[625.抗HIV薬]
[分類]一般名・商 品名(会 社名) | St.John’sWort. による影響 | 摂取者に対する対応 |
amprenavir プローゼCap.(キッセイ) |
*indinavirは主にCYP3A4で代謝を受ける薬物であり、St.John’sWort含有製 品との併用により血中濃度が低下することが、米国国立衛生研究所(NIH)の研究によって報告されている。本報告によると18歳以上の健常者8人に indinavirを投与し、投与開始3日目からSt.John’sWort.含有製品(抽出物300mg含有)を1日3回摂取した結果、St.John’sWort.含有製品摂取開始2週間後のindinavir の血中濃度が、非併用時に比べてAUC(0?8)は平 均43%低下し、Cmaxは平均28%低下していた。また、本報告においては、HIV感染者において、血中濃度の低下により耐性が生じる危険性があること からindinavir の投与を受けている場合には、St.John’sWort.含有製品を摂取すべきではなく、CYP3A4で代謝される他のHIVプロテアーゼ阻害薬、非核酸 系逆転写酵素阻害薬投与時においてもSt.John’sWort.含有製品 の摂取を避けることが適当であると言及されている。 *SSt.John’sWort.により誘導された肝薬物代謝酵素(チトクローム P450)が本剤の代謝を促進し、クリアランスを上昇させるため[レイアタック添付文書,2003.12.] |
抗 HIV薬の耐性発現を避けるためSt.John’sWort.の摂取回避。 |
atazanavir sulfate レイアタッツCap.(ブリストル) |
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delavirdine mesilate レスクリプタ錠(ワイス) |
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efavirenzストックリンCap.(万有) | ||
indinavir sulfate ethanolate クリキシバンCap.(万有) |
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lopinavir・ ritonavir カレトラ・ソフトCap.(大日本) |
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nelfinavir mesilateビラセプト錠(日本たばこ) | ||
nevirapine ビラミューン錠(ベーリンガー) |
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ritonavir ノービアカプセル・ソフトCap.(ダイナボット) |
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saquinavir mesilateインビラーゼCap.(ロシュ) |
参照:St.John’sWort.関連商品名(文献6より引用)
独 | *Blutkraut、 *Feldhopfenkraut、*Herrgottablut、*Hexenkraut、*johannisblut、 *johanniskraut、*Konradskraut、*Mannskraft、*Sonnwendkraut、*T |